「すぅ……すぅ……」
翌日、議事堂の応接室にて、ミリムはポテチを抱きながらソファーでうたた寝していた。
「フフ……」
「食べるだけ食べて寝ちゃったね。」
「だね。」
「昨日のユカリ様の仇に仕返ししちゃいましょう。」
「やめろ。」
「
そんなミリムを微笑ましそうに見ながらシュナとシズさん、ツカサの三人がそう言うなか、悪戯しようとしたシオンをランとカセンがすかさず止める。
「おいおい……」
「まったく……呑気なものね……」
「ですが、それだけ
「居心地良いもんね。」
「だね。」
そんななか、そう言う俺とユカリに対し、シュナとシズさん、ツカサの三人はそう言った。
第三者Side
「あ。うー…………!せっかく良いところで……………!ん?ん?」
目を覚ました後、誰もいないことに気付いたミリムは立ち上がりながら周りを見渡す。
「……皆、何処に行ったのだ?」
ミリムはそう言いながら、ソファーに座り直しながらポテチを食べる。
ピコン↗
が、ミリムのアホ毛が何かに反応したかのように会議室の方を向く。
「……(ニヤリ)
ユカリSide
ミリムが応接室で寝ている間、会議室にて、昨日の面子にシュナとシオン、チェンを加えた面子で再びミリムの世話役について、話し合うことに。
って言ってもただ単にリムルが抗議したいだけなんだけど……
「ーーーっていう訳で、『ミリム様係』に相応しいのは
「ドキッ!?」
「………」ズズッ
「賛成ですじゃ。」
「私も賛成です。」
「私もです。」
「賛成ー♪」
「異存はありません。」
「チェンも賛成ですぅ♪」
「私も賛成。」
「賛成!」
「賛成。」
「賛成。」
「賛成です。」
「賛成だな。」
「ちょっ!?」
が、リムルの抵抗虚しく結局は私と一緒にミリムの世話役に。
「賛成多数ですね。」
「(ズズッ)諦めなさいよ。リムル。」
「ユカリは逆になんでそんな受け入れ態勢なんだよ!?俺らにだって
「別に仕事の片手間で歳の離れた従兄弟の世話をするようなものなんだから余裕でしょ?下手な赤ん坊や落ち着きがない幼児の世話よりは断然マシだと思うけど?」
「比較対象がおかし過ぎる!?」
【え?っていうかユカリさん?もしかしなくとも前世で経験が……?】
【……まぁ、事務仕事や農作業の片手間で赤ちゃんのオシメ変えたり、ミルクを適温に温めたりとかしてたけど……】
【……ここでもかよ……!!】
あ。リムルが頭を抱えだした。
バァンッ!!
「リームルー!ユーカリー!!『魔王』になる気になったかぁーっ!?」
そんななか、少し前に目覚めたミリムがそう言いながら乱入し、私達を押し飛ばそうとする。
「………」サッ
「うひゃあっ!?」
ベチャアアアアアアアッ!!
「………」
私が難なく躱すが、躱せなかったリムルは押し飛ばされた勢いのまま、ベニマルの顔面に一部を貼り付けながら本体は壁にぶつかり潰れたトマトのようになる。
「「り、リムル様……っ!?」」
「ユカリ様。お怪我は?」
「いや、大丈夫よ。」
「なんというお姿に……っ!?」
「は、剥がれません………っ!!」
「ミリム。今は国作りで忙しいのよ。」
「後、俺の身体自体も大変だ。それに『魔王』なんて余計な敵やしがらみを増やすだけだろ?」
リグルドとシオンがなんとか剥がそうとするなか、私とリムルは改めてそう拒否する。
尚、ベニマルは自分の顔に引っ付いた一部を丁寧に剥がし、本体に戻している。
「そんなことはないのだ!!…………え~と…………え~と………あっ!『魔王』になれば、自分で考えた必殺技名を大声で叫んでも皆、なんとなく納得してくれるのだ!!『魔王』だから!!!」
「!おぉ……っ!!」
「ちょちょちょ!?いやいやいやいや!!」
「鬼人ってそういうの好きなのかな……」
「どうするんだよ?変な空気になったぞ。」
「ワタシは悪くないのだ。っていうかユカリだって必殺技を使う際は大声で宣言しているではないか。」
「『スペカ』のことを言ってるのなら、アレはそもそもそういうスキルだから。」
ボォーン……ボォーン……
「あ?」
「あら?もうお昼の12時みたいね。」
「あー!この音はお昼ご飯の時間なのだ!!」
「わかった、わかった。」
