(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス 作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)
前回のあらすじ:つまり柴大将はアビドスの癒しってワケ
キヴォトスなる異世界に足を踏み入れて、そろそろ一年弱だ。
気が付けば、つくばのアパートとアビドスを往復する生活が当たり前になっていた。向こうじゃパチンカス、こっちじゃ復興の手伝い兼、物流会社のCEO……我ながら訳の分からん二重生活である。
とはいえ実務は俺だが、名目上の代表はユメとホシノの二人だ。会長と社長みたいなもんだな。
俺がCEOってのはそう言う意味。
それにユメは卒業後もそのままアビドスでビジネスを続けるらしい。
……頑張れ。アビドス高等学校初のビジネスパーソンの星誕生。
地球側の俺はと言えば、相変わらず無職のパチンカスだ。副業の投資もあるが、生活の体裁を保つための飾りみたいなものだ。
ケンジの所からトラックを買ったり、ユメたちに頼まれた物資を調達したり……役割はあるが、重みはない。
その分、アビドスではどうかと言えば――これがまた、あまり動いていない。
理由は単純だ。
実務が回りだしたからな。
倉庫の管理業務。荷運び。
元不良はちゃんと社員として動いてる。
そしてこの商売は頻繁に営業をかけても人的リソースの関係で無理。
なら今は眺めてるだけでいいのだ。
それはそれとして、アビドス高校に、新入生が増えた。
年が変わったから当然ともいうが。
ユメが三年生、ホシノが二年生に進級。
そこに新入生二人が入った。
一人は十六夜ノノミ。
ええとこのお嬢さんって雰囲気のまま。
ふわふわしたイメージ。
まあそれはいい。
問題はもう一人の方。
砂狼シロコ。
出会いが強烈過ぎるんよ……(笑)
きっかけは、まあ……あれだ。
最近、ウタハに作ってもらった砂漠用バギーで、涼しい時間帯に走り回るのが日課になっていた。
ユメの遭難騒ぎを教訓に、位置情報システムはやたら高性能になっている。ホームポイントをアビドス高校に設定しているから、砂の海のど真ん中でも迷うことはない。
それを砂漠に出る奴はスマートウォッチに連動させるんよ。
その日も、いつものように砂を蹴って走っていた。
気持いいんだよマジで。
砂の稜線をジャンプ台にするとくっそ気持ちいい。
――で、見つけた。
倒れている少女を。
まただよ(笑)
キヴォトスくんさあ……そういう天丼いらねえから。
ユメには似ても似つかない、中学生くらいの小柄な体。
見つけた当初はもっとガキかと思ったな。
虚ろな目でぼんやりと、かすかに息をしていた。
助けて、水を飲ませて、日陰に運んで。
目を覚ました彼女が口にしたのは、自分の名前だけだった。
砂狼シロコ。
それ以外は、全部空っぽだった。
だからアビドスに連れ帰って面倒を見ているわけだが――ユメが四月から入学させると言い出して、ホシノにシバかれていた。
当のシロコは嬉しそうだから、余計に質が悪い。
言葉もまだたどたどしく、俺たちの会話を真似して語彙を増やしている段階だ。
出自は不明。経歴も不明。
……この世界でそれは、あまりに不穏だ。
追い詰められたJKが砂漠に希望を見て死にかけるような場所だぞここ(笑)
何も出てこないわけがない。
という流れでシロコも一年生として入学の流れに。
だからノノミだけだな。普通の流れで入学したのは。
まあでも、キヴォトスだからで話が済むな。
うん、今さらだったわ。
だってキヴォトスだもの。
人間だものみたいに言うな。
で、そんなシロコだが――――
「ユメの授業終わったんか?」
「ん、おわった。だからシン構って」
「ほんとかあ? 宿題はやったのか?」
「……ん、した」
「こっち見ろシロコ」
「宿題はむずかしい……」
「じゃ後で一緒にやろうな」
「ん、やる。シンといっしょ」
言うが早いか、当たり前のように膝の上に収まる。
ここはアビドス・ロジスティックスの執務室。机の上には書類と端末。外ではフォークリフトのエンジン音が低く響いている。
……仕事中なんだがなあ。
未婚なのに子持ちの気分だ。
父子家庭ってこんな感じか?
