転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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アンケートの結果、『強欲』に決まりました。

尚、マリアベルの『強欲者(グリード)』とは読み方や効果の詳細等で差別化を図る予定です。


ジュラの夏

第三者Side

 

嵐のような梅雨が明けた頃、ジュラの大森林に夏がきた。

 

ミィーン……ミィーン……

 

「……ふぅ……」

 

「暑いね……」

 

「そうですね……」

 

「おーい。シュナー。ヤマメー。」

 

蝉の鳴き声が響くなか、そう話しながらひまわりに水をやるシュナとヤマメに対し、ユカリと一緒に来たリムルがそう声をかける。

 

「これはリムル様、ユカリ様。」

 

「おはようございます。」

 

「?ひまわり?」

 

「はい。リムル様のお話を参考に似た花を植えてみました。」

 

「おぉ、良いね。」

 

その後、リムルとユカリは執務室で風鈴の音を聞きながら、冷えた麦茶を堪能する。

 

「「「………」」」

 

「「ん?」」

 

何やら視線を感じた二人は振り返る。

 

が、そこにあるのはひまわりもといひまわり擬き。

 

「気のせいか……」

 

「そうね……」

 

二人はそう話しながら向き直る。

 

が、それでもひしひしと感じるひまわり擬きからの『視線』……

 

「あぁ……っ。」

 

「……見られてる……?」

 

リムルSide

 

ジィーっと見てくるひまわり擬きが地味に恐ろしくなってきた俺達はリグルドの元へと向かうことにした。

 

「ジュラの夏って暑いのね……」

 

スライム態の俺を抱き上げながら、日傘を差して歩きながらユカリがふとそう呟く。

 

確かに俺は『熱変動耐性』があるから平気だけど、町の連中は違うのか、外に出ている奴があまり見掛けないな。

 

「ユカリは平気か?おまえは俺と違って『熱変動耐性』持ってないだろ?」

 

「私はちょっと『ズル』してるから……」

 

ズル?

 

ユカリの『ズル』という言葉の意味に首を傾げるなか、俺達はヴェルドラを奉っている祠の前でお参りしているリグルドの元へと辿り着く。

 

「ぬぅお………」

 

「リグルドォー。」

 

「ぬぅ…………!リムル様、ユカリ様。」

 

「なんか皆、この暑さに参ってるみたいね?」

 

「えぇ…………私どもの記憶でも、ここまで暑い夏は…………アハッ。初めてです………っ!!」ジュオオオ…ッ!!

 

ユカリにそう答えるリグルドの身体から汗が蒸気になって噴き出してくる。

 

……あれ?もしかしてだけど……

 

「……俺達が木を切り開いて町を作ったから……」

 

「……自然環境に影響が出たってことかしらね。」

 

「いえいえ!そんなことは!!これはきっと………暴風竜様が消えてしまわれた為かと………っ!!」

 

すまん。リグルド……フォローしてくれてるつもりなんだろうけど、それでもどっちみち俺達のせいだわ……

 

「んん…………なにせ神様のなさることですから。リムル様とユカリ様には………」

 

「「う~ん……」」

 

「暴風竜様ですし。セーフです。セーフ、うん。」

 

「……ヴェルドラだもんなぁ!ヴェルドラなら仕方ないよなぁ!!」

 

ごめんな!ヴェルドラ!!

 

【(パチンッ!)構わん、構わん!細かいことは気にするな!アーハッハッハッハッ!!】

 

【…………そこ、指し間違えてますが?】

 

【………………ゑ?】

 

その後、議事堂に戻った俺達は執務室でシュナとシオン、ランと共に事務作業をすることに。

 

(……『大賢者』。念のため、森林開拓による自然への影響を調べておいてくれ。)

 

『了。』

 

「……ところでさぁ。」

 

「「「「?」」」」

 

「……君達全員、その格好(・・・・)で暑くないの?」

 

シオンはビシッと決まった何時ものスーツ。シュナも何時も見ている着物。ユカリとランはどちらも長袖の中華風な格好をしていた。

 

普通に見ていて暑い……

 

「へっちゃらです。夏、好きなんで。」

 

「私は元から『狐火』といった炎を扱う魔物でしたから、暑さには耐性がありますので。」

 

「私も役職持ちなので何時如何なる時も恥ずかしくない格好でいないと……」

 

「気にし過ぎて倒れないでね。」

 

