ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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可変展開装甲か…………

 地井製作所の事務所。ミーシャが地井製作所の事務作業を手伝っていた。

 

「わるいねぇ」

 

「いえ、御厄介になっている分、これぐらいは」

 

 ミーシャがそう言うと、太一の母、愛美は笑いながら言った。

 

「別にいいのよ、自分ちだと思っても」

 

「そうですか…………」

 

 ミーシャにはこれまで、安心できる自分の家は無い。記憶にあるのは空っぽの家に、仕事だけ。

 だから自分の家、と言われてもピンと来なかったのである。

 その機微を感じ取ったのか、愛美は作業の手を止めて、ミーシャの近くに椅子を置いて座りなおした。

 

「なんか、悩みでもある?」

 

「あー、いや、でもこちらの話です。もう終わってしまった事ですし」

 

 悩みは太一の事。ミーシャにとって、訳が分からないのである。

 ミーシャは、幼い頃から友人関係も無く、家族の繋がりも薄い為、人の心の機微という物が分からなかった。

 

 しかも、これまでもそれが原因で人を怒らせては居たのだが、仕事上問題なければ、些事だとして、心の内にも留めていなかったのである。

 

「終わった事でも、引きずる事もあるでしょ? …………終わったなら言っちゃいなさいな」

 

「うーん、では」

 

 仕事を拒否されたにも関わらず、ここ数日間、太一は整備ばかりしている。確かに、地井製作所に依頼していた通り、天海冥機デスウラヌスの仕事は終わらせてた。しかし、それとは関係ないGCの整備をガンガンとしている。

 

 自分が仕事を振ったから悪い、そう思わずには居られなかった。

 拒否しているのだから、終わらせたとあれば勝手に整備から離れてくれる、そう思っていたが結果は違った。

 

 そんな悩みを打ち明けると、愛美は苦い顔をしながらこう言った。

 

「極東の男ってそんなもんよ」

 

「し、しかしですね…………」

 

 ミーシャはその40年ほどの含蓄がある言葉に、どこか丸め込まれそうだった。

 

「文句は言いながら仕事はきちっとこなして、興味の無い事大体丸投げ、興味ある事に一直線。頑固で偏屈で単純で純粋、そして困難を前にして燃え上がる、腕はいいけど組織人としては下も下よ」

 

 物凄いディスりを入れた愛美に、ミーシャは笑いをこらえ切れなかった。太一に関して思う所を的確に話していた。その話を踏まえた上で、ミーシャは質問した。

 

「流星は、そんな事無いですよね」

 

「あの子はね、私達も悪いのよ。ほら、流星の両親まだ見えてないでしょ?」

 

「そういえばそうですね」

 

「流星のお父さんは、しばらく帰って無くて、お母さんもテストパイロットで忙しくて、あまり家に居なかったから、思いっきり甘えられなかったんでしょうね…………妙に太一に懐いているから、それでいいやなんて思っていたんだけど」

 

 その話を聞いて、ミーシャは流星に親近感を覚えた。親が不在で、太一に妙に懐いている。

 

「…………この気持ちは、多分太一に甘えすぎてたから起こったんですかね?」

 

 そうなら、この気持ちは仕事に不要だし、星進隊(プロトン)としても不要だ、そう思ってそう言った。

 

「ミーシャちゃんみたいな可愛い子に甘えられて嬉しくない男は居ないわよ? それに、私の見立てじゃ、全員太一と流星に甘えてる」

 

「いけませんか?」

 

「いいえ、それに…………」

 

「それに?」

 

「最悪、全員娶っちゃえばいいのよ」

 

 ミーシャは椅子から転げ落ちた。旧世紀の王族のような事を言われるとは、全く思っていなかった。

 

「真剣よ? 別に事実婚でもいいし」

 

「あのですねぇ」

 

「結局のところ、太一、いや、極東の男の使い方を分かってないから、そんな事を思っちゃうのよ」

 

「ははは、取説なんかあるんですか?」

 

「あるわよ、単純だもの。例えば…………」

 

 

「テメエ! ふざけてんじゃねえぞ!!」

「こっちの方が可愛いだろうが!!」

 

 

 急に割り込んでくる怒声。武生と太一の物だった。愛美の顔を見ると、目が座っている。

 

「例えばこういう時どうするか分かる?」

 

「い、いえ…………」

 

