ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
状況は悪い。山を取らせてそこから陣地を拡大しようと思っていたのだがそれが看破された。
「イルシアさんは地下の拡大作業! 地上の皆さんは随時地下に入って撤退! 状況は悪いですがゼリアさんピールさん山岳中腹からの出口は射線が通りません、航空戦力の追撃をお願いします!」
次善の策で地上班を撤退させ、航空戦力を同時に叩く事で撤退を確実な物にする。
「航空戦力を攻撃した後メリルさんも撤退!」
ひとまずの立て直しを図るアリア。小破に抑えたとはいえ、このまま戦場に居ればエネルギー残量が心もとなくなる。
悪い状況につい愚痴ってしまった。
「やっぱり皆戦艦にするべきだったか?」
「こっちの予算が枯渇する、そもそも数回の砲撃とミサイルしかない張りぼてだっただろう?」
「古い戦艦とはいえ調達するのすっごい苦労したっスからね!」
「喋ってる暇があるなら何か案を出してください!!」
アリアに怒られた…………。まあ当然か。
ミーシャがアリアを宥める。
「負けて元々だったんだ、そこまで焦らなくていい」
俺達は最初から「負けるが損害を与える」事が目標だった。確かに勝つ準備はしていたが、俺やミーシャはその目標から外れて居ない。
賭けにはなるが今フェーズ4を発動してもそれなりの被害にはなるはずだ、ここらへんが引き際なのかもしれない。
そう思っているとアリアがコンソールを力強く叩いた。ブリッジの中によく響く。
「私、この1ヵ月…………いや、最初っから楽しかったんですよ。皆で働いて、皆で作戦を練って、皆で勝ちに行く、そんな
アリアが拳を強く握りしめながら叫んだ。
「だからそんな事言わないでください! 私から共に進むみんなを奪わないで!」
どうやら冷静になり過ぎたようだ。俺…………はちょっと違うかもしれないが、皆高校生ぐらいの年なんだ、もっと青臭くて熱くなってもいいはずだ。
そう思っているとアリアは椅子から立ち上がり、ブリッジを出て行こうとする。俺はそれを止めたが、アリアは涙をぬぐって言い返した。
「私もSEに乗ります! 私ならSEの環境であれば1分も掛からず敵SEをハッキングできますよ!」
「…………それだ!」
「へ?」
アリアが素っ頓狂な声を上げる。こいつが俺が頭を悩ませた天海冥機デスウラヌスのプロテクトをハッキングした事を心の底から忘れていた。
「そうか、移動管制機があればもう少し耐えられるか、拠点防衛はネルに任せればいいし、
「すぐ作る!? 何言ってるんですか!?」
その言葉の途中で、俺は思考反射入力デバイスを頭に付けて即座に機体図面を出す。アリアはそれを見て叫んだ。
「ちょっとこんなので!?」
「性能は折り紙付きだ! 動かなくていい! 処理能力を高める! その2点だけだったら最高の機体だ! つべこべ言わず乗ってこい! 乗ってる最中に改造する!!」
「無茶苦茶です!!」
もう、ドーパミンが止まらない。素早く思考を巡らせて機体の構成を詰める。そんな時に流星から通信が入る。
「ああ! 無茶苦茶だ! 乗っている機体も出身惑星ですらバラバラで! でもそんな俺達だから楽しかったんだろ!? 後は信じろ! それだけでいい! 俺はもう皆を信じ切ってるから!」
それを皮切りに、パイロットたちから激励の声が飛んでくる、アリアは涙ぐみながらその場を去ったよし、この隙に完成。あとは…………。
「イルシア戦場に出ながらで悪いが、サブオペレーターをしてくれフェーズ4飛ばしてフェーズ5に移る」
「あんな熱い演説されちゃったらね、いいよ信じる」
「おっけい、全員後三分で母艦まで戻ってこい」
全員への通信が終わり、周囲を見るとコルデーが居ない。アレ? どこ行ったんだ? と周囲をもう一度見るとミーシャの様子が変だった。
「え? 泣いてる?」
