ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
俺はみんなを流星に任せて、親父を工場へ連れ込んだ。
「どういう事だ?」
「分かった分かった、まずは胸倉をつかむな」
困ったように笑いながら、襟元を正す親父にイライラしつつ、差し出された椅子に座る。
「天海冥調査団って知っているか? お父さん、昔そこの一員だったんだよ」
「確か非公式で、天王星への進出を狙った技術者集団、って言ってたな」
しかし、そこに在籍していた事なんかこれっぽっちも知らない。
「ああ、そこで無機生命体と出会って、交流して作ったのが天海冥機デスウラヌスだ」
「そこまでは大丈夫」
「一番驚く所、ここだぞ?」
機体見た時に宇宙人だ、っていうのは分かってた事だし。
「こっちに来た時には、動力以外がボロボロの状態で、直すのに苦労したよ」
「デスウラヌスがお前の所に来たのも…………なるほど、知識ゼロの状態で直したか。立派な変態になったな、太一」
「賞賛は受け取っておく」
言い方はちょっとアレで褒めるのは良いが、頭撫でるのは止めて欲しい。
「実は、俺がデスウラヌス開発に関わったのは、ハード部分の大半だけだ。根幹である、ソフト系と動力系は
「ん? 流星の親父さんが? マジかよ!!」
ネルが言っていた「パパいなくなっちゃった」って事は!?
「ネル、パパいなくなっちゃったって言ってたぞ…………?」
「今、太陽系外でぎっくり腰になっちゃって、しばらく帰れないぞ」
椅子ごと倒れた。
「通信も来てるんかい」
「でも太陽系外だぞ? 危険な事には変わりないが、まあ恒星なら何とか自力で帰ってくるだろ」
「心配なのには変わりは無いな、ちょっとこっちでの生活が落ち着いたら流星に話してくれ」
「うん、そうしよう」
一息ついて、次はネルのスペックの話に移る。謎が多いから、とりあえず話だけでも聞いておきたい。
「全人類居住惑星の技術を集めて、疑似的な人の体を模しただけの機体だ、それをあそこまでのスペックを引き出せるのは、動力のおかげに過ぎない」
「どんな動力してるんだよ、俺でもさっぱりだぞ?」
「俺も良く分からない、
時空間断裂反作用ジェネレーター? そのことに詳しく説明を求めると、とんでもない答えが返って来た。
「俺達が出会った無機生命体は時流を知覚出来ているようでな」
「もうすっごいファンタジーじゃん」
既に頭が痛くなってきた。
「時間の流れって、パラパラ漫画に例えられるだろ?」
「聞いた事はある」
「あれ、天海冥機デスウラヌスと同じ無機生命体がやった事で、元々時間は川の流れに例えられていたが、それを断裂させると反動ですごいエネルギーを得るとかなんとか」
「良く分からん」
俺がそう言うと親父は輪ゴムを取り出し、それを切って端っこを俺に持たせ、親父はその逆を持つ。
「恒星はゴムで出来た木で例えていた。俺達が持っている所が、俺達が認識できるパラパラ漫画の時間の認識だと思って良い」
親父は2点で抑えている、ゴムの端っこを伸び縮みさせた。
「元々、時間の流れは、遡行や順行が出来たんだが」
そう言って親父が伸ばしたゴムを手元から切る。
「いたっ!?」
「こんな感じで断裂するとエネルギーが出て来る」
理屈は分かった。頭ではなく体で理解した。
「そんな訳の分からん物をなんでSEにしようってんだ?」
「火星教義さ」
「…………なるほど、強制的に隣人にしてしまえと?」
「ああ、だから親しみやすいように、機体損傷モニターは子供の姿をしているし、SEも変形機構無しの人型にしておきたかったらしい」
察するに、ネルは何光年という距離を1人でやってきて、太陽系にたどり着いたって事か。
幸か不幸か、天海冥調査団という、変態どもの巣窟にたどり着いた訳だが。
「…………ま、何とかするさ。ネルも流星の親父も」
「お前なら出来ると思ってるよ」
俺はちょっと照れ臭くなって頬を掻いた。詳しい事は明日にでも、と言って俺は席を立ってリビングへと向かう。
「話は聞かせてもらった」
「うお!? いつの間に!?」
向かおうとした矢先、ミーシャが立っている。ずんずんと歩みを進めて親父の前へ。
「私はミーシャ・クロイテフ、
「そうなのか?」
「何が悪いんだ!?」
そのつもりでこっちに来たんだが!?
「今はお話だけではありますが、どうですか? 我々に雇われてみては?」
「ヤダ!! 親父と一緒に仕事すんの俺!?」
「悲しい。でも、大丈夫かなこっちでも結構仕事あるし」
「いいえ、地井製作所の地井太一をお借りしたいのです」
「あっ」
「ああ、いいよ、持って行って」
ミーシャがとても悪い顔をしている。
「太一、これで大手を振るってネルを修理できるぞ!」
「うっ!? ぐ、ぐう」
確かに、まだ天海冥機デスウラヌスの修理は済んでいない。
「天海冥調査団は良く分からないが、良い腕の技術者もゲット。マネロンも上々、ネルは直せる…………ふふふ、楽しくなりそうだな!!」
「ミーシャコラ!!」
「ははは、楽しくなりそうだな」
ミーシャを追いかける俺の背中に、親父の呑気な言葉が突き刺さる。しばらくの休みをもっていかないでください。