ブラック・ブレード   作:東流

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息抜きで書いてみました。元々書こうかな~と思っていたものを引っ張ってきました。

ちょっとおかしい所が何ヵ所かでてくるかもしれませんが、そのところはご指摘を…。

楽しく読んで貰えたら嬉しいです。それではどうぞ♪


メインの方も頑張らなくては…。


プロローグ

「ごめん…アスナ…」

 

「嫌だよ、嫌だよ!!キリトくん!!」

 

救急車の中で必死に声を掛ける少女と今にも死んでしまいそうな少年がいる。少年は自分の心拍がだんだん低下している事に気づく。

 

―あぁ…このまま、死ぬのかな…―

 

チラリと横を向くと自分のモニタに表示されている数字が今にもゼロになりそうだった。

 

「…ごめん……アス―」

 

少年が少女の名前を呟く寸前、モニタのデジタル数字はゼロへと変化し、そのまま沈黙した。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

―うぅ…熱い…―

 

そう思い少年はバッとその場から起き上がった。

 

「…何処だ…?ここ…」

 

少年…桐ヶ谷和人は燃えている森の中で意識を取り戻した。いや、まず自分は何で生きているんだ?と和人は思った。自分はジョニー・ブラックの手により、心肺停止に追い込まれた筈だ。もし仮に助かったとしても目覚めたのは病院の病室ではなく、夜の森…しかも燃えている場所で目覚めたのは何が何でも可笑しすぎる。

考えたい事は山程あるが、今はそれどころではない。まずここは何処なのか?和人は辺りを見渡すが、夜の森のせいか、よく分からない。更に驚くことにこれだけの火が上がっているのに、消防車や消防士が見当たらない。普通誰か気づくと思うのだが…。そうこう考えているうちに火が周りを覆いそうだった。和人は取り合えずこの森を抜けようとその場から走り出した。

 

この時火の手があったため、そこまで暗くは無かったのだが、今の状況に驚いていたのか周りにある物に気づかなかった。

 

そう…『死体』という物に…

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

走ること数十分。何処へ行っても木、木、木。今自分が何処にいるのか、何処へ向かっているのか、分からなくなっていた。

 

「クソ…本当に何処なんだ…ここは…?」

 

和人はその場に立ち止まると奇妙な、誰かに見られている感じがした。その『誰か』というのも定かではない。人なのか?もしくは得たいの知れない何かか?和人はこの奇妙な空気を知っていた。

 

あの時

 

あの場所

 

そして…あの『世界』で…

 

そう、ゲームがゲームじゃなくなった時、自分が本当のデスゲームの中で命の駆け引きをやっていた時の空気に似ていた。いや…一緒だった。

 

狙われる。次は自分だ。何か得たいの知れない攻撃が来る。

 

そして次の瞬間、和人は思いっきり後ろへジャンプした。別に理由など無かった。意味なんて無かった。只単に後ろへ思いっきり反っただけだった。和人自身も何故動いたのかは分からなかった。

 

―ヤバイヤバイヤバイヤバイ…分かんないけど、本当にヤバイ。今まで…いや、あの『世界』よりもヤバイ。自分が本当に…殺される―

 

和人自身もあの『世界』での出来事が無かったらそのまま立っていただろう。あの『世界』で培った経験と勘が、和人を生かした。チラリとさっきの場所を見ると…

 

地面が抉られていた。

 

「…ッッッ!?」

 

そのまま受け身をし辺りを見渡す。そこで目に入ったのは、真っ赤な眼に巨大な体。なんというか…狼をそのまま大きくし、化け物にした感じだった。

 

「…あぁ…あ……」

 

別にこの様な動物を見たことがないというわけでは無かった。バーチャルゲームに関わらず、ゲームの世界ではよくある狼型のモンスターだ。

だが、今のこの状況はあの『世界』と酷似していた。いやそれよりも酷かったかも知れない。武器やアイテムは無く、頼れる相棒や仲間もいない。たった一人でこの状況をどうにかしないといけない。

和人は、その場から思いっきり走り出した。あんな化け物と武器を持たずに正面からやり合うのはどう考えても愚策だ。それに今はゲームの世界の『キリト』ではない、現実世界の『桐ヶ谷和人』である。どう考えても勝てる相手じゃない。

必死に走るが相手は化け物。しかも大きいから追い付かれるのは当然だ。木を使って上手く避けるも、限界が来る。

 

「ハァ、ハァ、ハァ…クソ!!」

 

