善人家とマイナーキャラで逝く人外魔境新宿決戦   作:雲丹に似たナニカ

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善人家とマイナーキャラで逝く人外魔境新宿決戦 <壱>

 

 

11月16日 ??時??分

 

 

この日、高専術師達は埼玉県木呂子鉱山にて、現代最強の呪術師である五条悟を復活させるべく、天使とともにこの地へ来ていた。 そして、封印から解けた五条悟は最深部8000メートルの日本海溝から一瞬で脱出し、羂索のもとへと来ていた。

 

 

「取り込んだ天元から『裏門』のことは聞いていたから、仮に封印が解けても君を殺せるように海溝に放り込んだんだけど……、……マジでどうなってんだよ、君は。」

 

 

そこにはまるで宝石を超えるような輝きを内包する六眼と世界の一切を拒絶する無下限呪術を併せ持つ、天上天下唯我独尊の存在、五条悟が其処にいた。

 

 

「……オマエさ、もっと言葉を選べよ。 今際の際だぞ。」

 

 

静かにそう告げ、羂索にトドメを刺そうとした瞬間だった。 冷や汗をかいて後退しようとする羂索を尻目に、異形の鬼が急接近した。 羂索が顔を上げた先には、現代最強と史上最強が無限を境にぶつかり合っていた。

 

 

「しばらく見ないうちに変わったね、恵。」

 

 

「……覚えているか?」

 

 

宿儺が問うたのは最初の約束である『小僧の体、モノにしたら真っ先に殺してやる』だった。 自分が居ながら最強と称する彼を呪いの王が許すはずもなかった。 

 

 

「クックッ、こっちの小僧になってしまったが殺す」

 

 

だが、宿儺には少し耳の辺りに火傷が残っていた。

 

 

「悠仁から逃げた奴が……って、お前もしかして、扇さんと戦った? ……あー、成程、どうせ戦って半身でも吹き飛ばされたんでしょ、フッ、マジウケる。 オマエさぁ、術師ってか人間を舐めてるよね。 だから、呪いの王(笑)ともあろう人が一生消えない傷をつけられちゃうんだよね。 はー、おっかし、お前馬鹿じゃん(笑)」

 

 

ここぞとばかりに好き勝手言いまくる五条に限界がきたのか、傍に控えていた裏梅が飛び掛かる。

 

 

「貴様っ!!」

 

 

だが、五条相手には遅すぎた。文字通り、次元が違うのだから。

 

 

「てめえは誰だよ。」

 

 

ドカッと後ろへ勢いよく吹き飛ばされる裏梅を身を少し動かして躱しつつ、火傷のことに関して考えを巡らせる。

 

 

(禪院扇との戦闘での傷は粗方癒えた。 が、例外もあった。 奴が繰り出した最後の炎だ。 俺の『竈』で大方逸らしたが半身は焼け焦げた。 ……それはいい、問題は奴の炎には退魔の効果があったということだ。 浴をして体を魔に近付けた分、奴の炎は俺にはよく刺さるだろう…… 俺の反転術式を以てしても痕を消しきることは出来なかった。 ……ククッ、楽しみだ。 次会った時は殺すと言ったからな、奴もより死に物狂いでくるだろう。)

 

 

そう脳内で極上の皿について、どう味わうか吟味していたところ、後ろに羂索が降りてきた。

 

 

「待て宿儺、彼と戦う前に私との約束を果たしてもらう。」

 

 

「……いいだろう。」

 

 

そして、交わされた縛りはたった一つ。 12月24日、新宿にて有史以来史上最大規模の呪い合いをする。 これ一つだった。 相手は呪術全盛平安の世にて、数多の術師を葬り頂点に立った男。 それと単騎で戦うというのは誰もが首を横に振るものであるが、五条悟だけは例外である。 何でもないような飄々とした顔つきで、しかし溢れる自信を隠そうともせず傲慢に言う。

 

 

「勝つさ。」

 

 

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決戦前、五条は禪院家の一同と会っていた。

 

 

「いやー、迷惑かけたねー。 皆、元気?」

 

 

「漸く、仕事が終わったところやから、ちょっぴり元気ないみたいやね。」

 

