転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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クリスマス

ユカリSide

 

「何時見ても立派なものね……」

 

「ですね……」

 

「大きいです♪ランしゃまぁ~♪」

 

冬が始まって暫くした後、町の中央広場にて植えられたクリスマスツリーを見上げながら、私とラン、チェンの三人はそう言う。

 

きっかけは『サンタクロースはいるのか?』というリムルの何気ない一言。

 

『サンタクロース?』と首を傾げるリグルド達に私とリムルが冬の間に催される宴のようなものだと説明すると、すぐさま町全体でクリスマスをやることになって今に至る。

 

「よくこんな大きなもみの木見つけたよな……あ。ミモの木だっけ?この世界(こっち)じゃ……」

 

「えぇ、トレイニーに相談したら態々種を持ってきてくれただけでなく、こうして急成長させてくれたのよ。」

 

「飾り付けもしっかりしてるね……電球っぽいのは……ドワルゴンの洞窟のライト?」

 

首を傾げながらそう尋ねるリムルに私がそう説明するなか、今度はシズが首を傾げながらそう尋ねてくる。

 

「あぁ。カイジン達に頼んで付けてもらったんだ。」

 

「一つ一つの光量は蝋燭の灯りにも負けちまうが、これだけ飾れば……まっ、後は夜のお楽しみってことだな!!」

 

「一気にクリスマスの完成度が上がったわね。」

 

「……おっさん達も含めてな!!」

 

リムルは良い笑顔でそう言いながら、サンタの赤い帽子を被り、赤い衣服に身を包んだカイジン達の方を見る。

 

髭も白く染めてるから余計に完成度が高いわね。

 

「四人とも、よく似合ってるよ。」 

 

「そ、そうすか?」

 

「これ、流行るかな……」

 

「………」コク…コク…

 

「ところで、この髭はちゃんと元に戻るんだろうな?なんか老けて見えるぜ……」

 

笑顔で褒めるシズにドワーフ三兄弟が照れているなか、カイジンは若干不安げな表情でそう言う。

 

「大丈夫だって。しかし、本当にハマリ役だよな……」

 

「……サンタクロースの正体は実はドワーフだったのかもしれないわね。」

 

「だな……」

 

「いやいや。お嬢に旦那。流石に二人が前に話していたトナカイ?って生き物に引っ張ってもらって空を飛ぶソリなんざドワルゴンでも作れないぜ?」

 

割りと真剣な表情でそう言う私とリムルに対し、カイジンは困った表情でそう言う。

 

「……サンタクロースといえば……」

 

「?リムルさん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、そういやこの前、ガゼル王にもサンタの衣装を送ったんだよなぁ……」

 

首を傾げながらそう尋ねるシズと私に対し、リムルはそう答える。

 

ってそんなことしてたの?

 

「まぁ、流石に着ないだろうけどなぁ♪」

 

「そうね。」

 

着てたらかなりシュールになりそうだけど……

 

第三者Side

 

「失礼します。王よ、目に通して頂きたい書類が……」

 

その頃、ドワルゴンの王の間にドルフがそう言いながら入室する。

 

が、直後、ガゼル王の姿を見て、固まる。

 

「……王よ、そのお姿は……」

 

「弟弟子と妹弟子から贈られてきたものだ……どうだ?似合っているか?」

 

そう尋ねるガゼル王はサンタ衣装に身を包んでいた。

 

「あ。はい………大変よく………似合っております………」

 

「フッ……であるか……」

 

若干目を合わせないようにしながらそう答えるドルフに対し、ガゼル王は満足げな表情でそう言った。

 

ユカリSide

 

「さぁ!おじさま連中には…………負けていられません!!」

 

「シオン。何故、そんなに露出が高いのだ?今、冬だぞ?」

 

議事堂の執務室にて、胸元とかの露出が高いサンタ衣装に身を包んだシオンにランがそうツッコミを入れる。

 

因みに彼女もシオン程露出が高くないが、サンタ衣装に身を包んでいる。

 

まぁ、シオンの露出が高いのは十中八九ドワーフ三兄弟の長男・次男の仕業でしょうけど……

 

「寒くないのか?」

 

「寒さなど気合いで!!」

 

「なんでそんなにガツガツしてるんだ?」

 

