ヨウムSide
「お兄さん、リムル様とユカリ様のお客様でしょ?良かったらこれ、どーぞ♪」
議事堂って所から出て町中を歩いてると、毛皮の帽子を被っているゴブリナの少女が笑顔でそう言いながら串焼き肉を手渡してくる。
「……良いのかよ?」
「うん。今日は槍脚鎧蜘蛛の鍋パーティーだから、串焼き肉が余りそうなんだよねぇ~。」
「………」
手渡された串焼き肉を見る。
塩と胡椒が振りかけられてるのか、良い匂いがしてくる。
(まぁ、変な味がしたら、すぐに吐き出)
そう思いながら受け取った串焼き肉を
「!?うっめえぇぇぇっ!!」
口の中に広がる絶妙な焼き加減に塩と胡椒の効いた肉の旨みに思わず声を上げちまう。
「でしょう?リムル様とユカリ様のお墨付きなんだ♪」
「味付けはユカリ様が教えてくれたんだけどな。」
ユカリっていうとあの『スキマ妖怪』とかよくわからん金髪美女のことだよな。
「……なぁ。リムル……さんと、ユカリ……さんの二人はどんな人(?)達なんだ?」
笑顔でそう言うゴブリナの少女と串焼き肉を焼いている大柄な体格のホブゴブリンに対し、俺はそう尋ねる。
「うーん……なんていうかリムル様は……大きな方、かな。見た目は小さくて可愛らしいんだけどね♪」
確かに……小さくて可愛らしくはあるな……
「ユカリ様は……いつも冷たい雰囲気で厳しいことを言うけど、常に町の皆のことを考えてくれていて、何かあればスキマですぐに駆けつけて解決してくれる……強くて優しい人かな!!」
スキマっていうのはあの不気味な裂け目のことか?確かにアレを使えば、どんなに遠くてもすぐに駆けつけることができるな。
強さに至っては槍脚鎧蜘蛛四体と上位個体一体を瞬殺したあの戦闘力ははっきり言って化け物だろ。
「あ!でも、たまに優しく笑う時があるんだよねぇ……それが
「………」
ドカッ!!
「!?いってぇっ!?」
笑顔でそう言うゴブリナの少女の言葉を黙って聞いているなか、背中に強い衝撃と痛みを感じた俺は思わず食べ途中だった串焼き肉を落としちまう。
「なにすん……っ!?」
「……すまない……」
オーク!?にしてもデケェッ!?っていうか、
「肉を落としてしまったな。」
オークってこんなに理性的な魔物だったか?黒いマントと筋肉も相まって逆に強そうだ……
「詫びだ。遠慮せず食ってくれ。」
俺が呆気に取られながらそう思っているなか、黒マントのオークはそう言いながら六本の串焼き肉を手渡してくる。
「って多過ぎるっての!!」
「客人を空腹にさせる訳にはいかない。」キッパリ
「何のポリシーだよ!?」
「あははっ!けど、ゲルドさんが町にいるのは珍しいね。」
「うむ。リムル様とユカリ様から休めと言われてな。俺としては工事の進捗が気になって仕方ないんだが……」
「もうっ。リムル様とユカリ様から心も休めるように言われてるでしょ?」
「うぅむ……」
あの二人、家を作っているオーク達に声かけもしているのか。
結局、多過ぎる串焼き肉を返そうとしても受け取ってくれそうになかったのでそのまま貰って礼だけ言ってその場を後にすることにした。
「あ。リムル様とユカリ様のお客様ですよね?」
「よろしければ、こちらの赤い林檎をどうぞ。」
「とっても
その後、再び町中を歩いてると、今度はナイスバディなゴブリナと、金髪と水色の髪の二人の妖精がそう言いながら真っ赤な林檎を手渡してくる。
っていうかなんか妖精、デカくね?
もっとこう小人みたいに小せぇんじゃねぇの?
