ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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Taboo touch up

 水星機(ヘルメス)と交戦しているイルシアだが、心の中では毒づいていた。

 

(デブリ帯なのに、金星機(マクスウェル)でもキツイ!)

 

 複数の射線を通され、任務後である為にエネルギー残量も少ない、さらに任務直後の立ち位置の関係上、連携も難しい。金星機(マクスウェル)が小さくなければ、もう被弾していてもおかしくない状況だった。

 

(泣き言はナシ! 全員で帰るんだ!!)

 

 本人の技量が高い事もあるが、それ以上に被害を受けていないのは、イルシアの意地。心は熱くなりながらも、冷静に敵機との位置関係を割り出して、デブリを盾に使いながら母艦へとジリジリと戻る。

 

(もう少し時間を稼げればネルが頑張る! それまでの辛抱だ!)

 

 そう考えていたイルシアだったが、思考に割って入るように、1つの通信が入る。

 

「信じて」

 

「メリル!? ちょっとま」

 

 イルシアの言葉が途中で切れた、それはメリルからの、たった一言の秘匿通信。それ以外、何も語らない。

 

「わたくしはメリル・ハルクリウス! 助けてくださいまし!!」

 

「えっ!?」

 

 続いて来たのは、メリルのコクピット内全体の映像付きの、広域通信。

 ドスケベエロメイド衣装を着たメリル・ハルクリウスその人。当然の如く、攻撃の手は止み、そこには奇妙な静寂と困惑が、デブリのように散乱していた。

 

「こんな姿で慰者にされて! 早く助けてください! もう本国で殺された方がマシですの!」

 

 流星用として作られたパイロットスーツを、メリルが無理やり着ている為か、豊満な双丘がこぼれ出そうな上、女性的なラインを作り上げるように作られたそれは、もはやドスケベエロメイドなどではなく、バビロンの大淫婦そのものであった。

 

「おとなしく身柄を渡せば、攻撃しなくて済んだのに!」

 

「負け犬皇女サマにはお似合いの恰好ね!」

 

 嘲笑の声が上がる。イルシアは無理もないなと思ってしまった。

 敗戦処理する様に、悠々とメリルの乗る水星機(ヘルメス)に向かう3機の水星側SE。それが近距離まで来た瞬間、メリルは叫ぶ。

 

 

Taboo touch up!! (禁忌を触れ上げろ)

 

 

 

 直後、水星学園が疑問を感じる前に、猛加速をするメリル。それは、通常の水星機(ヘルメス)の加速を大きく超えていた!!

 

「なっ!? 何を!」

 

「んな訳ねえですわ!!」

 

 メリルは、水星機(ヘルメス)の手持ち武装は無い。相手の油断を、誘う為であり、今はもう必要が無いとメリル自身が判断した。

 

「うあっ!? タックル!? きゃああああ!?」

 

 推力にモノを言わせたタックルだったが、メリルはそこに一工夫を加え、ソーラーウィンド(ビームミサイル)をごく短距離で発射し、さらにダメージを加え、1機撃墜。

 単純ではあるが、スピードについてこれなければ、これほど確実に撃墜出来る技も無い。

 

「迎撃を! 何っ!?」

 

「こっちとも遊ぼうぜ! Taboo touch up!!」

 

 いつの間にか敵水星機(ヘルメス)に接近した流星が、Tabooを起動させた。タブーの発動条件は、強い感情と心拍数の上昇、そして、特定の音声認識。地球の禁忌が産声を上げる!!

 

「宙域現着! 掃討します!」

「提言、現状各個撃破は不可能と判断、速力で敵の攪乱を開始します」

 

 木星機(ヴァリアブル)が合体状態で現着した。木星機(ヴァリアブル)合体戦闘機モードは水星機(ヘルメス)に引けを取らない。

 デブリを縫って、加速し攪乱を開始するゼリアとピールを見送りながら、流星が指示を飛ばす。

 

「ネルにウラヌススパークを撃たせるなよ(人殺しをさせるなよ)!」

 

「当然だ、私も頑張らなきゃな」

 

 ベローナは母艦に密着し、ネルはネプチューンウォールを張って、盤石な防御態勢を整える。オウムアムアの攻勢が始まる。

 

 

 

 

 

 攻撃を受けた水星側は焦っていた、この相手にはまるで常識が通用しないからだ。皇族がいかがわしい衣服を着ながら不意打ちを仕掛け、汚い手を使ってもなおも手痛い反撃を喰らったこの状況は、混乱にふさわしい物だった。

 

「どうなっている! 6機も倒せないのか!」

 

「それが!」

 

 木星機(ヴァリアブル)も、地球機(ゲイザー)も、全てが手強い。だが、戦場を支配していたのは…………メリルの駆る水星機(ヘルメス)

 水星の皇女を舐めていた訳ではない、彼我との戦闘力も完全に分析した。だが、改造された形跡すらない水星機(ヘルメス)の体が、光り輝きながらタックルして、水星学園の戦力を削いでいく。

 

「当たんない! なんなのアレは!!」

 

「分析完了しました! アレは、リミッター解除してソーラーウィンドを纏っています!! 今は耐えて、機体の耐久限界を待ちましょう!」

 

「リミッターを解除してまでか!? 機体限界までの予想は!?」

 

「分かりませんよ! 普通ならもう自壊しても良い位です!!」

 

 その言葉に、星進隊(プロトン)アポロンチームリーダーの女は歯噛みし、決断する。

 

「力戦だ! 向こうが短期決戦の構えを取るなら、同じだけ攻撃を加えろ! 数の多いこちらが有利だ!!」

 

 そう言った直後、またメリルによって1機撃墜され、通信から悲鳴が聞こえる。

 

「無茶苦茶だ! デブリごと突っ込んでくる!!」

 

「無茶でもなんでもやるって! わたくしの大切な仲間が言ったんですもの! 皇女として! 人として! それに答えなきゃいけないのですわ!」

 

 そして、時間が経ち、1機また1機と撃墜されたアポロンだったが、急にメリルが動きを止め、体に纏ったソーラーウィンドが機能停止し、発光が止まる。

 

「機体限界が来たか!」

 

 そう言いつつ、アポロンはメリルに射撃攻撃する。メリルの水星機(ヘルメス)はデブリを背にして、胎児のように丸まりコクピットを守った。

 

「いい加減に落ちろ!!」

 

 1機が近接戦を仕掛けようと、弾幕の穴を縫いながら、メリルに近づく。

 

「危険です!!」

 

「この距離なら装甲をぶち抜けるよ!」

 

 デブリから飛び出してきた金星機(マクスウェル)が、電磁アームキャノンを直撃させる。

 

「その程度で!」

 

「イルシア!」

 

 アポロン側のSEは撃墜はしなかったが、メリルの水星機(ヘルメス)が、先ほどの突撃よりも強く機体を発光させ突撃した。

 

「太陽にでもなる気か!?」

 

「わたくしが、わたくしで居るために、禁忌に触れなければならないのなら! 何にでもなってやりますわ!」

 

 球状に展開したソーラーウィンドが、爆発的な加速を持ってアポロンのSEを追い立てる。それは先ほどの比ではなく、もはや太陽そのもの。

 何人たりとも太陽からは逃れられない。アポロン所属SEが全滅した。

 

「メリル! やったな!」

 

「ふふふっ、今度はちゃんと嵐を持ってきましたわ」

 

 流星とメリルが勝利を喜び合い、続いてオウムアムアの皆が健闘を褒め合った。

 広域放送でそれを聞いていた星進隊(プロトン)アポロンのパイロットたちは、黙って自身の運命を受け入れるしかなかった。

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