「後、剛力丸は仕舞いなさい。危ないから。」

 

「皆がクリスマスを楽しめるように、盛り立てなくては!!」

 

なるほど……気持ちはわかるわ。

 

「この催しを気に、テンペストの住人がより固い絆で結ばれるように。」

 

「おぉ……」

 

「そうだな。」

 

「家族も、友人も、仕事仲間も!!」

 

「うんうん!!」

 

「そして、恋人同士も。」

 

「それは認めん!!」

 

「リムル……」

 

シオンの『恋人同士』という単語にそう叫びながら反応するリムルに対し、思わず呆れながらそう言う。

 

いや。わからなくはないんだけど………っていうか貴方だってたまにシズとイチャコラしてるじゃない。

 

私は(前世からずっと)別にそんな相手いないからよくわからないけど、別に目くじら立てることないと思うんだけど……あぁ、そういえば高校の卒業後、どっかの金持ちの家に嫁ぐ話もあったわね。どうでもいいけど……

 

リムルSide

 

「聞いたぞ!リムル、ユカリ!!サンタとやらの話!プレゼントをくれるというのは楽しみだな!!」

 

それから少しした後、サンタ衣装に身を包んだミリムが笑顔でそう言いながら執務室に駆け込んでくる。

 

「ミリム。何処でその話を聞いたの?」

 

「変な格好をしたシオン(一本角)が得意げに語っていたのだ!!」

 

シオン……

 

「この『竜耳(ミリムイヤー)』で漏らさず全て聞いたぞ。」

 

「なんてスキルの無駄遣い……」

 

「ふぅ……………良いか?ミリム……………喜んでいるところ、非常に言いにくいんだが……………サンタクロースっていうのは良い子の所に来てくれるんだ……………だから、魔王であるおまえの所に来てくれるとは……………」

 

ユカリがそう言いながら呆れているなか、俺はミリムに非情な現実を突きつける。

 

最近はあまり壊さなくなったが、魔王であるミリムの所に来ないんじゃないか?

 

そう思いながら、改めてミリムの方を見る。

 

ってなんか『自分は貰える』と信じて疑わない澄んだ瞳をしてらっしゃる!?全てを聞き逃さないんじゃなかったのか!!?

 

『解。魔王ミリムの『竜耳(ミリムイヤー)』は全てを聞き逃さない地獄耳ですが、都合の悪いことは遮断します。』

 

「えぇ………」

 

なに、そのご都合主義なスキル………

 

第三者Side

 

♪~♪~

 

「子ども達の歌は、聞いていて気持ちが良いですなぁっ!!」

 

「えぇ。リムル様とユカリ様もお喜びになるでしょう。しかし、若干声の大きさに頼りがちですね。」

 

「ハッハハハ!元気があって良いではありませんか!!」

 

その頃、寺子屋にて、子ども達の歌うクリスマスの歌を聴きながら、ベスターとガビルはそう話していた。

 

「はぁ……………」

 

「む?」

 

「しかし、それではこの歌は……………」

 

「感性を生かし、のびのび歌うことが素晴らしいのではないですかな?子ども達には、それが一番ですぞ。」

 

「いえ。感性だけでなく技術との調和(ハーモニー)が感動を生むのです。ドワルゴン随一の文化人と云われた私の目が黒い内は………………認める訳にはいきません。」

 

「「んっ!!」」

 

ガビルとベスターは互いの意見をぶつけ合わせる。

 

子ども達が見ているにも関わらず。

 

「「フフフフフ………………はははははっ!………………ハーハッハッハッハッ……………!!」」

 

そんななか、二人は突如として笑いだす。

 

「「「「?」」」」

 

「あ、あはは……」

 

そんな二人の様子に子ども達やリリナが唖然としているなか、近くで様子を観ていたコアは苦笑いを浮かべる。

 

「?なんか研究が捗ってないみたいだけど……」

 

「何かあったのか?」

 

その後、洞窟内の研究室内にて、様子を見に来ていたユカリとリムルは首を傾げながらそう尋ねる。

 

「ふんっ!!」

 

「……音楽性の違い……でしょうか……」

 

「「はぁ……?」」

 

「はぁ……何やってんだか……」

 

