ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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第64話

 何故か俺が磔にされてから3日が経ち、オウムアムアの隊室で全員が集まっている。俺達に加えて、見慣れない男が1人。

 前髪をオールバックにしたタイトな白いスーツ姿、神経質そうな眼鏡をかけた壮年の男が、俺達にペコペコしながらごまをすっている。

 

「皆様お久しぶりです、アフロ・ジョーでございます!」

 

「どなた!?」

 

 アフロ・ジョーと名乗った男の、鋭角に吊り上がった口角が、どことなく気味の悪い営業スマイルを形成している。

 俺の言葉に笑みをさらに深くしながら、手が高速でごまをする。ごまをすり過ぎてもはや油が取れそうだ。

 

「お忘れですか!? ほら、そこのイルシアさんの元上司でございます、ハイ」

 

「そういう意味じゃねえよ」

 

 俺の突っ込みに大勢が無言で頷く。身なりや体格は前回出会った時と変わりないが、それ以上に激しく態度が変わっていた。

 ミーシャは額に手を当てながら、アフロの説明をした。

 

「金星人は大体こうなんだ…………」

 

「そうなの!? でもイルシアは!?」

 

 流星が驚きながらイルシアの顔を見た。

 

「え? 仕事量少なすぎて休暇だと思ってたんだけど?」

 

「公私分け過ぎてる…………」

 

「でも生徒会相手に戦う準備の時はさすがにきつかったけどねー」

 

 あははは、と笑うイルシアに他の人間はちょっと引いてた。

 俺達の話が終わると、すぐにアフロが会話を再開した。

 

「よろしいですね? つきましては、オウムアムアと取引をしたいと思っておりまして」

 

「えっと…………すみません、情報は来てたんですけど、よく理解できなかったので口頭でお願いします」

 

 流星がそう言うと、さらに笑顔で「もちろんですとも!」と言いながら取引の内容を説明し始めた。

 

「オウムアムアの皆様に求めるのは2つ、文化祭参加優先チケットの譲渡と特別研修講師として我が部門の研修へ参加して欲しいのです」

 

「めちゃめちゃ簡潔だ…………」

 

 文化祭参加優先チケットとは、星進隊(プロトン)と個人に渡される読んで字のごとくな物。

 文化祭は2週間ある。前世の感覚的には2週間()ある、しかし、ことテラマキナ学園では足りないとさえ感じる程の来場者が居る。それだけ注目度が高い物なのである。

 

 確かに、企業としては喉から手が出る程欲しい物だ、しかし俺は、流星と同じく、その情報だけは来ていたのだが、全く理解できなくて放り投げたのだ。

 

「そして、こちらから差し出すのは、金星鉱物(イシュタロイト)と木星エンジンの販路、そして多額の金です」

 

 指でわっかを作って、こちらにアピールするアフロ。そのジェスチャーをすると何処からともなく、チャリーンと硬貨の音が聞こえて来た。

 

 さらに、追加で補足するアフロ、その話を聞くと特別研修講師と言っても、金星企業の研修生(研修生は地球での学生に相当する)と戦えと言っているだけの話なようだ。

 なんで文書化するとあそこまで煩雑になるのやら…………。

 

「いかがでしょうか流星様?」

 

「うーん、イルシアはどう思うんだ?」

 

「えっ!? 私?」

 

 急にイルシアに話を振ってくる流星。

 

「本音を言えば、もう金星とは関わりたくないけど」

 

「イルシア!? いや、イルシア様!!」

 

 本音を言ったイルシア。そしてジャパニーズスタイルDO☆GE☆ZAで、イルシアの靴を舐めようとするアフロ。プライドとか無いんか?

