ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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ネルの文化祭準備紀行

 テラマキナ学園の夏は6月の下旬から9月の下旬まで夏休みになっている。

 しかし、10月に入ると文化祭を開催するため、実質的な夏休みは2ヵ月間、9月中は文化祭の準備期間に当てなければならない。

 だからこそ、整備科(メカニック)たちが自身の寮と教室で大暴れしているのだが。

 

 それはそうと、ネルの所属する搭乗科(パイロット)では、他の学科に比べて比較的平和に過ごしている。テラマキナ学園の文化祭は、基本的に搭乗科(パイロット)以外の力を見せる物である為だ。

 これは、文化祭準備期間中のネルの1日の出来事であり、太一が深淵を見た次の日の出来事でもあった。

 

 

 

 

 

 時は午前4時、ネルの朝は早い。

 起き抜けにベッドから飛び出して、小さな手で必死に着替えている。ネルに寝起きの悪さとは無縁だ。

 学園の制服に着替えて、顔を洗って歯を磨く。

 

 身綺麗になった途端、飛び出して行った先は、オウムアムアのドックだった。背伸びをしながら扉を開けて、飛び込むように入室した。

 

「おはようネル。いつも早いな」

 

「ん」

 

 太一は手慣れた手つきでネルの頭を撫で、ソファーに座らせた。

 朝早い太一に合わせ、ネルも起きてドックへ行くのが学園内でのルーティン。ネルは座りながら、あーでもないこーでもないと唸る太一を見つめて過ごしていた。

 

「よし、ひと段落! ご飯にしようか」

 

 6時頃になり、太一の一声でネルはソファーから降りて太一と手を繋ぐ。太一も最初こそ「オイルついてるぞ」と言いながら、渋々手を繋いでいたのだが、今では当然のように手を繋いで、コルデーのいる購買へと向かった。

 

「うっす、いつものと、あんかけラーメンパンで」

 

「まいどー! 320S(ソル)っス!!」

 

 硬貨を数枚コルデーに手渡した太一。いつものとは金平糖パンである。

 金平糖を散らしたパンは、ネルのお気に入りだ。しばらく眺め、小さい口でちびちびと食べている。

 

「出し物が決まったは良いが、負担とか多くない? 大丈夫か?」

 

「別に大丈夫っスよ! 土星に居た頃に比べればへっちゃらっス!」

 

 太一とコルデーの雑談を聞きながらパンを食べ進めるネル。

 普段であれば授業までの間、2人はここで雑談をしているが、文化祭期間中ではその枷が無い。しばらく、文化祭の事について深く話し始めていた。

 

卸売科(セール)じゃ、確かSE関連のパーツとか売るんだよな?」

 

「そうっスね、私みたいに生鮮食品を取り扱っているのは珍しいっス」

 

「景品として改造機でも売ってみるか? シミュ対戦で見せれば宣伝になるだろうしさ」

 

「こういう催し物で寄り道は敵っスよ、どんな出発点であろうとやりきるのが大事っス」

 

「それもそうだ、でも、こういうのってやりたい事が増えてくんだよな」

 

「それ以上に太一は、改造機を自慢したいだけっスよね?」

 

「あ、バレた?」

 

「目がそう言ってるっスよ…………」

 

 そんな雑談を続けていると、ネルがパンを食べ終えてしまった。それに気が付いた太一は、コルデーとの雑談を切り上げた。

 

「じゃあ、そろそろ帰るわ」

 

「またお越しくださいませー。またねネルちゃん」

 

 コルデーに頭を撫でられ目を細めるネル。名残惜しそうに手を振ってその場を去った。

 しばらく太一と共に廊下を歩き、途中で太一と別れる。搭乗科(パイロット)へと向かわなくてはいけない用事があったからだ。

 時間は午前7時頃、足取りは迷わず搭乗科(パイロット)の教室へ。

 

「おはようネル。いつも早いな」

 

 教室の中で出迎えたのは流星。くしくも太一と同じ言葉で出迎えた。

 しばらく、2人だけの教室で流星が話しかけて、ネルが簡単に返す。それを繰り返していると、見慣れた2人が教室の扉を開けた。

 

