善人家とマイナーキャラで逝く人外魔境新宿決戦   作:雲丹に似たナニカ

10 / 13
善人家とマイナーキャラで逝く人外魔境新宿決戦 <漆>

 

 

完全なる死から復活した男『針千鈞』と呪いの王『両面宿儺』の呪い合いは熾烈を極めた。 序盤は優勢だった針だが、宿儺の新技と術式が露呈してしまったことで形成が逆転した。 切り刻まれながら、リベンジを果たすため、両者領域を展開する。

 

 

「「領域展開!!!!」」

 

 

「伏魔御厨子!!!!」

 

 

「千鈞連段淵!!!!」

 

 

宿儺は閻魔天印を、針は祈りを捧げるが如く合掌をし、領域が展開される。 絶望の御堂が再来し、周囲を切り刻む。 現世にも閻魔大王が降臨したが、その中身は邪悪の悪鬼であり悉くを塵殺する呪いの王である。 対して、針の領域はシンプルだった。 シンボルとなる構造物も無く、怪しく輝く針だけがあった。 唯一、特徴的だったのはその風景だった。 まるで階段のように入り組んでおり、その最上部に針が立っていた。

 

 

(!!!! よしッ!!!! ……どうやらあの化物みてぇな領域は使えねぇみてえだなぁ!! 流石の俺も、押し合いをする前に外殻を壊されたらお手上げだったが、そうじゃねぇなら俺に分がある……!! 此処で仕留めきってやるよぉ!! 宿儺ァ!!!!)

 

 

宿儺は神技のような領域を扱えない。 黄泉路に逝きかけた後遺症として脳のダメージが尋常ではなかったのだ。 こうして領域を使えていること自体が奇跡ともいえるが、長時間の展開は治療不可の傷になりかねない。 薄ら笑いを浮かべて、領域を展開しているが、鼻血と吐血を繰り返しており、限界が近いのは明らかだった。 それでも領域を展開したのは純然たる興味そのもの。 呪いの王として呪術を愛する彼は己が知らない呪いがあることを許さない。 非合理的ではあるが、これこそが最強へと昇りつめた理由であった。 そして、限界なのは針も同じだった。 度重なるダメージによって、意識は朦朧としており、領域を展開した後は暫く動けなくなるだろう。 そうなれば、大きな隙を宿儺に与えることになり、今度こそ死は免れないが此処で止まっては勝てない。 そう直観が判断し、領域を展開した。

 

 

(今の俺では外殻を壊すことはできない。 ……それに加えて、領域も長くは持たんだろう。 だが、押し合いは俺が優勢なようだな……!! ……七対三といった所か、……必中は打ち消せているようだが、攻めなければ俺には勝てん……。 ……さて、どうする……?)

 

 

(十分だ……!! もとより領域の押し合いで勝てると思ってねぇ……!!!! 俺が狙ってんのは領域内での『無制限の術式使用』……!!!! ……宿儺、お前はまだ針の本当の恐ろしさを知らねぇ……。 魅せてやるよォ……!! 冥途の土産に持っていきなァ……!!!!)

 

 

「往くぞォ!!!! 宿儺ァ!!!! 『術式解放!!!! 万針螺鈿!!!!』」

 

 

「!? ……ほう、術式解放とな……!!!! ……貴様で三人目だ。 ……良いだろう、魅せてみろッ!!!! 針千鈞よ!!!」

 

 

針の頭上に方位磁針のように一本の針が現れる。 ギラついた笑みを見せながら、針は宿儺に肉薄する。 宿儺は今、領域のバフ効果によって、肉体性能が倍以上になっている。 その力から繰り出される打撃は伝承に残る鬼のようであり、拳を突き出せば山を削り、蹴りを繰り出せば谷を彫るというような馬鹿げたものであった。 だが、どんな攻撃も当たらなければ意味はない。 針の頭上で忙しなく動く方位磁針は、まるで宿儺の攻撃を予知しているが如く動き、その動きに指し示されるように針は宿儺の攻撃を回避する。 己の攻撃が悉く避けられ、針の攻撃が次々と当たることに、宿儺は考察を進める。

 

 

(ッツツ……。 ……成程、あの針か……!! ……仕組みは分からぬが、羅針盤のように俺の攻撃を予測し、奴に先取りして伝えているというわけか……!! ……何、力押しだ。 術式を使っているとはいえ、俺と殴り合えるというのは実に面白い……!! ……予測しているというのなら、それ以上の速さで殴りつけてやろう……!!!)

