第三者Side
西側諸国の玄関口と言われる商業の大国、『ファルムス王国』。領土の一部が『ジュラの大森林』と接しているその国は『
「!」
森の中を先頭に立って歩くヨウムが何かに気付き、その足を止める。
「………」スッ
そんなヨウムの様子に気付いた眼鏡の少年が合図を送り、他の者達も足を止める。
ドドドドドドド……ッ!!
「……カシラ。」
「シッ。」
程なくして聞こえてきた地響きに声をかけるスキンヘッドの男、カジルに短くそう言いながらヨウムは抜刀し構える。
他の者達も各々の得物を手に警戒を強める。
「ちょっ!ヤバいでやんす!?」
「でも、でも………っ!!」
「おい、おまえら………ってうおっ!?危ねぇっ!!?」
「こんな出鱈目でよく生き延びてきたな、貴様ら!!」
「………」
そんななか、ヨウムは自身のスキル『遠視』を使い、フューズ達を見つける。
「…………どうやら魔物と遭遇した人間達がいるらしい。」
「どうしやす?カシラ。」
「見捨てるのは気分が悪い………あっ……」
ガサッ!!
「お邪魔しまぁ~す……」
「お世話になるでやんす……」
カジルとそう話しているなか、茂みの中からそう言うエレンとギドがそう言いながらこちらに飛び出してきて、後からカバルとフューズも飛び出してくる。
「ッ……来るぞ……っ!!」
ドカァァァンッ!!
「「キシャアアアァァァーーーッ!!」」
ヨウムがそう言った直後、森の奥から巨大な蜘蛛が現れる。
「ヒッ!?」
「!?
巨大な蜘蛛、
「よぉーし。おまえら、陣形を組め。負傷者はすぐに下がらせて回復。」
そんななか、ヨウムは冷静に指示を出し、部下達は護衛の魔法使い達を囲むように陣形を組む。
「命令だ………全員、生き残れっ!!」
「「「おうっ!!」」」
「カジル。指揮を取ってくれ。」
「わかった。」
「ロンメル。俺に強化魔法を。」
「フッ!!」
パァァァ……ッ!!
ロンメルによってヨウムに強化魔法が掛けられる。
「おい。おまえら、巻き込んだ落とし前……後できっちり着けてもらうからな……っ!!」
「「「「ッ!!」」」」
ヨウムはそう言いながら剣を構え、フューズや調査団員達も各々の得物を構える。
「あれ?カバルさん達じゃないッスか?」
「お久しぶりです。」
「!?ゴブタ君!?」
「ヌエちゃんも久しぶり!!」
そんななか、近くを巡回していたゴブタとヌエがその場に出会す。
「
「冒険者って戦うのが好きなんスか?」
「い、いやぁ……」
「「「………」」」
槍脚鎧蜘蛛を見ながらそう言うヌエとゴブタにカバルが苦笑いしながらそう答えるなか、エレンとギド、フューズの三人はジト目でカバルを見る。
まぁ、実際は彼が槍脚鎧蜘蛛の巣をつついたのが原因でこうなっているのだが……
「だけど、ここはオイラが……っ!!」
「………」スッ
ゴブタは得意げにそう言いながら雹切丸を引き抜き構えるなか、ヌエも一枚の『スペルカード』を取り出す。
「今日の晩御飯ッス!!黒符『
「スペルカード!正体不明『赤マントと青マント』!!」
フューズSide
「「「「「………」」」」」
「……嘘……だろ……」
目の前に広がる光景に偶々居合わせた謎の集団とそのリーダー格の男は言葉を失う。
当然だ。最近、確認された新種の魔物とされる
もう一体もカバル達から『ヌエ』と呼ばれた
「………」
改めて二人に倒された二体の槍脚鎧蜘蛛の遺骸を観察する。
ホブゴブリン…『ゴブタ』だったか。彼が使った技は見事なものだった。
目の前に球体状の黒い稲妻を生成したかと思えば、それを刀身を凍らせた小太刀で突いた瞬間、そこから黒雷を帯びた雹が無数の光線のように放たれ、槍脚鎧蜘蛛の八本の脚全てを関節から焼き切ってみせた。
しかもただ焼き切っただけじゃない。断面は凍りついており、仮に『自己再生』を持っていたとしてもこれでは再生も難しいだろう。
もう一体の方はスキルによるものか、『ヌエ』嬢がナイフ状に変化させて飛ばした赤い羽根と青い羽根に急所や関節を突き刺されて絶命している。
槍脚鎧蜘蛛の頑強さでこれじゃあ、
「
「蟹みたいな味がしますね。」
食うのか!?