「っていうか貴女、ご飯を食べなくても平気だったんじゃないかしら?」
「此処のご飯は美味ぁーだから、何度でも食べるのだ。」
「フフ……では、すぐにご用意しますね。」
そうして皆でお昼ご飯を食べることに。
「「ご馳走さまでした。」」
「ご馳走さまぁー♪」
「「………」」
暫くして食べ終えたシオンとラン、チェンの三人が皿を片付けるなか、ミリムとベニマルの箸が止まる。
二人の視線の先には人参が残っていた。
「ミリム様。お野菜もちゃんと食べて下さいね。」
「うぇー……コレ、生の人参ではないか……っ!!」
「うんうん。」
「ちゃんと料理してますよ、甘くて美味しいんですから。」
「嫌なのだ!人参は匂いがきつくて、口に合わないのだ!!」
「うんうん。」
『うんうん』じゃないわよ、ベニマル。
「好き嫌いしていると、大きくはなれませんよ。」
「平気なのだ!人参など食べなくても、『魔王』にだってなれるのだ!!」
「!?おぉ……っ!!」
「!フフ……」
そんななか、何か閃いた様子のシュナがミリムとベニマルの皿を持ち、何処かに消える。
「ほら!色々な形に切ってみました!!」
次の瞬間、そう言いながら戻ってきたシュナの手元にある皿には、『星等の形に切り分けられた』人参が乗っていた。
「おぉっ!可愛いのだ!!はむっ!美味しいのだ!!これならいくらでも食べられるのだ!!」
ただ切っただけだけどね。
ミリムが人参を美味しそうに食べている一方、ベニマルは……
「………」
「さっさと食え。」
「「ベニマル(さん)……」」
「ヒッ!?」
「食べ物を粗末にするのは……」
「ダメだよ。ね?」
「………はい。食べます。」
あっさりと陥落した
まぁ、シズも太平洋戦争の経験者らしいから、食べ物を粗末にするのは許せないんでしょうね。
「ふぅー…………美味しかったのだ。今日は天気も良いし、町の探検に行ってくるのだ!!」
「まぁ!良いですね!!おやつを作っておきますから、また後で顔を出して下さい。」
「おやつ!凄いのだ!待ちきれないのだ!!」
「フフフ……その前に探検、ですよね?」
「あっ!そうだった!行ってくるのだ!!」
ドカァァァンッ!!
そうしてミリムは会議室を飛び出していく。
……扉を思いきり破壊しながら。
「まったく……元気なのは良いけど、もう少し落ち着いてほしいものだわ。」
トンテンカン♪トンテンカン♪
私はそう言いながらスキマから取り出した工具を用いて扉の修復作業に入る。
……ここの装飾がちょっと不満ね。
「ってユカリ!?なんで流れるように扉の修復作業に入ってんだ!!?」
「そういうのは私達がやりますので!!」
「あぁ~、別に良いわよ?私は『ミリム係』だし。建築は無理でも
「早っ!?」
「しかもこの仕上がり……ゴブキュウやミルド殿が見れば、目を見開く出来映えでは……」
「あぁ……間違いねぇな……ユカリの姐さんは多才だなぁ……」
【おまっ、カイジン達をスカウトしてくる前、建築は専門外とか言ってたよなぁっ!?】
【『嘘』は吐いてないわよ。実際に一から建てるのは本当に知識と技術が足りてなかったし。けど、前世で寝泊まりする場所として親戚から提供されたのが
【マジでおまえの親戚連中、頭どうなってんだ!?】
【本当よねぇ。せめて電気水道ガスは通してほしかったわ……】
【そこじゃねぇよ!いや!そこもだけど!!】
第三者Side
【ん?】
「遊んでやるぞ、ランガとやら。アハハハ!!」
その頃、議事堂を飛び出たミリムは外で待機していたランガに近付いていた。
【ふむ。有無を言わせぬ構えですな…………しかし、我はリムル様とユカリ様に】
「遠慮するな、ペットは大好きなのだ。」
【は、はぁ……】
そうしてミリムはランガの背中を撫で始める。
「……よく覚えておらぬが………昔もこうして撫でてた気がするのだ。」ナデナデ
【いや。ですから…………我は今、待機中で………ヒゥッ!?】
(な、なんという手捌き………っ!?)
【ああ…………あああ…………っ!?】
(これが『魔王』……っ!!)
「ここか?ここか?ウリウリウリウリィ~!」
【あぁ~!?】
(このままでは………流される!溺れてしまう!!………り、リムル様ぁ~!ユカリ様ぁ~!!)
