(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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あとがきに続く




愛清フウカ「え、これを読むんですか? えっと”アメフトには気をつけろ キックオフがせまってる” 意味が分かんないんですけど……」

 前回のあらすじ:グルメなんて無かった

 

 

「ホシノ、シロコどこいった」

「シロコちゃんなら朝早くに自転車に乗って出かけたよ。トレーニングだって。凄い気に入ってるねえ」

「ほーん……それにしてもホシノ、お前髪伸びるのはえーな」

「そう?」

「もう肩の下まで伸びてるやん。つかショートのが楽じゃね? コスパ的に」

「女子をコスパで語らないでよぉ……」

「女子(笑)」

 

 なんで俺、風呂上りのホシノの髪をブローさせられてるんだ……。タオルでざっと水気を取ったばかりの髪はまだしっとりしていて、ドライヤーの温風を当てるたびに甘いシャンプーの匂いがふわっと広がる。距離が近いのもあって妙に落ち着かねえ。

 

 曰く、シロコを優遇し過ぎだからズルい、だそうで。この前の地元帰りにシロコがついてきて甘やかしたのが原因らしい。俺は別に誰かを贔屓してるつもりはないんだが……周りから見りゃそう見えるんだろうな。

 俺、お前らの父ちゃんじゃあないんだぞ。ユメもなんかそんな感じだし。思春期ってやーねぇ。

 

 それはそれとして、転移が三日のクールタイムになったのが便利でたまらん。地元では大家に話を通して借りた更地をヤードとして整備し、簡易的な壁で囲った。ケンジには週末までにトラック関係を置いてもらうように頼んである。ゲートの鍵も渡してあるから出入りは自由だ。プレハブ小屋も設置したから、俺がサインする必要のある書類はそこに置いておけと伝えてある。

 

 このおかげで、水曜までに地元へ戻り、クールタイム明けにトラックを回収してキヴォトスへ持ち帰る――そんなルーチンが成立した。現状まだまだ車両は欲しいから、しばらくはこのサイクルを回し続けることになる。

 さらに最近は、リスキーではあるが地球側での換金ルートも確保できた。これによって、これまでアビドスに突っ込んだ資金はほぼ回収済みだ。

 

 やり口は単純だ。レアアースの換金。

 地球では希少だが、キヴォトスでは比較的ありふれている素材がそこそこある。このギャップを利用する。困った時のエンジニア部、困った時の白石ウタハだ。あいつには転移の件も話してある。

 

 データセンターが二基目の建設が始まったタイミングで、エンジニア部のアビドスラボもちゃっかり併設された。ミレニアムの校舎じゃ目が多くて出来ない実験も、砂漠ならやり放題だからな。結果、連中は高頻度でアビドスに出入りしている。初顔の新入生も増えてきたし、ウタハの後輩とか絶対ロクでもないのしかいない予感しかしない。

 

 そいつらとはよく飯を食いながら情報交換をしている。……いや、正確にはあいつらがアビドスの食堂に飯をたかりに来るんだが。研究優先で自分の食事を後回しにする連中だからな。その流れで俺の資金事情を愚痴混じりに話したら、出てきたのがレアアースのインゴット化という発想だった。

 

 水素燃料のために砂漠に作った巨大パラボラ――通称アーク炉は、今や素材分離と精製に特化した設備に改造されている。どういう仕組みかは知らんが、とにかくインゴット化が可能になった。

 善意でアップデートしたとか言ってるが、お前ら自分の実験のためだろ。ウタハ、目ぇ逸らすな。その予算、アビドスの運営費やぞ。

 

 そんなわけでネオジムやイリジウムを現金化している。

 俺は就活こそ失敗したが、一応東大閥だ。そこには感謝している。先輩に酒を奢って媚びを売れば、誰かしらが面倒を見てくれる。

 

