ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
さて、一週間の内に天海冥機デスウラヌスを直しきらなきゃいけないのだが。
正直あまりにも目途が立っていない。あの時とは違い時間だけがあるのが救いだろう。
まずは機体の構成を把握しよう。
白い
そしてソフト面が
ちょっとずつ解析を進めて行って何とか。最もヤバいのが女児形態のインターフェースと動力源。動力源の出力が悪いと思ったのだが開いてみればそんな事は無く、動力伝達部がイカレているのと、そもそもエネルギー源が足りないという事が分かった。
手づまり感がある。俺は
「おはよ、おお、やってるね」
「来たか、イルシア。やってても手詰まり感が否めないからな、一番詳しそうな奴を呼んでみた」
ドックに入って来たのはイルシア。聞けばイルシアが使う
「詳しいって言っても、
「流星なんか来てみろ」
俺は肩を竦めて「よくわからん」と示す流星の顔を物まねした。
「それに、こういうのは会話が糸口になる事だってある、とにかく発想が欲しいんだ」
「なるほどね、じゃあ機体のデータ取りから?」
「大体データは取り終わってる。ほい」
「仕事早いわね………………」
そう呟きながらイルシアは天海冥機のホログラムと機体データを見つめている。俺は用意していたコーヒーを飲みながら一時の休憩をはさんだ。
「まるで、全惑星の技術ギュッとしました見たいな機体ね」
「それが分かるだけでもありがたいよホント、いやマジで」
「でも動力部は何? マグネリアクター? ソーラセイルタービン? 気化動力?」
「わかんないんだそれが。とりあえず問題なく動くってだけ」
「太一でも!? …………じゃあ、お手上げよ」
俺はそんな事言わないでよと苦笑した。
「あ、でも乗ってみれば何か分かるかも。AIデータベースにこの機体はあるの?」
「無い。が…………そうだ、盲点だった」
確かにそれぞれの惑星の技術があるならパイロットにシミュレーターを回せば何かの糸口があるかも。
「じゃ着替えてくるから」
「だが、コレ複座式なんだよな」
「え? じゃあ流星呼ぼうか?」
「いや、アレとの」
と言ってコクピットを指さした。こいつはあの女子児童の状態の天海冥機デスウラヌスと一緒に動かすというコンセプトのもと作られた。今回のような件も一人で動かせるようにはなっているようだが。
「いまだに寝てるから動かせないし。そもそもデータをシミュレーターにぶち込めてない」
「へー。じゃあちょっと顔見て来ても良い?」
「良いぞ、叩いたりはするなよ」
「分かってるって、じゃ、寝顔頂きまーす。…………最初より回復してるね。子供特有のぷにぷにほっぺ気持ちいね。そこのパパがちゃーんと直してくれるからねー」
「パパって言うな、ママにすんぞこの野郎」
「激セクハラ!? ゴメンてば!」
俺の今の顔がそんなに怖かったのかコクピットから飛び降りた。いや、悪かったって逆の立場でも怖めだもん。
「もういい? 悪いけどなんか私に出来る事なさそうだし」
「いや、めちゃめちゃ助かった」
「私に出来る事があればまた呼んで! じゃあね!」
「ありがとなー!」
イルシアはああは言っていたが、確かにシミュレーターに反映させるのはアリかもしれない。複座には適当なAIでもぶち込んで………………。
ん? なんか機体モニターを見ればエネルギー出力が少しばかり上昇している? なんでだ?
そうして2日目。大体のデータをシミュレーターにぶち込めた。
ついでに動力伝達を元のパーツよりダウングレードした物に全て変えて置いた。ダウングレードと言うか元のパーツの性能が高すぎるのだが。
「失礼する、地井は居るか?」
「いるぞ、よく来てくれたベローナ」
そう言って俺は椅子を差し出した。
「あと、俺は苗字で呼ばないでくれ」
「まずかったか?」
「昔俺の周りにポンとカンとリーチが居て死ぬほどからかわれたんだ」
「そ、そうか」
アレは結構きつかった。鳴いちゃリーチ出来ねえだろとか。
「とりあえず話を聞いて顔を出してみたんだが………………力になれるとは思えないんだが」
ベローナは
「そんな事は無い。パイロットスーツは着て来てくれたな。現在の状態のデスウラヌスの性能と本来のデスウラヌスの性能を再現したデータをシミュレーターにぶち込んで、複数のモーションを取らせている。その差異を報告して欲しい」
「ほう、もうそこまで」
「そこからだ、本当に情報が少ないんだから」
「分かった、乗ってくる」
そう言ってシミュレーターに籠ったベローナ。基本的に無言で用意したモーションを体感しているようだ。
ようやく出て来たベローナの顔は渋い物だった。
「乗っては来たが凄い機体だ。アレがここまで酷くなるとは」
「正直俺も驚いてる」
基本的に地球から他の惑星に行くには近くて1日かかるがこいつは4時間ぐらいでたどり着く位の推力はあるはずなんだ。
「違和感…………うーん、言葉には出来ないが、どちらも何かが足りないような気がしているんだ」