端末を叩きながらため息をつくと、モモトークが震えた。
ホシノからだ。
『シロコちゃんがいない!?』
こっちにいると返すと、
『うへえ、任せた』
雑である。
シロコは記憶がない。それに加えて常識も薄い。
情操教育がごっそり抜け落ちている感じだが、かといって機能的な問題があるわけでもない。
妙にアンバランスだ。
勉強はユメ、戦闘はホシノが担当しているが――戦闘の伸びが異常らしい。
負けるのが嫌いで、ボコボコにされても絶対に折れない。
……厄介なガキである。
ただノノミという癒し枠がいいフォローになってる。
なってるか……? まあいいや。
「でもシロコ、俺夕方には出張でいなくなるんだぞ?」
「ん、いっしょ」
「無理なんだよ。向こうに行こうとしてもキヴォトス人は弾かれるんだ」
「あの消えるやつ」
「そうそう」
「んっ」
「頭グリグリすな」
「ん~!」
ご不満である。
俺が消えるたびに機嫌が悪くなるらしいが、今回はどうしようもない。
トレーラーヘッドを持ち込む必要がある。
こっちで新車を買えば四千万近い。
地球で中古を仕入れて、こっちで水素エンジンユニットに換装するなら一千万で済む。
……コスパは正義だ。
事務処理を片付け、校舎へ戻る。
「シロコちゃんべったりですねっ」
「断固として離れないという強い意志を感じるねえ」
「シロコちゃん可愛いですっ。シンさんはパパさんみたいですね☆」
「シロコ、ご飯だぞ。離れろ。ノノミ、その乳もぐぞ」
「ん~!」
「この野郎……」
おんぶ状態のまま離れない。
無理やり引き剥がして席に座らせると、ようやく落ち着いた。
学食――と言っても施設だけだが――で全員が揃う。
今日のメニューは茶色が支配している。
……これ作ったの絶対ホシノだろ。
ハンバーグと唐揚げ。
どっちかにしろ。
サラダもマカロニ比率九割で、ほぼマヨネーズだ。
栄養バランスとは。
つーか味の好みがオッサンなんだよ。
とりあえずカロリー爆弾が正義ですみたいな。
そのうち業者を入れるべきだろうな……などと考えつつ、食事を終える。
「んじゃ行ってくるわ」
「シンちゃんさんいつも申し訳ありません」
「ええんやで」
「ほらシロコちゃんこっちおいで。シンさんはお土産買ってきてくれるから1週間我慢しようね」
「シン帰ってくる?」
「帰るよ。今の俺の居場所はアビドスだからな」
「ん、ならいい……待つ」
唇を噛みしめて、しぶしぶ離れる。
その顔に、妙な罪悪感が刺さる。
というか迫真すぎる。
苦虫を噛み潰したよう、って表現の理想像が今のシロコだろこれ。
……帰りたくねえな。
微妙に後ろ髪引かれるぜ。
だが行く。
割にやりがい感じてるし。
言わんけど。
「ゲート解放」
空間が歪み、唐突に現れる扉。
見慣れたはずなのに、相変わらず現実感がない。
つーかバイオの洋館の扉にしか見えんぞ。
「いつ見ても不思議な魔法だねえ。扉があるだけって」
「まあな。んじゃ行くわ」
「「あっ!!!?」」
「あん?」
声を背に、扉をくぐる。
ぬるい空気で不快感が襲う。
湿気が強い独特の空気だ。
地球だ。
空気が違う。アビドスみたいに乾いてない。
「10時かよ。やっぱキヴォトスの時間とズレてんな」
「ん、そうなの?」
「おう。だってまだ午前中だもんよ。向こうじゃランチタイムだったろうが……まあいいケンジに連絡は夜でもよかろ。まずは買い物だな」
「ん、おなかすいた……」
「――ってシロコお前さっきくったべ……ってシロコ!? なんでいんだよ!?」
「ん、ついてきた」
「嘘だろ……ええ? 人は来れないんじゃねえのかよ……って、あっ!? マジかよ……」
横にいる。
普通に。
何を当たり前の事をみたいな表情やめろ。
頭を抱えつつ、ゲートの情報を確認する。
レベル2。
クールタイム三日。
同行者1。
は? え……?
