シッテムの箱舟計画   作:菓子中毒

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変えられない

 <列車砲 シェマタ>、アビドス編3章にて登場する兵器である。本編なら大した活躍を見せることなくヒナと万魔殿によって解体される物である。…そう'本編なら'である

 

 

 

 

 

「ハッ…ハッ…ハッ…。」

 

 シッテムの箱に存在しているアロナは全てを見てしまった。列車砲 シェマタによって生徒が簡単に吹き飛ばされ、命を垂らしていく様を。

 

(こんな…ことって…。)

 

 アロナは絶望していた。子供が、生徒が命を垂らしていることに、救わせる気のない世界に、何より浅はかにも傲慢にも全てを救う気になっていた自分に。

 

(そうだ先生、先生は…!)

 

 主人公である先生がいればきっと…!

 

「先…せ…い。」

"アロ…ナ、私は大丈夫だよ。"

 

 シェマタの威力はバリアによって軽減されているとはいえ、全てを防げるものではなかった。顔の半分が火傷を負い、片腕からは大量の血が垂れていた。

 

"とりあえずみんな…は…。"

 

 先生もこの惨状に気がついたらしい。目が大きく見開かれ、呼吸も荒くなっている。当然だ、自分を信用して協力してくれた生徒が亡くなっているのだ。しかし先生はあらゆる責任を負い、生徒を導いていく'大人'であった。

 

"…っアロナ、まずは目の前のことから片付けよう。"

「わかり…ました。」

 

 シェマタを破壊しなければ犠牲になった生徒を弔うこともできない。

 

"一体どうすれば…。"

「ごめんなさい先生、遅れたわ。」

"ヒナ!"

「これは思ってたよりも酷いわね…。」

"ごめんヒナ!君の仲間たちを守ることができなかった…!"

「謝罪は後回しよ先生。まずはアレをどうにかしないといけないわ。」

"…そうだね。あれほどの大きさのものに普通の武器は通用するかな…。"

「外部の装甲は頑丈だけれど攻撃が通らないわけじゃないわ。問題はその中の動力源。アレが爆発でもしたらここら一帯が更地になるわ。万魔殿にも応援を要請しているわ。私が注意を引きつつ攻撃を行う。先生はサポートをお願い。」

"…わかった。ヒナ、気をつけてね。"

「…ええ。」

 

 ヒナはそう言うとシェマタに向かい、攻撃を行った。シェマタの大きさではヒナの素早さに対応できずにがむしゃらに動くことしかできていなかった。

 

"私にも何かできれば…"

 

 先生は己の無力感に苛まれていた。生徒一人だけに全てを任せている自分に不甲斐なさを感じていた。

 

「先生!大丈夫!?」

 

 突然後ろから声が聞こえてきた。振り返ると生徒が三人立っていた。

 

"セリカ!ノノミ!シロコ!みんな大丈夫!?"

「それはこっちのセリフよ!すごい出血じゃない。」

"これぐらいへっちゃらだよ。"

 

 アビドスのみんなは無傷とまではいかないが多少の傷を負った程度で済んでいた。

 

「ならいいけど、これからどうする?」

『シロコ先輩、聞こえますか?』

「ん、アヤネどうしたの?」

 

 無線機からアヤネの声が聞こえた。

 

『ヒナさんが抑えてくれているアレですが、どうやら攻撃によって装甲が破損しているようです。このことから私たちの武器でもダメージを与えることができるかもしれません。』

 

 よく見てみると所々装甲が剥がれている。

 

「先生、私が動力源に支障が出ず尚且つ動きが止められる場所を探します。」

"ありがとうアロナ。それじゃ、みんな行こうか!"

 

 弱点が分かればあっという間だった。みんなの銃撃によってシェマタは

煙を吐き出し、動くことは無くなった。

 

「やりました〜。あとはホシノ先輩のところに行くだけですね。」

"ごめんヒナ。途中、一人で任せちゃって。"

「気にしないで先生。アレを片付けられたのは先生の力があってのことよ。」

"そうだね。ホシノのところに行った後は…犠牲になった子たちを弔わないと。"

「…そうね。」

 

 アビドスの生徒、ヒナ、そして先生がホシノがいるところに行こうとした。

 

「先生止まってください!」

"どうしたのアロナ!?"

「小鳥遊ホシノさんの神秘が変化して…膨れ上がっています!」

 

 アロナが言い終わると同時に基地の方から光の柱が生え、建物が崩れていった。

 

(アレは…まさか!)

 

 崩壊した基地から出てきたものは小鳥遊ホシノだった。しかし、その姿は黒く染まっておりただならぬ威圧感を醸し出していた。

 

(ホシノ*テラー…!)

 

 ホシノ*テラーはこちらを一瞥したが向きを変え、シェマタの方へ向かっていった。

 

「ホシノ先輩…?」

「ん、何か様子がおかしい。」

 

 突然、ホシノはシェマタに攻撃を始めた。

 

「先生、今すぐ小鳥遊ホシノさんを止めてください!彼女の状態は普通ではありません。あのままではシェマタの動力源が爆発を起こしてしまいます!」

"みんな、ホシノを止めて!"

 

 アビドスの生徒は突然の事に動けずにいた。

 

「ッ!」

"ヒナッ!"

 

 ヒナはホシノ*テラーを止めるために目にも止まらぬ速さで接近していた。

 

「させないわ、小鳥遊ホシノ!」

 

 ホシノはヒナに向かって銃弾を放つ。

 

 

 

 

ありったけの神秘を込めた弾丸を

 

 地下生活者が行った不完全な'反転'ではなく徹底的に心を折った'反転'。自我がなければ手加減をすることはできない。ホシノのありったけの力を直に受けたヒナの体は、

 

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耐えることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 ヒナは腹部から大量の血を流しており、長くは持たないだろう。ホシノ*テラーはシェマタに攻撃を始めた。

 

"っ!みんな、急いでホシノを止めなきゃ!"

 

 アビドスのみんなはホシノに向かって走っていた。しかし、先生たちは動くのが遅かった。ホシノの攻撃は既にシェマタの奥深くまで到達していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動力源はホシノの攻撃に耐える術はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 [報告書]

  ・アビドス砂漠で大規模な爆発が発生、
    大きなクレーターが出現した。

  ・調査により、クレーターの中心部に黒い小鳥遊ホシノを確認。
    黒い小鳥遊ホシノを<ホシノ*テラー>と呼ぶことにする。

  ・シャーレに協力していた部隊は壊滅。
    部隊にいた生徒は全員死亡と判断する。

  ・ミレニアム、ゲヘナ、トリニティの会談により、アビドスを'立ち入り禁止区域'に指定。
    アビドスで生活している住民の避難を行う。

 

  




  ・クレーターの近くで先生を発見、救助した。
    先生は意識不明の重体とされた。
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