シャリ……
そう思いながら貰った林檎を一齧りする。
「!?」
すると、瑞々しい果汁と共に程よい酸味と甘味がついさっき食った串焼き肉の油を流しながら、口の中に広がっていく。
「美味っ!?」
「フフフ……気に入って頂けたそうで……」
「そりゃあ、私達秋姉妹も手伝って育てた林檎なんだから!!」
「……美味しくて当然……」
なんか金髪の姉妹っぽい少女達が増えたが、気にせず林檎を頬張る。
林檎一つでもここまで美味いのかよ。
「……ん?そっちの青い林檎は?」
「あ。こちらはお菓子作り用に品種改良したものでして……」
「甘味よりも酸味の方が強く、瑞々しいのは一緒なんですが、実が硬いんです。」
水色の髪の妖精の籠の中にある林檎を指差しながらそう尋ねると、二人の妖精はそう答える。
「?菓子を作るのに使うのに酸っぱい上に硬いのか?」
「はい。ユカリ様曰く果物は熱すると甘味が増すので最初から甘味が強いと重くなってしまい、逆に酸味が強いと引き締まった味になるんです。」
「実が硬いのも調理の際、煮崩れがしにくいので寧ろ良いんです。」
「ほぅ~。」
あの金髪の嬢ちゃん、菓子作りもやるのか。
そういやぁ、さっきの屋台でも味付けは嬢ちゃんから教わったって言ってたし。
もしかして、会談の時に出された『ポテチ』っていう軽食も元は嬢ちゃんが作ったのか?
マジで色々やってんだな。
「………」
「あ。リリナさん。」
「ミヨイさん、こんにちは。」
「例の林檎はどうでした?」
「この通り、シズハさんとミノリコさんのおかげで無事に実が生りました。」
「まぁ♪それは良かったです♪」
「フフフ……ミヨイさん、林檎が出来たら、ユカリ様から林檎パイの焼き方とか教えて貰う約束してましたものね。」
「これからユカリ様にご報告しに行くのですが……」
「では、ご一緒させて頂きますね。」
「わかりました。では、私達はこれで。」
「どうぞ引き続き、中央都市リムルをお楽しみ下さい。」
「お、おぉ……林檎、ありがとうな。」
そうしてナイスバディなゴブリナと二人の妖精、途中から合流してきた三人の少女と別れ、再び歩き出す。
ゴブリナと妖精以外は
「心は決まったか?」
「………」
それから町中を見て回ったりして日が暮れてきた頃、桜の木を背に丘から町並みを見下ろしていると、背後からそう声をかけられる。
横目でチラッと見ると、そこにはいつの間にかいた例のスライムとユカリの嬢ちゃん。
歩いてくる気配すら感じなかったんだが……例のスキマって奴か?
「……俺は調査団の
野郎共を守ってやらなきゃならねぇ。」
「「………」」
「どっか他所の国とかで
「「………」」
「それなのに『英雄』になれだぁ?話がでかすぎて胡散臭いことこの上ねぇ……」
「まぁ、あの時のユカリの笑顔は明らかに胡散臭かったしな。」
「失礼ね。別に否定はしないけど……」
しないのかよ。
「……決めたぜ。リムルさん、ユカリさん。」
内心でそうツッコミを入れながら、俺はそう言いながら二人の方を振り向く。
「俺はあんた達を信用することにした。」
「「………」」
「あんた達はあの伯爵とは違う。
仲間に慕われている奴は信用できる。」
そう言いながら、二人の前に片膝を着く。
「今日からリムルの旦那、ユカリのお嬢と呼ばせてもらう。英雄でもなんでもやってやる!!」
「あぁ、引き受けてくれて嬉しいよ。」
「!?」
次の瞬間、リムルの旦那が溶けたかと思えば、議事堂で会った『
「これからよろしくな。」
「期待しているわよ。ヨウム君……フフフ……」
「いや、あんた、人型になれんのかよ!?そして、ユカリのお嬢のその笑みは胡散臭さを通り越して怖ぇんだけど!!?」
俺……組む相手を間違えてない……よな?
クレイマンSide
「……早かったですね。気付かれませんでしたか?『ティア』。」
「あたいだって『中庸道化連』の一員なんだ。
少しは信用してよね。」
「フフフ……貴女が無茶しないか、私は心配なのですよ。」
バッ!スタッ!!
