転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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魔王の使者

ブルムンド王国Side

 

「魔物の町と、そこに棲む豚頭帝(オークロード)を凌ぐスライムと『スキマ妖怪』という新種の魔物の存在………」

 

「………」

 

「……この話は本当なのか?いや、本当であるのはわかってはいるが……」

 

ユカリ達が収穫していた頃、ブルムンド王国では大臣であるベルヤードが自由組合支部長(ギルドマスター)であるフューズと話し合っていた。

 

「だが、信じるしかないな。我らは彼らに救われたのだと……」

 

「……あぁ……今回の件だけでなく自由組合(ギルド)の『英雄』、シズ殿も命の危機に瀕していたところを救われたという報告も受けている………そんな彼らを今後善良な存在とみなし接するか、脅威とみなして排除を試みるか……」

 

「『排除』と簡単に言うが、そもそも可能なのか?」

 

「……正直に言っていいか?」

 

「……聞くまでもないな。」

 

「はぁ……俺が行くしかないか……」

 

フューズはため息混じりにそう言いながら立ち上がる。

 

「俺がこの目で直接見極めてやるさ……その『リムル』というスライムと『ユカリ』というスキマ妖怪をな……」

 

「……よろしく頼む……」

 

翌日・・・

 

「よし。行くぞ……おまえ達が会ったというスライムとスキマ妖怪に会いにな……」

 

「「「はぁ……」」」

 

そう言うフューズの言葉に思わずため息を溢すカバル、エレン、ギドの三人なのだった。

 

第三者Side

 

「クロベエ、コガサ。今、良いかしら?」

 

収穫を終え、秋姉妹も仲間として喚び出してから数日後、ユカリはそう言いながら二人の工房に訪れる。

 

尚、リムルはカイジンを連れて完全回復薬(フルポーション)の生成に成功したというベスターの元へ、ミリムはシュナとヤマメの製作工房に行っている。

 

「あ!ユカリ様!!」

 

「これはユカリ様……もしかして、例のブツのことだべか?」

 

「えぇ。無事に出来たかしら?」

 

「んだ。カイジン殿やニトリにも手伝ってもらって今朝方、無事に仕上げることが出来ただ……コガサ。」

 

「はい!少々お待ち下さい!!」

 

クロベエに言われたコガサはそう言いながら奥に引っ込んだかと思えば、すぐに戻ってくる。

 

「どうぞ!ユカリ様から依頼を受け、戦闘用に改造することに成功した日傘と扇子です!!」

 

コガサはそう言いながら布地は朱色、シャフトと骨組み、ハンドルは臙脂(えんじ)色で石突きは紅い魔昌石が埋め込まれた日傘親骨と中骨、要は蒼で開いて出てくる扇面には漆黒に蒼い満月が描かれた扇子をユカリに手渡す。

 

「うん。どっちも良い感じね。」

 

「名前も日傘の方は『紅陽(コウヨウ)』、扇子の方は『蒼月(ソウゲツ)』と付けさせてもらっただ。」

 

「骨等はどちらも勿論魔鋼製、布地に関してもどちらも糸状に加工した魔鋼とヤマメさんの糸を編み込んで作った特別なものを使ったので強度は間違いなく以前(まえ)の何十倍にも引き上げることに成功しています。」

 

「なるほど……それは嬉しい成果ね。」

 

「強度以外にも戦闘で役立ちそうな機能も可能な限り、付け加えることができただよ。」

 

「勿論、普通の日傘と扇子として普段使いもできます!!」

 

「なるほど……」

 

「んで、具体的にどんな機能を付け加えたかと言うとだなーーー」

 

ユカリSide

 

「やっぱり日傘があると落ち着くわね……」

 

あの後、二人から具体的な機能について、説明を受けた私はそう言いながら、日傘…紅陽を差しながら町中を練り歩く。

 

「………」

 

歩きながら改めて紅陽と蒼月を見つめる。

 

原作のものから大分様変わりしたけどこの世界(こっち)は色々と物騒だし、流石に天災級(ミリムクラス)はそうそういないだろうけど、何れ魔王(レオン)と事を構えるならそうも言ってられないわね。

