ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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株式会社モヒカン軍団

 車で20分ほど走らせ、近所の商店街へ到着した。平日だというのに、人の往来が絶えない、前世では考えられないほど発展した姿だった。

 

「賑わってますね」

 

「ホントホント、それに食べ物のいい匂い! お腹減って来た」

 

「家で飯食う予定だから、買い食いもいいけど、ほどほど…………いや、1個だけにしなさい」

 

 イルシアの言葉に強めにブレーキをかけておいた。物珍しいのか、皆が辺りを見回しているのを見ると、連れて来てよかったと思う。

 

 前世ではあまり発展はしていなかったが、そもそもの技術が発展をしたおかげで、起業のハードルがグッと下がり個人店が続出した結果、商店街という存在がこうして幅を利かせている。建築系の技術も発展し、規模も大きい。

 商店街と言えど、前世の秋葉原のような街並みが3キロは続いていた。

 

「安いよ安いよー! 昨日魚生まれたばっかだよー!」

 

「新鮮だよー潰したてだよー!」

 

「今収穫できるよートマトもろこし、試食してくかい?」

 

 2階から生け簀になっている魚屋に、地下で畜産している精肉店、ドローンが飛び交い産地直送すぎる八百屋。それぞれの威勢のいい声が聞こえる。

 

「つ、つぶしたて?」

「怖いね~」

 

「文化の違いですわ、受け入れましょう」

 

 途中で聞こえた物騒な言葉に震えた外惑星組、旧世紀の頃から踊り食いだの、ちょっと野蛮なのは否定しない。

 そう思っていると、こそっとコルデーが俺に耳打ちをする。

 

「西日本と、食材系の売り方が違うっスね?」

 

「まあな、流石に西日本には負けるだろ」

 

 西日本食材協会は極めて食に特化した所だ。こっちはテクノロジーで押している雰囲気がある。

 

 全員を引き連れて、次々と頼まれた買い物をしていく。ずんずんと道を進んでいくと、今度は店の毛色が変わった。

 

「ここは衣類系か?」

 

「そうだな、結構な年代の衣装が取り揃えてある」

 

 連なるショーウィンドウには、マネキンやらトルソーやらが飾られており、女子たちの目が輝いているように見える。

 

「ちょっと、見ていくか? 流星はガイアクロウラー系の店に走って行っちゃったし」

 

「いつの間に!?」

 

「なんというか、らしいですわね」

 

 霊圧が消えていた流星に触れた後、皆の目を見ると「見させろ」と言っているようだ。

 

「分かった30分後に、同じ所で待ってるから。あと、絶対にそこに行くんじゃないぞ?」

 

 と言って、指さした先は激安! と書かれた看板を掲げた衣類店。その見た目は普通のビルだが、ガラスには濃いスモークが炊かれていて、中身が見えないのがいやらしい。

 俺の言葉に質問しようとする奴の先手を取り、コルデーが抑えてくれた。

 

「みんな、おとなしく従うっスよ」

 

 真剣な顔のコルデーに気おされたのか、全員が素直に頷いてくれた。とりあえずの集合時間を決めて置いて、ここら辺で一旦解散することにした。

 ちなみに俺はネルの付き添いだ。

 

「い、イカす…………」

「これ可愛いね~」

 

 ルーズソックスを片手に、キラキラした目で見るゼリアとピール。…………こういう所ぶれないなこいつら。

 

「衣類品はこっちの方が取り揃え良いっスね、向こうじゃ大体ヒョウ柄っスよ?」

 

「イメージからブレないな」

 

 向こうのイメージが、大阪のおばちゃんから抜けだせなくなってしまった…………。

 因みに、激安と書かれた看板の店は、中で骨肉の争いを繰り広げる主婦たちが居る。観光気分で突入したら命を落としかねない(って位疲れる)

 

 

 

 

 しばらくしてそれぞれの買い物を終えたのか、続々と皆が集まってくる。

 全員集合して次のエリアに向かった。

 

「次はGC系のエリアだな、ユニットからパーツまで取り揃えてある」

 

「じゃあ、ここに流星が居るんだ?」

 

「そのはずなんだが、ちょっとモヒカン頭の集団を探してくれないか? たぶんそこに居る」

 

「探したくないよ!?」

 

 とはいっても、この時間ならそこらへんにいると思うんだが。

 

「モヒカンとなんの関係が?」

 

「極東、夏の風物詩っス。株式会社モヒカン軍団は主要施設を巡る、工業系興行団体っス」

 

「説明を受けても分かんないよ!?」

「不思議だね~なんでモヒカンにするんだろう~?」

 

 全員コルデーの説明に驚く。

 詳しく説明しよう。元々は人気(ひとけ)の多い場所で、GCで暴れまわって技術力を誇示する迷惑集団だった。それを分かりやすい悪役っぽい格好をして、見世物にしてしまおうという動きがあった、その結果…………。

 

「いたぞ」

 

 

 

 俺はモヒカンを指さした。誰かと喋っているようで、その会話に耳を澄ませてみると。

 

「勘弁してくださいよ、江沢さんの所のパイロット腹痛で休みですか?」

 

「せっかく来てくれたのにすまんのぉ」

 

「これじゃ興行が出来ないじゃないですね…………モヒカン同士で戦ってもあまり盛り上がりませんし…………」

 

「そうじゃの、どこかに暇しているパイロットが居ればのぅ」

 

