ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
「おう! 来た…………か。って、何でタンクトップ着てんだ?」
「ハァハァ…………ざりゆぎハァハァでず」
「成り行きらしいです」
「お、おう、何で伝わってんだ…………?」
コスギとピーオからからがら逃げ出してきた俺は、その姿のまま棟梁の部屋に飛び込んだ。
因みに、コスギとピーオは優秀なトレーニーだった。それが俺を苦しめた訳だが。
俺が入って来た時には流星は部屋に入っていて、俺の到着を待っていたように、棟梁が口を開いた。
「お前達を呼び出したのは他でもない、ゼリアとピールの事についてだ」
そう切り出す棟梁。だろうなとは思っていた。
「あの2人は良くやってくれてます」
「そりゃあ、あの活躍を見たら分かる。あいつらの抱えているモンについての話だ」
流星の言葉に、さらに言葉を返す棟梁。ちらっと流星を見ると、顔が一瞬こわばっていた。
「…………その様子だと、知ってるみてぇだな」
「棟梁も知ってたんですか?」
流星は驚き混じりにそう言うが、棟梁は「あいつらをここまで育てたのは誰だと思ってる? そのくらい分かる」と呟くように言った。
「ゼリアとピールの両親の事だ」
「物心ついた時から、両親がいなかったって聞いてます。…………そして、両親の死の真相を知りたいと」
死の真相、と流星が言った瞬間に、棟梁が動揺している。その後の短い逡巡が、棟梁の持っている迷いをうかがわせた。
俺は棟梁に目配せしながら、俺も把握しているという事を軽く頷くだけで伝えた。
棟梁は、乾いた笑いを漏らした後、無理に明るく振舞いながら俺達に話しかける。
「まぁ、そうだよな。あいつらももう子供じゃねえんだ、そんぐらい、分かってるって、思ってたはずなんだがなぁ…………」
思わず、俺は口を挟んだ。
「棟梁、それって」
「他殺だ」
棟梁の簡潔な一言は、俺達の頭を殴りつけるような情報であった。
俺は、もしかしたら流星も、ゼリアとピールの話を聞いて、頭の片隅で事故であれば良いと思っていた。しかし、第三者がその原因を知っているとすれば、それは確定事項ではないか。
微かな決意の逃げ場が失われたような感覚だった。
「なんで…………。知ってるなら何があったのか、2人に言うべきだろ!」
「流星! …………事情は聞く。それからだ」
一度はこの場を止めて、仕切り直した。俺もそう言いたい気持ちは分かる、だが、感情論をぶちまけては進むものも進まない。
「…………事の始まりは、ゼリアとピールが生まれてからの話だ。あいつらの両親は揃って優秀なオペレーター、そっちの言葉で言えばパイロットだった。人一倍働く奴らで、団員たちの間でも一目置かれていた」
重ね重ねいうようだが、木星建築作業団はエリートぞろい、そんな中でも一目置かれる存在だったという事は、かなりの腕を持っていたに違いない。
「そして、ゼリアとピールが1歳になる頃、とある仕事を引き受けた。これは俺の落ち度だが、契約内容が巧妙で、うちの経理担当の目を欺いてまで…………無茶な依頼を通された。あの時は、もう俺達は意地でその依頼を遂行していた、さっさと手を引けば信頼がガタ落ちする程度で済んだはずなんだ」
そこまで聞いて、正直な所エリート集団の鼻をぶち折って、自分たちの団体が鳴り物入りで業界に参戦しよう。そんな相手の意思が見え見えだった。
「結局、仕事は成功した…………ゼリアとピールの、両親の命と引き換えにな」
俺と流星は言葉にならない声が喉から漏れる。
…………予想はしていたが、実際に知っている人間から口に出されると、ショックな物だ。
「表向きは、作業中の事故として処理された。木星周辺での作業だったからな、星に飲み込まれたんだ」
感情が抜け落ちたように淡々と言う棟梁。
SE関係の人間の総数からすれば、死亡事故が多い訳じゃない。死亡事故は多くて0.01%とか、だが直面した人間にとっては、純度100%の死だ。
「…………その当時、現場指揮をしていたのは俺だ」
そこで棟梁が言葉を濁した。
…………職人としてのプライド、2人の親代わりとしての誠実さ、そして、1人の人間としての弱さ。そんな物がごちゃ混ぜになった、言葉にならない言葉だった。
「ごめんなさい!」
そして流星が大ぶりのパンチ出して、それを喰らう棟梁
さっきの言葉、そこから続くのは「俺のせいだ」だろうか? もしかしたら「仕事を依頼した企業のせいだ」と続くのだろうか? …………そんな事、言える訳が無い。
流星の拳は、そんな迷いを撃ちぬいた。
それにしても、不器用な人だ。
建築作業団を纏める立場として弱音を吐けず、親代わりの立場として事実を述べられない。だから、こうして娘たちの所属している
「…………済まねえな」
棟梁は、そう言って殴られた頬を擦りながら俺達に背を向けた。
漢が背を向ける時は、決まって涙を流していると相場が決まっている。
「そう言うのは、きちんと言った方が良いですよ」
俺は大きな声で言った。
誰からも返事は無い。それにしても、あんな言い方されたら
、そこまで頭が回っていないのなら、やっぱりこの人は不器用だ。
「なあ?」
そう言って、俺は入って来た扉に飛びつくように開けた。やっぱりと言うべきか、ゼリアとピールが扉に耳を付けた状態のまま、涙を流しているのが見えた。鼻水もダバダバと出ている。
「どうりょうのぜいじゃだいでじょ! や゛ざじがったびんながぞんなごどぜおっていいわげがだい!」
「俺はあの時! というか、呼ばれた時以外ここに入るなって言い付けてただろ!!」
何で通じてるんだよ。なんて茶化すつもりも無かった。
そして、口汚くののしり合う棟梁とゼリアを見て、俺はゆっくりと棟梁に近づき。
「ふん!!」
「ぶぇ!? 何しやがる!」
何か言いかけた時にぶん殴ったからか。変な声を出して俺を睨む棟梁。
「流星、棟梁」
「なんだ!?」
「どうした?」
俺は口角を片側だけ上げて言い放った。
「任せろ、任せた」
俺はそう言い残して、部屋を去る。親子喧嘩は止まったようだ。
「さてと、木星機の改造、始めますか」
俺は、ゼリアとピールを無事に戻すためのSEを作るし、それ以外でも、まあ、出来る範囲で助けるよ。そこは任せて欲しいが、俺はどう逆立ちしても親に親代わりになれないしな、あれだけ愛の深い棟梁だ、そこは任せてもいいだろ?
それに、やっぱり湿っぽいのは嫌いなんだ。