 

「!?」

 

そんななか、町中に新たに入り込んだ四人の反応を『霊能者(サイキック)』がキャッチする。

 

オオカミ霊(うちの子)達やソウエイ達からは事前の報告は上がってこなかった……どうやら今回の『お客』は彼らの監視網を掻い潜る程度には腕が立つみたいね。それにこの感じは……

 

「魔物というより魔人……かしらね。」

 

クパァ

 

私はそう言いながらスキマを開き、反応があった方へと向かう。

 

すると、広場に見覚えのない四人の魔人がいて、リグルドが対応しようとしている現場に出会す。

 

「「!?」」

 

「!?空間の裂け目から……っ!?」

 

「ユカリ様……」

 

「下がりなさい、リグルド。ここは私が対応するわ。」

 

「ハッ。どうかお気を付けて……」

 

「……おまえがこの町の代表か?」

 

リグルドを一旦下がらせるなか、恐らく四人の中のリーダー格であろう黒髪に褐色肌、豹のような両腕に尻尾、軽鎧を着た痩せ型な体型の青年がそう尋ねてくる。

 

「正確には『裏の』代表ね。表の代表は相方に任せてるわ。」

 

「ほぅ……」

 

よく見ると、他の三人も各々に動物の特徴がある……獣人(ライカンスローブ)ってやつかしら?

 

「それで?貴方達は何処の何方かしら?うちの監視網を掻い潜って入り込んでおきながら、こう大勢の目がある広場に堂々と姿を曝してる以上、流石に名乗る気はあるわよね?」

 

仮に『魔国連邦(わたしたち)』に対する攻撃目的なら既に行動を起こしてる筈……そうしなかったということは少なくとも、以前のガゼル王やミリムのように何らかの目的はある筈……

 

「俺は魔王カリオン様の配下、『三獣士』の一人、『“黒豹牙”のフォビオ』。『獣王戦士団』の中でも最強の戦士だ。」

 

私がそう分析しているなか、リーダー格の青年…フォビオはそう名乗る。

 

やっぱり他の『魔王』も動き出したみたいね。

 

「……ユカリ=テンペスト。この『ジュラの大森林』の『裏盟主』であり賢者でもあるスキマ妖怪よ。」

 

「スキマ妖怪?聞いたことねぇが……まぁいい……」

 

フォビオはそう言いながら、改めて町中を見渡す。

 

「……良い町だな、此処は。カリオン様が支配するに相応しい。そうは思わんか?」

 

「……寝言は寝てから言ってくれないかしら?」

 

私がそう言った瞬間、フォビオが炎を纏わせた右拳で殴りかかってくる。

 

ガキィィィンッ!!

 

「危ないわね……」

 

「!?」

 

が、私はそう言いながら、取り出し開いた蒼月でフォビオの拳を受け止める。

 

良い機会だし、このまま蒼月と紅陽の試運転に付き合ってもらおうかしら。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ッ!!

 

「!?」

 

そんなことを思っているなか、背後からとてつもない妖気(オーラ)を感じ取る。

 

「………」

 

振り返ると、民衆に混じってブチギレてるミリムが目に入る。

 

「!?なっ!?魔王ミリム……っ!?」

 

「死なないようにお願いね。」

 

ドォンッ!!

 

ミリムの存在に気付いたフォビオがそう困惑の声を上げるなか、私がそう言いながらフォビオから離れると同時にミリムがフォビオに向かって飛び出す。

 

「くっ……『豹牙爆炎掌』!!」

 

「ワタシの親友(マブダチ)に何するのだぁぁぁぁぁっ!!」

 

ドカァァァァァンッ!!

