(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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「ユメ先輩……なんですかその古臭いライフルは……」
「これはウィンチェスターM70だよホシノちゃん、あと後ろに立たないで」
「いつになくキリっとしてて、心なしか眉が太いですね」
「チャンスは……一度で……いい」
「何を撃つんです」
「鴨。鴨だよホシノちゃん」
「?」
「シンちゃんさんに教わった鴨汁そばの為に……」
「ユメ先輩がイバラキにとりつかれてます……」

 鴨汁そばはいいぞ。
 慣れない奴は顎がやられる。
 ご安全に。


ミレニアムが一番チートだと思う件

 前回のあらすじ:ユウカはいいぞ

 

 

「すげえなあ……」

「凄いのは勢いでこの状況を巻き起こしたシンさんなんですけどね……」

「でもアビドスにこんなに人が来て嬉しいなぁ」

「ユメ先輩は呑気ですねえ……」

「えへへ」

 

 生徒会室から見える景色がエグいのである。

 ミレニアムサイエンススクールで早瀬ユウカ嬢……ユウカと呼べと言われたので以降そう呼ぶが、彼女との邂逅を経て三か月が経った。季節はすっかり秋である。

 俺たちがいま見下ろしているのは、アビドス高校の校舎前の通り、その向こう側に広がる倉庫群だ。その隣接区画ではミレニアムから派遣された業者が地面を掘り返し、重機の低い唸りとともに基礎工事が進んでいる。乾いた砂塵が風に乗って舞い、夕方の光にきらついていた。

 

 そう、ヘルメット団を中核に据えた運送業が、現在のアビドスの主力事業になっているのである。

 あの後さらに十台ほど大型車両を増やした。正確にはトレーラーヘッドだ。コンテナを牽引する形式にした方が積載効率が良いし、案件の幅も広がるからだ。

 

 とはいえ新車であれば一台で1500万から2000万は下らない。程度の良い中古でも相応の値段になる。

 だがユウカとのパイプが出来たことが大きかった。ミレニアムは頭脳集団という評判に違わず、実務面でもそれを裏付けてくる。

 運送事業を回し始めてすぐ、整備業者の不足に頭を抱えていた俺は、その愚痴をユウカにこぼした。すると彼女はエンジニア部の白石ウタハを紹介してくれた。

 

 エンジニア部はハードウェア開発を主とする発明をテーマにした部活で、所属しているのはウタハを筆頭に天才ばかりだという。もっとも、ロマンを免罪符に暴走しがちな連中でもあるらしい。要するに制御の利かない好奇心の塊、ある種のマッドサイエンティスト集団である。

 

 そこに相談を持ち込んだ結果がこれだ。

 ディーゼルエンジンをオミットし、キヴォトス規格のユニットに置き換えることで整備性が向上し、故障率も劇的に下がると言われた。

 ならばと俺は、書類だけは辛うじて通るようなボロのトレーラーヘッドを一台三〇〇万前後で買い漁った。結果、十台規模での導入が可能になったのである。

 

 小口の配送からスタートしたが、そこにミレニアムの建設プロジェクトが絡んだことで状況が変わった。

 ミレニアムというブランドが持つ信用力が、想像以上に強かったのだ。彼らが関与する施設は安全性と継続性が担保される。つまりアビドス自治区は「ミレニアムが関与する土地」という評価を得たことになる。

 

 そうなると企業は動く。

 地価の安いアビドスに物流拠点を置けばランニングコストは大幅に下がる。

 結果として、データセンター建設の融資を厚めに取り、倉庫群の建築費に回すことが出来た。

 倉庫はデータセンターとは違い、工法が規格化されているから工期も早く、こうして倉庫の群れが完成しているってワケ。つかもう稼働しているわね。

 

 中型トラックは中小案件へ、トレーラーは大口案件へ。

 人手不足は当然発生したが、ヘルメット団の横の繋がりがここで効いた。ゲヘナやミレニアムの不良連中の中から、「仕事があるなら真面目にやる」という層を引き抜き、雇用を拡大した。

 

 さらにエンジニア部の改修によって、ボロだった車両は高性能機へと変貌したからこそ運用コストも下がり、利益率は改善。

 今後は地球側から安価な車両を持ち込み、こちらで改造して戦力化する流れを継続する予定だ。

 

 そうしてアビドス・ロジスティックスとして起業した組織は、運送・保管・倉庫作業を包括した事業体として軌道に乗りつつある。

 あと半年、遅くとも一年で大幅な黒字転換は見込める。ユウカも計画書に目を通し、問題なしと太鼓判を押している。

 

 現在はカイザーへの返済も、ミレニアムからの融資返済も滞りなく進んでいる。

 問題があるとすれば、車両導入費がほぼ俺の個人資産からの持ち出しである点だ。現時点で八千万ほどは吐き出していると、数字にするとエグいな。

 

 もっとも俺自身は独り身の世捨て人に近い。老後資金も確保済みだし、金の使い道としては悪くない。

 ただユメたちはそれを一方的な施しと受け取り、負い目を感じているようだった。

 それに俺の持ち出しだとしても、カバーストーリーである「米国のクライアントに売る」というリターンの部分がない訳で、こうなると8千万の出費がそのまま使途不明金になっちまう。

 ここは近いうちにどうにかしないと税務署がヤバい。

 

 なので現在の俺は、アビドス・ロジスティックスの雇われ社長という形で報酬を受け取る立場に収まっている。同時に、キヴォトスの資産を地球側に還元する手段も模索中である。

