向こうの先生の大人のカードによって、この場にいない生徒が呼び出される。こちらもアトラ・ハーシスやシッテムの力を使って応戦する。
「援護射撃を行います。」
A.R.O.N.Aのサポートをしつつ、私も援護を行う。ヘリからの弾幕や上からビームの照射で相手の動きを制限する。普段との戦闘とは全く違うだろう。攻めあぐねているのがよく分かる。
「認証しました、座標変更を行います。5、4、3、2、1…0。」
場所を屋内、市街地、屋外へと変更していく。建造物や障害物の場所を変えて妨害をする。
「(でも…。)」
多勢に無勢だった。どれだけ行動を制限、妨害しても1人が動けばそちらの対処に回り、妨害が緩んだ途端に別の方も攻撃を再開する。
「(何よりも…。)」
あちらの目には宿っていた。諦めない気持ち、先生への信頼が、元の日常に戻ることができるという希望が。でも、それらはシロコ*テラーにはない。その諦めの悪さが勝敗を分けたのだろうか。
「砂狼シロコを対象にバリアを付与。」
悪あがきだ。でも、あちらの人たちはそれすらも乗り越えていった。
「ごめんなさい、先生…。こんなことを、望んだわけじゃないの……。」
『プレナパテス、沈黙…そして、別の時間軸のシロコさんは、倒れました。』
倒れたシロコ*テラーにあちらの先生が歩み寄る。
「"何があったの?"」
「何が…?私は自分の世界を滅ぼして、先生を殺して、舟を利用して、別の世界すらも滅ぼしに来た私に…『何』があったかと聞くの…?」
先生は真っ直ぐ見て言った。
「"先生が生徒を信じないと、何も始まらない…。"」
足音が複数聞こえてきた。アビドスの生徒たちがシロコを迎えにきた。みんなが自分たちの世界のシロコを救いに来た。
「君は……。」
ホシノを見たシロコ*テラーは蹲り、叫んだ。
「あああぁぁぁぁああああ!!!」
涙を流して地面を掻きむしり、ひたすらに謝る。
「私さえ、いなければ…!」
それを否定するかのようにこちらの先生が立ち上がる。
「(ああ、本当にどこまでいっても先生なのですね。)」
A.R.O.N.Aの元に向かう。見ただけでも相当な疲労が溜まっている様子だった。
「…その様子ですと休息が必要です。交代しましょう、次は私がやります。」
「ありがとうございま…。」
「対象『A.R.O.N.A』をスリープモードに移行。」
「……!何…を。」
A.R.O.N.Aを眠らせて光の玉に変換する。
「これが終わった後はどうするか、決めていましたよ。」
物語を少しだけ変えてしまう。けれど、これが私の最後の悪あがき。先生の手に大きなエネルギーが溜まっていく。それと同時にウトナピシュティムにもエネルギーが溜まる。あちらのエネルギーが早く溜まり、先生に打ち込まれる。
「これが、私の最後のわがままです。先生、あなたが経験することのなかったキヴォトスの日常を過ごしていってください。」
現実に顕現する。突然現れた私に全員が驚く。私は先生に…プレナパテスに抱きつく。
「私の神秘を対象『プレナパテス』に移行。対象『プレナパテス』の色彩を私に移行。」
今のプレナパテスは先生を色彩でつつみこんだ、いわゆる卵の状態だ。プレナパテスの色彩を剥がしつつ、私の神秘を流し込む。
「…お帰りなさい、先生。」
プレナパテスの殻が剥がれ、中から現れたのは初めて会った時と同じあの姿。一つ違う点と言えば頭の上にヘイローがあること。
「砂狼シロコさん。」
「………。」
シロコ*テラーにも抱きつき、色彩を吸い取る。完全には剥がせなかったけど、元のシロコより少し成長した姿になった。逆に私の体はプラナが成長した姿に変わった。
「これは……。」
「『脱出シーケンス』起動。」
シロコに先生を抱えさせ、キヴォトスに送り届ける。私は先生たちの方へ顔を向ける。
「…先生、お時間はありますか?」
遅くなりました。