「おはよー、2人ともはやいね」

 

「早起きは良い事だ」

 

 イルシアとベローナが教室へと入って来た。

 

「たいちのほうがはやい」

 

「アイツはたまに寝てないだろ」

 

 太一を弄りながら、次の話題に移る。

 

「そういえばベローナ。杖はどうしたんだ?」

 

「ああ、メリルに貸している」

 

 流星は視線を腰のあたりに向かわせ、そう聞いた。返答は簡素で流星は、その一言だけで納得した。

 

「Taboo使った後、体バッキバキになったもんなぁ」

 

「体に合わないパイロットスーツを着たからなおさらな」

 

 タイミングよく教室の扉が開かれる。開く音が何処となく力ない。

 

「お、お呼びですの?」

 

 メリルを見ると、ベローナの杖を両手で持って、足をプルプルと震わせていた。

 

「おばあちゃんみたいになってる?」

 

「ふ、ふふふ、水星王族として心は真っすぐですわ」

 

 ネルの言葉を空元気で返すメリル。震えながら

 

「…………いたたたた、太一さんに傷物にされましたわ」

 

「言い方言い方」

 

 しばらく話し込んでいると、徐々に招集された面々が揃い始め、責任者が音頭を取った。

 

「文化祭期間中のボランティアについての話し合いを始めたいと思います」

 

 搭乗科(パイロット)は文化祭期間中、運営ボランティアをしている。それはSEの操作には、脳内で複数の情報を処理する事が必須である為だ。

 星進隊(プロトン)の出し物の持ち回りから、部活動の持ち回りまで把握しながら進められている。

 

「ネルさん、作業改造SEの操作をお願いできますか?」

 

「よゆう」

 

 粛々と文化祭時の持ち回りが決められ、ほどなくして、搭乗科(パイロット)の用事が終わった。皆、別々の場所に向かう中、ネルはドックへと向かう。

 

「いない?」

 

 中には誰もおらず、ネルは整備科(メカニック)寮の方へ向かって行った。すると、その途中で、整備科(メカニック)の作業着を着た女子と遭遇し、気さくにネルに話しかけた。

 

「ネルちゃんだ、久しぶり、太一に用事?」

 

「うん」

 

 そっか。とだけ呟いて、整備科(メカニック)の寮へと一緒について行った。この女子とは顔見知り、それだけ多く太一と行動を共にしていた。それに、この女子の胸中は、この時期の整備科(メカニック)寮で何かあってはいけないと思いついて行くと。

 広場で何故か怒鳴り声が聞こえてきた、恐る恐る見ると。

 

 

 

「やめろー!! 俺が何をしたって言うんだ!!」

 

「貴様は水星王族をドスケベエロメイドにした挙句! さらに傷物にしたという報告が上がっている!!」

 

「うらやまけしから殺すぞ!!」

 

「ぷるんぷるんしてたんだろうな!!」

 

「そもそもお前と流星以外女子多すぎるんじゃ!! 俺も入れろ!!」

 

「ゴリアスゥ!! オメーは成績低くて無理だ!!」

 

「てか星壁真流流にしろっつったろーが!!」

 

「写真集出せコラ!!」

 

「ボイス出せコラ!! こっちは女装したくない男子からしか得られない栄養が不足して死にそうなんだよ!!」

 

「そのまま死ね!! あ゛あ゛っ! 止めてぇ!!!」

 

「女の子半分、いや全部よこせ!!」

 

「モテ男が!!」

 

「星壁真流流をよこせ!! それともオメーが女の子になるかコラァ!!」

 

「仲間は! 売らねえ!!」

 

 

 

 

 

 

 十字架に磔にされた太一と整備科(メカニック)の皆様が罵声と石を浴びせている光景だった。

 

「もてもて?」

 

「そう言うんじゃないと思うよ?」

 

 

 

 そして時が経ち、オウムアムアのドックにて。

 

「パパ、だいじょうぶ?」

 

「ネルだけが癒しだよ…………後絶対に外ではパパって呼ばないでね」

 

 手首を擦っている太一が涙を流しながらネルを撫でた。

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