程なくしてミリムに完落ちするランガ。すると。
「浮気しましたね。」
【ふぁっ!?】
「ウフフフ……これはこれは……リムル様とユカリ様にご報告しなければ、ですね。」
ランガの視線の先にいた、にやけた表情のシオンはそう言いながら逃亡する。
【あぁ……っ!!】
「え~い!モフモフゥ~!!」
「くぅん……」
そんなシオンの後ろ姿を見つめながら冷や汗を流し始めるランガにミリムが頬擦りする。
「我が息子よ……強く生きるのだ……っ!!」
「ランガ……頑張って……っ!!」
そんな
ユカリSide
ドォォォォォンッ!!
リムルと町中を散策しているなか、大きな物音が聞こえたので行ってみると、建物の壁に大きくめり込んでいるゴブタと、近くで拳を構えていたミリムの姿が目に入る。
「あぁっ!どうした!?」
「
「ちょっ…………開口一番に何スか!?それ!!」
「おぉっ!ホブゴブリンにしてはタフだな!!」
「自分はただミリム様のことを思って、
いや、どうみてもそれが原因じゃない。
「町の皆を代表して自分が親切n」
ドコォォォォォォォンッ!!
言葉の途中でミリムに再び殴られたゴブタは再度壁にめり込む。
「……そうなのか?」
「「「「いやいやいやいや!!」」」」
「……ミリム。そろそろおやつが出来上がる頃じゃないかしら?」
「ハッ!?そうなのだ!行ってくるのだ!!」
ドォンッ!!
ミリムはそう言いながら、地面を破壊しながらシュナの元へとジャンプして向かっていった。
リムルSide
「……ミリムが動くだけで色々と壊れるわね……」スッ
ミリムがジャンプして行った後、ユカリはため息混じりにそう言いながら地面に入った亀裂に右掌を翳す。
パァァァ……
すると、地面が光り輝きながら、まるでアスファルト路面を
『大賢者』。これって……
『解。個体名『ユカリ=テンペスト』のユニークスキル『
マジか。彼奴、こんなことまで出来んのかよ。
『告。現状はまだ推察の域を出ませんが、個体名『ユカリ=テンペスト』の『
マジか……改めて彼奴が敵じゃなくて良かったと常々思うよ……
「さてと……起きなさい。ゴブタ。」
ガシャーンッ!!
「あ痛っ!?」
俺がそう思いながら見ているなか、地面の修復を終えたユカリはそう言いながらスキマから取り出した、回復薬入りの瓶をゴブタに叩きつけて回復させる。
……回復させてる筈なのに瓶に入れたまま叩きつけられたから痛そうだな……
「今から
「ちょっ、自分は殴られた被害者なんで」
「嫌なら別に良いわよ?その代わり、先程のミリムに対する
「喜んでお手伝いさせて貰うッス!!」
「よろしい。」
「………」
「……何かしら?リムル。」
「い、いや!何も!!」
「?」
もうこいつは裏処か表の盟主も任せても良いんじゃなかろうか……
ユカリSide
「うぅ……………人参………人参………生は嫌なのだ………ミッドレイ。火を通せ……………」
「どんな夢を見ているのよ。」トンテンカン♪トンテンカン♪
ゴブタと一緒に壁を修復した後、議事堂の応接室でシュナが作ったコーン蒸しパンを食べ終えそのまま眠ってしまっていたミリムの寝言にツッコミを入れながら、彼女が再び壊した扉を修復する。
「しっかし、シュナはよくミリムにハッキリとものを言えるな。一応ソレ、『魔王』だぞ?ヤバい級の。」
「まぁ、ソレだなんて失礼ですよ。確かにミリム様は無茶苦茶なところはありますが、きちんとお話すれば道理を通して下さる、聡明さも持ち合わせたお方です。だからこそ、リムル様とユカリ様もお友達になられたのでしょう?」
「一理あるわね。」トンテンカン♪トンテンカン♪
「物分かりは良いもんな。」
「だね。」
「……無茶しかしなくて、考えなしな
「へぇ………シュナ様と意外と苦労しているんですね。」
「ニャニャッ!?」
「何やってるんだ?貴様は……っ!?」
「……そうですね。」
絶対『無茶しかしなくて、考えなしな娘』ってシオンのことでしょ。
現に寝ているミリムに落書きしてるし。
因みに落書き自体はその後、ヤマメ作の『浄化』の魔法陣がデザインとして縫い付けられたタオルで綺麗に拭き取った。
「んで、何か言いたいことでもあるのか?」
「……実は私、ミリム様のことをあまり快く思えないのです……」
その後、扉を修復し終えた後、執務室にて、そう尋ねるリムルに対し、シオンは真剣な表情でそう言う。
「ほぅ……」
「おまえにしては珍しいな。」
「最初に来た時、何もできなかったことを気にしているのかしら?」
「……あの時、私にもっと“力”があれば……リムル様とユカリ様がミリム様のことで頭を悩ませることなど……っ!!」
まぁ、そこまで言う程悩んでないけどね。私は。
「確かに……現にユカリ様にご負担を掛けてしまっているしな。」
「私は別に気にしてないんだけどね。」
「なにより……リムル様に迷惑掛けちゃう系女子は私一人で十分なんです!他の誰にもこのポジションは譲りません!!」
「おい。」
あ。リムルに迷惑を掛けてる自覚は一応あるのね。
その後、シオンがリムルによって執務室から追い出されたのは言うまでもないわね。
第三者Side
「お?お~!」
「「「「わっ!?」」」」
「また会ったな!