 各業界に散らばっているOBOGに話を通し、「こんなレアアースが定期的に手に入るんすよねw」と匂わせれば、向こうが勝手にカバーストーリーを組んで買い取りルートを構築してくれた。

 それだけ供給が逼迫してるってことだ。ネオジムはEVモーターやスマホ、イリジウムは航空機エンジンや電極に使われる。

 

 特に日本最大手の自動車メーカーの重役からは、ジスプロシウムやテルビウムもどうにかならないかと打診が来ている。現在サンプルを元に精製ラインへ登録しているところだ。

 日本の皆さん、もう少しで新車購入がイージーになるかもしれませんねえ……知らんけど。

 

 問題は単価だ。高すぎる。

 これをそのまま受け取れば国税が黙っていない。なので今は、持ち出した資金+αの回収に留め、残りは向こうにスキーム構築を任せている。俺は地球にいる時間も少ないし、急いで全額回収する必要もない。

 

 ただ現金残高は確実に減っていた。トラック購入資金を維持するためにも、最低限の補填は必要だった。

 俺は一応投資家だ。数億の現金があるなら運用しないと気が済まない性分で、遊ばせるという発想がそもそもない。だからメイン口座に置いてあるのは一億弱程度だ。

 

 とはいえ、そこまでしてアビドスに突っ込む必要もない。適度でいい。今後はより安全な利益還元ルートを整えてからだな。今は任せるところに任せて“見”の時間だ。

 

 ……それにしてもシロコだ。

 

 こっちに戻ってきてからというもの、毎日ロードバイクを乗り回している。しかもミレニアムまで単独で行くとか正気か。距離どんだけあんだよ。

 向こうに着けばC&Cに可愛がられてるらしいし、ああ見えて好戦的だからネルと訓練までしてるとか。

 

 お友達が増えるのはいい。いいんだが……C&Cかぁ……。

 お父さんちょっと心配になるんだぜ。ネルはネルで全力でぶつかれる相手が来て内心喜んでそうだしな。ホシノが少し寂しそうなのも分かる。

 

 シロコは負けず嫌いだ。あしらわれれば「次は負けない」と言ってまた行く。

 まあいい。飽きるまでは好きにさせとけ。不健康なことでもない。

 

 ……いや完全に父親目線で草ァ!

 

「よっしポニテ出来たぞ。授業頑張って、どうぞ」

「うへえ……勉強なんてしたくないよぉ……」

「あのさあ……学校を、アビドスを守るんだ! って必死だったくせに勉強やだはギャグだろ。学生の本分やぞ」

「それはそれ、これはこれだよ。それを教えてくれたのはシンさんだから」

「やめろや。自分の怠惰を俺のせいにすんな。ほら行ってこい」

「はーい……シンさんはどうするの?」

「あん? 俺は営業でゲヘナに行ってくるから帰るの夜だぞ」

「頑張ってね。馬車馬のように」

「地獄に落ちろ」

 

 そう言って部屋を出ていくホシノを見送る。

 ……というかだ。アビドスに関わる連中全員に言いたい。

 

 最近完成したアビドス高等学校の寮。その最上階にある俺の居住区。

 お前ら、そこをフリーの休憩スペースか何かだと思ってないか?

 つか俺が知らないエスプレッソマシンとか誰が置いたんだよ。

 

 生体認証でロックしてるのに、どうしてミレニアム生まで普通に出入りしてんだ?