「ほう?」
どちらも、という事は俺が再現したデータの方に問題があるか。そう思っているとベローナが話を続けた。
「これは
「弾性?」
「
火星フレームは剛性を火星の装甲は弾性を持っている。
つっても、
「
「あっ。俺が
それは流石に盲点だった。そのままの状態を
構造理解のチートに甘えていた部分が、俺の目を曇らせていたようだ。
「これでまだ未完成か、末恐ろしいな」
「ああ、たぶん未完成のまま…………じゃあ、機体制御システムに入らなきゃいけないじゃん!? ハードはまだいいけどソフトは苦手なんだよなぁ」
「苦手な所もあったのか」
俺がうんうんと唸っていると、一声かけてベローナはコクピットへ向かって駆け寄った。
「あの時は頑張ってくれたな、私は力になれないがきっとそこのパパが直してくれるからな」
「ベローナお前もか…………」
「認知しろ」
「お前だけ俺がガチパパだと思ってない!?」
今日の所はこれで解散となった。はぁ、機体制御システムかぁ…………。
3日目。俺は機体制御システムのプロテクトを解除するために奮闘していた。
チートで調べてみた所プロテクトと基幹部分が地球産でそこからの発展が土星産だ。と言うか土星機は音楽流すしな…………。
どちらにせよあの曲を毎回広域回線で流すのはあまり褒められた物じゃない。
「失礼します、えっと太一さん?」
「アリアさん、来てくれたのか」
アリアさんには少し頼み事があった。俺にはソフト面で詳しい知り合いは居ないし、もしかしたらみんなの知り合いでソフト面で詳しい人がいるかもしれないと全員に声を掛けた。
そしたらアリアさんが名乗りを上げた。いやーやっぱりオウムアムアの常識人は違うぜ。
見れば大きなキャリーケースを持っていた。
「なんか凄い荷物だな」
「ええ、太一さんが苦戦しているならこの位は必要かと思いまして」
「俺を買ってくれてるんだ、嬉しいな」
「整備の事は良く分かりませんが、凄い事をしているっていうのは分かってますよ」
いやー、と後頭部を掻く。ふと、詳しい人はどこだ? と視線を見回したが誰も居ない。
「で、詳しい人は?」
「私です」
「え?」
「私です」
そう言うと、アリアさんは眼鏡を掛けてキャリーケースを開ける。
そこにはゲーミングに光るコンピューターが。そこからコクピットに向かって歩いていき、ケーブルでコンピューターとコクピットにつなげた。
「太一さんが直してくれますからね。ちょっとだけ我慢してください」
「俺をパパ呼ばわりしないだけ好感が持てる…………」
コクピットのデスウラヌスの手を握るアリアさんを見て気が付いた事がある。
「まて、何でオペレーターがそんなもん持ってんだ?」
「…………始めますよ」
俺の言葉を無視した奥手そうな顔の眉間に皺が寄っていて、その顔は戦士の様。
ちょい、まて。用意したコンピューターがオペレーターに必要なスペックを軽く超えている!
ガス冷式にテラバイトを軽く超えるメモリにロナバイト級のストレージ、訳の分からん数のCPUに独自に組み上げたOSは複雑怪奇。
「おいおい、SEから引っこ抜いたんか!?」
「自作ですよ」
自作できる方も凄い、じゃなくてなんでこんなスペックの物を? その言葉を無視してアリアさんは
「クッ! 本当にこのプロテクト凄いですね」
「本当何!? なんなの!? うわ、本当にちょっと突破してるし!!」
「まだまだ!」
キャラ変わってない!? 確か
「他
「え? 何? 何を改ざんしたの!?」
「ちょっと黙って」
大量の汗を流しながらコンソールを叩き続けるアリアさんは鬼気迫る物を感じた。いやマジで何をしているの!?
俺は叫びたかったが、それ以降は会話をしなくなって3時間が経過した。
「終わりました…………この
「お、お疲れ様…………」
「私の前では塵と同じよ!!」
おーっほっほっほ、と高笑いを上げるアリアさんに恐る恐る話かけた。
「あの、大丈夫ですか?」
「知っていたんでしょう? 私が
「全然知りませんでしたけど!?」
ハックイーン? って確か、俺達が1年の時、学園にシステム障害を起こしたハッカーだったような…………。
「まて、待ってくれ」
そう言いながら俺は記憶を掘り返す。
「そんな事より、どうしますか? 中にパイロットが居る様ですが…………」
「出てきてくれればなんで攻撃したのか分かると思うんだけど」
「はい」
ん? 確か、
あの時、イルシアにはコクピットを開ける理由が無かったはず。
「もしかして、
「…………」
俺を睨みつけながら黙っている。
「じゃあ、流星と会ったのもシステム障害を引き起こした懲罰補習!?」
「…………気が付いてなかったんですか?」
そう言いながらスマホ型のコンソールをいじくりまわした。
「まてぇい!! 今なにした!?」
「結構セキュリティ甘いんですね?」
「ちょっと! アリアさん!? まてってアリアァァァァ!!!!」
足早にドックから立ち去るアリアを追いかけたがもう居ない。
…………ここからアリアには『さん』が取れていたことは言うまでも無い。