「ありがとうございます。ですが……」

 

「ん?」

 

「リムル様とユカリ様はお気付きでないかもしれませんが、執務室(ここ)だけどういう訳か涼しかった(・・・・・・・・・・・)りするんですよねぇ……」

 

「確かに!今日みたいに一枚脱いでくる(・・・・・・・)必要がなかったなと思うくらい涼しいですよね!一枚脱いでるから余計に!!」

 

「あ……?」

 

「?一枚脱いで……?」

 

「「ハッ!?」」

 

次の瞬間、シュナとランが慌ててシオンを部屋から追い出す。

 

「え、あっ………ちょっ………え………?」

 

「リムル様、ユカリ様。ちょーっと失礼します!!」

 

「そんなことを堂々と言うんじゃない!!」

 

「リムル様!ユカリ様!コレ(・・)、スースーして快適ですよ!!」

 

次の瞬間、シオンはそんなことを言いながら、二人に連行されていった。

 

「……ユカリ。ちょっと聞きたいんだが……」

 

「なにかしら?」

 

「……もしかして、この部屋に何かした(・・・・・・・・・)?」

 

「ただこの部屋の中で『暑いと感じる気温』の『境界』を弄っただけよ。」

 

「おまえのその能力ズルくねぇか!?」

 

それってつまり真夏だろうが真冬だろうが関係なく常に適温で過ごせるってことじゃん!羨ましい!!

 

「気温に関しては『熱変動耐性』を持ってる貴方にだけは言われたくないわね。」

 

「うぐっ!?」

 

確かに……でも、羨ましい……

 

ユカリSide

 

「うん。良い感じね。」

 

あの後、仕事を一通り片付けた後、リムルがゴブタ達を連れて虫取りをしに森へと入っていくなか、私はランとチェン、ニトリとシズを連れて川で冷やしていたスイカと野菜を取りにくる。

 

「懐かしいなぁ……私も子どもの頃、よくこうやってお母さんと一緒にスイカや新鮮な野菜を冷やしてたよ。」

 

「うん。凄く質の良い綺麗な水だね……此処からも町に水を引くのが今から楽しみだよ。」

 

川を見ながらシズが懐かしむようにそう言うなか、ニトリは川の状態を見ながらそう言う。

 

尚、実はこれはただ冷やしていたスイカと野菜を取りにきただけでなく、上下水道計画で引く水の源流の状態の視察でもある。

 

「冷たくて美味しいです♪ランしゃまぁ~。」

 

「飲み水としても問題はなさそうですね。ユカリ様。」

 

「!」

 

「?ユカリ様?」

 

「どうかしたの?」

 

「「?」」

 

「……何か来る……っ!!」

 

バササ……ッ!!

 

「「「「!?」」」」

 

ランやシズ達にそう言った次の瞬間、森の奥から全体的に黄色・オレンジ・青から成る極彩色に目のような模様がある(はね)、黄色と白のふわふわとした体毛に黒と白の縞模様のある腹部を持った、青い複眼のある何処か優しそうな顔立ちをした巨大な蛾が飛んでくる。

 

大きさは本気になったランガと同じくらい……っていうかコレ、モスラ……よね?

 

「!?『永遠蛾(エタニティモス)』!!?」

 

「滅多に人を襲わない、『森の守護蟲』とも云われているSランクの魔蟲がなんで……っ!?」

 

「ランしゃま……」

 

「ッ……ユカリ様……」

 

「待って。どうも争いにきたって感じじゃなさそうよ。」

 

ニトリやシズがそう言いながら警戒しているなか、私はランにそう言いながら巨大蛾…永遠蛾を観察する。

 

【……あのぅ……つかぬことをお聞きしますが……貴女様は森の賢者にして裏盟主、ユカリ=テンペスト様でいらっしゃるでしょうか?】

 

そんななか、永遠蛾が『思念伝達』でそう尋ねてくる。

 

「?えぇ。そうだけど……私のことを知ってるの?」

 

【はい。樹妖精(ドライアド)様からお話をお聞きし、是非とも配下に加わらせて頂きたく、こうして挨拶に来ました。】

 

なるほど……

 

「ふむ……視たところ、素質はあるわね……なら、私の式になるということで良いかしら?」

 

【お願いします。】

 

「それじゃあ……」スッ

 

永遠蛾から了承を得た私は早速ヒトガタを構える。

 

「『森の守護蟲』よ。私と式神の契約を結び、生まれ変わりなさい……『エタニティラルバ』!!」

 

〈確認しました。個体名『エタニティラルバ』は永遠蛾から『蝶妖精(プレレフェアリー)』へと進化……成功しました。〉

 

パキィィィンッ!!