「こ、これはミリム様…………っ!!」
「確か、ガビルだったか?凄いだろ!覚えているのだ!!」
「な、なんとっ!我輩の名を覚えて!えっへへへ…………っ!!」
「うむっ!おまえのような
その頃、再び外に散策しに出ていたミリムは今度はガビル達とばったり
「さっすがガビル様!!」
「あんた、大物だぜ!!」
「然り!!」
「「「ガ・ビ・ル!!ガ・ビ・ル!!」」」
「え?いやぁ~、ハハハハハ!!」
「ん?彼奴は確かクレイマンの…………」
ドカァァァンッ!!
「あああああっ!?」
そんななか、何かに気付いたミリムが駆け出すと同時に押ささったガビルはそのまま勢いで天高く吹き飛ばされる。
「「「ガビル様ぁーっ!?」」」
「羽出ない!?羽出ない!?焦ったら羽出ない!!?」
「ガビル様ぁーっ!!」
「こっちだ!!」
「南無三!!」
慌てふためきながら落ちてくるガビルを、ヤシチ達三人は受け止めようとする。
ビカッ!!
「「「あ。眩し。」」」
ドカァァァンッ!!
が、太陽の光に目をやられている間にガビルはそのまま建国記念碑に命中し、大きく破損させてしまうのだった。
トンテンカン♪トンテンカン♪
「この分なら今日は予定よりもう少し進めても良さそうだな。」
「そうですな。父王。」
「……おまえ達、片方は大分姿形が変わっているが、元は
夕方頃、そう話しながら建築に勤しむユウマとゲルドに対し、ミリムはそう話しかける。
「二人とも、それだけの“力”を持っていながら武功を上げようとは思わないのか?石塊を運ぶのが楽しいのか?」
二人が運んでいる資材を見ながら、ミリムは首を傾げながらそう尋ねる。
「……我らが望んだものはユカリ様とリムル様が叶えてくれた……」
「それに今は何かを造り、遺すことにやり甲斐を感じている……」
対するユウマとゲルドはそう言いながら、楽しそうに遊ぶハイオークやゴブリンの子ども達を見つめる。
「……これが今の我らの仕事です。」
「ふぅーん……よくわからないが……見ていても良いか?」
「どうぞ。」
その後、新築建築に従事する二人の様子を、ミリムは近くにある資材に腰を下ろして眺めていた。
リムルSide
「リムル様。今、少しよろしいでしょうか?」
「リグルド?どうかしたか?」
「今日までに纏めた、ミリム様による被害報告をさせて頂こうかと……」コトッ
「……リグルド………なんか怒ってる?」
「いえいえ。滅相もない。」
議事堂の執務室にて、そう尋ねる俺に対し、リグルドはそう返事をする。
う~ん、いつものリグルドと比べると、なんか怒ってる気がするんだが……
「え~と窓ガラスにドアノブ、食器その他…………ま、まぁ、
「実はそれは、今朝の分でして………こちらが(バァンッ!!)昼過ぎの被害報告です。」
「なぁ。リグルド………やっぱり怒ってる?」
「滅相もない。」
いや、絶対に怒ってるよな!?
木板の置き方がなんか強かったぞ!!
「ドア追加で五枚、中央通りで店舗の半壊二軒、建国記念碑破損。」
「……建てたばっかなのに……」
バァンッ!!
「げぇっ!?スナック『樹羅』の看板!?わ、わかった!俺達から言っとく!国の代表として、ミリムの友人として!ちょっと強めに……っ!!」
「そしてこれが……さっき届いた被害報告です。」
「やっぱり………怒ってる?」
「滅相もない。」
いやいや!絶対に怒ってるって!!
