転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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ジュラの森大同盟

リムルSide

 

魔王ゲルドの討伐の翌日、戦後処理の話し合いをするため、俺達は再び集まった。

 

参加者は俺達の町から俺とユカリ、シズさんとラン、元オーガの妖怪(アヤカシ)と鬼人達。

 

蜥蜴人族(リザードマン)からは首領と親衛隊長とその副長。ガビルは反逆の罪で連行された。

 

ガビルが連れてきたゴブリン達からは数人。

 

豚頭族(オーク)からは元豚頭族(オーク)であり元魔王ゲルドことユウマと例の黒フードのオークを始めとした代表者10名。『飢餓者(ウエルモノ)』の影響が消えて麻痺していた罪悪感が芽生えたのか、全員が死にそうな顔をしている。

 

そして、森の管理者であるトレイニーさん。

 

とまぁ、参加する面子は別に問題はない。んだが……

 

「それでは議長リムル=テンペスト、副議長ユカリ=テンペスト。会議を始めて下さい。」

 

そう。何・故・か!俺が議長、ユカリが副議長に任命されてしまったのだ。

 

いや、なんでだよ!?そこは森の管理者(トレイニーさん)じゃないのかよ!!?

 

【仕方ないわよ。リムル……さっさと面倒事は終わらせましょう。】

 

俺がそう思っているなか、隣で自分のスキマに腰を下ろして浮遊していたユカリが『思念伝達』でそう言ってくる。

 

因みに俺はスライム態でシオンの膝に乗せられている。

 

【……だな。豚頭族(オーク)に関しては昨日、打ち合わせた通りに。】

 

【わかったわ。】

 

「あぁー、俺もユカリもこういう会議の場ははっきり言って苦手なんだ。」

 

「面倒だから、私達の思ったことだけを言うわ。その後は皆で検討して頂戴。」

 

おいっ!もう少しオブラートに言えっての!!

たくっ……

 

「先ず第一に俺達にオーク達の罪を問う考えはない。」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「………」

 

「被害が大きい蜥蜴人族(リザードマン)や元大鬼族(オーガ)の面々は不服かもしれないけど、聞いてほしい。そもそも何故、豚頭族(かれら)が武力蜂起に至ったかを……」

 

ユカリSide

 

「なるほど……大飢饉。それとゲルミュッドなる魔人と『黒いヒトガタ』を使って豚頭帝(オークロード)に更なる強化と凶暴化をもたらした怪しげな妖怪(アヤカシ)の存在……ですか……」

 

「確か問題の『黒いヒトガタ』はユカリ様が回収していましたよね?」

 

「あのヒトガタは一体どういった代物だったんですか?」

 

リムルからの説明を聞いた後、蜥蜴人族(リザードマン)の首領がそう言うなか、ベニマルとカセンがそう尋ねてくる。

 

「そうね。調べてみたら一種の洗脳の術式の他、対象の抱く強い感情や想いを際限(さいぎわ)なく引き出し増幅させる術式が組み込まれてあったわ。」

 

「?感情や想い?」

 

「魔力を増幅させるとかそういった術式じゃなかったのか?」

 

私の説明にシズが首を傾げながらそう言うなか、リムルがそう尋ねてくる。

 

「えぇ。さっきも言ったように感情や想いを異様なまでに引き出させる術式がメインで組み込まれてるわ。そして、コレを取り込まされた当時の魔王ゲルド…ユウマは大飢饉で限界に達していた『飢餓感(ウエ)』の感情と『一族を救いたい』という想いを溢れんばかりに引き出された……」

 

「……上位魔人であるゲルミュッドからの名付けとも合わさって豚頭帝(オークロード)に進化したって訳か……」

 

「………」

 

「私が思うにゲルミュッドと組んでいた妖怪(アヤカシ)の目的はこの『黒いヒトガタ』を使った『実験』だったんじゃないかしら。」

 

「?実験……ですか?」

 

「……皆は知ってるかどうかはわからないけど、この世界での能力(スキル)……特に特殊(ユニーク)級は強い感情やある種の『願い』ともいえる想いに呼応して獲られる……」

 

リムルの『補食者』や私の『妖怪賢者(ヤクモユカリ)』のように。

 

「もし、『人為的』に増幅(ブースト)された感情や想いでもユニークスキルを獲得できる可能性があるとしたら……」

 

「!?ゲルミュッドと組んでいた妖怪(アヤカシ)は『黒いヒトガタ』とユウマ殿を使って、それを確かめようとしたってことですか!?」

 

「……なるほど……」

 

私が立てた推測にベニマルがそう困惑の声を上げるなか、トレイニーが何処か納得したようにそう言う。

 

(あの魔人が言っていたことはそういうことだったという訳ですね。)

 