 

「ふーん、……そういえば、扇さんって宿儺と戦ったでしょ。 やっぱり強い?」

 

 

「……アレが強くなければ、私らは塵だ。 お前に限ってはないと思うが油断するなよ。」

 

 

「フフッ、気を付けるよ。 んで、甚壱さんは? 出来れば顔見ておきたいんだけど?」

 

 

「アヤツはお前に会いたくないそうだ。 ……勘弁してやってくれ。」

 

 

「えぇ、ひっどーい。 最後の別れになるかもしれないのに。」

 

 

「……フン、良く言うわ。 負ける気など微塵もないくせに。」

 

 

「それはその通り。 戦う前から負ける気なんてあったら勝てるわけないじゃん。」

 

 

「そのことについてやけど、後で少ーし時間もろてもええか? 一つ保険を仕込んでおきたいねん。」

 

 

「え、何。 ……僕の戦いを邪魔するものじゃないよね?」

 

 

五条は冷たく直哉に問いかける。 学生時代以来、初めて覚醒した力を存分に使える相手がおり、自らでも想像できない戦いになることは五条自身も本能で分かっていたため、それを邪魔される行為は味方でも看過できないものとなっていた。 返答を間違えば、命すら危うい。 そんな状況で直哉は落ち着きながら言った。

 

 

「ちゃう、ちゃう、そんなことせえへん。 ただ一つ、『保存』をさせてもらいたいねん。」

 

 

「……視た感じだとかなり強くなってるね、……術式?」

 

 

「せや、別に戦闘中は何もできんし、あくまで保険や。 あ、縛ってもええで。」

 

 

「……確かに大丈夫そうだね、いいよ、何でもバッチこいってもんだ!!」

 

 

「おおきにやで。 ……ごめん、悟君、席外してもろてええか?」

 

 

「ん、じゃあね、……あ、あと最後に礼を。 僕がいない間、生徒の面倒みてくれてありがとねー、んじゃ、言いたいことはいったからバイバーイ。」

 

 

そう言って、嵐のように来て嵐のように去っていった五条であった。

 

 

「はぁ、やはり奴といると疲れるなって……どうした!? 直哉!?」

 

 

其処には何故か顔から汁という汁を垂れ流す直哉がいた。

 

 

「うぐっ、うぐっ、やっぱりアッチ側は別格やね…… ……危うく悟君の前で絶頂するとこやったわ。」

 

 

「(ドン引きして、刀に手をかける扇) ……お前、直哉の姿をした呪霊か?……一思いに……」

 

 

「わー、扇君ストップや!! ……相変わらず、全く冗談が通じひんなぁ。 ユーモアとかないんか?」

 

 

「アレがユーモアなら、私にとっては不要だな。 ……行くぞ、時間は有限だ。」

 

 

そう言って、二人並んで目的地へと歩いていくのだった。

 

 

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五条が去った後、直哉は全員集合を命じ、今後の予定について皆に話した。

 

 

「まずは皆、仕事お疲れさま。 次なんやが、これから、この死滅回遊平定への最終段階に高専と一緒に協力していくで。達成条件はシンプル。 死滅回遊の仕立て人である羂索、そして両面宿儺の討伐、これだけや。 厳密に言えば、羂索を殺しても死滅回遊は終わらんのやけど、これ以上面倒がなくなるから、実質解決ちゅうーわけや。 他の仕事は皆でやったし、あとは大詰めである、黒幕ぶっ殺してハッピーエンドってわけや。」

 

 

直哉は続ける。

 

 

「んで、今回、俺らが請け負うのは宿儺のほうや。 悟君が出るから負けることはないやろうけど、……念には念を入れてな。 俺ら武闘派の術師の出撃は三番目や。 一人目は悟君、二つ目は鹿紫雲一っていう江戸の術師。 どうしても宿儺と戦いたくて、現世に蘇ったのやと。 ……肝心の俺らやけど、出るのは、俺、炳、んで、あと後方支援として躯倶留隊やね。 ちなみに、隊長の信朗は俺らと前線な。 ……何か嫌な顔しとるけど、実力あるの知っとるからな、逃がさへんで。 ……ここで大変言いづらいのやがな、前線に出ると言うたけど仕込みの用意ですぐにはいけへんのやね。 だから、俺がくるまで時間稼いでほしいのやけど、……いけそう?」

