ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
「負けたらSEの右腕取られるってどういう事!?」
「アイツには要らないものじゃん! なんでそう言う話になってんの!?」
「そうなっちゃったんだから仕方ないでしょ!?」
3人組の女が言い争っている。
火星のパイロットにとって、SEは自分自身そのものであり、友人であり、隣人であり…………プライドそのものだった。
「もとはと言えばアンタのせいじゃん! タイマン戦仕掛けようって言ってさ!」
「はぁ!? 賛成したのは誰!?」
「アンタたちさぁ、誰が戦うか分かってる訳!?」
やっても良いがプライドを賭けろ。
オウムアムアが突きつけた条件はそう言った物であったが、彼女たちにとっては、憤慨に値する行為であったが、この条件には符丁がある。
お前達のやった事はオウムアムアは把握しているし、それを公表する。…………とどのつまり、脅迫であった。
彼女たち本人は、火星における一般家庭の出身であった。
しかし、底意地の悪い中学生など、畜生以下の化け物である。そんな化け物にとって、親がお偉いさんであっただけの、ハンディキャップを持つ同年代など、格好の標的にしかならなかったのである。
「まあまあ、勝てばいいんだし。って言うか君が最初っから負ける事考えるの珍しいじゃん?」
「うっさい!」
整備科の男が話しかけて来た。女の一人を宥めようとしていたのだ。
「そうだよ勝てばいいじゃん! 勝てば全部チャラ!」
「確かに、あの人に言われた事だって、勝てば達成できるんだしさ!」
彼女たちにとって幸運な事は、ベローナが親に頼る強さを持っていなかったこと。
彼女たちにとって不幸な事は、自らの
「とりあえず大丈夫そうだ」
「やっぱあいつら性格悪いしちょろいよなぁ…………」
「あれでもウチのエースだ、しょうがないよ」
ドックの片隅に居たイザールの整備科たちの呟きは、彼女たちに響かない。ああ、環境までも悪いのか?
不幸は誰にでも等しく降りかかる。しかし、その不幸に意味を付けるのは、何時だって降りかかる者の行為に他ならないのだから。
◇ ◇ ◇
不思議だ…………不思議と心が落ち着いている。
顔を見るのも嫌だった彼女たち、その1人と今から戦おうとしているのにも関わらずだ。
「ベローナ、落ち着いて行けよ」
「ベローナなら勝てるよ」
「ガンバ!」
出撃前に皆からの激励を貰う。その中で、ネルが私にこう言った。
「ベローナ、勝ちたい?」
「勝つさ」
ネルの問いに、私は驚くほど自然に勝てると口にしていた。
「相手のメンタルぎったぎたにして勝って来いよ!」
「それは…………善処する」
太一の言葉には驚くほど不自然に言い淀んだ。
「ん、ベローナ、ぎゅってして」
「ふふふ、ネルは勝利の女神かもな。ほら、おいで」
ほのかな温かさが、一欠の不安を取り除く様だ。片腕だけでも十分に抱き締められる体躯が、力いっぱい抱き締めてくれている。
それに加えて、仲間の激励がある、負ける気なんかどこにも無かった。
「じゃあ、行ってくる」
そう言って、その場を後にした。
「そう言えば、アリアのオペレートも無いのか、少し侘しいな」
これまでの出撃前には、アリアがオペレーターを務めていたが、それが無いのが違和感だった。全天周囲モニターには、無機質なカウントダウンが始まっているだけ。
そんな状況に、思わず独り言を零した。
…………思えば、ここに入る前のシミュレーター対戦に明け暮れた時には、それが当たり前だと思ってたか。
「やるか」
それを奪われてはたまらないと、私は操縦桿を強く握りなおす。気が付けば既に出撃10秒前。
気合は十分。カウントダウンが終わり、無言で
「重装型か、厄介だな」
相手を視認した。
重厚な装甲に、増設したスラスター、右手には縦に長い物理盾、左手には小型のビームライフルが装備されている。
「そう言えば中学の時は、なんだかんだ言ってリベンジしてなかったな」
相手は、私の右側面に回り込むように移動しながらこちらを撃ってくる。私も、同じように時計回りで移動しながら、無駄弾を少なくするように射撃していく。
「やるな、右側面に付かれては、かなりやりにくい」
しばらく、相手の意識を時計周りに動くように
無駄弾の少なさは、エネルギーの節約ではなく、防戦一方であると思考を誘導させ、
「私が右側面に回られた時の戦い方を考えて居ない訳が無いだろうに」
相手のスピードが乗って来た所に逆噴射!同時にAMBAC、身を捻りながら上下を逆にする!
相手の視点から見れば、私が逆さまになりながら急接近してきたように見えるだろう。
マルチロッドの先端からビーム刃が飛び出し、盾の半分を切り裂いた。
思わず、と言ったように相手は後退して、距離を取った。
「何なのよアンタ!」
仕切り直しか、と思った矢先、相手が広域通信でこちらに話しかけて来た。
「広域通信でべらべらと!」
「あ、悪い。つい癖で」
シミュレーターでもそうだが、仲間内と依頼を熟している時や模擬戦を回している時は、広域通信でしか通信して無かったから、その癖でつけっぱにしてしまった。
「ついって何!?癖って何!?アタシの事舐めてんの!?」
「舐めて無い、別に君の事は知らないし」
「はぁ!?うわっ!?何してんの!?」
隙だらけだから撃ってみたのだが、酷く怒っているようだった。
…………メンタリオンをやっているからだろうか?相手の嫌がる事が
別に聞こえたら聞こえたで、ミュートして置けば良いものを…………。
「クソ!!」
だから、相手の頭に血が上っている今、その通信も切り忘れて、ただ単純に後退しながらやたらに打ち続けている。
先ほどの接触で打ち込んだワイヤーにも気が付かないまま。
「どこ!?」
慣性を乗せたスピードで相手を翻弄する。相手が動けば動くほど、私のスピードは速くなり、既に相手の懐に潜り込む。
手早く、左手のライフルを破壊して、マルチロッドを折りたたむように格納し、機能の内の一つ、ショートパイルバンカーを起動させる。
本来なら、デブリを細かくして運ぶ用の機能の一つだが……………。これが効きそうだと思った。
「きゃあああああ!!」
何度も、小さな杭が右腕に、叩きつけられられる。
ガン!ガン!
ビームでの攻撃では、音は響かない。だが、物理攻撃なら、コクピットに響く。
相手が切り忘れた広域通信越しに、右肩の破壊音が何度も何度も何度も何度も聞こえてくる。
負けを突き付けられ、それでも、降参を選ばない。
悲鳴を上げても、負けまでは認めない。
「戦え、私はそうした」
「う、うう」
うめき声を上げるばかり、奥の手まで見せれなかった。
「確かに、太一のいう通りだ、私より弱かったよ」
右肩は破壊し尽くした、宇宙に分離した
コクピット部分にショートパイルを取り付け、同じように攻撃を加える。
先ほどとは比べ物にならないほどの轟音。
撃破判定が出るまで、その音は続いていたのだろう。耳が痛くて、通信を切った。
10発以上、撃ってようやく撃破判定が出た。