(またしても)原作を知らないオリ主inキヴォトス   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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言い訳を先に……

なんかメロい感じの話になってるが違うんです。
言ったでしょ。もう殆ど書き溜めてるの。
これ書いたの1年前なの。
けど結構な文量があるからお蔵にするのはしのびないから投下するの。
本編は修正しながら投下してるから、方向性としてちょっと違くね? とか思ったら、存在しない記憶として読んで流してね。

あと一人称がメロすぎたんで三人称に修正してるんでヘタクソですまん


シロコ「か~っ! 見んねノノミ! 卑しか女ばい!」①

 

 

 アビドス・ロジスティックス社、シンタロウの私室。

 

 業務用の簡素な外観とは裏腹に、中はそれなりに生活感のある空間で、今日に限ってはやけに賑やかだった。休日だからというのもあるが、原因は床に座り込んでいる面々にある。

 

「ユメ先輩、その攻撃は悪手ですよぉ☆」

 

「ひぃん!? 私のゲンガーがあ!?」

 

 ローテーブルの前ではユメとノノミが並んでゲーム機を握りしめ、真剣なのか緩いのか分からないやり取りを続けている。画面には色とりどりのポケモンが並び、妙に白熱していた。

 

 ソファーではワカモが足を組み、器用にペディキュアを塗っている。片手には小さなブラシ、足元にはいくつもの色瓶。真紅から淡い桃色まで、妙に気合いが入っていた。

 

「この色……少し派手でしょうか?」

 

「いいんじゃね? つーかそれ塗りすぎじゃねえの?」

 

「ふふっ、こういうものは重ねてこそ、ですわ」

 

 そしてその横、床に置かれたテーブルでは、シロコが無表情のままジェンガのブロックを抜いていた。対面に座るシンタロウもまた、妙に真剣な顔で塔を睨んでいる。

 

「……シン、そこは危ない」

 

「わかってるって。ここはこう――」

 

 ぐらり、と塔が揺れた。

 

「ん」

 

「うおっと!? あぶねえ……」

 

 慌てて手を引くシンタロウ。その様子に、シロコはわずかに口元を緩める。勝負の空気は緩いのに、なぜか二人だけ妙に本気だった。

 絶対に負けない、強い意思を感じる雰囲気だ。

 

 そんな光景を、少し離れた位置からホシノは眺めている。

 

 壁にもたれ、足を投げ出して、ぼんやりとした顔で。

 

(……いいねえ、こういうの)

 

 誰かが騒いでいて、誰かが笑っていて、誰かが真面目な顔をしている。そんな何でもない時間が、やけに心地いい。

 

 少し前までのアビドスでは、こういう空気は長く続かなかった。だからこそ、今この瞬間が、妙に尊く感じられる。

 

 ふと、シンタロウが手を止めた。

 

「そういやさホシノ」

 

「ん~? どしたの?」

 

「この前の模擬戦のご褒美、まだだったな」

 

 その一言で、空気が少しだけ変わる。

 

 ユメとノノミが顔を上げ、ワカモが筆を止め、シロコもジェンガから視線を外した。

 

「ご褒美……」

 

 ホシノが小さく呟く。

 

「優勝したのはホシノだろ。何がいい?」

 

「え~、なんでもいいの?」

 

「地球のもんならな。でも常識の範囲だからな?」

 

 軽い調子で言われて、ホシノは一瞬だけ言葉に詰まる。

 

 頭の中に浮かぶのは、以前聞いた話。ワカモやシロコが地球に行った時のこと。楽しそうに話していたあの様子が、妙に記憶に残っている。

 

(……ちょっと、羨ましかったんだよねえ)

 

 そんな感情を誤魔化すように、ホシノは肩をすくめた。

 

「じゃあさあ……水族館、行ってみたいなあ」

 

「水族館?」

 

「うん。魚、好きだからさ」

 

 少しだけ照れたように笑う。

 

 シンタロウは「あー」と納得したように頷いた。

 何かの折にホシノの魚好きは周囲にも伝わっている。

 ただ割とマニアックで話すと止まらないから気を付けろ、という警告の意味も強いが。

 

「いいじゃん。じゃあ決まりな」

 

「ほんとに?」

 

「明日でも行くか」

 

 あまりにも軽い即決に、ホシノは少しだけ拍子抜けした顔をする。

 