 俺は白石ウタハを締め上げることをここに決意したのである。

 

「とりまゲヘナ行こか……」

 

 ぐったりしたままオフィスに向かい、最低限の準備を整えて駅へ向かう。車もあるが、流石に距離がある。高速鉄道の方が楽だ。俺は頑丈でもキヴォトス人じゃないんや。

 

「うーん……まいったな」

 

 アビドスに隣接する巨大自治区、ゲヘナ。

 アポイント相手――給食部の愛清フウカに会いに来たが、いない。

 

 受付で確認すると予定自体は登録されているが本人が行方不明。学生課が確認に走ったが、クラスにも厨房にもいない。出席はしているから直前までは居たらしい。

 受付の生徒は「ゲヘナですからw」と言っていた。日常茶飯事らしい。いやおかしいだろ。

 

 内容は食材輸送の委託。毎日数千人分の食事を賄うため、穀物や粉類など嵩張る物資のルート運搬を任せたいとのこと。

 うちは相場の八掛け程度で請けているからコストダウン目的だろうが……向こうからの接触というのが引っかかる。

 呼んどいていないんだもの。

 

 まあいい。せっかく来たんだ。飯でも食って温泉でも入って帰るか。

 ご当地メシを頂く、こういうのが出張のだいご味でしょ。

 

「全体的にドイツっぽいのな」

 

 夏前だが涼しい。オープンカフェで一服していると、軍服めいた制服の生徒たちが行き交う。コーヒーを一口、メンソールに火をつける。アビドスの灼熱と比べれば天国だ。

 

「ここ、相席いいかしら……?」

「ん? ああ、どうぞ」

「ありがとう」

 

 向かいに座ったのは、小柄で人形のような少女。だが背負っている銃は彼女の身長ほどもある。白い長髪に角と羽、そして大きなヘイロー。

 

「私の顔に何かついてる?」

「いや、その角で寝る時大変そうだなって思っただけ」

「ふふっ……そんな事言われたの初めてよ。確かに邪魔ね」

「ゲヘナって専用の枕とかありそうだよな」

「なにその疑問っ……ふふっ、あははっ」

 

 久しぶりに笑った、そう言って目を細めた彼女の目の下にはうっすらとクマがあった。

 

「ちゃんと寝てるか?」

「……あまり寝てないかも」

 

 【悲報】フランス人形系美少女、社畜。

 

 だが次の瞬間、その目が鋭くなる。

 

「あなた、ここで何を?」

「給食部の愛清フウカに呼ばれて来たんだが本人がいなくてな」

「呼ばれて……」

「ほら名刺。アビドス・ロジスティックスのCEOだ」

「アビドスから……」

「営業よ営業。人手足りねえんでな」

 

「ヘイローもないのに呑気ねえ」

「まあ撃たれても死にはしねえし」

「……そうなの?」

「なんでか知らんけどな」

 

 彼女は固まった。

 

「……密航者じゃなさそうね。ゲヘナ学園風紀委員、空崎ヒナよ」

「あ~やっぱ怪しまれてたか」

「少しね。で、フウカだけど――多分拉致されてるわ」

「はあ?」

 

 事情を聞いて理解した。

 美食研究会。食に対して異常なこだわりを持つ連中。気に入らなければ爆破。テロリストかな?

 

「何も言えねえな……」

「ええ……」

 

「まあ暇あったらアビドス来いよ。砂漠サーフィンが楽しいぞ」

「砂漠サーフィン?」

 

 説明するとヒナは少しだけ興味を示した。

 

「ねえ、モモトーク交換してもいい?」

「いいよ」

「ありがとう。じゃあね」

「ああ。ちゃんと寝ろよ。綺麗な顔が勿体ねえぞ」

「なっ……!?」

 

 そんな感じで営業は不発。だが面白い縁は出来た。

 この後、温泉とソーセージを堪能して帰路につく。

 

 やっぱ日本人は温泉よな。

 ゲヘナ自治区、割と好きかもしれん。




フウカ「あ、ちょ、なんですかあなた達!? や、やめろォ!?」
黒舘ハルナ「アヒャヒャヒャヒャwwwww愛清くんいいよぉwwwwほらほら鰐渕くん、担いで!はやくwwww」
鰐渕アカリ「wwwwwwwww」
獅子堂イズミ「wwwwwwwwww」
フウカ「おかしいでしょ! こらもう拉致だよ! 誘拐だよ! 帰してくださいよぉ!」
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