なんかちょっと成長してんじゃん……。
……熟練度システム的なやーつ?
にしては随分成長遅いわね。
1年て。
「でもどうすっかなあ……」
「なにが?」
「シロコお前この耳あるやん」
「ん……くすぐったい」
指先に触れる柔らかい毛と温もり。
人間にはないものだ。
くすぐったいとピピピって動く。
まんま犬で草。
「キヴォトス人と違って地球人には獣の耳はないんだよ」
「ふしぎ」
「だからお前連れて出かけるとめっちゃ見られるし、おまわりさんに捕まるかもしれん……ってお前、銃持ってねえよな!?」
「ん、持ってない。ホシノ先輩に取られた」
「お前スナック感覚でぶっぱするからな……ホシノには特別な土産を買うぜ」
「ざんねん」
危険すぎる。
いやそれがキヴォトスクオリティだから今さらか。
ただ銃はまずい。これは間違いない。
でもなあ――連れていくか。
家に置いておく方が危険やもしれん。
好奇心に負けて外に出るだろコイツ。
「シロコ、連れてってやるけど準備がいる。その為にちょっと先に買い物してくるから1時間だけ我慢しろ。いいな?」
「んっ!」
「その圧縮言語便利だなオイ。いいか、絶対外に出るなよ? 出たら俺はちょっと本気で怒るぞ」
「ん……我慢する……」
怪しいが、信じるしかない。
我慢するって時点でアウトだぞ?
スーパーキャリイを飛ばし、必要な物をかき集めて戻ると――
『チチッと舌を鳴らして呼んだ野良猫――』
音が部屋に満ちていた。
シロコが正座でスピーカーの前に座り、微動だにせず聴き入っている。
タブレットで俺のプレイリストを開いたらしい。
しかもサカナクションだけの奴。
モノクロトウキョーとはお目が高い。
仮面の街もいいぞ。
一緒に掌にトゲ生やして行こうや。
……うん、このまま教育して深海に堕としてやろう。
そんなシロコを放置して作業を始める。
キャスケットに切れ込みを入れ、耳の通り道を作る。糸で縫い、ほつれを防ぐ。
カチューシャ、ネックスピーカー。
即席だが、形にはなる。
「おいシロコ、この服に着替えろ」
「ん、わかった」
「………………」
「………………」
「いや俺の前で脱ぐなよ。躊躇なく下着丸出しやろがい! 恥じらいを持たないと立派な女子高生になれないぞ」
「ん、わかった」
分かってない。
結局最後まで着替えおわったやん。
だが慣れた。
……慣れたくなかったが。
子育ては辛抱や。
着替え終えたシロコは、驚くほど“普通”に見えた。
黒のデニム、クリーム色のニットチュニック、モッズコート。
問題は耳だけだ。
「ほらシロコこっちこい」
「んっ、くすぐったい……」
「ちょっと我慢しろ」
キャスケットを被せ、耳を外に出す。
ネックスピーカーを装着し、カチューシャでラインを作る。
――ヘッドセット風。
強引だが、いける。
いけるやろ?
「よしシロコ、お前は素材が良いから似合うな」
「ん、似合う?」
「可愛いぞ」
「んっ」
ぱっと表情が緩む。
……まあ、いいか。
パパは和むのである。
とりあえず外へ出る。靴は白いジャックパーセルを買って来た。
見慣れない街並みに、シロコは目を輝かせている。
目の前のタンボ。その向こうに浮かぶ筑波山。
アビドスじゃお目にかかれない邪魔くさい程の緑。
助手席でもきょろきょろと忙しい。
車窓に釘付け。おとなしいのは良いが。
――帰ったらホシノに怒られるだろうな。
それでも今だけは、楽しませてやる。
とりあえずはコストコ行くか。
「やっぱりイバラキだよね」
「まだ言ってるんですかユメ先輩。いい加減目を覚ましてください」
「いいえホシノちゃん、アンコウのドブジルを食べるまで止まらないもん」
「ええ……」
「んじゃ地元帰って買い出ししてくるわ」
「ん、シン、いつ向こうに帰る? 私も同行する」
「「「砂狼シロコ」」」
要約するとこういう話
劇中の曲
サカナクション
モノクロトウキョー 703-4015-3
仮面の街 703-4017-0