ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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天海冥機デスウラヌス

 目覚めると脳がぼんやりとしていた、連日の寝不足のせいだろう。

 今日は確かオフの日。2度寝をするためにもう一度目を閉じようとすると、今度はなぜか廊下に立っている。

 

 あ、夢か。と周りを見て見ると見慣れない人が1人と見慣れない子供を俺がだっこしている。

 少し驚いたが夢の自分と現実の自分が乖離しているような感覚で、夢の自分は至って真面目な顔をしていた。

 

 そして夢の自分は大声で叫ぶ。

 

 

「俺がパパだ!!」

 

 

 完全に目が覚めた。というか飛び起きた。起きたら寝汗がびっしょりで少し寒い。

 

「あ、おはよう太一」

 

「あ? ん、流星? あ、星進隊(プロトン)の隊室で寝ちゃったのか」

 

「寝付きが悪かったみたいだけどどうした?」

 

「俺が見知らぬ子供のパパになってた」

 

「どんな夢なの?」

 

 俺が聞きたいよ、と言って俺はソファーから降りて伸びをした。

 

「逆に流星はどうしたんだ?」

 

「ああ、シミュレーター対戦を申し込まれてさ」

 

「へえ、名も売れてきたもんだね」

 

 シミュレーター上でSEを戦わせる訓練はゲーム感覚に近い。

 ランクの高い有名な星進隊(プロトン)のメンバーだと予約枠の設置や優先権が販売出来るほどだ。

 

「シミュレーター上だったら整備もいらないし、太一は今日オフだろ?」

 

「まじ? じゃあとりあえず着替えたら散歩してくるかな」

 

 まだ眠気が残る頭を振ってあくびをした。

 

「あ、そこに居る女の子、太一の知り合い? 話しかけても返事しなかったんだけど」

 

 は? 振り返ると夢で見た子供がソファーの背に座っていた。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「知り合いじゃないの!?」

 

 え? 何? 予知夢? 

 小学生ぐらいの背丈の女の子。髪は腰位までの銀髪が真っすぐに伸びている。シンプルで真っ白なワンピースを身に纏っていて、どこの所属かもわからない。

 

「ちょ! 怖い! 夢で会ったのこの子!」

 

「どんな口説き文句? あ、さっき言ってた子? 夢に出て来る位なら知り合いじゃないの?」

 

「パパ」

 

 割り込むように子供が俺を指さしてそう言った。

 

「太一、自分の子供認知してないのか…………? 見損なったよ?」

 

「テメーと幼・小・中と一緒に居て子供居るタイミングなんてねえだろうが!」

 

 そう言うと流星は笑った。その冗談俺は笑えないよ!? 

 

「どうせお偉いさんの子供が紛れ込んできたんだろ? 職員室に連れてけば何か分かるかもしれないし」

 

「今日暇だし、ついでに行ってくるか。…………名前は?」

 

 目線を合わせる様にかがんで名前を聞く、すると鈴のような声で自分の名前を答えた。

 

「天海冥機デスウラヌス」

 

「…………ごめん、もう一度良いか?」

 

「天海冥機デスウラヌス」

 

「流星、連れて行く先が病院になったぞどうしよう」

「…………変わった子なんでしょ、多分。じゃ、俺はシミュレーター対戦に行ってくるから」

 

 そう言って流星は足早に隊室を出て行った。

 残された俺と子供、視線をやると目が合ったが何も答えない。

 

「はぁ、とりあえず寮で着替えてこよ…………」

 

 そう言って眠い目を擦って部屋から出て準備を終えて職員室に向かった。

 

「全滅、とりあえず侵入の形跡はないらしいから大丈夫だが…………なんでうちで保護するんだ?」

 

 廊下でデスウラヌスと一緒に遠い目をしていた。

 俺が移動するとついてきてくれたのは助かったのだがシャワーにまで突撃しそうになったのには驚いた。

 

 社会性ゼロの女の子を1人抱えて移動できるほど人間は出来ていない。子育てって大変そうだな。

 