 

 

その言葉に一同の体が強張る。 無理もないだろう、何せ相手は史上最強の術師なのだから。 だがしかし、炳のメンバーは違った。 まるで相手を得たとでもいうような獰猛な笑みで直哉に返した。

 

 

「無論だな、未だこの身は未熟なれど、私は生きて帰ってきた。 ……それに皆がいるのだ、撃滅なぞ容易いだろう。」

 

 

「扇に同意だな。 『勝てない勝負はしない』、これは術師に限らず、一般に生きていくことでも大事なことであるが、そもそも、猛者二人が死に物狂いで戦うのだろう。 ……少なくとも、何もできずに敗北ということはあるまい。 勝ち目は相応にある。」

 

 

二人に続き、禪院の若き天才、禪院蘭太は短く続ける。

 

 

「僕は先輩方のサポートを全力でするだけです!!」

 

 

「…………」

 

 

もはや何歳なのか知るものがいないとされる長寿郎は、顔は笑いつつも無言であった。 しかし、その立ち上る呪力の流れからして、史上最強の胸を全力で借りられるという生涯にない機会に、胸を躍らせているのは誰の目から見ても明らかだった。

 

 

「みんな、やる気満々みたいやね。 …作戦は前から進めとるのと同じや、俺ら禪院家の力、魅せてやろうやないか!!」

 

 

その言葉に全員が胸を震わせ、士気は頂点に達し、宿儺戦への準備は今、最高の状態で整った。 歴代でも粒揃いといわれる禪院家が史上最強の術師、宿儺相手にどこまでやれるのか、今はまだ誰も知らない。

 

 

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2018年 12月24日

 

 

遂にその日はやってきた。 この戦いに敗れれば、人類には絶滅すら見える。 まさに全身全霊を以て、行われる最強の呪い合いは五条悟の200%の虚式『茈』を先制に始まった。 ただの殴り合いで新宿のビル群は崩れ落ち、そこから行われる領域合戦は呪術戦の最高峰である領域を連続で出し合うという異常事態であった。 互いに拮抗した中で、宿儺が禪院家の至宝『魔虚羅』を繰り出し、ダメ押しとばかりの顎吐の出現に戦況は宿儺に傾くように見えたが五条は終わらない。 黒閃の連発による潜在能力の解放、出力最大の蒼、そして詠唱の後出し。 極限の状況下でこれ程に自らの術式を幅広く運用できるのは現代最強に相応しい術師であることを証明していた。 無制限の虚式『茈』を刻まれた宿儺は、全身に傷があり、片手も消し飛ばされていた。 対して、五条は度重なる黒閃によって、反転術式の出力を取り戻し、自身の『茈』で負った傷も回復しつつあった。 誰かが言った、「五条の勝ちだ。」と。 瞬間、宿儺から放たれた世界を断つ斬撃は五条の体を半分に切断していた。 

 

 

「……天晴れだ、五条悟。 生涯貴様を忘れることはないだろう。」

 

 

死闘を尽くし、全てを出し切った相手からの惜しみない賞賛。 夢か幻か、五条は笑ったような姿を残し、最強同士の決着は幕を閉じた。 次に戦地に投入されたのは、雷神、鹿紫雲一。 太平の江戸の世で最強を誇った彼は誰よりも速く、待ち焦がれた最強のもとに向かう。 そんな中、上空から姿を見せたのは、凍星、裏梅。 それに追随するように最狂のパチンカスである秤金次が足止めに向かう。 秤の領域が裏梅を捉えても氷塊は降下を続け、降りてきたのは万の置き土産である「神武解」。 極大の雷を放つが、鹿紫雲には効果が薄く、宿儺に問いを投げつける。

 

 

「宿儺、オマエは最強に成ったのか? それとも生まれながらに最強だったのか?」

 

 

「……クッ、クッ、クッ、贅沢者め。 教えてやる、来い亡霊。」

 

 

