善人家とマイナーキャラで逝く人外魔境新宿決戦   作:雲丹に似たナニカ

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プロローグ

 

2018年10月31日 渋谷 21:15 

 

現代最強の術師、五条悟は特級呪物、獄門疆に今まさに封印されようとしていた。

 

「いやー、ここまでうまくいくとはね、感慨深いよ。君、本当に強すぎるんだよ。まあ心配しなくても封印はその内解くさ。100年…いや1000年後かな。おやすみ、五条悟。新しい世界でまた会おう。」

 

「はっ、言ってろ。出た後、真っ先にオマエのところいって殺してやるから。」

 

「おおー、流石に怖いね。ま、今回は私の勝ちってことで。獄門疆、閉門。」

 

その瞬間、四方にあった獄門疆が閉じ、現代最強の術師は封印された。

 

獄門疆の中で、五条は思案する。

 

「まずったよなぁ。色々とヤバいよなぁ。…ま、なんとかなるか。僕の生徒は言わずもがな、なんたって頼りになる先輩達がいるからね。期待してるよ、みんな。」

 

 

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都内のある病室。そこには全身が包帯で覆われた男、禪院直毘人が横たわっていた。特級呪霊 漏瑚の攻撃を受けてまだ生きているというのは、術師としても驚異的なことであった。しかし、誰の目からみても先が長くないのは明らかだった。微かな呼吸の音だけが響く中、一人の男が病室へと入ってくる。

 

 

「……父ちゃん。」

 

 

男の顔は見えないが、身にまとう呪力は大波のように荒れていた。それに反応したのか、直毘人は意識を取り戻す。

 

 

「……来たのか。 ガハハハッ、やられてしまったわ。」

 

 

「当たり前や、親の死に目やぞ。 来ないほうがどうかしとる。 ……んで、どこのどいつや?」

 

 

息子の初めて見せる姿に直毘人は目を大きく開かせる。

 

 

「……オマエ、もしかして怒っているのか? ク、ハハハハハッ」

 

 

死を目の前にして、豪快に直毘人は笑う。

 

 

「笑うなや。自分でも恥ずかしくなってくるわ。 はー、心配して損した。」

 

 

「いや、すまんすまん。 ……こんな俺でもしっかり親をやれていたのだとなと。」

 

 

「なんや、らしくない。 なんかもっとこう、やりたいこととかないんか? 今際の際やぞ。 ……それぐらい聞いたる。 言うてみい。」

 

 

しばらく思案した後、直毘人は言った。

 

 

「……酒だな。うん、それしかない。酒もってこい」

 

 

男は心底呆れながら、言う。

 

 

「やっぱ、酒カスはアカンわ。 全部アカンわ。 ほんま悲しなるで、こんなんが父親とか。 久々に酔ってないところ見たのに。 ……まあ、ええわ。 冥途の土産にしこたま呑んできや。 ……そうや、当主の件やけど、しばらくは代理として、俺がやるけどええか?」

 

 

「この騒ぎが収まるまでな。 オマエならやれるだろ。 扇や甚壱達もいる、うまくやれ。」

 

 

「おおきに。 酒は明日、送っとくから勝手に見といてや。 ……俺はもう止まらん、ここにも戻らん。」

 

 

そう言って男は病室を出ようとし、扉の前で止まって一言。

 

 

「……ありがとな、父ちゃん。」

 

 

そう言って、出て行った。 残された直毘人は静かに目を閉じて、明日の酒に思いを馳せながら意識を落とした。

 

 

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2018年 11月上旬の某日、禪院家にて禪院家の最強集団「炳」を筆頭に術師、非術師かを問わずあらゆる者たちが一同に会していた。高まる呪力と張り詰める緊張で、一秒が永遠に感じる中、中央の襖が開く。そこには、和装を優雅に身に着けた金髪の男、禪院直哉が立っていた。

 

 