 

 

戦闘中、先の未来が見えるというのは強力だ。 シャルルが秤に見せたように、ある程度の実力差があっても通用する上に、優勢にすら成り得る。 圧倒的なアドバンテージを針は持っていると言えるだろう。 だが、地力の差はあまりにも大きい。 際限なく加速し、パワーを上げ続ける宿儺に、針は徐々に苦い顔をし始める。

 

 

(!? ……おいおい、冗談だろぉ……!!! ……此奴、動きが鈍るどころか更に鋭くなりやがる……!!! 今は万針螺鈿のおかげで何とか拮抗してるが、このままいけばそれも崩壊しかねない……。 ……それに、このままいけば勝ち星も見えたが、俺の領域が塗りつぶされる方が早い……!!! 宿儺と領域の押し合いするのも楽じゃあねぇんだよ……!!! 残りの三割が塗りつぶされるまで、残り時間も少ない……。 一気にやるしかない……!!!)

 

 

針が大技の準備をするために、時間稼ぎとして様々な針を射出する。 宿儺の前方には得体の知れない針の群れが迫っていた。

 

 

「無駄だ、『解』!!!」

 

 

「甘めぇな……!!」

 

 

解で針の群れを薙ぐ宿儺だったが、脇には針千鈞がいた。 いや、正確には『針分身』というのが正確だろう。 即座に針分身を破壊する宿儺だったが、破壊した瞬間破裂した。 その中から出てきたのは無数の毒針。 毒針といっても宿儺に毒は効かないため、針が独自に改良した浸食する針である。 針が自動的に対象者の体内に侵入し、中から呪力を発散するというものだ。 少なくない本数の針を食らった宿儺の体がボコボコと破裂する瞬間、皮膚の表面を捌で最適に薄く削ぎ取った後、足を止めることなく、詠唱を唱える。 ここまで、約18秒。 並の術師であれば浸食針が刺さった時点で、操られて戦闘不能だが、宿儺は即座に最適解を見つけ、実行した。 針の持ちうる攻手、搦手を次々にいなし、遂に投了の一手である世界を断つ斬撃を放った。

 

 

「ククッ、終わりだなぁ!!! 『龍鱗』、『反発』、『番いの流星』……『解』!!!!」

 

 

「ッツツ……まだだぁ!!!! それはさっきも見たんだよぉ!!!! ……針はよぉ、……縫うもんだろうがぁ……!!!! 閉じろォ!!!!」

 

 

瞬間、針の左手が途轍もない速度で振るわれる。その手は空を切り、確かな命令を世界へ刻む。 それは領域内での『無制限の術式使用』が解放された時でしか扱えない絶技。 『世界を縫い付ける針』である。

 

 

「ここは領域……!!!! 俺の世界に変わりはねぇんだよ……!!!! ……それとも驕ったかぁ、宿儺ァ!!!! ……それを、世界を術式対象にまで拡張できるのが自分だけだと……。 なめんじゃねぇ……!!!!」

 

 

「クハッ、……嗚呼、良いぞォ!!!! そう来なくてはなァ、針千鈞よ!!!! 今、この場では俺達が世界の中心だ……!!!! 思う存分、臓腑を!!!、憎悪を!!!、ぶつけ合おうではないかッ!!!」

 

 

宿儺の次元斬は針の技によって縫い付けられて動けない。 互いに嗤いながら、頸を狙いあう。 この世の果てで行われる呪い合いは加速し、臨界へと達する。 青は藍より出でて藍より青し。 ならば、この場を彩る色は何だろうか。 闇より出でて、闇より黒く。 暗黒から誕生した深淵の如き黑き闇が二人を何よりも鮮烈に彩った。 決着まで残り刹那、その刹那を二人は誰よりも長く過ごすのだろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

