ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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すみません、ひょんなことから犬を飼う事になりまして。
マジ忙しくなってしまいました。投稿頻度は減りますが、失踪はしないという固い決意を持っているので初投稿です。


歪む

 ネルを小脇に抱えて、俺はあてどもなく逃げていたのだが、その逃亡は、ある人間によって阻まれる。当人にはそんなつもりはないのだろうが…………。

 

「太一とネル? こんな所でどうしたの~?」

 

「ピールこそ、って言うかここはどこだ?」

 

 急いで連れて来たし、土地勘も無いので迷っていた。丁度通りがかったピールを見かけて、足が止まってしまった。

 

「イザールに借りた通信室の前だね~。太一も何か用事?」

 

「い、いや、何も用事は無く逃げて来ただけなんだが」

 

「ネルを抱えて~?」

 

「ネルを抱えて、あ、ごめんな急に抱っこしちゃって」

 

「いいよ」

 

 そう言って、ようやく俺はネルを地面に下ろした。どことなく右腕が乳酸溜まっている気がする。

 

「それより、ピールはどうしたんだ?」

 

「えっとね、故郷から連絡があって、久々に会えないかだって~」

 

 そうか、それで席を外してたんだな。と思っていると、ネルが質問した。

 

「ならなんでここに?」

 

 ネルのその言葉は、俺の言葉の繰り返しではない。それを説明しかけたが、ピールは前かがみになって、ネルと視線を合わせて説明し始めた。

 

「それはね~私達の故郷って、木星の周りにこーんなおっきい船を何隻も浮かべて過ごしてるんだ~。だからね、木星と直接話したい時は、専用の通信を使わないとダメなんだ~」

 

「わかった」

 

 大きく身振り手振りを使って説明しているピールを見ると、どことなくギャル保母さんに見えて来た。

 

「説明ありがとうなピール。それで、木星へ直接通信ってなに話してたんだ?」

 

「そろそろ里帰りしないかだってさ~」

 

 ピールの言葉を頭の中で整理する。木星の故郷って言うと…………。

 

「あ、もしかして木星建築作業団の本船が火星近くに来てるのか?」

 

「そういうこと~、太一良く知ってるね~」

 

 木星はガス惑星であり、人の住む領域が存在しない。木星衛星軌道上に駐留する巨大船群を、人類の生存可能地としている。

 だからこそ、外貨を得る為に船で旅をしながら仕事をしている母艦も居る訳だ。

 

 木星から帰ってきても特殊能力に目覚める訳もないが。

 俺を褒める為に頭を撫でようとしたピールの手を、かがんで受け入れる。受け入れたまま、俺はピールに質問した。

 

「行きたいのか?」

 

「うん! みんなと一緒にね~。これから皆に相談しに行くんだ~」

 

 そして、その最中に俺(ネル装備)と出くわしたって訳か。

 一人で納得していると、ピールは不安そうな顔で俺に質問してきた。

 

「ねえ、太一。大丈夫、かな?」

 

「俺は構わないし、何とかするよ」

 

 そう言ったらピールは、顔を明るくして喜んだ。

 

「ミーシャが」

 

 流星は快諾するだろう。だが、ミーシャに関してはそうは行かない。

 地球圏から他星に行くのは観光しに個人で行く位だったらさして許可取りは、いらない。

 だが、星進隊(プロトン)としてここに来ている為、関係機関の許可取り、学園への申請と連絡と、これがまあめんどくさい。

 

 ミーシャだったら何だか、最終的に苦い顔をしてOKを出しそうなもんだが。そんな事を思っていると、ピールがげんなりとした顔をしていた。

 

「太一のそういう所変わんないよね~」

 

「えっへん」

 

「たぶん褒められてないとおもう」

 

 ネルに長めのセリフで突っ込まれた。

 

「とりあえず行こうぜ」

 

「そうだね~」

 

 俺達はその場を後にした。

 

 少しだけ連絡を取り、皆は母艦に戻っていると返って来た。

 

 連絡の通りに母艦へと歩いていると、1人の女とすれ違った。俺は、少し気になった事があってその女を目で追ってしまった。

 ピールがからかうように、俺に話かける。

 

「今の子みたいなのがタイプなの~?」

 

「違う、ただ」

 

 …………俺達と同年代ぐらいの年齢で、髪は赤く、目は釣り目で、口には似合わなさそうな真っ赤な口紅をしていて、そして何より。

 

「ものすごい顔で、死ぬほど手を拭いてたんだよ。ウェットティッシュで左手を」

 

 ウ〇コでも左手で触ったのだろうか?

 そんな事を思っていると、ピールが納得したように呟く。

 

「そういうのがタイプなんだ~」

 

「いや、違うから」

 

 ピールはボケなのか本気なのか判断に困る。やんわりと否定して、再び歩き始めた。

 

「ん、おーい!」

 

 すれ違って5分ほどで、母艦の入り口前まで到着し、その場に集まっていた皆に、手を振って声を掛けた。

 

「みんな揃ってどうしたんだ? 中に入ってるもんだと思ってたんだが?」

 

「ああ、ベローナの幼馴染が訪ねて来たんだよ、それで少し立ち話してたらこんな時間まで」

 

 俺の質問に答えた流星。ベローナが続けて話た。

 

「3人にも私の幼馴染と合わせたかったな、私と同じく火星教会上層部の娘で、昔から仲良くしてたんだ」

 

「へえ」

 

「実は、私の幼馴染を助けるために、こうなったのだが…………。昔は、少しだけ、彼女を恨んだこともあったが、今じゃ驚くほどに感謝していたんだ。これもみんなのおかげだ、改めて、3人にも礼を言わせてくれ、ありがとう」

 

 そう言って、頭を下げるベローナ。

 

「こちらこそ~」

 

「がんばったのはベローナ」

 

「それはそうだな、誇れベローナ」

 

 俺はそう言ったが、少しばかり心にしこりが残る。

 

 多分、さっきすれ違ったのは、ベローナの幼馴染…………かもしれない。

 

 ベローナは、自分が助けた幼馴染と言ったが、見方を変えれば…………自分の()()()幼馴染の腕を切断してしまった。と言う見方も出来る。

 

()()には十分な理由だ。もしかしたら…………恨みにすら変わってしまうかもしれない。

 

 文化祭時、ベローナ分の土星機(シャニヌス)も襲撃しているのは分かっている。恨みに変わってしまっているのなら────。

 

 …………良くない妄想は止めだ。別にベローナの幼馴染の人となりを知っている訳じゃないし、顔を知っている訳でもない。不確定な要素で、誰かを疑うなんて持っての他、それに()()がその幼馴染である確証すらない。

 

「ふーっ」

 

 両手で両目を覆いながら空を仰ぐ。自分の思考に嫌気が刺してしまったのだ。

 

「どうした? 疲れた顔して?」

 

「いいや、なんでも…………え?」

 

 ミーシャにそう聞かれ、俺は空を仰ぎながら、覆った手を離し何でもないと返しながらも、空に映った光景を目の前にして、間抜けた声を出した。

 

「えー!? アレ木星建築作業団の船じゃないか!?」

 

「ああ、先ほどピールから連絡が来てな。この機会だ、木星に行こう…………いいだろ?」

 

「いや、良いですけども!?」

 

 しれっとミーシャから説明された、月と地球のような距離感で見える、大きな宇宙船。

 

「さて、私達の実家にご招待!」

「歓迎するよ~。モノづくりの星へ~」

 

 嬉しそうに指を指しながらそう言ったゼリアとピール。

 どうやら、火星から始まった依頼は長い旅路になりそうだった。

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