「他にパイロット経験がある人とかっていませんか? 整備士も居れば最高なんですが…………」

 

「うーん、うちの嫁とか…………?」

「ワシはまだまだ現役じゃあ!!」

 

「90歳以上のおばあちゃんじゃないですか!?」

 

「ワシはぴちぴちじゃあ!!」

 

 丁寧な口調で喋るモヒカン。そして、それに応対する老夫婦に、近くで「俺乗れますよ?」と言った目をした流星の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 なんやかんやあって、イルシア、ベローナ、メリル、ゼリアとピール、そして流星が商店街製GCに乗り込み、興行を代行する事になった。

 興行というだけあって、商店街の中でやる事になった。

 

「どうしてこうなってるのかな…………」

 

「極東の洗礼だろう、毒を食らわば皿までだ」

 

「あまり考えない方が身のためですわね」

 

「俺は正義のパイロット! マスクドシューティングスター!! 幸手商店街に故あって助太刀いたす!!」※お面をかぶっています。

 

「3日位SEから離れてたからちょうどいいじゃん?」

「肩慣らしにするよ~」

 

 商店街とモヒカン軍団のGCは5m級、イルシアの乗っている旧式の金星機(マクスウェル)にビジュアルが似ている。

 

 そんな自軍パイロットの、1/2の目が死んでいる6対6のガイアクロウラー戦が始まった。

 モヒカン興行戦は、まず初めにガチンコバトルから始まる。今でもはた迷惑かと思うが、この興行には、地元のGCの紹介や技術力の誇示も出来るというメリットがある。行動しなければ知られないのは、どこの世界でも同じだ。

 

「火薬装備じゃ勝手が違いますわね!」

 

「狙うんじゃなくてばらまけ! ビーム装備とは違う!」

 

 次に、GCの性能はSEよりは全体的に低いが、1点特化した性能を持つものが多い。その性能を生かしきれるか否か、乗りながらその時々での癖を把握する必要がある。

 

「ゼリア! ピール! 木星機(ヴァリアブル)とは違う! 飛ぶとエネルギーの消耗が激しいぞ!」

 

「アドバイスしながらよく敵を倒せる!?」

「撤退を具申します、まだ慣れが必要です」

 

 それに加えて、泥臭い派手さがあるが、バージョンアップしているとは言えGCは旧式、意外と繊細に動かさなければならない。GCを動かすという事は、それだけ機体への理解や精密な操作を要求される。

 

「イルシアやるな! だけどもっとだ! 金星機(マクスウェル)位のパワーはある! それをもっと生かせ!」

 

「無茶言って!! 初乗りならこんなもんでしょ!!」

 

 戦況を見るとこちらが優勢、流星が3機落として、イルシアがそれに食らいつく。あとの4人は四苦八苦しながら生存する事に、全力を注いでいるようだ。

 

 

 

 程なくして決着が着いた。こちらの損害はベローナの乗っているGCが大破、ピールが中破、ゼリア、イルシアが小破、そして流星は無傷。対するモヒカン軍団は全部大破級だ。

 商店街のみんなが勝利に喜んでいる。

 

 そしてここからがモヒカン軍団興行の次なるバトル。

 

「けひゃけひゃ! いーい腕だったぜぇ幸手商店街さんよぉ! だが、そんなに意気揚々と倒してよかったのかぁ? 次は修理バトルだぁ!!」

 

 商店街のみんなが、大いに沸きあがる。修理バトルは、戦った相手とGCを交換して、その修理速度を競う。俺はため息を吐いて、適当なお面………………いや思考反射入力デバイスでいいや。を付けて、並べられた大破したGCに向かって歩く。

 

「太一、まて」

 

「ん? どうした?」

 

 ミーシャが俺の行く手を阻む。

 

「私が言う事じゃないが、先日の件もある、なんかなし崩し的に修理する事になっているが、大丈夫か?」

 

 そう言うのであれば最初からそんな事やらないで欲しい。

 

「ああ、うん。あのGCだったら20分で終わるし。それに」

 

「それに?」

 

 

 

「デスウラヌスの修理ならもう終わったぞ」

 

 

 

「え?」

 

 俺は呆けるミーシャの横を素通りして、思考反射入力デバイスを頭に付ける。

 

「待てい!! 俺は正義のメカニック! マスクドアビス1号!! 幸手商店街に故あって助太刀いたす!!」

 

 いやぁ、本当に大変だったんだ。

 親父が乱入して、修理自体は1時間で終わったんだが、次々とトンチキな改造案を出してくる親父を止めるのに手間取ったんだから。

 その後、きっかり20分で修理を終わらせて、修理バトルにも勝利し、俺達は商店街の皆様から自分の店の商品をもらって帰った。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 帰りの車内でミーシャは、無言で車の振動に揺られていた。

 車の振動と同期して、思考が寄せては返す。

 

 ミーシャと太一は1年の時から知り合っていた。だからこそ思うのだ。

 

 

 

(私は…………私は一体、何に手を出したんだ?)

 

 

 

 確かに、地井製作所の帳簿を確認し、太一の父の腕を確認したつもりだった。

 そして、天海冥機デスウラヌスの修理に2か月。これは、夏休みを満喫しながら修理できる期間だと、ミーシャの試算であった。

 所が大誤算。1日どころか、1時間で修理したデータしか残っていない。

 

 

 今はもう、身震いと車の揺れの違いすら分からない。

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