リムルSide
「えぇ~、俺がこの町っていうか国っていうか……『ジュラ・テンペスト連邦国』の代表をしているリムル=テンペストだ。」
「『裏の』代表のユカリ=テンペストよ。」
森から帰ってきたユカリやゴブタ達が連れてきたカバル達三人とその上司である
他の調査団の面子は町の方でゴブタやユカリ達が狩ってきた槍脚鎧蜘蛛の鍋パーティーを堪能してもらっている。
「本当にスライムが……っ!?」
「ところでリムルの旦那にユカリの姉御。以前は見掛けなかった方々もおられるみたいですが……」
「あぁ、ベニマルにシオン、ソウエイにシュナ。」
「カセンとユウマ、ユウギにスイカよ。」
「それで?そちらのフューズさんは俺とユカリに会うために来たんだよな?」
「え、えぇ。今から」
「つうかさ……なんでスライムが喋って偉そうにしてんだよ?」
フューズさんの言葉を遮りながら、調査団のリーダー格の男が指摘しだす。
「だってスライムだぞ?喋るだけでもおかしいのになんでそれが偉そうな態度してんだ!?後ろにいる奴らの方が強そうだし!普通に隣にいる槍脚鎧蜘蛛四体と上位個体一体を瞬殺した金髪美女の方が明らかにヤバくて強いだろうが!!つか、裏の代表って何だよ!?あんたが表やれよ!!」
ごもっとも。特に最後のは常々そう思う。
「リムル様とユカリ様に失礼ですよ。」
「うっさい!おっぱい!!」
「「あ。」」
ドカァァァンッ!!
「がふっ!?」
次の瞬間、シオンが納刀状態の剛力丸で思いきりリーダー格の男を殴りつける。
「ヨウムゥーッ!!」
「カシラ!!」
「……シオン……」
「あっ。つい……」
「ついって貴女ね……はぁ……」
ユカリは呆れながらリーダー格の男…ヨウムに軽い回復術をかける。
「………」←回復中
「いや、すまんな。俺の秘書は我慢強くないんだ。」
「酷いです、リムル様。これでも忍耐力には定評があるんですよ。」
「貴女の『定評のある忍耐力』というのは頑強さとかタフさの方でしょ。」
「うっ……」
「え~と、続けてくれ。」
「は、はぁ……今から
ふむ、シズさんのことだな。
「と言われても、俺はシズさんから分離させたイフリートを喰っただけだからな。最終的にシズさんを救ったのはユカリみたいなもんだし。」
「は?喰った?」
「私はシズを見守っていた背後霊のピリノから受けた依頼を遂行しただけよ。お礼なら妖怪化した上でシズと一体化して支えることを決めたピリノ…ツカサに言って頂戴な。」
「「背後霊?」」
「は、はぁ……してシズ殿は今、どちらに……?」
「そうね……そろそろ来る頃じゃないかしら。」
ガチャッ!!
所々、引っ掛かりを覚えるファルムス王国組を他所にそう尋ねるフューズさんにユカリが紅茶を飲みながらそう答えた瞬間、シズさんと分身体のツカサ、それとミリムの三人が入ってくる。
「(ガタッ!!)シズ殿!!」
「シズさん!久しぶり!!」
「フューズさんにエレン!!」
「カバルにギドも久しぶり!!」
「おう!ツカサの嬢ちゃんも元気そうでなにより!!」
「ところでお二人と一緒に入ってきた子は誰でやんす?」
「あぁ、彼女はミリム。つい最近、この町の宿で暮らし始めた子よ。」
「ミリム?……まさか、魔王ミリム!?まさか、本当に……っ!!?」
「まぁ、そのことについては後で説明するとして、話の続きを。」
「は、はぁ……数ヶ月前、『ブルムンド王国』に
うん。ソウエイはちゃんと俺達からの伝言を伝えてくれたみたいだな。
「念のため、
「なるほど……ガゼル王とだいたいの目的は一緒ってことか。」
「そうね。」
「!?ガゼル王……まさか、来たのですか?この町に!?」
「えぇ。私達を見極めると言ってね。実際に一騎討ちとかしたのはリムルだけだけど。」
「それでフューズさん。俺達は人間とも貿易したいと考えている。」
「は?」
「この国を経由すれば、商人達の利便性も向上すると思うんだけど、どうかな?」
「いや、どうかなと言われましても……」
「実は既にドワルゴンとは国交を結んでいるんだ。」
「はぁっ!?」
「とても良い取引関係を築けているわ。」
「まっ、待って下さい!!ドワルゴンがこの魔物の国を承認したということですか!?」
ガチャッ!!