その場に落ちている石ころや木の枝を投げつけるがもちろんダメージといったダメージは与えていない。体力的に限界がきたか、足が思うように動いてくれない。その隙を狙ったのか狼型の化け物が尻尾を横に振った。

 

「ガハァァ!!」

 

その尻尾は普段の動物がもつフサフサな尻尾ではなく、まるで鉄のような重く硬いそんな尻尾だった。

 

「ゲホッ、ゲホッ…ガハァァァ……」

 

和人は込み上げてくる生暖かい血をその場に吐き出した。

 

―ヤバイ…死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!―

 

和人自身こんな訳の分からない所で死ぬのは御免だった。変なところで目が覚めては化け物に襲われ、今まさにその化け物に殺されそうなのだ。本当嫌になる。

化け物はゆっくり和人に近づいていく。多量の出血のせいか頭が上手く働かない。立とうとも思えない。

 

―あぁ…ここで死ぬのか…俺は…―

 

自分は何度も死を体験してきた。あのデスゲームの世界で…更に言うなら今しがたデスゲームの世界での宿敵に殺されたのだ。殺されたのかどうかは分からないが…。化け物の腕がそのまま和人を潰そうとした瞬間、

 

化け物の腕が無くなった。

 

「ギィヤァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

「…なぁ…あ?」

 

和人自身何が起きたのか分からなかった。いきなり腕が無くなり、叫び声を出す化け物。無くなったというより、何かに斬られた感じだった。いや斬っていたのだ、一人の少女が。

 

「…子供?」

 

真っ黒い長髪を腰まで伸ばしており、その容姿はまるで美しい人形のようであった。

その少女はこちらをチラリと見るとそのまま化け物に立ち向かっていた。少女が持っている刀は驚くほど少女に似合っていた。いや、まず少女が何で日本刀なんて物騒なもんを持っているのかツッコミを入れたいところだが、後回しにしよう。少女は刀を巧みに扱うと、次々と化け物に攻撃を加えていく。

 

「はぁぁ!!」

 

まるでゲームのソードスキルを見ているかのようだった。それほどまでに少女の攻撃は美しく、化け物の命を奪っていった。

 

「ギィヤァァ…ァァ……ア……」

 

化け物も次々と繰り出される斬撃に抵抗を覚えずに、そのまま地面へと倒れ、沈黙した。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

あの後化け物の倒れた場所から少し動いたところにコンクリートの小屋があった。実は少女が丁度いた場所で、化け物の声を聞いて駆けつけてくれたそうだった。それにこの少女、力が強かった。まぁ自分は筋肉に自信は無いのだが、それでも男子高校生だ。小学校高学年くらいの子に抱き抱えられるのはちょっと複雑である。

 

「あの…助けてくれてありがとう…」

 

「いえ、私も偶々声を聞いたのでこちらへ来る前に倒そうと思っていたのですが…まさか、人が襲われていたなんて…」

 

少女は和人の怪我の手当てをしながら答えた。包帯を巻き終えると少女は笑顔で自己紹介をしてくる。

 

「あの私は黒衣唯と言います。怪我も見た目よりかは酷くは無いので安心しました」

 

「そうか、ありがとう。俺は桐ヶ谷和人。さっきは本当に助かった。なんとお礼を言ったらどうか…」

 

「いえ気にしないでください。困ったときはお互い様ですから」

 

唯と言った少女は救急箱を閉じると直ぐに怪訝な顔をして和人に訪ねた。

 

「あなたどうして一人なんですか?武器も持っていないようですし…自分のイニシエーターとはぐれたんですか?」

 

「……あ…その…」

 

和人はこの時なんと答えればいいのか分からなかった。自分がいきなり他の世界から来ました~なんて言ってみれば、頭大丈夫ですか?と言われるのは必須。流石にこんな少女にそう言われるのは恥ずかしい、が今はそんな事を言っている場合ではない。和人はまずここが何処だかを聞いてみた。

 

「えと…まずここが何処だか教えてくれないかな?ちょっと頭を打ったみたいで…分からなくなって…」

 

「え…いいですけど…、ここは東京エリアにある外周区付近です」

 

「と、東京!!…ここは東京なのか!?」

 

「は、はい…そうです、けど…」

 

和人自身もここが東京だなんて思わなかった。そう自分が知っている東京ではない。まるで別世界である。和人は真っ暗な空を見上げながらため息を吐いた。

 