「話が逸れてしまったわね。リムル。続きを。」

 

「お、おぉ……理由はどうあれ豚頭族(オーク)の侵略行為は赦されないものではあるだろう。けど、さっきの話でもうわかると思うが、逼迫(ひっぱく)している今の豚頭族(オーク)には賠償できる蓄えがない。」

 

「「………」」

 

「っていうのはまぁ建前なんだけどな。」

 

「建前?」

 

「では、本音の方をお聞きしても?」

 

リムルの『建前』という言葉に親衛隊長が首を傾げるなか、首領がそう尋ねてくる。

 

「……豚頭族(こいつら)の『罪』は俺が『喰った』。だから、文句は俺に言え。」

 

「!?お待ち頂きたい!いくらなんでもそれでは道理が」

 

「それが魔王ゲルドと交わした約束だ。」

 

「そうよね?ユウマ。」

 

「はい。俺はユカリ様の式として一生をかけて償うことが確定しているが、他のオーク達が罪に問われることはない。」

 

「父王……ッ……」

 

そう言うユウマの言葉に側近だった黒フードのオークは何とも言えない表情で押し黙る。

 

「なるほど……しかし、そのお答えは少々ズルいですな……」

 

まぁ、そうよね。さて、リムルはどう説得するのかしら

 

「……魔物には種族関係なく共通する唯一不変の『(ルール)』がある……」

 

「『弱肉強食』。理由はどうあれ立ち向かった時点で皆、覚悟はできていた筈よ。」

 

あら?

 

「!?そなたらはソウエイ殿と同じ鬼人とユカリ様と同じ妖怪(アヤカシ)か……っ!!」

 

鬼人や鬼達(おまえら)も里を滅ぼされてるんだけど……」

 

「文句はないのかしら?」

 

「ない……と言えば、嘘にはなりますが……」

 

「次に同じ無様は晒しません。」

 

首を傾げながらそう尋ねるリムルと私に対し、ベニマルとカセンは良い笑顔でそう言う。

 

まさか、この二人から援護射撃が来るとはね。

 

「なるほど……確かに正論ですな。これ以上食い下がっては蜥蜴人族(リザードマン)の沽券に傷が付くというもの……」

 

蜥蜴人族(そっち)も良いのか?」

 

「元より此度(こたび)(いくさ)の一番の立役者はリムル様とユカリ様……お二人のお決めになられたことに異存はありません。が、一つ確認させて頂きたい。」

 

「何かしら?」

 

豚頭族(オーク)をどうなさるおつもりですかな?罪を問わぬのであれば、生き残った彼ら全てを森で受け入れると……」

 

オーク達を見ながら、首領は真剣な表情でそう尋ねてくる。

 

確かに……戦争で数は減ったけど、それでも女子どもといった非戦闘員も足して15万はいるものね。

 

「……夢物語のように聞こえるかもしれないけど、皆で協力していけたらと考えている。」

 

「?協力……」

 

「と言いますと?」

 

蜥蜴人族(リザードマン)からは良質な水資源と魚を。」

 

「ゴブリンからは住む場所を。」

 

「俺達の町からは加工品を提供する。」

 

「見返りとして豚頭族(オーク)からは労働力を提供してもらうわ。」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

リムルと私の言葉にユウマとオーク達が驚愕の表情を浮かべる。

 

「『ジュラの大森林』に住む各種族間で大同盟を結び、相互的協力関係を築く!!『多種族共生国家』とかできたら面白そうだけどな。」

 

「わ、豚頭族(われわれ)が本当にその……同盟に参加させて貰えると……っ!?」

 

「帰る場所も行く当てもないんだろ?」

 

「居場所は用意するから(しっか)りと働きなさい。」

 

「サボりは許さんからな。」

 

「「「「「「「「「ッッ……ははぁっ!!」」」」」」」」」

 

「勿論……勿論ですとも!命懸けで働かせて頂きます!!」

 

リムルと私の言葉に代表として来た10人の内、9人は涙を流しながら土下座をしているなか、黒フードのオークも涙を流しながらそう言う。

 

蜥蜴人族(われら)にも異存はありません。是非とも協力させて頂きたい。」

 

「トレイニーもそれで良いかしら?」

 

「よろしいでしょう。私の守護する樹人族(トレント)からも森の実りを提供致しましょう。当面は豚頭族(オーク)の飢えを癒すことができるでしょう。」

 

「おぉ……」

 

「………」

 

トレイニーの言葉に黒フードのオークを始めとしたオーク達10人が涙を流すなか、ユウマはそんな元同胞達の姿に安堵の表情を浮かべるのだった。

 

リムルSide

 

「それでは、森の管理者である私、トレイニーがここに宣言します!リムル=テンペストを新たな盟主、ユカリ=テンペストを『裏盟主(うらめいしゅ)』並びに森の賢者として認め、『ジュラの森大同盟』は成立致しました。」

 

話し合いが終盤に差し迫るなか、トレイニーさんが跪きながらそう言う。

 

って俺が盟主!?トレイニーさんじゃないの!?それでユカリが賢者なのはわかるけど、裏盟主ってなに!!?