目力が半端なくヤバいって!!!
「と、ところでユカリが何処行ったか知らないか?さっきから姿が見えないんだけど……」
「ユカリ様でしたら、既に『樹羅』の看板の修理に向かっておりますが……」
「それ、先に言ってくれない!?」
完全に色々と出遅れてんじゃねぇかっ!?
「あら?リムル。看板なら今さっき直したわよ。」
その後、俺が慌てて『樹羅』に向かうと、既に修理を終えたユカリがそう言いながらハチマキを外しトンカチと一緒にスキマに閉まっていた。
「いやいや。修理に行く前に一言声を掛けてくれよ。完全に色々と出遅れてて気まずかったぞ。」
「あぁ、それはごめんなさいね。リムルには盟主としての仕事を優先して欲しかったのよ。」
「はぁ……ところでミリムは?」
「彼方で寝ておりますよ。」
「すぅ……すぅ……」
首を傾げながらそう尋ねる俺にそう答えるトレイニーさんが指差す先にはミヨイに毛布を掛けてもらって眠るミリムがいた。
「本当だ。『魔王』のくせに……」
「興奮して疲れたのですよ。真新しいものや多くの住人に囲まれてましたから。」
「子供かよ。」
「子供で良いんですよ。長い長い時間を生きるには、心を老いさせないことです。自由に生き、感情を昂らせ、退屈を嫌う………リムル様とユカリ様のお好きな生き方でしょう?」
「まぁ、そうね。」
「とはいえ、今は俺もユカリも国の盟主、裏盟主だからな。『自由』の前に『責任』って奴があるんだよ。」
「フフ……立派になられましたわね。リムル様、ユカリ様。」
「それじゃあ、私達はミリムを連れて帰るわね。」
「あ。ミリムは俺が背負うよ。ユカリには今日一日だけでも結構動いてもらったしな。」
「そう。それじゃあお願いするわ。リムル。」
「あぁ。今日の仕事に関しても何らかの形で返すから。」
「……えぇ、少し期待して待つことにするわ。」
こうして俺がミリムを背負い、ユカリと三人で帰路に着くことになった。
第三者Side
【ぐぬぬぬぬぬ……………っ!よもやこのような光景を観る羽目になろうとは……………っ!!】
「ミリム様は自由奔放な方ですね。寝落ちしておんぶされて帰宅とは……さしものヴェルドラ様も同じ
【当然であろう!こんな所に封印されておらなんだら、今すぐ引っ剥がして、叩き起こして、ゲンコツ食らわせて説教してやるわ!!】
その頃、リムルの『胃袋』内から様子を観ていたヴェルドラとイフリートはそう話をする。
【『そこは我の場所であろうがぁーっ!!』……………とな。】
「……おんぶ……………されたかったんですか?」
【ふふん。微笑ましい友情の図であろう?】
「シュールです。というか潰れてしま……いや……ユカリ様なら余裕かもしれませんね。」
【……我が言うのもなんだか、おまえのユカリに対する評価もなかなかズレてはおらぬか?】
ユカリに対して何処かズレた評価をしているイフリートに対し、ヴェルドラは何とも言えない雰囲気でそうツッコミを入れるのだった。
ユカリSide
「……リムルとユカリは……そんなにこの国が大切か?」
『樹羅』の看板を直し帰路に着くなか、リムルにおんぶされていたミリムがふとそう尋ねてくる。
「なんだ、聞いてたのか。」
「まぁ、0から初めて、1から作った国だからね。町も、住人達も皆、大切な『居場所』よ。」
きっと『幻想郷』を作った『紫様』もこんな気持ちだったんじゃないかしら。
「……怖くはないか?そんなに沢山の大切なものが……『繋がり』が一つでも失くなると思うと、ワタシは怖いのだ……」
私がそう思っているなか、ミリムは更に言葉を続ける。
「大切なものは何時だって弱く、呆気ない程に脆い……きっと後悔する。作ったことを後悔するのだ。その時、おまえ達は………
「寝てろよ。もう寝てろ。」
「………」
その後、客室に運んだ翌日、目を覚ましたミリムはこの時のことを覚えてはいなかった。
が、そう遠くない未来で私達は思い知ることになる。
このミリムの予言とも忠告とも取れる寝言が現実になってしまうことを。
ミリムが『魔王』に成るに至った哀しき『過去』のことを。
だが、この時の私達はまだ知る由もなかった。
ランの従魔(式神)(チェン以外)の数を干支に合わせた十二体に増やす
-
アリ
-
ナシ