ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
俺は自身のドックで、改造の準備を着々と進めていた。
前のマイクロデブリ回収依頼で、多額の金を貰ったみんなは、今か今かと改造機を楽しみにしてくれている。
設計図を引いた瞬間に、シミュレーターを回せるのは便利だ。そうでなかったらもう少し、改造機に関して奥手になっていたに違いない。
そんな事を考えていると、オウムアムアのドックに来客だ。鳴らされた事のない、インターホンの画面を見ると、そこにはホーモットが立っていた。
「ホーモット?」
アポなしで来たので、少し不振に思い、端末を見るとホーモットからこんなメッセージが。
『ちょっと、アンドロイドのハードの事で相談あるんだけど、話聞いてくんね?』
作業に集中しすぎて、そんなメッセージを無視していたようだ。後ろで、ほぼ全員倒れているし、連絡が付かないって事はドックに居んだろ? みたいな感じで来たのだろう。
「今開ける~。ちょっと待ってて」
そう言って、端末を操作して、こちらの方で開けてやると、ドックの出入り口からホーモットが顔を出す。
「おいーっす」
そう言ってダンボールを抱えて入ってくるホーモット。
そして、冠欠仙【YAH道】の攻撃がホーモットの頬を掠めた。
「おわああああ!?」
「よう! 何しに来たんだ?」
段ボールの中身を四散させながら、倒れ込むホーモットに、俺は要件を聞いた。
「よう! じゃねえよ!? なんだよ今のは!?」
「冠欠仙【YAH道】の攻撃だ、丁度バトルが終わったみたいだな」
イルシアが床に膝を付いているのを見ると、メンタリオンの試合が終わったようだ。
流石に勝負強さでは、ベローナに軍配が上がるか。
「1から10まで説明を求めるぞ!?」
そうは言われても………………。
極東で行われたメンタルカードバトル、メンタリオンを使って、次の改造機の優先権を争っているだけの話だ。
そして、それを懇切丁寧に説明していたら、既に総当たりメンタリオンを制したのはベローナだった。
しかしまあ、メンタリオンの話を説明したら。
「何故AR技術と遊びを融合させたのかが分からない」
「それが極東だけで流行ってる理由が見当たらない」
などと驚き疲れていた。説明の途中で、モンスターたちからの攻撃の余波が、こちらに向かってきた時に、うわあ! とかぎゃあ! とかうるさかったしなぁ。
ふと、視線を皆の方に向けると、なんか熱い事になっていた。
「流星! 君にメンタリオンを申し込む!!」
「べ、ベローナ!? 流石に休憩した方が良いんじゃないか?」
ベローナの身を案じる流星だが、ベローナは意に介さず、挑戦を受けるように続けた。
「流星、夏休みの約束、忘れてないだろう? …………私は、今からでも、強くなりたいんだ!」
「…………分かった」
流星は、メンタリオンを負けたメリルから受け取り、頭に装着して臨戦態勢に入る。
「3回も戦って、コンディションは最悪だろ?」
「そうでもないさ、今、最高に闘志が漲っている」
身を案じるように問うた流星、こういうのはメンタリオンのデフォだ。言葉で、相手のメンタルを誘導し、メンタルを不調へと導く技術。
しかし、それを物ともせず不敵に笑うベローナ。
「あー、ホーモット、この試合ちょっと見てていい?」
「別にいいけど、ちょっと気になって来たから説明は入れてくれよ?」
俺はホーモットからの要望を快諾しながら、椅子を2つ、お菓子を用意して、じっと見つめる。
「「メンタリージョン展開!!」」
そんな2人の掛け声でメンタリオンは始まる。
デッキは40枚固定、手札上限が5枚。
「俺のターンドロー」
「私のターン! ドロー!!」
そう言って、投影されたデッキに手を伸ばす2人。
「なんか一斉にドローし始めたんですけど? って言うか、初期手札が0なんですけど」
「ああ、インフレしすぎてじゃんけんゲーになってな、ターンの概念と手札が無くなったんだ。さっき説明しただろ?」
「カードゲームである意味はあるのか!?」
知らない。
この世界にカードゲーム狂が居たんだろう。極東ならそれぐらい5人ぐらい居ても良い。
「私は、完結戦【イプシ論】をメンタレベル3で召喚! ドロー5枚! トークンを10個保持! このクリーチャーは完全無敵になる!」
「俺はスペルカード【ダブル&リダブル】をメンタレベル2効果発動、デッキからカードを10枚ドローする。これによって加えられた手札が、ルール処理によって捨てられた時デッキの一番下に置く。これによって加えられたカードを除外することにより、ドロー放棄権が得られる。ドロー放棄権を2回入手、手札は3枚。除外ゾーンに送られた【イレースドタウン】のメンタレベル2効果発動、除外ゾーンから手札に戻すで5回以上無限回以下のループが発生したのでループトークン獲得、
最早、トランプのスピードの如く、カードをドローして出すを繰り返し、目まぐるしく変わる戦況に、もう頭が追い付いて行かない。
「登場する奴全部バカのカードじゃない? なんで1ターン目で無限ループ入ってんの?」
「インフレしたからな」
「し過ぎじゃね? てか、そんなもん小学生に出来るのか?」
「あー、基幹となる勝利条件や敗北条件が5以下なんだよ、無限ループトークンの保持とか、5なら片腕でも数は指折りで数えられるし、勝利条件はあまり複雑じゃないしな」
「もう、諸々置いといて、片腕の奴が同じ
「信頼の証だ、悪意は無い」
「ちょっと怖いわ!!」
スペルとクリーチャーがピュンピュンと飛び回り、勝負は佳境へ。
「道を求め彷徨う秘文字達よ、始まりを指し示しその終幕へと導け! メンタライズ! 冠欠仙【YAH道】! 爆誕!!」
「クリーチャーの登場に反応して、【夏鬨レンダリング】の効果発動、【
「無駄ループ!? く、来る!!」
「何度でも、何度でもだ! メンタライズ!!