「それで今日はどうしたんスか?」
「知らない方々が大勢いますが……」
「あ、あぁ、私は」
クパァ
「片目に傷があるのはカバル達の上司。それ以外は『ブルムンド王国』とは別の『ファルムス王国』から派遣された調査団よ。」
「うおっ!?」
「空間の裂け目から!?」
首を傾げるゴブタ君とヌエ嬢に名乗ろうとした瞬間、突然出現した『奥から無数の目が覗き込む』奇怪な空間の裂け目から先端に紅い魔昌石が埋め込まれた朱い日傘を差した、変わった格好をした金髪の少女がそう言いながら現れる。
「ユカリの姉御!!」
「ユカリさん!!久しぶり!!」
「えぇ。三人とも、元気そうね。」
「あれ?ユカリの姉さん、服と日傘が
「色々あってね」
バキキキ……ッ!!
「「「「キシャアアアァァァーーーッ!!」」」」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
「!?なっ!?」
新たな槍脚鎧蜘蛛!?しかも今度は四体だと……っ!!?
「ゴブタとヌエはカバル達やその他を護衛しなさい。
「は、はいッス!!」
「了解しました。」
新たに出現した四体の槍脚鎧蜘蛛に思わず固まるなか、金髪の少女…ユカリ嬢はゴブタ君とヌエ嬢に指示しながら、折り畳んだ日傘と蒼い扇子を手に一歩前に出る。
「!?おい!嬢ちゃん」
「………」バサッ!!
『ファルムス王国』からの調査団のリーダー格の男が思わず声を掛けるなか、ユカリ嬢は右腕を上げながら手にしていた扇子を開く。
パァァァ……
その際、露になった漆黒に蒼い満月が描かれた扇面に蒼い光が宿る。
「………」スッ
ズババババァァァンッ!!
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
ユカリ嬢が舞を舞うかのようにそれを軽やかに振るった瞬間、扇子から『蒼い光の刃』が放たれ、四体の槍脚鎧蜘蛛の首を落としてみせる。
「………」
コォォォ……ッ!!ブン……ッ!!
我々や調査団がその光景に再び固まるなか、突如、ユカリ嬢の日傘が高温を発しながら朱く発光し、ユカリ嬢がそれを
ズバァァァァァンッ!!ド……ッ!!
「「「「「「「「え……っ!?」」」」」」」」
すると何処からか切断された、槍脚鎧蜘蛛達のものよりも大きく先が剣のように鋭利な銀の節足が一本現れ転がっていく。
ジジジ……
「ギシャアアアァァァーーーッ!?」
「!?『
次の瞬間、カメレオンの擬態が解けるように現れた、槍脚鎧蜘蛛よりも一回りも大きく、鏡のように磨かれた銀の体表を持つ蜘蛛…『
まさか、擬態能力を持つ上位個体も潜んでいたとは……っ!!
というか、ユカリ嬢は剣脚鏡面鎧蜘蛛の存在にも気付いていたのかっ!?
「………」スッ
周りが騒然とするなか、ユカリ嬢は剣脚鏡面鎧蜘蛛の頭に向けて日傘を構える。
「『クリムゾンスパーク』。」
ズガアアアァァァーーーンッ!!
次の瞬間、日傘の先端に埋め込まれていた魔昌石から『紅くて太い光線』が放たれ、剣脚鏡面鎧蜘蛛の頭を吹き飛ばす。
ズズゥ………ン……ッ!!
「……うん。昨日、できなかった蒼月と紅陽の試運転としては上出来ね。」
「嘘……だろ……」
「槍脚鎧蜘蛛四体とその上位個体一体をほぼ瞬殺するなんて……」
「なぁ……ユカリの姉御……
「っていうか扇子と日傘がヤバいでやんす……」
「凄い……」
「これが『魔物の町』の主の片割れか……」
「流石ッス!ユカリ様!!」
「お見事です。」
「さてと……」パチンッ!!
クパァ
「「「「「!?」」」」」
ユカリ嬢が指パッチンした次の瞬間、先程の裂け目が槍脚鎧蜘蛛達の遺骸を一瞬にして呑み込む。
「今から歩いて町に向かうのと私のスキマで一瞬で町に着く……どっちが良いかしら?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」