 

【リムル。言いたいことはわかるけど、諦めなさい。『多種族共生国家』とか言い出したのは他でもない貴方なんだから。】

 

【じ、辞退は……】

 

【周りをよく見なさい、リムル。】

 

ユカリに『思念伝達』で言われて見渡すとトレイニーさんやリザードマン達、ゴブリン達、ユウマやオーク達だけでなく、ランや元オーガ組、シズさんまでも跪いていた。

 

【………】

 

【……できると思う?】

 

【無理……だな……】

 

【私も裏盟主兼賢者として手伝うから諦めなさい。】

 

【あぁもう、わかりました!わかりましたよぉ!やれば良いんでしょ!?やればぁ!!】

 

「そ、そういう訳なんで!!」

 

「皆、これからもよろしくね。」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

「うぅ……」

 

何はともあれこうして『ジュラの森大同盟』は成立したのだった。

 

どうしてこうなった!?

 

第三者Side

 

「「鬼人と鬼の方々……」」

 

「……何か用か?ユウマ殿とオークの生き残りよ。」

 

同盟成立後、会議は一旦休憩になったタイミングで自分達に話しかけてきたユウマと黒フードのオークに対し、ベニマルが代表してそう尋ねる。

 

「『弱肉強食』といえど、憎しみはそう消えるものではない……」

 

豚頭族(われら)大鬼族(オーガ)の里を……」

 

バッ!!

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

黒フードのオークが素顔を晒しながらそう言ったタイミングでユウマがベニマルやカセン達の前で土下座をする。

 

「詫びても……詫びきれはしない!虫が良い話なのも重々承知している!だが頼む!せめて一年……一年で良い!一年でユカリ様の式として一族のため、町のため、森のために身を粉にして働かせて欲しい!!そして、一年が過ぎた後、この首一つで……っ!!」

 

「!?いけません!王よ!!それなら今、俺の首を差し出します!!だからどうか、それでご容赦願えないだろうか!!」

 

そう言うユウマに続いて、オークも土下座しながらそう懇願する。

 

「……我らには帰る里は最早ない。戦いが終わった後、今後もリムル様とユカリ様の下にあり続けたいとお伝えしたところ、お二人は俺達に役職をお与えになられた。」

 

「私は『武士(もののふ)』!リムル様の護衛役ですよ!!秘書も兼ねてます!!」

 

「ハクロウは『指南役』、ソウエイは『隠密』。」

 

「私とユウギ、スイカの三人はユカリ様の式として、今後ユカリ様がお作りになられる部隊に属することが決まったわ。」

 

「因みにその部隊の隊長はカセンだな。」

 

「町に残っている二人にも各々、役職が与えられたんだよねぇ~。確かクロベエが『刀鍛冶』、シュナ様は『巫女姫(かんなぎ)』だっけ?」

 

「で、俺は『侍大将』の座を(たまわ)った。」

 

「侍大将……」

 

「………」

 

「軍事を預かる役処だ。」

 

「そんな重要な立場に就いた以上、有能な人材を勝手に消す訳にはいかないわよね?ベニマル。」

 

「あぁ。リムル様とユカリ様に仇なす存在なら容赦はしないが、同盟に参加し盟主と仰ぐなら敵ではない……っ!!」

 

「!?仇なすなど滅相もない!あの方々は豚頭族(われら)を救って下さった!!従いこそすれ、敵対などあり得ん!!」

 

「俺も種族や性別こそ変えられたものの、こうして甦らせて下さったユカリ様に牙を剥けるなどあり得ん……っ!!」

 

「なら、俺達は同じ主を頂く仲間だ。」

 

「精々あの二人の役に立ちなさい。

それを詫びとして受け取るわ。」

 

ベニマルとカセンはそう言いながら、シオンやユウギ達と共に歩き去っていく。

 

「ッ……父王ゲルド、いや、父王ユウマ(・・・)の名に誓って!!」

 

「我が主、ユカリ=テンペスト様の名に誓って!!」

 

そんな七人の後ろ姿に対し、オークとユウマは立ち上がって頭を下げながらそう誓うのだった。




『ジュラの森大同盟』成立。

霊能者(サイキック)』や配下のオオカミ霊達によって高い情報収集能力を持つユカリは『森の賢者』の地位の他、リムルと違って容赦なく人間を○せるので“裏の”盟主にしました。
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