 

次の瞬間、永遠蛾改め『エタニティラルバ』ことラルバは水色の髪に幼虫の触覚のような角、お腹周りに蛹を模した意匠、幼虫を模した意匠のあるスカート、アゲハチョウのような翅を持った少女の姿へと変わる。

 

「随分と小さくなったっていうか可愛くなったね。」

 

「ですが、先程まで以上に強い妖気(オーラ)を感じます。」

 

「配下に加えて下さっただけでなく、更に強くして頂いたこと、感謝致します。ユカリ様。」

 

シズとランがそう言うなか、ラルバはその場で跪きながら、その橙色の瞳で見ながらそう言ってくる。

 

「これからよろしくね。ラルバ。」

 

「ハッ!!」

 

その後、ラルバも加えた六人でスイカやら野菜やらを切り分けて食べていると……

 

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

 

川を辿った先で木々が何本も凪ぎ倒され、その先で大きな水柱が上がるのが見える。

 

「「「………」」」

 

「……ユカリさん……今のは……」

 

「はぁ……十中八九リムルね……」

 

「なんという水弾……流石はユカリ様と並ぶ表の盟主……っ!!」

 

その後、スキマでショートカットして行ってみると、ちょっとした大きな水溜まりで水死体(死んでない)みたいになってるゴブタ達と一人で佇んでいるリムルが目に入る。

 

「何やってるのよ?リムル……」

 

「……すまん。実は……」

 

リムルが言うには目当てのカブトムシが見付かったのは良いが、進化前のラルバのように巨大だったがために取るのを諦め、川辺(私達がスイカや野菜を冷やしてた所と源流は同じ)でゴブタ達と水鉄砲合戦を開始。

 

ハンデとして一人で全員を相手にしていたのは良いものの思いの外追い詰められ、思わず体内に溜めていた水を放ってしまったとのこと。

 

……何やってるのよ。リムル……

 

第三者Side

 

その後、ゴブタ達を回復させたり、ラルバを紹介してから町に戻った後、ユカリやリムル達はベニマルの元を訪れる。

 

「あ!いたいた!おぉーい!ベニマルゥーッ!!」

 

「なんですか?また何か悪巧みですか?」

 

「なんで私も見ながら言うのよ……」

 

「いやね。こんなにも暑いからもう『我慢大会』でもやろうかなと……」

 

自分も見ながらそう言うベニマルにユカリが呆れながらそう言うなか、リムルはそう言いながら具体的な内容を説明する。

 

「ベニマルゥー。おまえ程の強い男なら暑さくらい平気だろぉ?」

 

「そうですね……ここは俺の自然影響耐性(がまんづよさ)(自称)を知らしめてやりますか。」

 

「最近、良い所ないですしね。」

 

「うるさいぞ!そこ!!」

 

「だって事実ですし。」

 

このシオンの何気ない一言がベニマルの闘志に火を着けた。

 

「くっ……おのれ、残念秘書……ならば、見せてやろう。炎の戦士の生き様をな!!」ドォォォンッ!!

 

「折角だからランも参加してみたら?

暑さには耐性があるのよね?」

 

「そうですね……わかりました。ユカリ様。」

 

「負けないぞ。ラン。」

 

「ふんっ。それはこちらの台詞だ。貴様と違い私は常に長袖(この格好)だからな……今更厚着したところで何の問題もない。」

 

「ランしゃま、頑張れぇ~。」

 

「う~ん……」

 

(ここは目立ちたいんスけど……これ、なんか嫌な予感がするッス……)

 

ゴブタがそう思っているなか、『我慢大会』が開始される。

 

「」←ベニマル

 

「」←ラン

 

「」←ガビル

 

「」←ユウマ

 

「」←ウツホ

 

「」←ウルミ

 

「」←サキ

 

が、ベニマルやランを始めとした参加者全員が紫の泡を吐きながら、ほぼ同時にダウンした。

 

「おぉーっと!?これはどういうことかぁーっ!?鍋の前で出場者全員がダウンだぁ~~っ!!?」

 

「ら、ランしゃまぁ~っ!?」

 

「まさか……ベニマルが負けたっ!?」

 

「二人とも、どうしたんでしょう?」

 

「………」

 

司会役のソーカがマイクを手にそう言い、チェンとリムルがそう困惑の声を上げるなか、首を傾げながらそう言うシオンの手にあるお玉(・・・・・・)をユカリはジト目で見つめる。

 

そう。ベニマルやラン達はシオンが作った鍋の前に皆、散ったのだった。

 

(出なくて良かったッス……!!)