何時もとは何処か様子が違う二人の様子にユカリとリムルが首を傾げるなか、事情を知るニトリは呆れながらそう言った。

 

ユカリSide

 

「トレイニーは誰かにプレゼントあげるの?」

 

クリスマスパーティーの準備が無事に終わった後、スナック『樹羅(ジュラ)』にて、私はリムルと一緒にお酒を飲みながらそう尋ねる。

 

「そうですね……やはり、リムル様とユカリ様、妹達に……」

 

「妹?」

 

「妹なんていたのね……」

 

「えぇ。樹妖精(ドライアド)としてはまだまだ未熟者ですが、いつも管理者である私の補佐(サポート)をしてくれる自慢の妹達です。彼女達がいるから、私も安心してこうしてリムル様とユカリ様のご相談に」

 

カランカラーン♪

 

「あら。いらっしゃ……っ!?」

 

そんななか、新たな来客にトレイニーが目を向けた瞬間に固まる。

 

「?トレイニー……っ!?」

 

「どうかし……っ!?」

 

そんなトレイニーさんの様子に首を傾げながら、私とリムルも来客の方に目を向ける。

 

そして、同じように固まる。

 

「「………」」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ッ!!

 

そこにはトレイニーによく似た二人の樹妖精(ドライアド)がいた。

 

各々、物凄い青と赤の妖気(オーラ)を発しながら。

 

「「増えたっ!?」」

 

「何時まで油を売ってるんですか!?お姉様!!」

 

「お姉様だけズルいですっ!!」

 

私達と同じようにこの場に居合わせたハルナとミヨイがそう言うなか、赤い妖気(オーラ)を発する緑のウェーブのかかった長髪の女性と青い妖気(オーラ)を発する緑のショートカットの女性はそうトレイニーに苦言を呈する。

 

あぁ~、彼女達が妹さん達ね。っていうかトレイニー……これはもしかしなくても二人には内緒で『樹羅(ここ)』で働いていたわね……

 

「あ、あらあら、いけませんわよ、二人とも。盟主様達の御前です。もっと樹妖精(ドライアド)らしく淑(おしと)やかに……おっほっほっほほ……」

 

「管理者の仕事放ったらかしでよく言えますね!!」

 

「いつも、私達ばかり貧乏くじでぇ~!!」

 

「ふ、二人とも、落ち着いて……!」

 

「……リムル……」

 

激しい姉妹喧嘩が勃発しそうな雰囲気に私はリムルの方に顔を向ける。

 

が、そこには既にリムルの姿がなく、ハルナかミヨイにでも出してもらったのだろう勘定だけが残されていた。

 

……逃げたわね……

 

「あぁ~、トレイニーの妹さん達……で良いのよね?」

 

「あ、はい。ユカリ様。ウェーブのかかった長髪の子が『ドリス』、ショートカットの子が『トライア』。先程もお話したように自慢の妹達です。」

 

姉妹喧嘩が勃発する前に三人の間に割って入りながらそう尋ねる私に対し、トレイニーさんは平静を装いながらそう紹介する。

 

いや、遅いわよ。

 

「ドリスにトライア。今日は楽しいクリスマスだし、私に免じて許してくれないかしら?できれば、二人にも楽しんでもらいたいし……」

 

「……まぁ……ユカリ様がそう仰(おっしゃ)るのでしたら……」

 

「わかりました……」

 

「トレイニーも、せめて理由くらいはちゃんと説明しないとダメでしょ。」

 

「はい……申し訳ありません……」

 

「ふぅ……ドリスとトライアも息抜きはしたいでしょうし、パーティーの後にでも話し合って、『樹羅(ここ)』で働くのは交代制にでもすれば良いわ。そうすれば、三人とも平等に不平不満は溜まらないでしょ?」

 

「「「はい……」」」

 

仲裁した後、そう提案する私に対し、三人はそう言いながら頭を下げるだった。

 

それから少し時間が過ぎて、パーティーが始まる時間になる。

 

「「「「3!2!1!0!!」」」」

 

皆のカウントダウンに合わせて、クリスマスツリーがライトアップされ、飾りが夜の町を照らし輝く。

 

「「メリークリスマス!」」

 

「「「「「メリークリスマス!!」」」」」

 

私とリムルに合わせて、皆が声を上げる。

 

