(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス 作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)
前回のあらすじ:女秘書というワードを嫌いな男はいない
目の前に広がる非日常。
俺以外はそれを日常と思ってるという事実。
カルチャーショック!
「なあ社員A」
「はいボス」
「ノノミって可愛い顔してエグくね?」
「エグいですね。私、射線上に立ちたくないです」
「だよなあ……」
新一年生として入学した十六夜ノノミ。
制服の上にカーディガンを羽織って緩い感じの口調と合わさりふわふわした印象の少女。
でも見てみろよ。
ミニガン構えたと思ったら、向こう側にいるホシノ達に向かって弾をバラまいてんだ。
目の前のフィールドには遮蔽物としてコンクリートブロックの山がいくつも置いてあるが、なんかあんま意味をなしてない気がするんだけど……こわぁ。
だって着弾したらそこ削れてるじゃん!
「逃げないと当たっちゃいますよぉ☆」
そしてこのセリフである。
「なあ社員A」
「なんすかボス」
「なんでノノミの奴、上に向かって撃ってるんだ?」
「ああ、それですか。あれは距離減衰を意識して仰角を上げてるんです。なので小鳥遊先輩が隠れてる上から弾が降ってきますね。だからエグいんです」
「こっわぁ……つかお前詳しいな」
「ホシノ先輩が私たちの教官ですから」
スッと目をそらされた。
周囲の社員たちも明後日の方を見てる。
それでヒエラルキーを察した。
「うへぇ……当たっちゃったよぉ……」
当たってるし。
けどテヘペロしながらそそくさと場所を変えるホシノもどうかと思うぜ。
そもそも何をやってるかって話だが、シンプルに模擬戦だ。
参加してるのはユメ、ホシノ、シロコ、ノノミ、そして最近アビドスに加入したワカモ。
場所はアビドス・ロジスティックス社の敷地内にある訓練場。
ここは元々は倉庫群の奥にある空き地で、社員たちの戦闘訓練用として設置したんだが、1500m角の正方形のフィールドでな。
周囲を高い壁で囲ってる。
そんで東西の部分にいま俺が坐ってるような雛壇タイプの観戦席がある。
会社が儲かって来たから整えたんだが、日常的にローテーションでウチの社員が訓練をしているのさ。
模擬戦をする事になった動機としては、ウチは規模の大きな自治区に商売で出入りしているから、今後、不良レベルじゃない襲撃に遭う事も想定される。
けれど元ヘルメット団が社員の殆どだから、エグいのに襲われたら積み荷がヤバイだろ?
そこで戦闘能力の上澄み同士の演習を見て、社員たちにイメージを植え付け、有事になった時に慌てないように心構えを先にさせとくみたいな趣旨。
そしたらお祭りみたいに盛り上がっちまって。
社員たちが。よく見りゃあちこちに祭の夜店みたいな出店がわんさか。
商魂たくましいな。
弊社アビドス・ロジスティックスは社員の副業を認めております。
そんで直近の予定を調べると、今日がタイミングよく全休に出来そうだったんで告知していたら、自由参加の筈が全員詰めかけるというね。
そりゃそうか。娯楽としてもいい感じだろうし。
一応不参加は普通に休日って言ってるんだけどな。
ちなみに模擬戦のルールは俺が決めた。
全員が得物も違うし体格も違う。
どんな風に戦うか俺も見てみたいと思って。
だからチーム戦ではなくバトロワ方式。
なんらかの条件で勝敗をつけて脱落していく。
最後に残ったら勝ちって事で、そいつにはご褒美を与える。
ご褒美は地球由来の何か。
何位までとかじゃなく優勝者だけ貰える。
でもこれだと勝敗の付け方が難しいだろ?
サバゲーみたいな自己申告スタイルだとハッキリしねえし。
何よりこいつらって弾を喰らっても痛いで済むのに、使ってるのは実銃実弾だ。
そこで自爆装置を仕込んで俺を遭難寸前まで追い込んだ白石ウタハへのケジメ案件としてセンサーの開発をロハで依頼。
三日で納品してきたから手打ちにしてやったわ。
俺、優しいなあ(白目)
納品されたのは見た目がノングレア(非光沢)処理がされたフレンチブルーのタクティカルベストだ。
これにセンサーが仕込まれていて、ダメージを受けると胸の部分に仕込まれた伸縮性のあるパネルが寒色から暖色に変化する。
一般的キヴォトス人が気絶するという累積ダメージに達した時点でベスト全体が真っ赤になる。これで死亡判定。まあ死亡という言葉はキヴォトスじゃセンシティブになるんで気絶判定となる。
これなら観戦してる奴もビジュアル的に理解しやすい。
フィールド上にはランダムに結構な数のコンクリート塊が配置されていて、遮蔽物として利用する。
これだと観戦してる場所によっては見えないんで、AIを組み込んだ撮影ドローンが飛んでいて、参加者それぞれを常に画角に収め、それを外壁の内側に周囲を囲むように設置された巨大スクリーンの大型ビジョンに映し出される。
どこが盛り上がってるか、映像のスイッチングもまたAIが制御してる。
ビジョンもエンジニア部にやって貰ったが、着想はあれだ。日ハムの本拠地のエスコンフィールドの奴。
あれをウタハに画像で見せて、こんなの出来る? って言ったらそれ以上のを作ってくれたわ。
マジでこいつらどうなってんだ。
スナック感覚でやるんだから笑っちまう。
ちなみにこっちは通常の依頼として金を払ったぞ。
そんな訳で演習が始まった訳だが……マジでノノミがエグいって話。
ミニガンってさ、確かあのグルグル回る奴の動力にモーターが使われてるんだよな?
