ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
目が覚めると、土下座した女が見えた。
「本当に申し訳ない!!」
よく見ると片腕がない。本当にこれ以上俺の精神をズタボロにしないでくれよ。
「ドアの前に立っている方が悪い、顔を上げてくれ」
「か、かたじけない…………ッ」
そう言って立ち上がる女に向かって流星は手を差し出した。
「心配には及ばない、気持ちだけ受け取っておく」
と言って、女はすっと立ち上がった。
「初めましてだ、私は
微笑んで俺に握手を求め、俺も微笑んでその手を握り返した。
「ああ、帰れ」
「どうして!?」
どうしてもこうしてもない! そこに厄ネタがあるからだ!
「頼む! 私にはもう頼りがないんだ!!」
「…………太一、話だけでも聞いてやってくれないか?」
あ、流星がちょっと怒ってらっしゃる。俺は腹を括ってベローナの話を聞くことにした。
「太一は火星の文化は知っているか?」
知っている。と言うかその言葉を聞いてピンときた。
現在、火星は宗教惑星になっている。宗教とは言っても「頂きますやご馳走様を言え」程度の物で、加えて既存の宗教と違った所が『人を崇めている』所で、イエスのように誰か特定の人物を崇めるのではなく人類全体を崇めているような感覚。
『人間性を重んじよ』『
これが火星における教義で人類は全員この宗教にどことなく影響を受けている。
SEが人型をしているのも『人間性を重んじよ』の教義から来ているしSEの開発が進んでいるのも『
一番は『機械は隣人である』の教義のおかげでバイオテクノロジーがあまり発展しなかった事だろう。こんだけ技術発展しているんだSeed見たいになっていたかもしれんし、人間がイカみたいになっていたかもしれない。
そしてその教義のお膝元の出身であるベローナはおそらく事故かなんかで片腕を喪失している。
「義手は?」
「ッ!?」
俺は試すようにそう言った。苦虫を嚙み潰したような顔をしている所を見ると、おそらく。
「…………分かった。だが、直せるかどうかは機体の状態を見てからだ」
「太一!」
機体はあまりいい状態ではなさそうだ、と感じながらベローナの機体データを受け取りホログラムを展開させる。
「やっぱりか」
しかし、映されたホログラムには5体満足な
「ちっ、登録名が
これでAIデータベースに登録されているという事はこれが完成品。
火星教義のせいで火星機は搭乗する人間を色濃く表している。快活な人間であればスラスターを増設するし、おとなしめであれば装甲を増やして、変な人間であれば可動性を増やして変態機動。
俺の知っている中で最も人に寄り添っているSEだが、こいつは違う。
身体的特徴を持って悪意を持って腕を切断された。データから見るに中学生ぐらいの子供だろう、そして、ハブられているから直す奴もいなかった。
「機体は人以上に雄弁に語る…………お前
「…………」
「片腕のまま戦ったから残った手の摩耗が激しい、腰部に負担がかかっているし背部の装甲もガタガタで、フレーム全部が軋んでるんだよ」
俺がそう言うとベローナは顔を伏せて、絞り出すように呟いた。
「…………そのまま直してくれるだけで良いんだ。お金なら」「一番軋んでるのは心だろ」
「コイツは言ってるぜ? 片腕だって出来るって、見返してやりたいって、でも寂しいってさ。…………ふざけんじゃねえ」
過剰な駆動によって左手が摩耗している。たぶん腕は相当良い。
片腕によって右腰部だけ負担が大きい。相当努力したんだろう。
背部の装甲に逃げ傷は無く、たった一人で奮闘した証拠だ。
俺の言葉を聞いてベローナは片手をきつく握りしめた。
「きっかり直してやるが、条件がある」
「……本当か?」
少しだけ俺の顔を見て、疑う様にそう言ったベローナ。
「お前、流星の誘い断ったろ? 乗れ」
「!!」
「仲間位必要だろ? …………皆、良いよな?」
周りを見渡してそう聞いた。
「太一!」
「当然です」
「構いませんわ、心配事は私が足を引っ張らないかだけですわ」
「結構気にはしてたんだ、寮長としてもありがたい」
「太一いいトコあるじゃん!」
「1人は辛いっスもんね、購買使ってくれたらいくらでも喋るっスよ!」
若干1名おかしい答えがあったが全員の意見は一致したようだ。
「かたじけない…………」
何で武士口調なんだ? とは、茶化せない空気だ。しかもベローナは涙ぐんでいて、女子たちがそれを明るく慰めていた。
「じゃ、俺はドックで弄る準備でもしましょうかね」
「あ、太一さん。あの
「え?」
アリアさんが言ったビッグレイドとは、超すごいデブリ回収のような物で、飛来した隕石を破壊しながら回収する行為の事だ。
一定以上のランクの
個人的に問題なのが期限を決められている事。指定宙域に入るまでの期間がおおよその期限だ。
「き、期限は?」
「1週間後です」
「お、そうか。じゃ、このままドック行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
俺はにこやかにその場を去った。
そしてドックにて。
「チキショー!! あんな空気の中さ! 愚痴る訳にも行かねえじゃん!? 絶対ベローナあんな性格だし申し訳なさそうにするじゃん!? 俺はどこで発狂すればいいんだよォ!! 発狂するな? 分かってんだよチクショウ!! うーん鉄と油! 鉄と油! ま、鉄が使われることはほぼ無いんですけどね。オフ!? 無いよそんなもん! あんな啖呵切らなきゃよかった! でも可哀そうだろ! てかハーフレスリーチャー!? そんな名前つけられて馬鹿にされてさぁ! んもうふざけんな!!」
「パパだっこして」
「お前も居たな天海冥機デスウラヌス!! 俺どれだけ厄ネタ抱えればいいの!? そんな顔すんな!! おんぶならいいぞ!! あとパパじゃねえ!! くっそー!!」