「ここが東京だなんて…」

 

「あの~どうかしたんですか?」

 

唯は和人の顔を除き混みながら答えた。その顔色はなんで驚いているのか分からない、そんな顔色だ。

 

「いや…実は―」

 

和人は思いっきって今の状況を話した。自分が別の世界から来た、と言うことを。

 

「―そんな事って…」

 

「あぁ…俺も信じたくないよ。けどあんな化け物見たことがない。教えてくれ!あの化け物は、この世界は一体何なんだ!?」

 

知りたかった。ここが何処なのか、あの化け物は何なのか…今世界はどんな状況なのか…唯は未だに驚きを隠せないでいたが、ポツリポツリと喋りだした。

 

「ここは…いや、この世界は…ガストレアという化け物に…敗北したんです…」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「そん、な…」

 

唯から全ての事を聞いた和人は絶望感に打ちのめされていた。ガストレアというウィルス性の寄生生物。それらにより世界は侵略され、日本も国土の半分以上は持っていかれた。大戦時の死者や行方不明者は数えきれないほどに上ったと言う。残った者達が各都市に『モノリス』という建物を建て、今もその中で暮らしているそうだ。そして和人が聞いた中で最も驚いたのは…

 

「2031年…約10年後にタイムスリップ…か…」

 

ガストレアに襲われたのは今から10年程前の出来事なので和人自身の世界は大丈夫だと思っていいだろう。それにこの世界にはナーブギアが無いため完全に違う日本だなと確信づける和人。そしてもう1つ驚いたのは、

 

「民警とその相棒イニシエーター」

 

民警とは対ガストレアのスペシャリスト。ガストレアを倒す事ができるバラニウム性の武器を持ち日々活動しているそうだ。『モノリス』とか言う建物もバラニウムでできているらしい。

それにイニシエーター。和人がタイムスリップの次に驚いたのはそこだ。イニシエーターとはガストレアを体内に宿した『少女』達の事らしい。何故女の子だけなのかは分からないが、凄まじい戦闘力を持っているそうだ。それ故少女達は民警とコンビを組んでガストレアと戦っている。だがイニシエーターの少女達はその身にガストレアを宿しているため人々からの迫害が激しいらしい。呪われた子供たち…と。

 

「じゃあ…君も…」

 

「はい…イニシエーターです…」

 

幻滅しちゃいますよね…そう呟く唯だか、和人はそう思わなかった。

 

「そんな事はない…現に君は俺を助けてくれた。実際俺はこの世界の住人じゃないからイニシエーターを恨むとかそんな事は分からない。それに君は君だろ?ガストレアとか言う化け物じゃない。黒衣唯という只一人の人間じゃないのか?」

 

「あ…あぁ…」

 

「だからそんなに自分を卑下にみないでくれ、唯」

 

「…………」

 

その言葉に只々涙を流した。今までこんな事を言ってくれる人物がいただろうか?いやいなかった。町の人も民警のプロモーターもそして自分の親でさえも。そう言ってくれる人なんて…いなかった。

 

「…うっ、うぅ…ッ…」

 

「えっ?あの~えーと?だ、大丈夫?」

 

「…はい、はい!大丈夫です。…ひっく…だってだって、そんな事を言ってくれるなんて…一度もなくて…」

 

「あ…いや、その~」

 

「名前も…唯って初めてちゃんと呼ばれましたし…」

 

「…………」

 

こんなことがあるだろうか?まだ小学校高学年くらいの女の子が自分の名前を呼ばれてこんなに泣くだろうか?自分を卑下にしないでと言っただけで涙を流すだろうか?和人自身の世界からすればあり得ない、いやもしかしたらあるかもしれないが…こんな事ってあり得るだろうか?

 

「…辛かったん…だな」

 

クシャっと和人は唯の頭の上に手を置いた。そして撫でてやった。優しく、温かみのある手で何度も。

 

「……気持ちいい…です…」

 

「よかった」

 

涙が止まるまでずっと和人は唯の頭を優しく撫でてやった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「その…先程はごめんなさい!見苦しい所を見せちゃいましたね…///」

 

「別にそんな事はないよ。それよりも早くここから脱け出したいんだけど―」

 

ドンッ!!!!!!