「その話は私が保証します。」
「!?ベスター大臣!」
【一応証人として呼んでおいたわよ、リムル。】
【ナイス。ユカリ。】
「……元、大臣です。」
「貴方程の方が何故、ここに……っ!?」
「色々ありまして……ガゼル王はリムル様とユカリ様と盟約を交わし、私はカイジン殿と共にこの国の研究者兼技術者として働かせて頂いております。」
「あの伝説の鍛冶師まで……っ!?」
「態々来てくれてありがとう、ベスター。」
「いえ。それと回復薬の売り方について、ご相談があるのですが……」
「あぁ、それは後で良いかしら?もう少し時間がかかりそうだから……」
「わかりました。では、
ベスターはそう言いながら退室する。
「……ということなので納得頂けたかな?」
「はぁ……わかりました……そういうことでしたら、『
「あぁ。滞在を許可する。先ずは俺達が本当に無害な存在だということをしっかりと理解してほしいからな。」
「さてと、次は貴方達ね。」
「「「………」」」
フューズ達の
「あんたらも
「はい。何故、知られてるのかはわかりませんが正直、
首を傾げながらそう尋ねる俺に対し、(俺達から見て)ヨウムの左隣に座っている眼鏡の少年がそう答える。
まぁ、ユカリは俺以上にソウエイ達隠密に指示出したり、配下にいるオオカミ霊達も偵察させてたりしてるからそこら辺から情報を得ていたんだろうな。
「先ずは自己紹介から……」
「………」
「……隣にいるのが調査団の団長、ヨウム。その隣にいるのが補佐役のカジルさん。で、僕はお目付け役のロンメルと言います。」
お目付け役?
「この町に来たのは単なる成り行きだったんですが、先程も言ったように調査対象の
眼鏡の少年、ロンメルの『お目付け役』という単語に首を傾げるなか、ロンメルは続けて自分達の身の上話をしてくる。
正規の部隊じゃないってことか……どうりでガラの悪い人達だと思った……っていうか
「よく逃げ出さなかったな?」
「そうね。森に入って調査するフリだけして、そのまま他所の町なり国なりに亡命すれば良かったじゃない。」
「ははは……そのために僕がお目付け役を命じられました。『契約魔法』という相手を強制的に従わせる魔法が使えまして……それで縛るんです。」
うわぁ……なんてブラック……『お目付け役』ってそういうことか。
「ッ……」
元は召還者であるシズさんも昔のことを思い出したのか、僅かに顔を歪める。
「まぁ、もうその魔法は解いちゃったんですけどね。」
「「「え?」」」
そんななか、笑いながらそう言うロンメルの言葉に俺とユカリ、シズさんの三人は思わずそう呆けた声を上げる。
「えーと、ロンメルはお目付け役なのよね?」
「そうでしたよ?でも、今はこのヨウムについていくと決めたので。」
首を傾げながらそう尋ねるユカリに対し、ロンメルは笑顔でヨウムを見ながらそう答える。
なんか憧れの選手を見る少年の目をしている……
「それならなおのこと、なんで逃げようとしなかったんだ?」
「ここまで聞く限りだと、報酬を奮発する処かまともに支払いすらしないタイプでしょ。
「ああ?んなことはわかってるよ……」
首を傾げながらそう尋ねる俺とユカリに対し、ヨウムはそう言いながら両手を頭の後ろに回し、両足をテーブルの上に投げ出しながら組む。
「
あれ?
「あそこにゃ説教がうるせぇジジイや酒場のお節介焼きなババア、後を付いて回るうぜぇガキ共だっているんだ。」
「「………」」
……こいつ、言葉遣いや態度は
「勘違いすんなよ。あいつらに死なれたら寝覚めが悪いと思っただけだ。」
実は結構良い奴じゃないか?
「まぁ、あのタヌキ伯爵の慌てふためく姿は見てみたいけどな……ロンメルから聞いた話じゃあの野郎、本来なら町の防衛の強化に充てるべき国からの援助金にまで手を付けてやがったんだぞ。」
「つまり、何の対策もしていないところで
「そもそもがだ。こんな危険極まりない任務にロンメルみたいな若僧を送り込むか?普通。もっと熟練の魔法使いの一人や二人、抱えてるだろ……結果さえわかればいいって魂胆が見え見えなんだよ。」
「なるほどな……」
【つまり、彼らは
【ロンメルがヨウムについていこうって気になるのも当然ね。】
ユカリSide
「あぁ、そういえば、巻き込まれた形とはいえカバル達を助けようとしてくれてありがとう。」
「そうなのか?それはありがとうな。友人として礼を言うよ。」
「いや。別に大したことしてねぇよ。ただ団長らしく仲間に指示出して剣を構えただけで実際、何もできなかったからな……こいつらが助かったのはあんたの相方の嬢ちゃんとあの変な二人組のおかげだ。」
カバル達を助けようとしてくれたことについて、改めてそうお礼を言う私とリムルに対し、ヨウムはそう返事をする。
変な二人組ってゴブタとヌエのことかしら?
それに大したことはしてないって言っても
ロンメルに強化魔法をかけてもらっていたからとはいえ一番危険な最前線に自らが立とうとする漢気もある。
『ファルムス王国』からの調査団はざっと数えて三十人。それも荒くれ者達で構成された彼らを纏め上げる程のカリスマ性も持っている。
実際の戦闘の腕前は見れてないけど、剣の構え方から見て実力は低くない筈……
きちんとした装備を渡されていたなら、私達が手を出さずとも槍脚鎧蜘蛛を討伐できていた可能性も0じゃない。
調子にも乗らないし、顔も悪くない。なにより良い奴……
「……フューズさんとやら。」
「はい?」
「さっきの
私がそう思いながらヨウムを観察しているなか、リムルがそう尋ねる。
「いえ。ソウエイ殿が報せに来た時、その場に居合わせたのは私と横にいる三人……後はブルムンドの国王と一部の大臣にしか報せず、まだ一般には発表されていません。」
「そうか……」
「あらあらぁ~、それは実に好都合ね。」
「だな。」
「という訳でヨウム君。」
「ん?」
「貴方、『英雄』になる気はないかしら?」