わいわい……がやがや……

 

「ん?おーい!ヨウム、ロンメル!!」

 

皆がパーティーを楽しむなか、ヨウムとロンメルの存在に気付いたリムルがそう声を掛けながら歩み寄り、私も同じように歩み寄る。

 

「お、おう……」

 

「どうも。」

 

「?どうかしたかしら?ヨウム。」

 

「あ。いや、ここは本当に魔物の町なのかと改めて思ってよ……こんな祭り、王都でなきゃやらないぜ?」

 

「確かに……化かされているみたいですね。」

 

「悪い魔物じゃないっての。」

 

「「ハッハッハッハハ!!」」

 

「ほっほっほっほっ。」

 

リムルとロンメルが笑い合うなか、ハクロウも笑いながらこっちに歩み寄ってくる。

 

「し、師匠!!」

 

ハクロウの姿を見た途端、ヨウムさんの背筋がピィーンとなる。

 

「ほっほっほっ。宴の席ではただ楽しめば良い。浮世の全ては、杯の酒と同じじゃ。ただ飲んで笑いに変えれば良い。」

 

ハクロウはそう言いながら杯の酒を飲む。

 

「ただでさえ、明日の修行でうっかり逝ってしまうかもしれんしのぅ………のほっほっほっほっ。」

 

直後、去り際に不吉な言葉を残しながら、ハクロウは去っていく。

 

「……化かされたままでいたいなぁ……」

 

「も、もう一回乾杯しよっか!!」

 

「「いえーいっ!!」」

 

ヨウムが遠い目をしながらそう言うなか、リムルはそう言いながらロンメルと一緒に再度乾杯する。

 

「………ん?」

 

「………」

 

そんななか、クリスマスツリーを眺めているシズを見つける。

 

「シズ?」

 

「どうしたんだ?」

 

「ユカリさん、リムルさん……ちょっと懐かしいなぁって思って………私も前にあの子達と楽しんだなぁって………」

 

「『あの子達』って前に話していた?」

 

「うん。『イングラシア王国』って国で私が先生として面倒をみていた子達なんだけど……」

 

シズはそう言いながらその子達はシズと同じように色々な国で私達と同じ世界から召喚されたこと、その召喚が不完全だったせいで大量の魔力によって数年しか生きられないことを話してくれた。

 

「一度は冒険者として引退した私だけど、あの子達を救うためにもう一度旅を始めた……」

 

「……それは魔王レオンに会うためかしら?」

 

「……うん……」

 

「どういうことだ?ユカリ。」

 

「魔王レオンは子ども達を救う方法を知っていたってことよ。」

 

「!?そうなのか!?」

 

「というよりシズ自身がなによりの証拠よ。シズも戦争中の子どもだった頃にこの世界に召喚されたんだから……」

 

そして、その方法は恐らく……

 

「!……イフリートのような上位精霊と同化させることか……」

 

「そう……精霊は魔力の制御に長けているからね……」

 

私達三人はそう話しながら改めてクリスマスツリーを見上げる。

 

「……シズさん……子ども達も絶対に助けてみせるから……今は少しだけ待っててくれ……」

 

「……うん……」

 

「はぁ……仕方ないわね……それなら私もできる限りの協力はするわ。」

 

「おう。頼りにしてるぜ。相棒。」

 

この世界の大人達の身勝手で不完全に召喚された子ども達を救う。

 

魔国連邦(テンペスト)の夜を彩るクリスマスツリーを見上げながら、リムルと私はそうシズに誓うのだった。

 

「リムル様!ユカリ様!皆さん!!お料理の用意ができましたぁーっ!!」

 

そんななか、そう呼ぶハルナの声が聞こえてくる。

 

「もうそんな時間なのね。」

 

「それじゃあ行こうか……シズさんも。」

 

「うん。」

 

そうして私達が行くと、様々な料理が並んでいた。

 

「どうぞ。ミリム様。」

 

「おほぉっ!凄いのだっ!!」

 

「どうぞ。ミリム様。」

 

シュナに呼ばれたミリムがそう喜びの声を上げるなか、席を用意していたリグルがそう言いながら椅子を引く。

 

「うむっ!!」

 

「しかし、まるでレストランみたいだな。」

 

「そうね。」

 