 

尚、ゴブタは直前で不参加を選んだことで危機を免れていた。

 

その後、参加者達が救護所へと運ばれていくなか、ゴブタはクロベエとコガサのいる鍛冶工房へと向かう。

 

ゴオオオオオッ!!

 

「うわっ!?暑いッス!!?」

 

カァーン……カァーン……ッ!!

 

「………」

 

「リアル我慢大会じゃないッスか!?」

 

「あはは……鍛冶工房なんだから当たり前だべ。」

 

「クロベエさん、凄い汗掻いてるッスけど……大丈夫なんスか?」

 

「ん?あぁ、オラは鈍いから平気なんだべ。そだ。この前、期待させてガッカリさせちまったお詫びにオラからもゴブタ君の武器を作ってみたんだべ。」

 

クロベエは笑顔でそう言いながら、ゴブタに贈る武器を取り出そうとする。

 

(クロベエさん……真夏なのに笑顔で何日も工房に籠って……)

 

「いやぁ………気付いたら、何時の間にか鍛え上げられててよ…………フフフフフフフ…………フフフフフフフフフ………ッ!!」

 

「マギィーッ!!マギィーッ!!マギィーッ!!」

 

ゴブタがそう思っているなか、クロベエが笑いながら取り出したのは柄の先端と鍔に見開いた目のような装飾があり、柄が生き物のようにウネウネと動き、極めつけに奇声を発している剣(?)だった。

 

心なしか手にしているクロベエの目が妖しく赤く輝き、先程までの爽やかな笑顔とは違う不気味な笑みすら浮かべている。

 

「………」

 

「クロベエ様ぁー。冷たい麦茶が入ったので一旦休憩をってきゃあああああああっ!?なんですか!?その今にも血肉を求めそうな魔剣はぁっ!!?」

 

「マギィーッ!!マギィーッ!!マギィーッ!!」

 

「コガサちゃん………クロベエさん、一旦休ませてやった方が良いッスよ……」

 

「フフフフフフフフフフフフフフッ!!」

 

「え、衛生兵!!衛生へぇぇぇぇぇいっ!!!」

 

「マギィーーーッ!!!」

 

次の瞬間、鍛冶工房にコガサの悲鳴と魔剣の叫びが響き渡るのだった。

 

「猛暑が続く毎日でしたし。この日差しに加え、私がスキル込みで直接耕した畑はともかく、この前皆さんに耕して頂いた畑は土が上手く馴染めなかったみたいで……」

 

「私達の方で色々と試行錯誤はしてみたのですが……」

 

「そうですか……」

 

時が過ぎること夕方、畑の方ではゲルドがリリナとリリーホワイトから状況の説明を受けていた。

 

「昼間の大会で救護所行きになってしまった父王に見舞いに少しばかりの新鮮野菜をと思ったのですが……」

 

「あぁ、大丈夫です。それでも数株は生き残ってるので希望はあります。」

 

「どうぞ。食べてみて下さい。」

 

「うむ……」

 

リリーホワイトに促されたゲルドは無事に成っているトマトを手に取る。

 

「………」

 

「ん?」

 

が、近くで見上げるちょんまげが特徴的なゴブリナの子ども、『ココブ』の存在に気付く。

 

「………」

 

ブチッ!!