実際ノノミが構えると「フオオオオオオオオオン」ってジェットエンジンのアイドリングみたいな音が聞こえるし。
多分ここからノノミがいる場所まで300メートル位離れてるのにな。
でも見る限り、特にバッテリーみたいな物を持ってる感じもしない。
どうやって動いてんだよあれ……。
「あ、生徒会長が突進しましたね」
「どんくさいと思ってたけど結構速くね?」
「そりゃそうですよ。あの人攻撃はそうでもないですけど、まずまともにこっちの攻撃当たらないですから……」
「あの盾ってそんなに凄いの?」
「盾自体ではなく、微妙に受け流すんですよ。え~い! とか気の抜けた事言いますけど生徒会長も十分エグいです」
つか社員Aやるな。
解説が分かりやすいぞ。
実際ユメが遮蔽物が常に正面になるように移動してるわ。
前方にはノノミの攻撃から逃げたホシノが隠れてる遮蔽物がある。
「でもよ、ユメの武器って地味じゃね?」
「地味ですけど取り回しは良いですよ?」
「そうなん?」
「グロックはそもそも軽いですし。でもそれはあんまり意味なくてですね、ほら」
「ん? うわ、えぐ」
「ホシノちゃんみーっけ」
「ちょ、ユメ先輩、あう~……」
盾でぶん殴ったんだが!?
でもホシノが身体を畳んでクルクル後方回転しながらコンクリート塊を蹴って逃げてったぞ。
どっちもバケモンかよ。
よく見りゃユメの奴、予備のハンドガンもホルスターに差してんな。
発射音はパンパンって軽い音だけど、本命は盾なのか。
「小鳥遊さん、そろそろ
「ありゃ。ワカモちゃんに目を付けられちゃったよ。面倒臭いなあ……」
「ん、ホシノ先輩、私もいる」
「ちょ、シロコちゃん!? うへっ!? いきなり撃って来たし。どうしてみんなこっちを狙うんだよぉ……」
「私もいますよ☆ えいっ」
「ん、危険なのから排除する。定石」
「ぎゃああああああっ!?」
中央の塔みたいに積み上がったコンクリートの天辺からワカモが飛び出した。
戦闘モードだからか、トレードマークの狐面と、ミニスカ和装だ。
思いっきり色々見えてるけどええんか?
なんならビジョンにアップになってるけどええんか?
AIくんドスケベ説あるでないで。
というかある程度距離があったのに一気に集まったな。
速すぎてようわからんけど。
俺がかつてヘルメット団をボコった事があるが、目の前の連中はレベルが違うのな。
あ、ワカモに蹴り飛ばされたシロコがユメの盾で叩き落された。
こういう断片は見えるんだけど、その間が情報量多すぎなんよ。
ノノミの微笑みが今は悪魔に見えるぜ。
笑いながらミニガンぶっ放しながら回ってんだもの。
近距離やぞ。
なのに逃げ回ってたホシノが攻勢に出ると際立つな。
ノノミが背中向けた瞬間、軽い前蹴りでシロコがアサルトライフルを構えた所に突っ込ませてるし。
その勢いを殺さずにユメの盾にショットガンを接射して動きを止めると撃った反動のまま後ろに飛んで殴ろうとしてたワカモに体当たり。
どうなってんだオイ。
身体が小さいから逆に目立つ。
ピンクのラインが密集地帯を切り裂いてら。
「あうう~頭クラクラするよぉ……」
「無念……くやしい」
おっとユメのジャケットが真っ赤になった。
シロコも。
「十六夜さん。お疲れ様ですっ」
「ノノミちゃんお休み~」
エグい。
浮いたノノミを同時にワカモとホシノが殺しに行ったぞ……。
ワカモがノノミの後ろから水面蹴りで足を刈り、浮いたところをホシノのストックが容赦なく打ち据える。
「やられてしまいましたぁ☆」
余裕かよ。
パタンと倒れたけど笑ってんじゃん。
社員たちがウヒョー! とか盛り上がってるけど地球人の俺、ドン引きである。
そうこうしている間にワカモとホシノが中央の塔の上にいる。
いつの間に移動したよ。
コンクリートを雑に積み上げた塔のテッペンは10メートル位のスペース。
10台ほど飛んでたドローンが全てそこを狙ってる。
AI君のディレクションえぐない?