 けれどその奥で、小さく心が跳ねた。

 

――――

 

 転移の扉が開く。

 

 視界が切り替わる感覚は、何度体験しても慣れないな、とシンタロウは思う。けれどアビドスとは違う空気感に落ち着くのも確かではあった。

 

 ただしホシノはそれどころじゃない。

 

 なにせ二人きりだからだ。

 

 見慣れない部屋、けれど生活感のある部屋だった。

 

 1DK。整頓されているが広くはない。ベッドとテーブル、簡素なキッチン。壁際には服や雑貨がきちんと収まっている。

 キヴォトスの感覚とは全然違う。

 

「ここがシンさんの部屋?」

 

「そう。まあ拠点ってやつだな」

 

 靴を脱ぎながら、シンタロウが軽く言う。

 

 ホシノもそれに倣い、部屋へと上がった。

 

(……近いなあ)

 

 ふと、そう思う。

 

 空間が狭い分、距離が近い。さっきまで大勢いた場所から一気に二人きりになったせいか、妙に意識してしまう。

 

 シンタロウはそんな様子に気付くこともなく、棚の上に置かれた鍵を手に取った。

 

「ちょっと出る準備するから、適当に座ってていいぞ」

 

「うん……」

 

 返事をしながら、ホシノは部屋を見渡す。

 

 ふと、自分の髪に触れた。

 

(……目立つよねえ、これ)

 

 ピンクの髪にオッドアイ。キヴォトスでは当たり前でも、この世界ではどうなのか分からない。

 

 シンタロウも一瞬だけこちらを見て、同じことを考えたらしい。

 

「まあ……大丈夫だろ」

 

「雑だなあ」

 

「ワカモとシロコ連れて歩いてる時点で今さらだ」

 

「それもそうだねえ」

 

 軽く笑って、少しだけ緊張がほどける。

 

――――

 

 オレンジ色のスーパーキャリイが、静かに走り出す。

 

 クラッチを踏み、ギアを入れる。

 

 ――ガコン。

 

 わずかに揺れる車体。

 

「わっ」

 

「悪い悪い」

 

 シンタロウはそう言いながら、ハンドルを切る。

 

 シフトチェンジのたびに、腕の筋肉が動く。血管が浮き、無駄のない動作で車を操っているのがわかる。

 

 ホシノはそれをちらりと見て、すぐに視線を外した。

 

(……なんか、変に意識するなあ)

 

 車内は静かで、距離は近い。

 

 エンジン音と、規則的な操作音だけが続く。

 

 その時間が、妙に長く感じられた。

 

――――

 

 やがて、海が見えてくる。

 

 八景島シーパラダイス。

 

 入口に到着すると、ホシノは思わず小さく声を漏らした。

 

「ここがそうなんだ……大きいねえ」

 

「観光地だしな」

 

 車を降りて、並んで歩く。

 

 人の流れに混じりながら、ホシノの足取りは少しだけ軽くなっていた。

 

 施設が近づくにつれて、目に入るもの全てが新鮮に感じられる。

 

 海の匂い。賑わい。遠くに見える建物。

 

「ねえシンさん」

 

「ん?」

 

「ちょっとだけ、はしゃいでもいい?」

 

「最初からそのつもりだろ」

 

「バレてた?」

 

 くすっと笑う。

 

 そのまま少しだけ前に出て、振り返る。

 

 楽しそうな顔。

 

 けれど次の瞬間、ふと周囲の視線を気にしたように動きが止まった。

 

「……あー」

 

「どうした?」

 

「いや、その……」

 

 少しだけ頬をかく。

 

 そして、ほんの少しだけ躊躇ってから――手を伸ばした。

 

「はぐれたら困るし……さ」

 

 言い訳みたいな一言。

 

 その手を、シンタロウは何も言わずに取った。

 

「はいはい」

 

「軽いなあ……」

 

 文句を言いながらも、ホシノの指はしっかりと絡む。

 

 そのまま、二人は並んで歩き出す。

 

 入口をくぐる。

 

 水族館の世界へ。

 

 少しだけ鼓動が速くなるのを、ホシノは自覚していた。

 

(……まあ、いいか)

 

 理由なんてどうでもいい。

 

 ただ、今は。

 

 この時間が、楽しいから。




 後半へつづく
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