「今日は集まってもらい、感謝やで。 早速だけど、前当主の意向に従って当主は俺やで。 期限付きやけどな。」

 

 

その言葉に、禪院家史上歴代最高の剣士、禪院扇が口を開く。

 

 

「……期限付きとは、どういうことだ? 今の禪院家をまとめるうえでオマエ以上の適任は居らんだろう。 私や甚壱はもとより、長寿郎殿は年も年で、蘭太は若すぎる。 説明をしてもらうぞ、直哉。」

 

 

「随分と高く見てもらって、おおきにやで。 期限については今、全国各地で起こっている結界の平定まで。 そして当主については、十種を持ってる恵君に渡そうと思うとる。 元々の意向がそうなっとんねん。 ま、今は緊急時やから、代理当主としてこの場に立たせてもらっとる。 そんで肝心の恵君やけど、あの甚爾君の息子で現在の実力は一級と比べても遜色ない。 成長分も加味すれば特級すらありうる。 こんな感じやね。」

 

 

それを聞き、まるで巌のような筋肉をもつ男、禪院甚壱は自らの兄弟である甚爾について思いを巡らせる。

 

 

(そうか、あの甚爾の息子か… 叔父としてしっかり見てやらんとな。 ……やはり、顔は父親似なのか?)

 

 

そして、普段あまり喋らない甚壱は口を開く。

 

 

「こちらとしては問題ない。 問題は次だ。 総監部より五条悟の封印を解く行為は禁止するとあった。 禪院家全体が関わることで、俺としても行動の方針を立てておきたい。 その辺、どうなんだ? ……って、何だその顔。」

 

 

「ごめんちゃい♥、そんなに話す甚壱君を初めて見たからびっくりしてもうた。 結論からいえば、平定には参加しない。 いや、できないの方が正しいね。 理由は二つ。 一つ目は後進の育成のため。 高専と話しつけてきて、あっちの子達が何とかできそうやし、ちょうど良い機会やったからやね。 これで実力不足そうだったら、ちゃんと俺らが出てたやで。 んで、本命は二つ目。 単純にやることが多い。 御三家として、平定後にやることを減らしておいたり、この機に活性化しそうな呪詛師の排除やね。 一応、実力があるといっても彼らは高校生で手続きとか分からんことがいっぱいあるやろし、高専だけじゃキャパオーバーになることもあるやろ。 それらを禪院家総出でやるっちゅうことやね。 ぶっちゃけ、今の総監部がこんなきな臭い文書を出してる時点でほぼ黒やと俺は思うとる。 あ、ちなみに活躍に応じて、ボーナス出すから頑張りや。 他に質問あるかいな? 遠慮なくいってくれな。」

 

 

そんな言葉に、禪院家の若き天才、禪院蘭太は気まずそうに口を開く。

 

 

「あの、失礼ながら直毘人様は、どうなっているのですか? 渋谷で重傷を負ったと聞き、心配で...」

 

 

その言葉に禪院家一同の顔が曇る。直毘人は昨今の禪院家の風習を大きく変え、御三家の中で唯一、近代化を進めた者だったからだ。甚壱や扇らと一緒に禪院家の長老らへと抗い、禪院に新しい風を吹かせた英雄だったからだ。その実力や精神も含めて、術師の中でもトップクラスだったため、渋谷で重傷を負ったという報告が入った時も信じられる者は少なかった。そんな状況だったため、安否が気になっている者も多かったが、実の息子である直哉が何も切り出さなかったため、聞こうにも聞けなかったのだ。

 

 

「……あんがとな、蘭太君。 父ちゃんやけど、昨日、好きな酒をしこたま飲んで、酔って寝ていると思ってたら、逝ってたらしいわ。 呪術師として働いていてこういう日がくるのも覚悟しとった。 ……しとったつもりやねんけどなぁ。」

 

 

直哉の言葉が途切れる。静かに息を整えながら言う。

 

 