 

「ん。」

 

「わぁ……んく……んく……はぁぁ……」

 

次の瞬間、ゲルドはもぎ取ったトマトをココブに渡し、ココブはそれを美味しそうに食べる。

 

ゲルドはそんなココブの頭を優しく撫でてから去っていく。

 

「よろしかったのですか?」

 

そう尋ねるリリナに対し、ゲルドは片手を振る。

 

その背中はとても頼もしく、大きく見えるのだった。

 

後日、ユカリが新たに仲間にしたエタニティラルバの癒しの鱗粉によって瀕死状態だった苗木達が復活し、ゲルドが無事にユウマに新鮮な野菜を届けることができたのはまた別のお話。

 

ユカリSide

 

その日の夜、私はリムルとシズと共にスナック『樹羅』を訪れていた。

 

「はい。テンペストブルー。」

 

「おぉ……涼しげ!!」

 

「フフ……どうぞ、よく冷えてるうちに。」

 

「ん………ん………あ。なんかハッカみたい。」

 

「アルコールの代わりに涼しげなハーブを入れてみました。」

 

「ユカリはともかく俺は子どもじゃないってぇ~。」

 

「涼しげで、猛暑の今年にはピッタリな味ね。」

 

「確かに。今年の夏は結構暑いよね。」

 

「ですが、長い目で見れば、“揺らぎ”のようなものです。振り始めか………振り戻しか………」

 

「生憎俺はそんな長い目は持ってないんだ。」

 

「フフフ………リムル様とユカリ様のお力添えでこの森は大きく変わってきています。そして、町の皆さんはその予期せぬ変化に対応してきている……」

 

「大丈夫だよ。きっと上手くいくよ。」

 

「……そう……」

 

「ありがとうな。トレイニーさん、シズさん。」

 

「お客様の心をほぐすのがスナック『樹羅』の仕事ですからね。」

 

「どうぞ。リムル様、ユカリ様、シズ様。」

 

「お。枝豆!!」

 

「軽く茹でた後、砕いた岩塩で揉んであります。」

 

「へぇ……結構良い味ね……」

 

「美味しいね。」

 

「飲み物はビールじゃないけど、夏で食べるつまみとしては王道だよなぁ……」

 

「「……って誰!?」」

 

「はじめまして。お三方。私は『ミヨイ=オクノダ』と申します。」

 

「彼女は最近、『樹羅(うち)』で働き始めた新入りですよ。」

 

枝豆を食べた後、リムルとシズがそう困惑の声を上げるなか、癖毛のあるピンクの髪にクジラのような帽子を被った中居のような格好をした美少女、『ミヨイ=オクノダ』はそう挨拶し、トレイニーも軽くそう紹介する。

 

「ってあら?貴女、もしかして私と同じ妖怪(アヤカシ)?」

 

「はい。最近、生まれたばかりですが、妖怪『座敷童子(ザシキワラシ)』と言います。」

 

「お!座敷わらしとはまた縁起が良いな!!」

 

「確か幸運を運んできてくれる妖怪……だっけ?」

 

「まぁ!それならこの店はもう安泰ですね!!」

 

「まっ、安泰も何もまだこの町に通貨自体ないけどね。」

 

基本物々交換だし。

 

「何にせよこうして予期せぬ縁に恵まれたのは良いことですよ。」

 

「……それもそうね。このテンペストブルーと枝豆、おかわり貰える?」

 

「あ。俺もおかわり。」

 

「私も。」

 

「畏まりました。」

 

カランカラーン♪

 

「いらっしゃいませ♪」

 

「お。今日はママさんもいるぞい。」

 

「お帰りなさい。カイジンさん、ミルドさん。」

 

「ん。」

 

「……予期せぬといえば……」

 

「はい?」

 

「……此処、別にトレイニーの店じゃなかったと思うんだけど?」

 

「店名も確か『ゴブリナ』だったような……」

 

「フフフ……皆さん、対応してくれてますよ。」

 

「あはは……」

 

カランカラーン♪

 

「あ!リムル様にユカリ様!!こんな所にいたんスね!?蛍の群れが来てるんス!!見に行きましょうよ!!」

 

「こらこら。ゴブタ君、お静かに。」

 

「早く早く!こんな光景、もう見れないかもしれないッスよ!!」

 

「……折角だから行きましょうか?シズ。」

 

「うん。」

 

その後、シュナやシオン、無事に『毒耐性』を獲得して復活したランやチェンとも合流し、ゴブタの案内で蛍の群れが見れる穴場スポットへと赴く。

 

そこで明かりを消した瞬間、蛍の群れが一斉に光り出す。

 

「「「「「わぁ……っ!!」」」」」

 

「……懐かしいなぁ……」

 

「?シズさん?」

 

「小さかった頃、お母さんと一緒にこうして蛍を見に来ていた時のことを思い出したよ。」

 

「………」

 