 

次の瞬間、フォビオが咄嗟に繰り出した技とミリムの覇気を込めた拳がぶつかり合い、爆発が起きる。

 

ミリムが手加減してくれていたことと直前に私が二人を囲うように展開した結界により、爆発は町に被害を出すことなく空へと立ち上る火柱となり程なく鎮火する。

 

「ユカリ様!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ラン、ミズチ。えぇ、私と町は一先ず大丈夫よ。」

 

慌てて駆けつけてきた二人に私はそう言いながら恐らく殴られたのだろう、泡吹いて気絶しているフォビオと周りであたふたしている仲間の獣人達、彼らの前で仁王立ちしているミリムを見つめる。

 

「申し訳ありません。ユカリ様。」

 

「侵入者の存在に気付いたミリム様が飛び出しちゃって、止める間もなく……」

 

そんななか、民衆の中から遅れてきたシュナとヤマメがそう説明する。

 

まぁ、本気のミリムを止めるのは彼女が懐いている二人でも無理でしょうね。

 

そんなことを思っているなか、今度はリムルがソウエイと共に駆けつけてくる。

 

「ユカリ!大丈夫…ってどういう状況だ!?これ!!」

 

「おぉ~!リムルよ!!こやつがユカリに嘗めた真似しおったから、ワタシがお仕置きしてやったのだ!!」

 

「はぁ……とりあえず彼らを議事堂に運びましょう。何があったかは道中で話すわ。」

 

「お、おう……」

 

リムルSide

 

「で?君達は何しに来たんだ?」

 

あの後、ユカリから大体の経緯の説明を聞きながら議事堂まで運んだ後、応接室にて俺は回復させたフォビオを始めとする四人の獣人達にそう尋ねる。

 

「あーむ♪美味しいのだぁ~。」

 

因みにミリムは部屋の隅っこで昼食のサンドイッチを食べている。

 

フォビオを殴ったことは一応ユカリやリグルドを想っての行動だったので、昼食(ひるめし)抜きは免除することにしたのだ。

 

「ふんっ!下等なスライムに答える義理はないな。」

 

「「「「「「あ"?」」」」」」

 

「落ち着きなさい、貴方達。」

 

「今、コイツの相手をしているのは俺とユカリだ。」

 

フォビオの態度にリグルドとベニマル、シオンとカセン、ランとミズチの六人がキレかけるが、ユカリと俺がそう言って諌める。

 

「ハッ。」

 

「申し訳ございません。」

 

「ハッ!俺の拳を受け止めたそこの女はともかく、おまえらは下等なスライムにも従ってんのか?雑魚ばかりだと大変だな。ミリム様に気に入られてるからって調子に乗るなよ。」

 

「おい。フォビオとやら。リムルをバカにするなら」

 

「ミリム。気持ちはありがたいけど今は落ち着いて。後でサツマイモを使ったスィーツ作ってあげるから。」

 

「む?そうか?わかったぞ。ユカリ。」

 

「……俺を『下等』と見下しているが、少なくともおまえよりは強いぞ。勿論、ユカリもな。」

 

「リムルがスライムなのは確かだけど、私と共に森の三割を支配下に置いてるのも事実よ。」

 

「こうして使者を任されてる以上、おまえ自身、それなりに高い地位にいるんだろ?魔王カリオンからの信頼もあるようだし……」

 

「そんな貴方の態度次第では魔王カリオンはこの『ジュラの大森林』の全てを敵に回すことになる。」

 

「よく考えて発言することだな。」

 

「チッ!スライム風情が吹かしやがっ!?」

 

フォビオの言葉の最中、彼の近くに出現した小さなスキマから伸びた右手に握られた扇子が首もとに添えられる。

 

その異様な光景と扇子に纏われている『闘気』にフォビオと周りの獣人達は言葉を失う。

 

「ユカリ。」

 

「別にちょっと脅かしただけで殺る気はなかったわよ。」

 

俺の声かけにユカリは胡散臭い笑顔でそう言いながら、クロベエとコガサに強化改造された扇子…蒼月を隠すように組んでいた腕組みを解きながら、スキマを通してフォビオの首に添えられていた蒼月を引き抜き、そのまま流れるように自身の口元へと持っていく。

 

たくっ……何時でもフォビオの首を落とせるくらいの『闘気』を纏わせといてよく言うよ……

 

「話を遮って悪かったな。とにかく俺達の言ってることは全て事実だ。なんなら此処に樹妖精(ドライアド)を呼んで証明してみせようか?」

 

「フォビオ様……」

 