「いずれ、黒幕には落とし前付けさせたる。 ……それにこれは呪術師、ひいては俺ら禪院家に喧嘩売ってんのと同じや。 俺ら禪院家が舐められたままでいいのか? いいわけないやろ。 これは戦争や。 持ってるもん全部ぶつけて、相手に地獄みせたるわ‼」

 

 

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当主が発した魂からの言葉に一同は雄叫びを上げ、直哉の高まる呪力にのせられて各々の戦意は最高潮に達する。

一人ひとりが活力にみち、溢れんばかりの呪力が場を満たす。活気に満ちる場の外で扇と甚壱は言葉を交わす。

 

 

「逝ったか、兄者... 心配するな、息子は立派に育ち、一人の人間として敬意を持たれる存在となった。 我らがやったことも無駄ではなかったぞ。 若き芽は芽吹き、次に託せたのだ。 お前も何とかいったらどうだ、甚壱。」

 

 

「……フン。 アイツはまだ先走る癖が抜けていない。 前よりは幾分ましになったがまだまだだ。 だが...」

 

 

「だが?」

 

 

「……あの言葉はよかった。」

 

 

「お前は相変わらず言葉が少ない。 もっと口数を増やせばよいものを・・・ そんなのでは甚爾には何も勝てぬぞ。」

 

 

「……それは反則だろう。」

 

 

少ししょんぼりしてしまった甚壱。そこへ・・・

 

 

「アハハ、そんなにいじめないでください。 甚壱さん、実はメンタル弱いですから。」

 

 

「フッ、そうか、すまぬな蘭太。 久々に会ったが元気そうで何よりだ。 しっかり飯は食べているのか? まだ若いのだからたくさん食べて、大きくならなくてはならん。 お前はこの禪院を担う者の一人なのだから。」

 

 

「フフッ、それ前も言ってましたよ。 それはさておき、真希さんはどうしているんですか? 真衣さんはいましたが姿が見えなかったので。」

 

 

「ああ、あの馬鹿娘は今、謹慎中でな。 ……兄者が助けてくれなければ、死んでいたかもしれないからな。 自らの実力と命を見誤らないように色々と教育中だ。 心配をかけてしまい、すまぬな。」

 

 

「いえいえ、無事ならよかったです。」

 

 

蘭太はある記憶を思い出す。

 

 

(説教するときの扇さん、本当に怖いんだよなぁ。 一回、術式で遊んで鍛練場のものを壊しちゃったとき、怒られたけど一番怖かった。 真希さん、大丈夫かな・・・)

 

 

「じゃあ、僕たちはいきますね。 早速、任務が入ったので。」

 

 

「む、俺もか。 ではな、扇。」

 

 

「ああ、気をつけろよ。」

 

 

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一同の結集会が終わった後、直哉は自室に戻りこれからのことについて、考えをまとめていた。 ある程度、区切りがついたところで父、直毘人について考えた。そして、送った酒の中でも彼が一番好きだった一本を手に取り、グラスに注いだ。 度数がかなり高く、辛みも強いものだったが、今はその痛みがありがたかった。

 

 

(俺が行ってれば、何とかなったんちゃうんか? 何でいつも大事なときに行けんねん。 ざっけんなや!!、ドブカスがぁ!!)

 

 

それは誰にも明かすことのない、禪院直哉の魂に刻まれた痛み。ずっと抱えていたものの堰が切れた。それでも、彼は痛みから逃げることなく自らに縛り付け、前へと進む。

 

 

(こっから、、こっからや!! 誰も置き去りにしない、最速の術師になってやる!! アッチ側に立つんは俺や!!)

 

 

翌日、様子を見に来た扇に酒を飲みすぎて、ゲロを吐きまくっているところを見られ、やはり失敗したかもしれない、兄者ごめんという気持ちと昨日、あんだけ言っといてこのザマは何だとブチ切れられる直哉であった。

 

 

 

 

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