その光景を見てホーモットが呟く。
「2枚でやっていい事じゃねえ………………」
「インフレしてるからな」
「今使った2枚で別ルートのループ出来るんだけど…………?」
「インフレしてるからな。それに
「それにカードゲームなのに気分で上下するのってどうなの?」
「インフレしてるからな」
俺がそう言うと、何処か遠い目をしたホーモット。
勝負はもう着きそうだ。
「冠欠仙【YAH道】で攻撃!! コレでトドメだ!!」
「
「そ、そんな!!」
そんな様子を見てホーモットさんが、目頭を押さえながら、俺に質問する。
「ループデッキの方ぶっ壊れじゃね?」
「いや? 弱い。ルール処理で無限ループが止められると得られるループトークンは、5つ集めたら負けるんだよ。それに、ジュンカンキ系は1つの能力しかないし、無駄ループする位だったら別のカードでフィニッシュ決めた方が」
「ループに気軽に入れるカード群の方だよ…………」
「それはそう」
そんな事を話していると、決着が着いた。
「…………引き分けか」
「引き…………分けた…………」
ベローナの表情は暗く、流星の表情は全ての感情が抜け落ちたように呆然としていた。
「凄い事や…………」
「太一が泣いてる!? 引き分けただけだよね!?」
「引き分ける事自体が難しいんだ…………俺は今、猛烈に感動している」
同時にターンが始まる関係上、特殊勝利と特殊敗北の同時達成を行うと引き分けになる…………アレ? コレ格ゲーじゃね?
あまりに美しい決着に滂沱の涙を流す俺と流星も結局泣いていた。落ち着くまでホーモットには待ってもらった。
「TPEとシリコン素材の複合で本体の外皮を作りたいんだけどさ、やっぱ骨格系でやるなら火星シャフト使うしかないと思ったんだ。へこ太郎はユニット系に外皮張りつけてるだけだからさぁ」
「考えたくもねえ」
そんな感動的な場面を見た後、ホーモットの話をきくと、どうやら次はアンドロイドのハードの見識を深めたいらしい。
…………いや、これ本当に汚い話だから、さっさとドックから出て行って欲しいんだけど?
「んで、
「他はどうだったんだ?」
「全滅、見ず知らずの所に技術流出する訳にも行かんとさ」
「残念ながら当然」
火星シャフトの転用なら、小型化しつつ中空部にコンピューター入れても剛性は担保出来るし…………。
「うーん、実際火星に行くしかないんじゃないか?」
「個人で行ったら弾かれるし、
「依頼しかなさそうだが…………」
俺達が悩んで居ると、ミーシャが助け舟を出した。
「悩んで居るなら、Aランク
そう言ったミーシャ。
依頼された
逆もまた然り。何か理由があって、両者が承諾すれば、依頼された
「そうか! その手があったか!!」
「もちろん、流星が承諾すればの話だがな?」
そう言って俺とミーシャ、ホーモットが流星を見ると、流星はなんの気なしに、承諾した。
「俺は別にいいぞ? 太一も行きたいって顔してるし」
「バレた?」
実の所、火星に行きたかった。
ベローナが先ほどの試合で、改造機を優先的に作る事になったのだが、さらに
実際にそんなチャンスが依頼中にあるかどうか分からないが、行くだけでも十分見識は広められる。後は…………。
「ん?」
「ベローナ、火星に行くけど大丈夫か?」
俺がそう聞くと、ベローナは困ったように笑った。
「ありがとう。私はもう大丈夫だ」
そうして、俺達は火星に行く事を決めたのだった。