クソでかビジョンには色んなアングルの二人が映ってら。
荒野の決闘かよ。
ワカモは不敵な笑顔を浮かべながらバヨネット付きのボルトアクションライフルをヒュンヒュン振ってるし。
最近セミロングに伸びた髪を雑にポニテにしているホシノは、苦笑いしながらも目だけは鋭くワカモを見てる。
すると二人の会話をマイクが拾った。
「小鳥遊さんも大変ですわねぇ」
「……なにが?」
「それだけの力がありながら、守るものが足枷になっているなんて」
「――誰の事を言ってるのかなあ?」
「さあ? ただ、優しさに縛られて本気を出せないのは、勿体ないと思いまして」
「……ふーん」
「それとも、“あの方”がいなければ、もっと自由に――」
「黙れ」
ワカモが煽った途端、ホシノが消えた。
ガキンとエグい音がする。
ホシノが拳を振り切った姿勢で空中で止まっている。
ワカモがライフルで受けた様だ。
けどあれだけ余裕を噛ましていたワカモが圧され、塔のキワキワにつま先が掛かっただけで耐えている。
あの小さい体のどこにそんなパワーがあんだよ……。
つーか表情が真顔で目がバッキバキじゃんね。
それを皮切りに、黒と桃色の閃光が幾重にも交差する。
「あはっ、あはははははっ!」
「余裕あるねえ。凄いよワカモちゃんっ……!」
会場が静まり返ってて草。
お前らさっきまで大騒ぎしてたろ。
「ん、ホシノ先輩怒ってる」
「ワカモさんが煽りましたからねえ」
「ワカモちゃんは遊びたかったんだね。ああいうホシノちゃんも久しぶりだよぉ。前はよく怒られてたから……懐かしいなあ」
戻って来たシロコ達が軽口を叩きながらも真剣にホシノ達の戦闘を見ている。
まあホシノってシロコ達が来てから随分とキャラ変わったしな。
俺が出会った頃は尖りまくってたし。
すげえ辛辣だったもんな。
警戒心を絶対にとかない野良猫みたいにな。
あの頃ってユメとホシノだけだったし、借金問題もあった。
俺が転がり込んで以降はその辺はどうにかなったが、もし俺がユメを発見してなきゃどうなってた?
なんにせよ、その頃の事はホシノにとって他人に弄られるのはライン越えなんだろう。
そんでお荷物ってのはユメの事を言ってんだろう。
ワカモも分かって地雷踏みに行ってるなコレ。
シロコ相手じゃ物足りなそうだし、本気のホシノと暴れたいってとこか。
って、塔のテッペン吹き飛んだぞ!?
「ワカモちゃん」
「はい、小鳥遊さん」
「そろそろやめない?」
「そうですわね。
ワカモとホシノが額付き合わせて止まってる。
ホシノのショットガンがワカモの喉に添えられ、ワカモのバヨネットがホシノの腹に。
映画のワンシーンかよ。
どっちのパネルもオレンジ。
ギリギリで生きてる。散々っぱらドンパチ噛ましてコレだもの。
いやあ怪獣大決戦かよ。こっわ。
「ねえワカモちゃん、ユメ先輩は凄い人なんだよ」
「存じてますわ。ただお二人の絆が眩しくて、ワカモ、羨ましかったのですわ」
「ふーん……でもいまはワカモちゃんもアビドスだよ」
「ええ。もう言いませんから許してくださいまし」
「うん、ならいいよ……はぁ、疲れた。ワカモちゃん手数が多いからもうやりたくないよ……」
「そんな釣れない事言わないでくださいまし。また遊びましょ♡」
「うへえ……」
そんな感じで大団円?
とりあえず社員たちにエグい戦闘を見せるって目的は達成っと。
あちこちで感想戦やってて楽しそうだしな。
そしてホシノが武装を解いて塔から降りようとするワカモを呼び止めた。
「ワカモちゃん」
「はぁい……キャン!?」
振り返った所にショットガンを逆手にもったホシノがストックでぶん殴った。
ワカモは吹っ飛び下に落ちると、目をぐるぐるさせて気絶した。
真っ赤になるタクティカルベスト。
それを見下ろしホシノがニヤリと笑った。
「ごめんね~ワカモちゃん。でもさぁ、ご褒美欲しかったんだよねぇ」
そう言えばそう言う趣旨だったわ。
無邪気な笑顔を浮かべてこっちに向かってピースサインをするホシノ。
……うん。決めた。
こいつは、絶対に本気で煽らない。
割とマジで死ぬ気がする。
日常回寄りだったので、ここにきてキヴォトスはやべえ土地ってのを改めて提示してみた。
主人公は殴る蹴ると耐久力は高いが、武装したネームドに囲まれたら無理でーすって感じ。
だってリアルな重火器での戦闘なんて日本じゃ無理だもの。