ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
俺達の母船を離れ、案内されたのはその道中で見た扉より、華美な装飾を施された扉の前。
少し気圧された俺達を尻目に、ゼリアがその扉をノックした。
「おう! 入れ!」
中から威勢と気前のいい声が、俺達の入室を勧めた。失礼しますと言いながらゼリアとピールの背中をついて行く。
そこには、俺にとっては久しぶりであり、ゼリアとピール以外は初対面。禿頭でムキムキ、口ひげたっぷり生やした壮年の男、俺が大会用依頼で下に付いた棟梁その人であった。
「がははは! 久しぶりだなゼリア! ピール!」
そう言って、棟梁はムキムキの両腕を大きく広げてゼリアとピールを抱き締めた。
「わぷぷぷっ! ちょっと苦しいし!?」
「この感じ久しぶり~」
2人はそう言いつつも棟梁を抱き締め返していた。なんかちょっとほろりと来てしまう。
そんな中、2人と棟梁は2,3会話を続けた後、俺達に紹介してくれた。
「この人が私達の親代わりの棟梁だよ!」
「おう! そこの坊主は知ってると思うが、改めて自己紹介させてくれ! 俺は木星建築作業団の棟梁、アイクラだ。んまあ基本棟梁って呼ばれている、オウムアムア諸君もそう呼んでくれや!」
がはは、と笑って自己紹介を締めた棟梁。俺達は棟梁に向かって自己紹介を軽く済ませてから、棟梁が続けた。
「まずはウチの娘と仲良くやってくれてありがとう。ゆっくりしていってくれ、
「棟梁それでコックさんと大喧嘩したんしょ? 弱みげっちゅだね、えへへ」
「と~りょ~。ご飯作ってくれる人に失礼だよ~?」
ゼリアとピールに注意され、嬉しそうにその禿頭を撫でる棟梁。
「すまんすまん。ゼリア、ピール、他の団員とも積もる話もあるだろう、俺との話はこれぐらいにして…………ついでに皆の作業団の船内を案内してやってくれ」
「もち~」
「みんなに団員全員紹介しなきゃ~」
「ピール、それは就寝時間過ぎるぞ?」
ピールの言葉に突っ込みを入れた棟梁。
この船にはウン百人いる事だろう、それはちょっと勘弁願いたかった。
そして、この部屋を出ようとした時に、棟梁から一声かけられた。
「坊主! …………いや、太一と流星、案内が終わったらまたこっち来てくれ、話したい事がある」
「わ、わかりました」
流星はそう言って、俺は無言で頭を下げた。
何だろうか? 俺とか少し、ぶん殴られるだけど心当たりがある…………。ちょっとだけ、ちょっとだけピールにセクハラしているような気がする!!
「坊主、じゃなかった太一、なんかお前汗ダラダラだが…………なんかあるのか?」
「何もございません!!」
気取られた!! 不味い、不味いぞ!!
「そんなかしこまらんでもいいぞ、少し2人には話したい事があるだけだ」
「命だけは助けてください!!」
「太一は本当に何をしたんだ!?」
ええい、流星! なんか掘り返そうとするんじゃない!
「ま、まあいいか。ほら、さっさと行ってこい」
「ウス! 失礼します!!」
「本当に何があったんだ…………」
そう言って、俺と流星はやっとのことで退室した。
◇ ◇ ◇
「ここが居住区、団員みんなが住んで居る場所。防音はしっかりしてるけど、壁ドンとかしないでね?」
「流石に音貫通するよ~?」
「誰向けの注意なんだ?」
「ここが生活区、日用品とか嗜好品とかはココで買うし、ちょっとしたアミューズメントとかもある、後でみんなで遊ぶっしょ」
「楽しみだね~」
「巨大な船の中にはこういうのもあるのか!」
「ここは医務室。そんな事が無いようにしてほしいけど、何か具合悪くなったらすぐにここに来ること!」
「無理は禁物だよ~」
「なんか防音貫いてうめき声聞こえるんっスけど!?」
「ここは作業区。たいっちはあまり近づかない事!」
「捕まったら整備地獄だよ~?」
「ウス!!」
「同意に気合が入ってるね…………」
そうして、2時間ぐらい経過しながら船内を一通り探索しまわった。
「重要な所はこの位?」
「うーん、そうかも~」
「楽しかったですが疲れましたわね…………」
それには同意。ショッピングモール全制覇くらい疲れた。
「じゃあ、私達母船に戻るから」
「棟梁によろしく伝えといてね~」
「うん、それじゃまたね」
流星の声で俺達は棟梁の部屋に向かおうとしたのだが、すれ違った人の顔を見て、俺はテンションが上がった。
「あっ! ケレスさんじゃないですか!」
「あ! 久しぶりですね太一さん!」
大会用依頼の時に、俺の下に付いてくれたケレスさんだ。
俺は言葉を敬語に変えて、ケレスさんに話しかけた。
「大会用依頼の時はどうもありがとうございました!」
「いえいえ、此方こそ」
そう言って俺とケレスさんは握手を交わした。
「ケレっちと知り合い?」
「ああ、依頼の時にお世話になったんだ」
「こっちこそ、メカニックとしていい経験を積ませてもらいました」
そんなそんな、と極東式の謎譲り合いを始めた。そして、なんか謎の言葉をケレスさんが放つ。
「そうだ、今からでもジム行きませんか?」
「あっすぅー。ああ、いえあまり、体鍛える事に興味なくてですね」
「あ、ごめんなさい。そう言う人も居ますよね、木星だとあまり実感が無くて」
ん? 木星だと?
俺がケレスさんの言葉に気を取られていると、俺の背後に人の気配を感じた。俺が振り向くより早く、ゼリアとピールが反応した。
「コスギと!?」
「ピーオさんだ~」
そうして振り向いた先には、またもや筋肉ムキムキの男性二人、いや、心は女性そうな方がいた!! すげえ! ギリギリだ!!
「興味ないなんて嘘よ!」
「コスギとピーオの筋肉ファッションチェック、行くわよ!!」
嫌な予感より早く俺は駆けだしたのだが、それをものともせずにコスギとピーオは俺を捕まえ、刹那の間で俺の体をまさぐり、鳥肌と悪寒が全身を支配する!!
「全身はバルク*1は無いけどカット*2は多め、程よく脂肪が乗って、魅せるでもない仕事でもない筋肉ね!」
「でも下半身の筋肉が発達しててふくらはぎなんかこん棒よ! こん棒! でも全体のバランスが整っているから、おブス筋肉じゃないわ!」
「総評すると、筋肉はあるけど発展途上! プロポーションは良すぎるけど、バルクが無いから逆にエッチよ! エッチ!」
「どういう事!?」
(((((((ちょ…………っと、分かるかもしれない)))))))
「邪悪な気配がっ!?」
何処からか肉欲の気配がする!!
「それは怖いわね、ジムに行きましょう!」
「ジムに行けば何も怖くないわね!」
「助けてぇ!!」
俺は、後から知ったのだが、木星はボディビルの最高峰。太陽系では太陽を除いて重力が強いため、重力圏に近づけば近づくほど、体に掛かるGは大きくなるといった。
そんな現実逃避をしながら、俺はジムに連行されていったのだった…………。