「一体どこの誰なんだ君は」

 

「天海冥機デス「それは良いよ」」

 

 とりあえず戻るか、と、中央棟を下っていくと1階の購買に通りがかった。

 

「…………」

「…………」

 

 コルデーと目が合った。目は雄弁に「なんだそいつ」と語っていた。

 そう言えば朝飯がまだだったし、なんか買ってくか。

 

「ソフトサラダパンと牛乳を1つ、何か食べるか?」

 

 子供を見るとショーケースに入っていた金平糖パンに釘付けになっていた。

 

「金平糖パンを一つ」

 

「まいどありっス! この子可愛いっスね! 太一さんの親族っスか?」

 

「パパ」

 

 一瞬間をおいてコルデーは子供を抱えて後ずさった。

 

「この人は怖い人っスよ! 人でなし! 犯罪者!」

 

「俺はお前の中でどんな評価なんだよ。あとパパじゃねえ」

 

 そんな泣きそうな眼で俺を見るな天海冥機デスウラヌス。

 

「ま、まあ、冗談だとして」

 

「その割には必死だったけどな」

 

「あ、そういえばおチビちゃん名前は?」

 

「天海冥機デスウラヌス」

 

「この人は怖い人っスよ! 人でなし! 犯罪者!」

 

 再び抱えて後ずさるコルデーに「もどってこーい」と声を掛けた。

 

「隊室で起きたら居たんだよ、今さっき職員室に行ったがアテはないぞ」

 

「どういうことっスか?」

 

 コルデーはそう言って俺を睨む。

 

「丁度いいや、お前隊のみんなに顔だしてねえだろ? 俺の監視も込みで隊室に来てくれよ」

 

「…………」

 

「ショーケースと飲み物全部」

「158200S(ソル)っス! じゃあ行きましょう! 袋詰めますねー!」

 

 高い買い物をして俺達は隊室に戻って行った。

 意外にも隊室でのんびりと過ごしている内に、メンバーが勢ぞろいで隊室に入ってきた。

 

「どうした?」

 

「いやーちょっと…………」

 

 流星がそういうと皆俺から目線を外す。ちょっと寒かったので扉を閉めて話を聞いた。

 

「頼みと言うか何というか…………」

 

「た、太一さんは火星機はお好きですの?」

 

「ちょっとメリルさん!」

 

 ははーん。もしかして火星機乗りのパイロットでも拾ってきたか? 

 

「良いぜ? 火星機なら地球機(ゲイザー)とあんま変わんねえし」

 

「へ?」

 

「おー、話聞いた時はちょっと太一に申し訳ないなーとか思ってたのよね! 太一が良いって言うなら問題解決ね!」

 

 皆がホッと胸を撫で下ろした。

 

「イルシアも勘違いしているようだが整備は嫌いじゃないから、忙しいのが嫌いなだけだから」

 

「へー火星機ってそんなに地球機(ゲイザー)と似ているのね? 即オッケー出す位に」

 

「ああ、地球機(ゲイザー)との違いは地球機(ゲイザー)は徹底したモジュール思想であって」

 

「たのもー!!」

 

 急に俺の背後の扉が開かれ押し出される形になりバランスを崩して子供に激突しそうだった。

 

「あぶねっ!?」

 

 俺は子供を抱きかかえて体を入れかえた。

 結果俺がクッションになって子供はけがをしなかったみたいだ。

 

「パパ?」

 

 その言葉を皮切りに、俺の脳内に流れ出した存在しない記憶。

 否、これまでに経験した事のないSEの情報が流れてきた。

 

 未経験の動作方式

 未履修のエネルギー源

 未体験の装甲

 未知の元素に未開のスラスター

 

 ありとあらゆる情報が新鮮であり未曽有。俺のチート構造理解が、抱きかかえた子供に発動している。つまり、こいつは。

 

 

「スーパーロボットォ!?」

 

 

 

 俺は気絶した。むしろ気絶したかった。俺の精神は(てつ)の城じゃないんだ。

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