「殴るのよ」

 

 そう言い残してその場を去る愛美、慌ててミーシャはそれを追いかけた。

 

 

 

「逆にスク水なんて何考えてんだこの野郎!」

「汎用性だ! 学園でも使えるだろ!!」

「学園に指定水着ねえよ!!」

「大体露出少ねえし装甲厚くするだけで出来るんだからこっちの方が良いだろ!!」

「ビキニにパレオだ! 譲れるかよ!! 年頃だ! おしゃれさせとけ!!」

「ハレンチだろ!!」

「テメエもだ!!」

 

 

「「うおおおおおおおおお!!!」」

 

 

 追いかけた先で見た光景は、言い争いながら殴り合いの喧嘩をしている、親子2人。

 なぜパンクラチオンが部活になっているかと言えば、メカニックの意見が割れた際、決着をつけるのは拳だからだ。

 

「親父ぃ! お前の息子は無能そうだな!!」

「太一ぃ! お前の親はバカそうだな!!」

 

「なんで自分を傷つけながら言い争っているんだ!?」

 

「ああゆーもんよ、極東の男なんて」

 

「便利だ…………」

 

 もはや突っ込みを放棄したミーシャを横目に、極東の女が動き出す。

 

「この馬鹿どもが! 友達来てんのに喧嘩する奴があるか!!」

 

 一喝で動きを止めさせる愛美、ぎこちなく2人は振り向き言い訳を始める。

 

「かーさん、このアホがビキニにパレオって言うから………………」

 

「お袋! このバカが旧スクって言うからせめて新スクに…………」

 

「2人とも正座!! 1から説明しな!!」

 

 そう言うと地面に正座しながら、1から説明をする2人。

 どうやら、ネルの服装を変える為に、天海冥機デスウラヌスの改造を施そうというのだ。

 

「だってさ、これから海水浴本番じゃん!? 水着の1つあった方が良いって」

 

「だから改造が必要なんですよね、水着だと着替えられないし」

 

 2人の話を聞いたミーシャは呟く。

 

「頼んだの修理だけなんですけど?」

 

「そういうもんよ、極東の男なんて」

 

 半ばあきらめが入ったその呟きに、苦労の年季が入っている。一瞬で切り替えて極東の女がミーシャに問いかける。

 

「金は余っている…………ミーシャちゃん、改造しても?」

 

「ネルに聞いてくれ」

 

 その一言でネルを呼び出し、しばらくして野次馬的に全員が集まった。メカニック2人が、ネルにホログラムを投影して何故だかプレゼンが始まる。

 

「デスウラヌス! こっちの方が良いよな!? 極東の学生水着! 機能性、利便性どっちも上! あんな装甲薄い奴よりこっちの方が良いって!」

 

 武生が投影しているホログラムには、黒色の装甲を胴体部に付けた、天海冥機デスウラヌスの姿と、旧スクール水着を着たネルの姿が映された。ご丁寧に胸元の名札には『ねる』と書かれている。

 

「ネル、絶対こっちの方が良いって! ビキニにパレオ! 全体的な落ちついた雰囲気に動きを阻害しない! ロングスカートタイプだから宇宙での活動なら絶対こっちだって!」

 

 ネルの答えを固唾をのんで見守る。

 

「どっちもかわいい」

 

 ネルの答えはそうだった。

 

「「可変展開装甲か…………」」

 

 2人して不穏な事を呟き、顔を突き合わせて相談し始める。

 

「別にいいけど予算の中で、5時間でやりな」

 

「5時間!?」

 

 その言葉に驚いたのは、太一ではなくミーシャだ。

 流石に5時間は無いだろう。と言おうとしたが、愛美に先手を取られる。

 

「極東の男の取説その1、困難に燃える。メカニックには通常より短い期間を与えましょう」

 

「そんなバカな」

 

 ミーシャは2人を見ると、さっきまで殴り合っていたのが、まるで嘘かのように真剣に話合っていた。

 

「極東の男の取説その2、仕事は与えすぎてもいけないし、与えなさ過ぎてもいけません。余計な事をします」

 

「…………後でじっくり話を聞かせてください」

 

 もう、この男に適応するしかないと諦める。ただまあ、それもなんか悪くない気分だ。

 何て思いながら、故郷を遠く離れた地で、愛美(大人)に教えを請いながら甘え始めるのだった。

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