 

その音で今まで静寂だった森の中が一気に騒がしくなる。

 

「な、何だ?爆弾?」

 

「多分そうです。誰か他のペアが……不味いです今の音で一気に他の眠っていたガストレアが押し寄せてきます。幸いこちらからは遠いので今のうちに早く」

 

「あぁ…」

 

和人は唯に言われるがままにその小屋から脱け出した。唯から拳銃を貰ったがあまり使う気にはなれない。まぁGGOの事もあるから使い方はある程度なら分かるが出来れば使わない事を願いたい。

 

そして森を走ること数十分。何度かガストレアに襲われたが全て唯が相手をしてくれた。全部ステージⅠという小さいガストレアなのでそこまで苦戦は強いられなかった。

 

「もうすぐ中継所のテントにつくと思うので頑張ってください」

 

「あぁ」

 

ここ最近トレーニングサボってたからな…鍛えるか。そう思い足を早めた所で…

 

パァン!!

 

唯が撃たれた。正確には足、だが。

 

「唯っ!!」

 

唯は撃たれた足を抑えその場に倒れ混む。

 

「いっつ…ううう」

 

「唯!唯!」

 

和人は唯の撃たれた足を見る。右足だけだが貫通しているようだ。どうすればいいのか分からず和人は只々唯の名前を叫ぶがそこ複数の不協和音が聞こえてくる。

 

「よっし!!当たった!!」

「これで大丈夫だよね」

「後はあいつ等と前の奴等がどうにかするだろう」

「とっとと逃げようぜ」

 

側の茂みから出てきたのは四人の男性だった。唯が言っていた民警のプロモーターとやらだ。

 

「あ…あんたら…」

 

「あぁ?オイオイ…ガキがそこで何してんだよ?テメェがソイツの相棒か?だったらちゃんと見てようね~」

 

ゲラゲラ笑う一人に怒気を含ませた声で訪ねた。

 

「オイ、あんた今…こいつの事を撃ったのか?」

 

「そうだけど、それがなんだよ?」

 

「それがどうしたって…ふざけんなよ!!仲間じゃないのかよ!!民警なんだろ?ガストレアを倒す一緒の仲間なんだろうが!!」

 

「ハッ?ハハハハハハハハハッ!!」

 

この言葉にさっきは笑わなかった奴も全員吹き出した。

 

「マジかよ、そんな事を言うなんてお前バカか?聞いただろう?さっきの爆発音。あれでわんさかとガストレア達が集まってくる。ここの中継ポイントのテントだなんて直ぐに飲み込まれちまう」

 

「………」

 

「でよ、ガキ。俺達はまだ死にたくねぇんだよ。まだ後方に戻れば部隊もちゃんといるし対策だってしてあるさ。もうここには俺達と前にいる奴等しかいねぇ…生き残れないんだよ!!ここじゃ!!だから時間を稼いで貰うのさあのガキ共と前にいる奴等、そして…お前達によ…ククッ」

 

男は笑い続ける。まるで死神の宣告みたいだ。

 

「それと仲間とか言ってたな…少なくとも俺らはそうは思ってねぇよ。ソイツ等は体内に化け物宿した同じ化け物だろ?だったら同じ化け物が相手してやりゃいいさ、幸いソイツ等は回復が早いからな運がよけりゃいいタイミングで復活してお前を助けてくれるかもしれねぇぜ?」

 

その言葉に呆然と立ち尽くす和人。まさかここまで酷いとは…それも民警のプロモーターがだ。それにあのガキ共とか言っていたが…多分あいつ等のイニシエーターだろう。自分達が生き残るために見捨てた?自分の相棒を?

 

「オイ…もう行こうぜ、来るぜ化け物共が」

 

「そうだな…よし行くぞ。お前ら」

 

後は頼んだぜ~。そんな呑気な言葉が和人の耳に入ってくる。もうどうすればいいのか分からない。そんな時和人の足を唯が掴んだ。

 

「ゆ、唯…唯!」

 

「逃げて…ください…」

 

「…はっ?」

 

「お願いです…逃げて、ください。悔しいけど…あの人達の、言う通りです。もうすぐ私の足は治ります…だから…」

 

「できるか…」

 

「えっ?」

 

「そんな事が出来るか!!」

 

和人は思いっきり叫んだ。自分を助けてくれた恩人を見捨てて自分だけ生きるなんてそんな事は出来ない。それに…

 

「もう…目の前で、大切な人が死ぬのは…嫌なんだ…」

 

「………」

 

「これ借りるよ…」

 