謎の猛者『針千鈞』によって、命を救われた禪院真希は宿儺と針の戦いをじっと見ていた。 常人では感じ取れない距離ではあるが、今の彼女は完全なるフィジカルギフテッド。 この距離でも余裕で見えるようだ。 そして、痛感したのは二人のレベルの高さ。 それにショックを感じると真希は思っていたが、それ以上に針の馬鹿げた戦い方に気づきを得ていた。 戦いとは、殺し合いとは、……この世はかくも自由だったのかと。

 

 

(……多分、アイツらには今の私が見えないものが一杯見えているんだ。 ……切り替えろ、皆の覚悟が私を此処に立たせている。 感じろ、世界を、……私の在り方を……!!)

 

 

そう思案し、集中する。 自由とは何か、世界とは何か、自分とは何か。 二人の死闘を誰よりも肌で感じ取り、自分に見えるはずの世界を探す。 今、彼女は羽化を始めた。 その在り方はかの悟りを開いた覚者のようであり、人類の特異点となりつつある彼女は、誰も知らない可能性を示し始める。 明日を往く少女を止められる者などいないのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

決着は近い。 針と斬撃が悲鳴のような絶叫を響かせぶつかり合う。 このままいけば、針は領域が塗り替えられ、大量の御厨子によって、今度こそ殺されるだろう。 だが、そんなつまらない結末を互いに望まない。 互いに出し切ろうという覚悟が伝わったのか、終わりなき深淵に終末が訪れる。

 

 

「……ククッ、さぁ、魅せてみろ!!!! 針千鈞ゥ!!!!」

 

 

「……余裕こきやがって、……だが、本当に強かったぜぇ、宿儺ァ!!!! 最後に勝つのはこの俺だァ!!! 極ノ番『真人魔針』!!!!」

 

 

そういって針は手を腕に上げて、合わせると体が作り変えられていった。 そうしてできたのは人間大の巨大な針であった。 極ノ番『真人魔針』の効果は異例ともいえるもので、自身を作り替え、一本の針になることだった。 宿儺に対し、中途半端な技では殺し切れない。 一念鬼神に通ずるが如く、己を究極の一へと改造し、宿儺を穿つ準備をする。 宿儺がとったのは、原作で真希が禪院家を滅ぼすときに使った『不知火型』。 四本の手と目を駆使し、来る魔人の襲来に備える。 

 

 

(恐らく奴の狙いは俺の頭……。 一撃で殺し切るなら其処しかないと奴は考えている。 そして、どの程度の速さで来るかは分からぬが尋常ではないことは間違いないだろう……。 生半可な今の俺の解では妨害にすらならん……。 ……やれるものならやってみろッ!!!!)

 

 

(受け止めるつもりか……? ……だとしたら、好都合……!! 座標の最終確認も済んだ……!!、世界への干渉も実験済み……!! 今度こそあの世に行きなぁ……!! 宿儺ァ!!!!)

 

 

そう結論付け、二者が互いに向き合う。 瞬間、針が宿儺のもとへ引っ張られるが如く、射出された。 極ノ番によって己を針と定義し、領域内で相手の存在する座標を確認した後、点と点を結ぶが如く線を紡ぐように縫い合わせる。 これが針の最後の切り札だった。 勿論、この技も領域内でしか使えない。 一つ目は己の体を針へと変えるため、生命維持に必要な臓器などが消失するためである。 いくら術師でも、心臓など必要な臓器は数多くあるので、それらの代わりに機能できるようになるのは領域内でしか不可能ということだ。 二つ目は座標の確認ができないことだ。 視覚も消失するため、頼れるのは領域の位置情報にしかなくそれらを把握しないと敵がどこにいるか分からない点があることだ。 三つめは世界を縫い付ける対象に自身を入れることだ。 点と点を結ぶ間にあるものが標的であり、必殺の威力を持たせる必要上、領域内の無制限使用許可が必須だったのだ。 そして、全ての準備が整った今、遂に鬼殺しの槍が放たれる。 全てを貫くとさえ思わせる、その様子は神話に出てくる聖なる槍のようでもあった。 そして轟音が響き渡った瞬間、宿儺は自身の過ちにに気付く。

 

 

(!? ……しまった、これは防御無視、回避無視の……!!!! ……ッツツ、間に合えッ!!!!)