その言葉を皮切りに迅雷の如き速さで飛び掛かる鹿紫雲。 それらに反応しつつ、鹿紫雲は獰猛に嗤い、手札を切る。 

 

 

「術式解放!! 『幻獣琥珀!!』」

 

 

そのあまりの加速に宿儺は反応しきれず、左右に二発、強烈なパンチを浴び、吹き飛ばされる。 脳内の電気信号の活性におよる敏捷性の向上、物質の固有振動数に最適化された音波、照射されたものを蒸発させる電磁波。 これらを可能にする鹿紫雲の体は人の域を超えており、宿儺に猛攻を仕掛ける。 そして、宿儺もまた意図的に中断していた受肉による変身の再開という切り札を切り、万全の肉体で戦いながら、鹿紫雲に答えを説く。

 

 

「……強かったのだろう?、貴様は? 貴様に認められたいと向かってきた者達を手づから屠った。 ……これが慈愛でなくて何だというのだ。 俺たちは強いというだけで愛され、愛に応えている。 それでも尚、孤独を憂うから贅沢者といったのだ。」

 

 

「アンタはそれで満足なのか?」

 

 

「他者に満たしてもらおうなどと考えたこともない。 俺は俺の身の丈で生きているに過ぎないからな。」

 

 

「……飽きるだろ。」

 

 

「存外、人間の味は多種多様で刹那的でな。 死ぬまでの暇つぶしとし啜る分には丁度いい。」

 

 

その言葉を最後に、宿儺は鹿紫雲から目を離す。 ここが運命の分かれ目となった。

 

 

「……来たか。」

 

 

其れは本来無い筈のイレギュラー。 禪院扇の襲来を察知して、宿儺は鹿紫雲の命が尽きるほんの刹那、目を離してしまった。 答えは得た、全力も受け止めてもらった。 残る命は風前の灯火、……何も悔いなどないはずだった。

 

 

(……気に食わねえ、奴には全てを受け止めてもらった。 ……だが、アイツは無意識に誰かを待ってやがった。 

 本当に、本当に小さな心の隙間。 だが、確かに在った、俺だけじゃなかったんだ。)

 

 

それは鹿紫雲の心の底から出た本音。 己を前にして、他者が入り込む隙間が少しでもあった。 それが鹿紫雲にはどうしても気に入らなかった。 故に最後に残すのは瞬雷、嫌がらせであった。 宿儺の神武解に迫るは小さな光、鹿紫雲が放った最後の煌きであった。 何が起こるか宿儺はまだ何も知らない。

 

 

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「……来たか。」

 

 

宿儺が見上げた上に空は無く、其処に在ったのは空を覆う天蓋が如き、無数の拳であった。

 

 

「甚壱!! 落とせ!!」

 

 

扇が声を張り上げ、甚壱が渾身の力をもって、術式を叩きつける。 その威力は凄まじく、当たった一帯が一瞬で更地になってしまう程だった。 しかし、宿儺にダメージを与えるには程遠く何とも無いように起き上がる。

 

 

「随分と……仲間を連れてきたようだな、禪院扇よ。」

 

 

上空から降りてきたのは禪院家最強の術師集団『炳』。 原作と違う点は二つ。 一つ目は彼らが反転術式をある程度、使える点だ。 扱う呪力の幅が広がり、自らの術式に関して深い解像度の視点を有していることだ。 二つ目は彼ら全員が高専資格条件で最低でも『1級』の実力を認められた者達で構成されている点だ。 個人の実力もさることながら、真の実力は炳での集団戦闘で発揮される。

 

 

「此方も本気だからな。 ……それより、そちらこそ随分と呪力が萎えているが、その状態で私達に勝てるとでも?」

 

 

「試してみるか?」

 

 

そういった瞬間、宿儺は彼らに斬撃を放つ。 それは完全体になったことで扇との戦闘時よりも出力が跳ね上がっているものであった。 対して、彼らは驚きもせず、各々の動きを実行する。 最初に前に出たのは、禪院長寿郎であった。 彼の術式によって地面から腕が生え、斬撃を弾き飛ばす。

 

 

(ほう、地面を操る術式か。 ……厳密には違うのだろうが、俺の術式を防ぐのではなく弾いた点から、あの腕……かなりの強度があるな。 こやつは全員の盾の役割を果たしているのだな。)