「先ずは前菜から……」

 

「ジュリ様達二人が作った、アヒージョをご賞味あれ!!」

 

ミリムとリムル、私の三人がそう言いながら席に着くなか、ブラウンのロングヘアーに浅黄色を基調としたミニ裾和装に寅の尻尾がある少女…ランの式神尾獣四体目である『ユナ』とジュリがそう言いながら料理を運んでくる。

 

ユナ&ジュリ謹製 『コカトリスとマッスルームのアヒージョ』

 

「おぉっ!アヒージョか!!」

 

「バゲットも焼いたから浸して食べてみてくれ!!」

 

「あ~む……う~ん!美味しいのだぁ~♪」

 

「コカトリス(とりにく)とマッスルーム(きのこ)の旨味がオリーブオイルと絡んで良い感じね。」

 

「バゲット(パン)も焼きたてなのか、凄く美味しいよ。」

 

アヒージョを堪能しているなか、今度はハルナとゴブイチ、リグルの三人が料理を運んでくる。

 

「八面鳥はリグルが獲ってきて、ゴブイチが仕上げました。」

 

ゴブイチ謹製 『八面鳥のロースト~旬の野菜を添えて~』

 

「キッシュはハルナが。」

 

ハルナ謹製 『ジュラパーチとほうれん草のキッシュ』

 

「おぉ……っ!!」

 

「なかなかやるじゃない。二人とも。」

 

「お口に合えば良いのですが……」

 

「シュナ様から教わって作りました!!」

 

運ばれてきたローストとキッシュにミリムが目を輝かせるなか、そう言う私に対し、二人はそう言う。

 

「美味い!流石はシュナの教え子達だ!!」

 

「うん。凄く美味しいわ。」

 

リムルと私がそう言いながら食べているなか、二人は照れたような仕草を見せる。

 

「美味しいね。」

 

「うむ!やはりここの料理はどれも美味しくて好きなのだ!!」

 

シズとミリムもそう言いながら二人の料理を食べる。

 

「お次はユカリ様がお作りになったスープです。」

 

ユカリ謹製 『魔国(テンペスト)産野菜のポトフグラタンスープ』

 

「?スープ?どう見てもチーズの塊にしか見えないのだ。」

 

「そのチーズの塊もといグラタンの下にスープがあるのよ。グラタン部分を崩して一緒に食べてみて頂戴。」

 

私にそう言われた皆がスプーンでグラタン部分を崩した瞬間、湯気と共に立ち上った仄かなスープの香りが辺り一帯に広がる。

 

「おぉっ!……はむっ!う~ん!!このグラタンスープとやらも美味しいのだ!!」

 

「野菜の優しい甘味に大きめに切られた牛鹿のお肉の旨味とチーズのコクが合わさって美味しいね。」

 

「おまえ、本当に何でもできるよな。」

 

「別に大したことないわよ。グラタンにしたのは今回が初めてだけど、ポトフなんて前世(むかし)からしょっちゅう作ってたし。」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。農園で採れても虫食いとかで売り物にならなくなったクズ野菜とか親戚だけで消費しきれなかった消費期限切れの肉とか使って作ってたわ。」

 

「なんでクリスマスに哀しい話聞かなきゃいけないんだぁっ!!」

 

「あはは……」

 

あんたが振るからでしょうが。

 

「お次はこちら。」

 

私がそう思っているなか、出てきたのはサンタの長靴を模したガラスのグラスに注がれた、ドライフルーツ入りのワイン。

 

ミヨイ&アピト&ゼギオン謹製 『フルーツと蜂蜜入りホットワイン』

 

「ワインにはアピトが集めてくれた蜂蜜と、ゼギオンが集めてくれた木の実が入ってますよ。」

 

「ミリム様はホットジュースです。」

 

「おほぉっ!蜂蜜!!」

 

「ふぅ……温(あった)まるわね……」

 

「二人もありがとうな。」

 

「私は蜜を運んだだけで……」

 

「………」コクッ

 

そして、次はメインディッシュであるシュナの料理

 

「私からはこちら。」

 

シュナ謹製 『牛鹿フィレ肉のロッシーニスタイル』

 

「「「「おぉ……」」」」

 

「凄い!食べるのが勿体ないくらいだ……っ!!」

 