首を傾げるリムルにシズがそう言うなか、他より一回り程大きく、暗くて濃い青色の光を放つ蛍が私の指先に止まる。

 

そういえば、お父さんとお母さんが生きていた頃、夏休みに入ると三人でこうして蛍を見に来てたっけ。

 

「…………リムルさんとユカリさんのおかげだね。毎日が凄く楽しい!!昔の私に言っても信じて貰えなかっただろうけど………」

 

「!毎日が楽しい……」

 

シズの言葉にふともう思い出すつもりもなかった前世(人間だった時)の記憶を思い起こす。

 

あの頃、特に『霊夢お姉ちゃん』がいなくなってからは毎日が『地獄』だった。

 

学校では何かといちゃもんを付けては暴力を振るってくる上級生に同級生。名門校の体裁ばかりを気にして見てみぬフリをし続ける教師。家事だけでなく農作業や経理、挙げ句には風俗にも働かせてこき使う親戚達……本当に最悪最低な人生だったと今でも思っている。

 

それに比べると今世(いま)は凄く楽しい。

 

仕事は大変だけど、自分の好きなことを強欲のまま(思うがまま)に出来ている。

 

「……そうね……私も毎日が凄く楽しいわ……」

 

「あ!ユカリ様が笑ったッス!!」

 

「まぁ!!」

 

「へぇ……ユカリ様もそのようなお顔をされるのですね。」

 

「ッ……」

 

そう言うゴブタを始め、皆が注目してくるので思わず顔を背ける。

 

なんか恥ずかしいわね。

 

「あれれ?もしかして照れてるんスか?ユカリ様も案外可愛いところ(ドスッ!!)うぐっ!?」

 

なんかウザくなってきたゴブタの腹を日傘で突いて黙らせる。

 

「まったく、ゴブタは……」

 

「あはは……ところで、その指先に止まった蛍はどうするの?」

 

そんなゴブタにリムルが呆れるなか、シズが苦笑いしながらもそう尋ねてくる。

 

「……貴女、私の(もと)にくる?」

 

「………」コクッ

 

「なら……幻想的な光を放つ蛍よ。私と式神の契約を結び生まれ変わりなさい……『リグル=ナイトメアバグ』。」

 

〈確認しました。個体名『リグル=ナイトメアバグ』は幻想蛍(ミッドナイトバグ)から妖怪『蛍妖蟲(ホタルヨウチュウ)』へと進化……〉

 

パァァァ……

 

次の瞬間、そう言う世界の言葉と共に蛍改めリグル……ゴブリンの方とややこしくなりそうだから、『ナイトメアバグ』から因んで『メア』の身体が光り輝きながら、私のヒトガタと融合し、人型へと変わっていく。

 

(……もう誰にも壊させはしない……私がこの『楽園』を護ろう……)

 

〈……成功しました。〉

 

パキィィィンッ!!

 

ジュラの大森林の裏の盟主として。

 

私は改めてそう誓うのだった。




エタニティラルバ

見た目:東方のエタニティラルバ

種族:蝶妖精(プレレフェアリー)

所持スキル

ユニークスキル『最珠羅(モスラ)』:『鱗粉を振り撒く』程度の能力の発展型。自身の理想の効果を付与した鱗粉を生成できる。また、モスラの“力”も扱える。

エクストラスキル『スペルカード』

スキル『弾幕』

詳細

元々は森で樹人族(トレント)を守護していたSランク魔蟲、永遠蛾(エタニティモス)であり、トレイニーの配下のような存在だったが、トレイニーからの薦めもあり、ユカリの下に鞍代えした。『式神化』を受けさせた際、真夏の自然エネルギーもふんだんに与えられたので実質『夏の妖精』とも言える存在になっている。現在はリリナの畑でその鱗粉の効果で瀕死になっていた苗木を復活させたり、猛暑や強い日射しに対する耐性を持たせたりしている。

奥野田美宵(ミヨイ=オクノダ)

見た目:東方の奥野田美宵

種族:妖怪『座敷童子(ザシキワラシ)

所持スキル

ユニークスキル『縁起者(エンギモノ)』:周囲の運気を上げる。

ユニークスキル『宵忘者(ワスレモノ)』:相手を酔わせ、記憶を操作する。

詳細

スナック『樹羅』にいつの間にか住み着いた妖怪(アヤカシ)。後に正式にユカリの配下になった。
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