 

 

長寿郎の術式について、考察を進める一方で、長寿郎以外の三人の姿が消えていた。

 

 

(!? ……速いな。)

 

 

宿儺の両脇から扇と甚壱が迫る。 扇は既に簡易領域を発動し、甚壱は拳を構えている。 二人は宿儺に肉薄し、途轍もない手数で宿儺に攻撃の暇を与えない。 甚壱の無双の肉体から放たれる剛拳で宿儺を崩し、針の穴を縫う様な精密な斬撃で宿儺を削る。 まさに電光石火の攻撃は宿儺が初見であることも相まって、戦況を優勢にしていた。 甚壱と扇は考える。

 

 

(……やはりな、五条と戦っていた時はまるで山の如き呪力で、崩すどころか、削ることさえ不可能に思えた。 だが、流石の宿儺もあのレベルの猛者二人と休憩なしでやりあってたせいだな。 我らの攻撃が通じるところまで弱っておる。 ……此奴にはもう何もさせん、直哉が来る前に仕留めきる!!)

 

 

(作戦通りだな、私一人では不可能だが、炳として動けば、宿儺にも対抗できる。 そして、宿儺がより疲弊したところを焦眉之赳で再び焼き払う!! ……周りがただの術師なら巻き込んでしまうが、炳の皆ならその心配もない。 今度こそ、悪鬼羅刹を葬ってみせようぞ!!)

 

 

二人の猛攻を食らいつつ、宿儺は解析を進める。

 

 

(後ろの爺が盾で、此奴らが矛ということか。 ……攻め方も巧い、俺が抜け出せない一定のリズムで攻撃しつつ、ダメージが抜けないようしっかりと詰めてくる。 ……もう一人いたはずだが、大方伏せ札といったところであろう。 何かあったときに必ず対応できる万能札、それがあの小僧の役割だろう。 ……さて、どう喰らうか。)

 

 

確かに炳の作戦は正しい。 宿儺にも通用する実力と連携、そしてその役割分担。 禪院家が成せる唯一の技であることは間違いないだろう。 だが、この程度で敗れていれば、宿儺は平安の世で呪いの王として君臨できるはずはなかった。 宿儺が食指を動かし、戦況は変化する。 腕を一本差し込むことができた。 だが、その程度で二人の連携が崩れはしない。 だが一本、また一本、腕を差し込む余裕ができる。 そして、次第にそれは甚壱と扇の想定を超えて、増えていく。 宿儺が呪いの王足る所以はその適応能力にある。 一を知れば、十を知り、十を知れば、百を知る。 何もかも喰らい尽くすのが両面宿儺である。 そして、遂に完璧だった包囲網が崩壊する。

 

 

「二人とも!! 下がって!!」

 

 

蘭太が反撃に転じようとした宿儺の体を停止させ、二人を引かせる。 その目は無事であるが、予想以上の宿儺に蘭太は戦慄を抱いていた。

 

 

(……これがあの両面宿儺か、二人の連撃を即座に学習し、そこから抜け出すなんて……。 あんな光景は初めて見た……)

 

 

「(あの小僧の術式は視た者の拘束か?) ……いい連携だった、きっとお前達にしかできん技だったのだろう。 が、もう覚えた。 次だ、次を魅せてみろ。 もし今ので終いなら、興を削いだ罪で生きながら殺す。ククッ、それ、殺されたく無ければ死に物狂いで足掻いてみせよ。」

 

 

あらゆる策を講じても真の化物は真正面から食い破る。 どれだけ足掻いたところで人の身で鬼と戦うなど蛮勇以外の何物でもない。 炳の四人らに今、絶望の悪鬼が迫り来る。

 

 

 

 








今回も最後までお読みいただきありがとうございます。 もしよければ感想いただけると嬉しいです。


追記 カルナイ様、誤字報告ありがとうございます!! 作者が不慣れなため、お礼が遅くなって、申し訳ありません。 チェックはしたつもりでしたが、ここまで誤字があることにビックリしました。 本当に大変助かりました、重なってしまいますがありがとうございます!! 
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