(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス 作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)
作者的には伊藤英明さんが怪演した『ドンケツ』のロケマサのビジュアルをイメージしている。
※イケメン風だが初見でヤバい奴と思われる容姿として理想
「ま、ついつい遊びたくなっちゃうよなっ」
ケラケラ笑いながら、目の前の大人は窓を開けた。外の乾いた空気が流れ込んでくる。ポケットから取り出した煙草を咥え、金色のライターで火をつけるとゆっくりと煙を吐いた。
煙草は身体に悪いから子供は駄目。
――なんだけど。
あたし達は元々ワルだ。そういうの、ちょっとカッコいいって思っちゃう。
で、この人はそういうのも分かってる。
『だよな。なんか咥えてるだけでそれっぽく見えるもんな、アレ』
否定しない。笑いながら同調してくる。
そのくせ、いつの間にか会社の購買部には“煙草っぽいけど身体に悪い成分が入ってないやつ”が並んでた。メンソールでスーッとして、煙もちゃんと出る。
今じゃドライバー組の定番だし、休憩所では「いかにカッコよく煙を吐くか」選手権みたいなのが自然発生してる。アホばっかだなって思うけど、あたしもやった。
……ちょっと楽しいし。
そんな事を平然とやるこの人。
あたし達のボス、
今あたしは、そのボスの執務室にいる。
午後シフトだから、その前に相談を入れた。モモスタでDM送ったら、
――〇日の午前、空けとくから来い。
それだけ返ってきた。
この会社、アビドス・ロジスティックスは変だ。
元ヘルメット団みたいな連中が五百人以上も集まってるのに、ボスは全員にモモスタのアカウント作らせて、「言いにくい事は直接DM寄こせ」って言う。
で、本当に返ってくる。
忙しいはずなのに、こうやって一人ずつ面談してる。
意味わかんない。
でも――だから、来た。
今日の相談は、お金の話。
給料は二十五万。寮もあるし飯も出るし、正直、昔と比べたら天国だ。
なのに。
「……気づいたら金なくなってるんだよなあ」
「あるある」
軽っ。
でも笑ってる。
「いやほんとなんすよ! ちゃんと考えて使ってるつもりなんですけど、なんか……」
「十日持たねえだろ」
「なんで分かるんすか!?」
「俺もやったから」
そう言ってケラケラ笑う。
「学生の頃にバイト代が出て初日にな、ゲーセンで全部溶かした事もある。ネットでポチポチして気づいたら残高ゼロとかもある。買い物ってさ、楽しいんだよな。止まんねえのよ」
「それなんすよ……!」
思わず前のめりになる。
分かってくれる人、初めてかもしれない。
でも。
それじゃ駄目だってのも、分かってる。
「……変わんなきゃ、ですよね」
ぽつっと言うと、ボスは「まあな」とだけ返した。
で、いきなりポケットからライターを取り出してきた。
「これ、見てみ」
渡されたのは金色のライター。龍のレリーフが彫ってあって、無駄にカッコいい。
言われるままに親指で弾くと、
――キン、と澄んだ音が鳴った。
「それ、九十万」
「は!?」
「無駄に高いだろ。龍とか完全に厨二デザインだし」
「いやいやいや高すぎでしょ!?」
「だよな。でも買った」
あっさり言う。
頭おかしいんじゃないかと思った。
「なんでそんなの……」
「なんでだと思う?」
「……カッコいいから?」
「正解。あと、バカだから」
自分で言って笑う。
なんだこの人。
「でもな、いいもん持つとさ、ちょっと変わる」
「変わる?」
「落とさないようにするし、雑に扱わなくなる。最初は怖いからな。失くしたら泣くレベルだし。アホほど高いからよ」
「それは……怖いっす」
「だろ? だから気を付けるようになる」
ぽん、と机を指で叩く。
「その“気を付ける”ってのがミソでな。一個そうなると、他もそうなる」
「他も?」
「スマホとか財布とか。似たようなもん全部、無意識にやるようになる。習慣になるからな。人間の行動ってそんなもんだ。まとめて雑か、まとめて丁寧か」
「……あー……」
なんとなく分かる。