和人が手に取ったのは唯が持っていた日本刀だった。ちょっと短いが今はそんな事などどうでもいい。今から来る化け物に集中していた。和人自身化け物と戦うのは初めてじゃない。あの『世界』でとことん味わってきた。本物の命のやり取りを…それが只ゲームから現実に変わっただけだ。ステータスは心持たないが…。今から来るのはステージⅠのガストレアだけではなくⅡ最悪でⅢも来る可能性が高い。前の人達がどれだけ減らしてくれるか…和人の意識はそこにあった。さっきはあんなカッコいいことを言ったが実際和人は唯の傷が治るまでの時間稼ぎをするつもりだった。正直自分一人であんな化け物共を倒そうだなんて思わない。今立っているだけでやっとだ。今すぐここら逃げたい。居なくなりたい。

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 

和人の頭はこの感情で一杯だった。だが…

 

「私もサポートします」

 

唯がその辺に散らばっていたマシンガンを拾い上げ森の方に銃口を向けた。

 

「…ありがとう…」

 

さてここからは地獄だ。正直言って死ぬだろう。それが和人の考えだった。

 

あの時を思い出せ…

 

あの感覚を思い出せ…

 

確かにあの『世界』は現実じゃなかっただろう。だが、あの『世界』にいた自分は少なくとも現実だった。

 

「今まで沢山の事があったな…」

 

ゲームの世界に閉じ込められたと思えばデスゲームが始まるし、やっと脱け出したと思えば最愛の人は別のゲームの中にいてそのゲームにコンバートして最愛の人を助け出した。銃の世界では過去に怯える少女と出会った。その時は死銃の事で頭が一杯だったかな?一番死銃戦が大変だったかも。

色んな事があった。これからも沢山あったかもしれない。だから…

 

「だから…俺はここじゃ死ねない。死ぬわけにはいかないんだ」

 

その言葉と共にガストレア達がやって来る。それが合図だった。唯はマシンガンの引き金を引き、和人は走り出した。

 

そして―

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「……あ………あ、れ?」

 

知らない天井。和人が第一に思ったのはそれだった。何よりベッドで寝ている。何故だ?訳が分からなかった。自分は、一体…。和人が上半身を起こすと広い病室だった。色んな所に包帯が巻いてあった。そこには和人一人と思ったが、

 

「…すー…すー…」

 

「あっ……」

 

少女がいた。自分を助けてくれた恩人黒衣唯だ。そして一気に思い出す。自分が何をやっていたのかを。

 

「確か…俺……あの時……」

 

そう自分はガストレアの大群に向かっていた筈だ。勝てもしないのに、只の自殺行為にしか思えない。だが、

 

仮面を被った燕尾服の男性とその男性の事をパパと呼ぶ少女が乱入してきた。そこまでは覚えている。だけどそれ以降が思い出せない。何か頭の中にモヤがかかった感じで…そこで和人は違和感に気づく。自分は両目を開けているつもりだ。最初はまだ目が馴れないのだろう、そう思ったのだが…明らかに左側だけ暗すぎる。何か覆い被さっている感じ。和人は左目の方を触れると何か当たった。この感触は確か…。

 

眼帯。

 

近くにあった手鏡を取って眼帯を外してみる。すると…

 

「…あ…あぁ……お、俺の…ひ、ひだり…め?」

 

 

 

そこには『真っ赤に染まった自分の左目』があった。

 

 

 

「い、一体…どういう…」

 

「……和人…さん?」

 

少女は眠い目を擦りながら和人を見る。そして顔を真っ赤にし、涙を浮かべると和人に抱きついた。

 

「和人さーーん!!!!」

 

「おわぁ!!ゆ、唯!?」

 

「よかった…よかった…目を覚ましてくれて…本当に、よかった…」

 

「…………」

 

うん。正直何が何だかさっぱり分からない。唯は事情をしてそうだが、一時泣き止まないだろう。するとそこへ…

 

 

 

「やっと目を覚ましてくれたわね」

 

 

 

「……はい?」

 

一人の少女が入ってきた。和人と同じ高校生ぐらいだろうか?

 

「ちょっと私の事務所まで来てくれるかしら?すぐ下なんで」

 

「……えーっと…」

 

取り合えず事情を知ってそうな子が現れた。この子に聞けば何か分かるだろうか…あの時の事を…今の状況を…そして…

 

 

 

この『左目』の事も…。

 

 

 

和人は痛む身体を無理矢理起こさせ、唯と二人その少女の後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘の所は…その…暖かい目で見てください。次から頑張りますんで…。

それではまた_(..)_

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