「もうっ!何時までも子ども扱いはやめてよね!!」
その頃、『傀儡国ジスターヴ』、クレイマン城、執務室にて、魔王クレイマンがそう言った瞬間、カーテンで閉められた窓から泣き顔の仮面を着けた小さな道化の少女が憤慨しながら入ってくる。
「わかりましたよ……『ミュウラン』から報告を受けました。魔王ミリムは余程あの魔人や
「ふぅーん?」
「これは思ってた以上に面白い展開です。愉快ですよ、本当に。」
「実際にはどうなの?魔王ミリムが興味を示すくらい強い魔人達なの?」
「……無視はできない……っと言ったところでしょうか。私の敵ではないですし。ただ、ラプラスが……」
「ん?」
「……不気味さ、と言いましょうか。何かを感じたと言うのです。隣にいた『スキマ妖怪』についても、魔王ザンムやセイジャさんが非常に気にしていたようですしね。」
「なるほどねぇ~。あの小狡いラプラスがそう言ってて、同じ
「確かに……もっと情報を集める必要はありますね。」
「うんうん!それが良いよ!!
で!調査結果だけど!!」
「伺いましょう。」
「うーんとね。魔王フレイはどうやら『ジュラの大森林』に関わる気はないみたい……何かを強く警戒している感じだった。まるで戦争の準備をしている感じ?ヤァーッ!ヤァーッ!!」ヒュッ!ヒュッ!
「その理由はわかりましたか?」
そう言いながら長い袖に包まれたままの腕でシャドーボクシングをするティアに対し、魔王クレイマンはそう尋ねる。
「わかったよ!なんとビックリ!!あの『
「!?暴風大妖渦……」
ティアからそう報告を受けた魔王クレイマンの目が見開く。
(死と再生を繰り返す天空の支配者……遥か昔、その暴威を見かねた『勇者』により封じられたという話でしたが……なるほど。『
「なるほど……ティア。次の仕事を頼みたいのですが……」
「ふふーん!そう来るだろうと思ってぇ!『フットマン』も呼んどいたから多少の荒事も大丈夫!!」
「流石ですね。ですが、なるべく暴力は避けて下さい。先ずは封印の地を見つけ、暴風大妖渦を手懐けることができるかどうか……それを探って下さい。」
「任せてよぉ!クレイマン!!」
「場所は恐らく」
「任せてって言ってるでしょ!!
じゃあ、あたいはもう行くね!!」
ティアはそう言いながら、足元に展開した魔法陣の中に沈むようにその場から消える。
「暴風大妖渦……『魔王』に匹敵すると云われるその“力”……どれ程のものか、非常に楽しみですねぇ……フフフ……」
ザンムSide
「暴風大妖渦が復活するじゃと……?」
その頃、『ジュラの大森林』と『忘れられた竜の都』の中間にある、地獄谷のような地に堅牢な塀に囲まれるようにして作られた『妖魔国家ヘルズガーデン』。
その中心部に建てられた戦国時代の城に酷似した城の最上階にて、ミリムや魔王クレイマン達との会合に参加していた例の黒髪の女性…魔王ザンムこと『
「はい。魔王フレイの周囲を探らせていた間者からきた確かな情報ですわ。クレイマンから依頼を受けた中庸道化連も同様の情報も得たとも……」
そんな彼女に対し、ロベリアにラベンダー色の布が付いたマスクで目元を隠した、アジサイのチャイナ服のような濃い紫色の半袖ワンピース姿の女性…残無の腹心である『
「ほぅ……」
「クレイマンは魔王フレイに貸しを作るべく、中庸道化連に依頼して封印の地を探り始めたようですが……如何致しますか?残無様。」
「ふむ……」
(暴風大妖渦……彼の暴風竜の申し子と呼ばれる伝説の存在……
「……日狭美。正邪に中庸道化連に接触するよう指示を出せ。上手くいけば、奴に持たせておいた新しいヒトガタの実験にもなりうるからの……」
「畏まりましたわ。」