「私だって楽しかった」
声が震えている。
「お前の仕事は戦後処理だろ? 今から泣いてんなって」
「…………ネルみたいにするな」
わしゃわしゃと頭を撫でたが、お気に召さずその手を払いのけて涙をぬぐった。時間が経ち全員が
母艦に集まり、俺は号令をかけた。
「よし、母艦浮上! ネル頼んだ!」
「わかった、ねぷちゅーんうぉーる!!」
『天海冥! 天海冥! 天海冥!』
「あと絶対ウラヌススパークとプルートデスサイズは使うなよ! 死んじゃうから!」
地下に埋めた母艦が空を飛び、デスウラヌスの良く分からん防壁が展開され母艦の身を守る。一転攻勢の合図がブリッジに鳴り響いた。
◇◇◇
生徒会拠点では阿鼻叫喚の騒ぎになっていた。オウムアムアの拠点兼母艦を撃ち落とせなかったのと、もう一つ戦場のSEにハッキングを同時多発で行われていたからだ。
「撃っても効いてる感じがありません! どうしますか!?」
「波状攻撃を続けろ! あの防壁もいつかは落ちる!」
データにだけはあった正体不明のSE天海冥機デスウラヌス。
それに加えレーダーのジャミング。
やっている事は分かる。
SEはSE同士の相互通信は過剰に強化されている為、他SEからソフト側の妨害を受ければハードより簡単に妨害出来る。だがおかしいのはその速度と精度、前線に出している30機全部にソフト面での妨害を受けている。
「
ハッカー戦、新世紀ではその名が廃れて久しい。
AIの発達によりカウンターハッキングも容易になった故に、全てはAIの性能次第でハッカー戦の全てが決まってしまった。
そして、それを破壊した
その光景を見たアレンが呟く
「うん、山向こうしかハッキングは効いてないようだね」
「ですが…………」
ミラは言葉にはしなかったが、不安を隠しきれない。
「大丈夫、山向こうしかハッキングしていない事を見るに急造品だ、しばらくすればAIが学習してファイヤーウォールの再構築も出来る。また数の理で押せるだろう。…………しかし、これではどちらがルールに守られているか分からないな」
「そうですね、悔しいですが」
アリアは生命保護システムを削除さえしてくれれば反則負けを取れるが、ご丁寧にレーダーと機体制御の妨害に終始して、一方でデスウラヌスの破壊力を見るに人が乗っているSEに向けるように想定してないのである。
「たとえルールに守られた勝利でも僕たちは負ける訳には行かない、そうだろミラ君?」
「はい」
まず目の前の事態を静観しようとモニターを見つめた。その時、オープン回線から通信が入った事を告げられた、ミラはその回線の音声を拠点内で流すように伝えた。
『オウムアムア所属コルデー・マレフィック! 私!
「ど、どうぞ?」
突然された歌唱宣言に生徒会メンバーは全員首を傾げた。
『負けたくなかった、戦いたかった、楽しかった、星に手を伸ばす理由ただそれだけで良いんだから!!』
「あ、ヤバいかも」
「会長?」
会長の顔が青ざめながら叫ぶ。
「全員撤退させて! 下手したら数が
「まさか!?」
「君たちには本当に驚かされるよ! ここまでデータを隠し通すなんて、来るか!
アレンは目の前の光景に歓喜した。空から降る小型SEおよそ30機、その全てが
「くっ、小型だから狙いにくい!」
「この歌を止めて!」
「救援を!」
コルデーの歌が鳴り響く伴奏はアイドルソングの様だったが、敵である生徒会からしたら恐怖そのもの、命を持たない小型無人SEが恐れを知らずに突撃する様はまさに恐怖の偶像だった。
アレンが立ち上がりミラに声をかけた。
「ここからは僕が
「出る事なんか想定していませんよ、調整に20分はかかるんで待っててください」
「うん、上々だね。じゃ、僕行ってくるね」
ミラはその言葉に深いため息を吐いた。
「…………私達の負けですか。もっと、私がしっかりしていれば」
その呟きはアレンの背中に吸い込まれて消えた。