 ここが一番大変なんだけどな……神様なんとかしてくれよ。

 

 ちなみに通貨は円だ。

 これが本当に意味が分からない。だが現実にそうなのだから仕方がない。ただし日本銀行券ではない以上、そのまま持ち帰っても価値は無い。オーバーテクノロジーも同様で、無闇に持ち出せば説明がつかない。

 

 ともあれ、かつてのゴーストタウンだったアビドスは、確実に変わりつつある。

 データセンターが完成すれば、更なる企業流入も期待できるだろう。

 

 自治権の強いこのキヴォトスでは、税制もある程度コントロールできる。

 ユメには新規参入企業に対し固定資産税を十年間免除する措置を取ってもらった。ミレニアムの関与とこの優遇策が、流入の呼び水になるはずだ。

 

「何より眺めてるだけで金が貰える構図は最高やな!」

「この不良大人がさぁ……」

「つってもミレニアムで動いてもらってる調査結果如何では忙しくなるかもだな」

「シンさんさぁ……旅行気分でミレニアムの暗部にコネつけてくる?」

「知らねえよ。いきなりネルに絡まれたんだ。俺は悪くねえ!」

「へいへい。早く結果来ないかなあ」

「ホシノお前さ」

「うん?」

「たまに凶悪な顔してて引くわ。ユメが泣くぞ」

「そうかなあ? じゃあどんなキャラで行けばいいと思う?」

「媚び媚びのロリ娘……は無いな。お前はネルと同タイプの種族だわ」

「酷いです! 大人は横暴だ!」

「当たり前だろ。大人は世の中の酸いも甘いも知ってやさぐれてんだ」

「無職の癖に。ぷーくすくす」

「この野郎……だからマナイタなんだよ」

「言ったな! もう許さない」

「おまっ、首絞めんな! 背中が当たっていてえぞ!?」

「背中じゃないやい! 胸ですむーね!」

「言ってて悲しくなるなら言うなよ……」

「つらい……どうして私は育たないんだろう……」

「悲しいけど成長期は終わったんやで……」

「シンちゃんさんとホシノちゃん仲いいなあ……羨ましいよぉ」

「ユメの目は節穴だな」

「ほんとですよ。だからユメ先輩なんです」

「ひぃん!? なんでえ!?」

 

 お後がよろしいようで。

 いや草。ユメは完全に癒し枠である。

 

 さて、ネルだ。

 あの見た目詐欺の件だが、ユウカ経由のビジネスはセミナー会長の調月リオまで上がり、ミレニアムとして正式にゴーサインが出た。だからこそ融資もスムーズに進み、ロジスティクス部門の初期投資も確保できたわけだ。

 

 だがその後、ネルからモモトークが来た。紹介の礼を寄越せと。

 要領は得なかったが、とりあえず菓子折りを持って指定された“部室”へ向かった。

 

 そこは練兵場のような室内施設だった。

 ネルを含め、メイド服のJKが四人。美甘ネル、ギャル風で豊満な一ノ瀬アスナ、寡黙な褐色の角楯カリン、そして一見おっとりだが爆破癖のある室笠アカネ。

 ユウカもそうだが、ミレニアムの体質として有能な人材は青田刈りする文化でもあるのか、高等部に入学前の人材も混じってるから頭がバグる。

 さて彼女たちはCleaning&Clearing、セミナー直下のエージェント集団であると説明された。

 

 要するにCIA的な何かだ。モサドでもSISでもなんでもいいけど。

 リオの判断により、今後のアビドスとの情報共有窓口としてC&Cを使う。その顔合わせだったらしい。

 ならそれだけでいいじゃないか。

 

 だけどネルは言った。俺の身体能力を確かめたいと。

 ヘイロー無しの大人の男。

 その肉体の特徴はキヴォトス人と同等かそれ以上のナニカ。

 危険性も含めて確かめたいって所か。

 ただの神様からのお詫びというギフトで、俺的には借り物でドヤりたくないって思いはあるんだけどな。

 結果? 酷い目に遭った。最初は一方的にボコられた。だが途中で気付いたのだ。これでも“痛い”で済んでいると。

 

 ならばと反撃に転じた。

 ネルは速い。ならば掴んで止めるしかない。以前ヘルメット団に使った技を応用した。

 ありがとう勇次郎。つまり身体のどっかを掴んで振り回す。

 当然暴れるが、地面に叩きつける事で動きは止められた。

 結末は省く。どうでもいい。

 

 ただそれ以降、ネルは「遊びに来いよ」と頻繁にモモトークを送ってくるようになった。

 二度と行くか馬鹿野郎。

 その遊び、殴る蹴るって意味だろ。

 嫌だよ俺は物流会社の経営者やぞ。

 

 ともあれ、アビドスは確実にカイザーへ牙を剥く準備を整えつつある。

 それはそれとして。

 

「とりあえずユメ、ホシノ、柴関ラーメン行こうぜ。今日はジャンボラーメンに挑戦する」

「あのさあ……前回失敗して私が食べたんですけど?」

「仕方ねえだろ食べたいんだもの。あとデカぱいの癖に割と食が細いユメが悪い」

「なんでえ!?」

「適量で頼むって選択肢はないんですかね……?」

「ホシノ、俺はお前を信頼してるんだ。わかるな?」

「分かってたまるか!」

 

 知らんけど。

 という訳でハイエースに乗り込み、俺たちはラーメンでランチを決め込んだのである。

 なおこのハイエースもキヴォトス仕様にローカライズされた模様。

 二度と地球で走れないねえ……。

 

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