 

 

「馬鹿がッ!!!! 終わりだよぉ!!!! 脳漿ぶちまけて死に晒せやぁ!!!!」

 

 

一筋の光が通り過ぎ、宿儺の体を通り過ぎる。 その威力は言葉を失うほどで、世界を対象とした術式使用によって、局所的な地震さえ起きた。 恐らくズレた世界が元に戻ろうとした結果、大きな衝撃が生まれたのだろう。 現世に開かれた黄泉の舞台は跡形もなく崩壊し、終焉に終わりを告げた。 神の槍は鬼神を貫き、大地に伏せる。 死から黄泉返りし悪鬼は、黄泉より遣わされた神の槍によって今度こそ終わりを告げる筈だった。 針が通った大地は、まるで何も無かったかのようにえぐり取られており、塵一つ其処には無かった。 だが、宿儺の気配は消えない。 何度も、何度も間違いだと思い、呪力探知をやり直すが結果は変わらない。 針の顔色は青ざめ、鳥肌が絶え間なく立ち、度重なる戦闘による疲労で思わず膝をつく。 無理もないだろう。 復活して最初の一戦で術式の限りを尽くして、宿儺と殺し合い、あまつさえ体に大きな負担のかかる技を連発したのだから。 悪鬼は死せず、甦る。 土煙が晴れぬまま、斬撃が降り注ぎ、針は地に沈む。

 

 

「……日に何度も死線を越えるというのは、流石の俺でももう御免だ。 ……そして、良い技だったぞ、針千鈞。 貴様の技、しかとこの身に刻んだ……。 ……ククッ、それもう一度だ。 ……黄泉へ行って出直してこい。」

 

 

「こいつ、またッ……!! ……クソッ、ぐあああああああああああああ!!!!」

 

 

容赦なく斬撃を飛ばし、針をゆっくり刻み続ける。 もう一度、戻ってこられるように最大限の痛みをもって針を送り出す。 宿儺なりの感謝の形だったのだ。 だが、本人にしてみれば苦痛以外の何でもなく、絶望を抱きながら再び死ぬことへの恐怖に震えることしか出来なかった。 その時だった。 疾風吹き荒れ、現れたるは、現代の鬼人『禪院真希』。 その速度は前回の比ではなく、この世の在り方を見出した一人の人類の到達点でもあった。 一瞬の間に針を抱えて、離脱し、そっと地面に寝かす。

 

 

「ククッ、そうだ、それで良い……。 ……改めて、極上の肉でこの戦いに決着をつけるとしようッ!!!!」

 

 

「あんたらが見てた世界ってこんな感じなんだな……。 ……聞こえてるか分からないけど、針の人にも礼を言っとくよ。 ……ありがとうな。 ……そして、……決着をつけよう、宿儺。」

 

 

真希は静かにそう語り、釈魂刀を構える。 宿儺もその雰囲気を感じ取ったのか、構えをとる。 瞬間、二人が激突し、地面が大きく揺れた。 禪院真希は今、人類が到達したことのない最先端にいる。 完全なるフィジカルギフテッドというのは見方を変えれば、人類があったかもしれない可能性の一つである。 超常とさえ思わせるその肉体は、呪術の因果を破壊し、その外側へ弾き出る。 因果の外側に出でた怪物が宿儺に牙を向く。 

 

 

 










今回もお読みいただきありがとうございます!!!! まず初めに誤字報告をしてくれた、+0様、カルナイ様、大変感謝です!! 二人のおかげで私が気付けないミスもすぐに気づいて修正してくださるので、本当に有難い人たちだと思っています。 本当にありがとうございます!! そして、ここからは余談ですが、書いてて宿儺めっちゃ強いなと思いました。 比べるのもおこがましいですが、芥見先生も宿儺強すぎて、流石にヤバいと思ったりしたのかなと気になりました。 もし感想いただければ、作者がウキウキになりますのでよければ感想お待ちしております!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。