 それを歯牙にもかけずイルシアは続けた。

 

「そうも言ってられないし! みんなとなら何とかなるでしょ!」

 

「分かった。その話受けます」

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 土下座のままスライドしながら、流星の足元で感謝を告げるアフロ。

 

「なんと申し上げて良いやら感謝の極み!! 当方からは以上になります、つきましては、こちら会社概要とパンフレット、そしてわたくしの名刺を電子、紙、石で差し上げます。おや、隊室が少し寂しいですね、どうでしょうか? こちらに当社広報が作ったポスターなど張られては!!!」

 

「さっさと消えろ、ぶっ飛ばされんうちにな」

 

 話は終わったのか、勧誘やセールストークをマシンガンのようにまくしたてるアフロ、持ち込んできたカバンの中に、おびただしい数の会社関係の書類。

 薄いカバンの中から容量を超えた状態の物をポイポイと出しているアフロを見て、これ以上は付き合ってられんと、中指を立てて追い返した。

 

「褒められた行為じゃないがよくやった太一」

 

 俺の言葉とふぁっくゆーで、嵐のように去ったアフロ。

 

「ミーシャさんよ、イルシアは金星からお咎め無しじゃなかったんだっけ?」

 

 気になった事をミーシャにぶつけてみたが、苦笑しながらこう返された。

 

「お咎めは無いさ、今回、向こうは正規の方法で接触してきたんだ。断るなら接触の時点で流星が断るしかなかった」

 

「話だけは聞いてあげようと思って…………イルシア、ごめんな」

 

 聞けば、企業が星進隊(プロトン)に接触するには高い金とコネが必要らしい。

 その上で、俺達を選んだのなら、それはそれで光栄なことだ。やってきた奴はとんでもなかったけど、向こうの視点から見れば先に接触していて、かつ、連絡先すら入手している間柄ならば、選出するのも無理はない。

 

「別にいいよ、そもそも気にしないで良かったぐらい。でも、心配してくれてありがとう流星」

 

 イルシアが、諸々ひっくるめて許してくれ、その後は、文化祭の話合いを含めた雑談をして終わった。

 

 

 

 

 

 

 そして、少し経ち、隊室から皆が解散した後で、用事を済ませる為にドックへと向かったのだが。

 

「2人ともなんでついてくるんだ?」

 

「ちょっと、話したいことがあって」

 

「わたしも似たような物だな」

 

 イルシアとミーシャが、廊下を歩く俺の後ろをついてきていた。どこかむず痒かったので、話しかけてしまった。

 

「私の話は端的だ。ありがとう、そしてすまなかった」

 

 なんか急にお礼と謝罪を言われた。俺が困惑していると、ミーシャが続いて口を開いた。

 

「どういたしまして? それにしても何に謝っているんだ?」

 

「先日の戦闘の結果は、太一のおかげだ。本当に感謝してる。それに、依頼を吟味する前に危険性がある物を避けなかった私の責任だ」

 

 深く頭を下げたミーシャ。なるほどな、コイツも責任を感じていたのか。

 勝手に納得していると、イルシアも先日の戦闘の事で言いたいことがあるようなのだが…………。

 

「あのね、私、変態になりたい」

 

「どうしちゃったんですか?」

 

 本当にまずいかもしれない、仕事は減ったとか言ってるけどもしかしたら気が付かないだけで、心身に負担を…………。

 

「この間の依頼、メリルも流星も凄い頑張ったけど、あれ、やっぱり太一じゃなきゃダメなんでしょ?」

 

「まあな」ドヤァ

 

 他の人間にもTaboo自体は乗せられるが、ベースのSE自体の完成度によって上昇幅は違う。

 

「ごめんだけど、今まで太一を信頼しきれてなかったし、私のワガママで金星機(マクスウェル)の修理も大変だったはずだし」

 

「それは違う、長く使ってもらって嬉しくない機械なんて無いぞ」

 

 おじいちゃんの代から使っている金星機(マクスウェル)。愛着も練度も他の人間とは比べるまでも無いだろう。もし俺が作った人間だったら大号泣しているぞ。

 

「でも、誰かに命令されたとかじゃなく、自分自身の意思で、皆の為に私、変態したい」

 

 生まれ変わりって意味の変態だったのね。なんとややこしい。

 しかし、そんな高潔な(スピリット)を持っている奴の頼みを、俺が無下にする訳もない。

 

「任せろ、でも、本格改造は文化祭の後でよろしく!」

 

「今すぐって訳じゃないよ!?」

 

 そんなやり取りの後、俺のドックへと向かう足取りは、とても軽やかだった。

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