「確かに……良く作れたわね……」

 

まるで芸術のようなその出来映えにリムルや皆がそう声を上げるなか、私はそうシュナに言う。

 

「前にリムル様から聞いたものを再現してみました。」

 

あぁ……そういえばリムル、前世で殆んどの友人の結婚式に参加したとか言ってたわね。

 

「んっまぁーいっ!!」

 

「なんじゃこりゃあーっ!!」

 

牛鹿フィレ肉をナイフとフォークで切って一切れ食べたミリムとリムルが思わずそう声を上げる。

 

ミリムに至っては目がハートマークになっている。

 

「うん。本当に美味しい……流石ね、シュナ。」

 

「ありがとうございます。ユカリ様。」

 

「さぁ、皆も突っ立ってないで一緒に食べよう。」

 

そう言うリムルの一言で他の皆も食べ始める。

 

「(コソッ)しかし、よくシオンが作ると言い出さなかったな……」

 

そんななか、リムルが小声で朱菜にそう言う。

 

「一部料理を任せても………全力で阻止しました……」

 

「……グッジョブシュナ……」

 

「まぁ、妥当な判断ね……」

 

「さぁ!お待たせしました。皆さん、クリスマスケーキですっ!!」

 

「「「「おぉーっ!!」」」」

 

そうして出てきたのはウェディングケーキのような大きなクリスマスケーキだった。

 

「凄いぞ!シュナ!!」

 

「本当にね……材料も満足に揃わないなかで良く作れたわ……」

 

てっぺんの中央に水飴で作ったのだろう、スライム姿のリムルを模したナニカは……見なかったことにしましょう。

 

「美味いでやんす!!」

 

「うまぁーっ!!」

 

「本当に美味い……凄いよシュナ!!」

 

「ありがとうございます。」

 

「お店とか出さないんですか?」

 

「私はリムル様とユカリ様にお仕えしている身なので。」

 

「リムルさんとユカリさんが羨ましい……イングラシアの名人の腕に匹敵する(・・・・・・・・・・・・・・・・)する美味しさだよ。これ……」

 

「……そうですか。そのような人がいるのですね。世界には…」

 

エレンの何気ない一言でシュナの目にナニカが揺らめいて見えるのは……気のせいだと思うことにしましょう。

 

その後はエレンが皆の前で歌を披露して盛り上がったり、皆でプレゼント交換をしたりしてクリスマスパーティーは幕を閉じた。

 

第三者Side

 

パチ……パチ……

 

【はぁ………】

 

その頃、『胃』の中からクリスマスパーティーの様子を見て、サンタコスのヴェルドラは拍手しながらそうため息を吐く。

 

「ヴェルドラ様。また下界の様子を見学しておられるのですか?」

 

そんなヴェルドラに対し、イフリートが呆れながらそう尋ねる。

 

【イフリートか……】 

 

「何時までも封印の解除が終わりませんよ?」

 

【わかっておる………どうやらリムルとユカリはなにやらクリスマスパーティーという宴をやっておるようだぞ。】

 

「はぁ……宴なんて年がら年中やっておられる気がしますが……」

 

【良いなぁ……我も参加したい……ところでイフリートよ。】

 

「はい?」

 

【もし………もしもだぞ?我にプレゼントするとしたら………………貴様は何をくれるのだ………………?】

 

「………う~ん………」

 

【あぁ!もしもだぞ?もしもの話だからな!?】

 

「………『勤勉さ』。でしょうか………」

 

【………やはりかたいなぁ……貴様は……】

 

ユカリSide

 

「ふわぁ……ん?」

 

クリスマスパーティーの翌日、自宅にて私は居間のテーブルの上に置かれた、綺麗にラッピングされた小包を見つける。

 

「『良い子のユカリちゃんへ』?」

 

「おはようございます。ユカリ様。」

 

「おはようございます♪」

 

「ラン、チェン……これは貴女達が用意してくれたのかしら?」

 

「?」

 

「?私達じゃないですよ。」

 

「じゃあ、一体誰が……?」

 

私達三人が首を傾げている頃、リムルの元にも差出人不明のプレゼントが届いていたのだった。




サンタクロースは実在する……?

ユカリへのプレゼントの内容については引き続き、募集は続けます。
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