ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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お前の大胸筋、めちゃくちゃ色っぽいな…………

 解散したその足で、俺はオウムアムアに割り振られたドックに向かう事にした。

 実のところ、昨日の時点で様子を見て置けばよかったのだが、疲れて普通に寝てしまった。

 

 ドックへ入ると、SE達が理路整然と並んでいる。…………久しぶりに見たら、大きさもさることながら、ロマンを感じる。んほぉ~、たまんねぇ~。

 

「ニヤケ面して何してんのさ?」

 

「んおっ!? スミスパイセンじゃないっすか!!」

 

 いきなり視界外から話かけられ、その声の主を見ると、1年の時世話になったスミス先輩だった。

 

「こっちは会いたく無かったよ!」

 

「そんな事言わずに~、肩でも揉みますか? やっぱいいや」

 

「何がしたいんだよ!?」

 

 このように打てば響く最高の先輩だ。最近、俺ボケてもスルーされるようになったから、なんか新鮮だ。

 

「それはそうと、どうしてこんな所に?」

 

「誰が音頭取って直したと思ってるんだ? 整備記録の引継ぎだよ」

 

 そう言って情報媒体を手渡してくれたスミスパイセン。物凄い律儀だ。

 

「別に言ってくれたら取りに行ってましたよ?」

 

「はぁ…………どこで情報が洩れるか分かったもんじゃないんだから、こっちの方が安全だ」

 

 情報漏洩を危惧して、手渡してくれたみたいだ。ありがてぇありがてぇ。

 

「口頭でも伝えておくよ、サイゴウゲイザーは完璧な修理は無理だったから、改造以外の部分を取り換えた」

 

「ああ、ミーシャが有料ソースとしてアップロードしてるみたいですよ?」

 

「…………先に言え」

 

 怒りを含んだ両目が俺を見ていた。

 

「次に水星機(ヘルメス)だが、これはほぼ完璧と言っていいだろう」

 

「あら? シンデレラ? ヘルメスの脚部バーニアが焦げ付いておりましてよ?」

 

「ほぼつっただろうがよ、え────っ!?」

 

 青筋立てたスミスパイセンが俺の胸倉をつかもうとするが、身長が届かず腹の辺りの服を掴んでいた。

 掴まれながら俺は見た情報を、スミス先輩に伝える。

 

「後は、火星機(リーチャー)が船舶部分をスクラップにして、左腕と胴体部の修理。金星機(マクスウェル)が、ランドセルの修理とセンサ類の新調。木星機(ヴァリアブル)が破損部の整備、土星機(シャニヌス)はスクラップ化っすね」

 

「分かってんだったら説明さすなや」

 

 いやぁ、と頭をポリポリとかいて適当にごまかした。なんだか面倒見て貰ってたから、結構甘えてしまうな。

 俺はお礼の言葉を言った。

 

「ありがとうございます」

 

「素直に礼を言うな、調子崩れちゃうだろ?」

 

「そんな事言われましても、あ、そうだ、これまでの整備記録とか要ります?」

 

「渡すな渡すなそんなもん!! 整備科(メカニック)としての生命線だよ!?」

 

 そう言われてもピンと来なかった。別に、他の人の整備記録貰えるんだったら貰うけど、何が生命線なんだろうか?

 

「文化祭も近いって言うのに、なにしてんのさ?」

 

「あ、文化祭でちょっと相談したい事あるんですけど、良いですか?」

 

「藪から棒に、んで何?」

 

 めちゃめちゃ面倒見のいい先輩で良かったと、俺は泣きそうになりながら、かくかくしかじかと、オウムアムアの問題点を話した。

 

「贅沢な悩みだねぇ…………あ、そうか。マジで喫茶店はナイスアイディアかも?」

 

「マジっすか?」

 

「特に君の所ではね」

 

 そう言うと、スミス先輩は説明し始める。

 

「食べ物系の出店って、数が少なくてね、特に休憩に一苦労するんだよ」

 

「休憩所とかあったでしょ? それでいいんじゃないっすか?」

 

 1年の頃の事を思い出して、そう質問した。

 

「同じ考えの奴がわんさか居るし、混むから疲れが取れなくてね。しかし、それだけじゃないよ、()()()での横の繋がりを確保できる点が大きい」

 

「横って言っても、ミーシャは結構頑張ってますよ? 企業とか政府依頼とかも顔が利きますし…………」

 

「学園内って言っただろ? 君たちの場合は人数が少ないからね、整備科(メカニック)を足で探すより、向こうの足で来てくれた方が良いだろ?」

 

 確かに、在籍している整備科(メカニック)の人数問題はいまだ解決していない。

 どうしようも無くなった時に、親父に依頼を出すように頼むつもりだが、金を使わないならそれに越したことはない。

 

「ただ、難しい事もある。君らの場合、卸売科(セール)の負担が大きくなるし、その他の学科まで手が回らないだろうな」

 

「うーん、なるほどなぁ。めちゃめちゃ参考になりました、ありがとうございます」

 

「ああ、別に良いんだよ。それに、ね?」

 

 と言って片手をひょいひょいと動かすスミス先輩。くれってか?

 

「どうぞ! 整備記録です!」

 

「冗談だよ!? 実は喉から手が出る程欲しいけど、後輩からもらう程困窮してないよ」

 

「ものすごい本音が出ましたね」

 

 欲しい物ではあるのか…………。

 大きく咳払いをして、スミス先輩が仕切りなおした。

 

「まあ、今回の整備は僕たちにとっても有意義な物だったし、それ以上に貰うのも悪いって言うだけの話。それじゃ、またどっかで」

 

「相談ありがとうございました!!」

 

 帰ろうとする背中に向けて大きな声で礼を言った。スミス先輩は、背中越しに手を振ってこういった。

 

「会長じゃないけど、君も文化祭楽しみなよ? 僕も君たちの出店、結構楽しみにしてるんだからさ」

 

 そう言ってドックから姿を消した。

 めちゃめちゃいい先輩だ…………。それだけに、本当に整備科(メカニック)寮へ帰りたくなかった。

 

 

 

 

 

「ふんふんふんふんふんふんふんふん!!!」

 

「お前の大胸筋、めちゃくちゃ色っぽいな…………」

 

「やっぱり性欲って爆発なんだよ」

 

「おい! 洗脳アプリが開発出来たぞ!!」

 

「試作ミサイルがそっち行ったぞ!! 早く回収しろ! 退学になる前に!!」

 

「土星アンドロイド分解させてくれ! 頼む! もう辛抱たまらん!!」

 

「誰か助けて! 早くスパーリングしないとぉ! 俺の血がたぎっちゃうぅぅ!!」

 

「あの喧嘩、どっちが勝つか賭けません?」

 

「俺の部屋ゲーミングにしたやつは誰だぁ!!」

 

「もしかしたら、明日、俺の部屋が爆発するかもしれないから気を付けて」

 

 

 寮に帰ったら、怒声と罵声とトトカルチョ。整備科(メカニック)寮の雑多な光景が、さらに雑多でもはやカオス。

 

 この中で、まともな奴を探して、それを入れるのか? …………やっぱりまともじゃないか俺。

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