あたし、多分全部雑だ。
「いきなり完璧にはならんけどな。だから仕組みで縛る」
「仕組み?」
「給料入ったら分けろ。小遣い、食費、スマホ代。なんでもいいから袋でもファイルでも用意してさ」
「それで変わります?」
「劇的には変わらん。でも“やべえ”って感覚が生まれる」
軽く肩をすくめる。
「今のお前、無限に使える感覚だろ」
「……はい」
「それがなくなるだけでだいぶマシ」
なるほど、とは思う。
思うけど、それだけで何とかなるのかって気もする。
顔に出てたのか、ボスが苦笑した。
「だからもう一個」
「はい」
「銀行行け」
「銀行?」
「最近できただろ。ミレニアムの」
「あ、はい」
突拍子もない事を自然にぶっこんで来る。
「そこでな、引き出し制限付きの口座作れ。毎月いくらまでって決めて、それ以上は触れないやつ」
「そんなのあるんすか?」
「ある。強制的に貯まる」
さらっと言う。
「残りは勝手に積み上がる。で、二十歳まで触れねえ」
「え、じゃあ……」
「気づいたら結構な額になってる」
軽く笑う。
「それで車でも買え。お前この前、俺の車を見て騒いでたろ」
「あれはカッコよかったっすけど……!」
ボスの車。
最近増えた奴。
いーじぇーにーまる? なんかそんな名前の青いセダン。
砂漠で乗るべき神の車とか騒いでた。いちいち可愛いなこの人。
「免許は会社で取れる。金も貯まる。あとはやるかどうか」
選択を投げてくる。
押し付けない。
でも逃げ道もない。
「……やってみます」
自然とそう言ってた。
「いいね。失敗してもまた来い。別の手考えるから」
あっさり言う。
ほんと、この人。
「なんで……怒らないんすか?」
つい聞いてしまった。
今までなら絶対言われてたから。
なんで出来ないのって。
その度に、ムカついて。
自分でもどうしようもなくて。
「ん?」
ボスは少しだけ首を傾げて、
「怒って良くなるなら怒るけど」
それだけ言った。
「嫌だろ? 言う方も言われる方も。なら次どうするか考えた方が早い」
当たり前みたいに。
そう言う。
なんか、拍子抜けした。
……でも。
ちょっとだけ、救われた気がした。
「あとよ」
立ち上がりながら、ボスが続ける。
「自由に使える金があるってのはいい事だ。でもな、自由には責任ついてくる」
「責任……」
「簡単だ。他人の邪魔すんな。それだけ守れりゃ上等」
ドアに手をかけて、
「子供のうちは失敗していい。むしろしろ。じゃなきゃ覚えねえ」
振り返りもせずに言った。
「なんかあったらまたDM寄こせ」
そう言って出ていく。
静かになった部屋で、あたしは少しだけ深呼吸した。
なんかよく分かんないけど。
とりあえず――
「銀行、行ってみるか」
立ち上がる。
その時、ドアがもう一回開いた。
「あ~……言い忘れ」
「はい?」
「煙草はまだ駄目だからな。絶対だぞ。流行ったら俺のせいにされてホシノにシバかれる」
本気で慌ててるよこの人。
なんでカッコいいのに最後までもたないんだろう……。
「じゃ、そういう事で。じゃあの」
今度こそ消えた。
……ほんと、なんなんだろうなあ、この人。
強いのか、抜けてるのか、分かんない。
でも。
あたしは知ってる。
この人がいなきゃ、今ここにいないって。
だから――
「ついてくしかねえよな」
小さく笑う。
あたし達のボス。
本人はビッグボスとか言わせたがってるけど。ビッグってなにさ。
身体デカいのは分かるけどさァ。
でも裏じゃみんな、こう呼んでる。
ビッグパピー。
……まあ、言ったら絶対拗ねるから言わないけど。
モモトークのグループチャットで「P」って打つと、みんな分かるのも内緒だ。
「……好きっすよ、ほんと。パパ」
ぽつっと呟いて、部屋を出た。
・龍の中二臭いデザインのライター>実在する。デュポンのライン2というフラッグシップモデルの”ドラゴン”という派生モデル。90万弱する。
・ビッグボス→主人公は金転がしは上手くても大人数の会社経営なんてした事がない。それでも経営者になった以上どうにかせねば……せや!ビグボのマネしたろ! という浅知恵です。
SNSを駆使してやればいいはず? ふわっふわ。