「……チッ。豚頭帝(オークロード)を倒した謎の魔人共をスカウトするよう、カリオン様から命じられてきたんだ。」

 

先程の脅しが効いたのか、フォビオは冷や汗を流しながら、ユカリの方をチラチラと見ながらそう答える。

 

「ほぅ……それは俺達のことだな。」

 

【どうやら『豚頭帝異変(あの戦い)』を観ていた『魔王』はミリムの他にもいたみたいね。】

 

【だな。】

 

「事情はわかった。」

 

「それじゃあ、もう帰って良いわよ。」

 

「はぁ?」

 

「ユカリ様、リムル様。」

 

「よろしいのですか?」

 

「殺す訳にはいかないわ。後々が面倒だから……」

 

「おまえなぁ……とりあえず魔王カリオンに伝えろ。『交渉したいなら、日程を改めてくれ』ってな。」

 

「ッ………」

 

ガタッ!!

 

俺がそう言うと、フォビオは不満を隠すことなく立ち上がり、扉の方へと向かっていく。

 

「……きっと後悔させてやる…」

 

出ていく直前、フォビオはミリムとユカリを一瞥してから、そう言いながら仲間達と共に退出していく。

 

あの様子じゃ伝言は難しそうだな。

 

【アレ、どうみても人選ミスよね?】

 

だな。魔王カリオンに対する忠誠心は本物だろうけど、交渉を任せるには脳筋過ぎる……

 

「まぁ、とりあえず……」

 

「魔王カリオンについて、知ってること、洗いざらい話してもらいましょうか。ミリム。」

 

「む。それは二人にも話せないぞ。リムル、ユカリよ。互いに邪魔はしないという約束なのだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

 

「今、秘密があると自白してるわよ。ミリム。」

 

「ハッ!?しまったのだ!?」

 

「ほほぅ……それは魔王カリオンとだけの約束なのかなぁ?」

 

「それとも、他にも秘密(悪巧み)に加わった『魔王』がいるのかしら?」

 

「うぅ……それは……」

 

「大丈夫だって。魔王カリオンだって部下を使ってこうして邪魔してきた訳だし。俺達は親友(マブダチ)だから助けるじゃん?だったら、俺達も『約束』の内容を知っておいた方が良いと思うんだよね。」

 

「そうね。知らなきゃ私達がうっかり邪魔しちゃうかもしれないし……」

 

「うっ……確かに……でも、約束……でも、親友(マブダチ)……」

 

「そうだ!正直に話してくれたら今度、ミリムの武器をプレゼントするよ!!ミリムのことが心配だからさ!!」

 

「!?本当か!?やはり親友(マブダチ)は大事なのだ!!」

 

チョロい。あまりにもチョロい。

 

ユカリSide

 

「なるほど……ミリムや魔王カリオンを含む五人の『魔王』が自分達の傀儡となる新しい『魔王』の誕生を目論んだと……」

 

「退屈しのぎだったのだ。」

 

「まぁ、ミリムからしたらそうでしょうけど……これ、私達が『魔王』達の計画を邪魔したってことになるわよね?」

 

「ですね。間違いなく他の『魔王』も干渉してくるかと……」

 

「なんてこと……至急トレイニー様にも相談せねば。」

 

「それで?他の三人についても教えてもらえるかしら?」

 

「ん~と、計画の発案者であるゲルミュッドを擁していた魔王クレイマンにワタシが途中から誘った魔王フレイ、それから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王ザンムだぞ!!

 

……え?

 

「?魔王ザンム?」

 

「今の『11大魔王』の中でも一番の新参者で『ジュラの大森林』と隣接している新興国家『ヘルズガーデン』を治めている女王なのだ。」

 

「そいつの特徴は?」

 

「ん~と、紫に近い前髪を中分けにした黒髪にシュナやヤマメ達が作っている服と似た格好をした、シオン(一本角)達のような角を持つ魔人なのだ。ワタシ達は最初、妖鬼(オニ)かと思ったが本人は自分を『元人間の僧の人鬼』だと言っていたな。」

 

「!?元人間の人鬼……」

 

まさか、『彼女』が……?

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