ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
金星企業からの依頼を完遂して、そのまま学園へ帰ったオウムアムア達。太一だけは足早に寮へ向かい、それ以外のメンバーは母艦に残って雑談をしていた。
「水星学園の件があったので心配していましたが、何事も無く終わって良かったです」
「あの件は、重ね重ねすまない。今回ちゃんと裏も取ったし、それに、金星企業は金の事になると裏切らない。それだけオウムアムアを買ってくれたって事だ」
アリアの話を聞いて、ミーシャが皆を安心させるためにそう言った。
「うちらにも学びはあったし、今回の依頼も上々っしょ?」
「楽勝だったね~」
「うーん、確かにそうだけど、私達が強いのか
ゼリアとピールが依頼の感想を言ったが、イルシアがその感想に対して、金星では言えなかった考察を口にした。
「金星の悪癖?」
「うん、金星じゃ修理費用は3割社員負担がデフォだから、あまり被弾のリスクを取らないんだよ」
「地球や火星じゃ考えられんな…………」
「社会保険っスか!?」
ベローナとコルデーが驚いた。ミーシャがそれに補足を加えた。
「かなりの負担を強いているが、その分給料は他惑星の比じゃないから問題は無い。…………負担が軽すぎれば独立ラッシュ、負担が重すぎれば離職ラッシュと言うシーソーゲームや、上層部や社員の、横領、不正が飛び交っていると言う点に目を瞑れば問題は無いな」
「問題だらけだろ!?」
流星はそう言うが、ミーシャとイルシアが「それで成り立っているのだからしょうがない」とだけ言ってこの会話を切った。
すると新しく、ベローナが流星に質問をした。
「それより、流星」
「何?」
「太一を殴ったの、流星らしくなかったと思ってな」
「あー、それは…………。言葉にするとちょっと言いづらいな」
頬を掻きながらそういった流星は、悶えた後に、意を決してこう答えた。
「盗られたくないって思っちゃったんだよ」
「き、きましたわ?」
思わずメリルがそう言うと、流星は避難を孕んだ目でメリルを見つめ、言い訳のように言葉を重ねる。
「茶化さないでくれよ、俺、生まれた時から太一と一緒に居るんだぜ?」
「それはそうですけど…………」
アリアの言葉に、流星は微笑みながら語った。
「でも、太一だけじゃない。皆から離れていくのは、俺の落ち度だけど、無理やり俺達から離れさせようとする奴が居るなら俺はそいつを許さない」
「私も同じ気持ちっスよ!」
コルデーがそう言うと、皆の表情が真剣な物に変わる。ネルだけは流星にピッタリとくっ付くことでその意思を表明していた。
全員、オウムアムアを自分のいる場所だと思っているのは、疑い様も無かった。
「アレ、最悪ハニトラ式まで発展する可能性すらあったから、事実ファインプレーな気がするな」
「確かに、職業倫理からして、ちょっと反則気味だよね」
そう語る金星組。
研修中に、研修先の相手に個人の連絡先を聞くのは、相当な関係を築いていなければ自社の顔に泥を塗りかねない、職業倫理的にアウトな行為である。そして、その後の太一の顎クイ、壁ドン行動は、社会人的には完全にアウトなゾーンだったが、まだ学生だという事で許されていた。
ベローナが口を開き、太一に苦言を呈した。
「と言うかあれだけで尻尾を振りすぎだ、私でも同じことになるのか?」
「…………俺が紹介すれば、多分、飛んでいくと思う」
夏休み中、風呂でちょっと良いなとだけ言っただけで、裸で突撃しようとしていた太一を思い出した流星。
「なんで!?」
「たぶん、
そう言うと、全員納得したように頷いた。そして、ミーシャは苦笑しながら、流星に釘を刺した。
「口は滑らさないでくれ、せめて、文化祭の終わりまでは」
「分かってるよ、それに、俺の許可とか関係なしに好きになった人にくっ付いて欲しいから」
「重くない?」
「言わないであげてください………………」
そんなやり取りの後、流星はさらに言葉を続ける。
「それにちょっと迷ってる。太一なら俺達以外の所でも、上手くやっていけるんじゃないかって」
「腕は確かだし、それは言えてるかも」
「居てくれるのに感謝だね~」
ゼリアとピールがそう言う。と全員が俯き気味になって、社会人として活躍する姿自体は想像出来ていた。
流星は絞り出すように、言いたくない事を口にする。
「みんなだって」
「それはちがう。みんないっしょ」
ネルがそう言った。流星を見上げる視線は、未来を見通すように、未来に疑いが無いように、ただひたすら真っすぐだった。
ネルの言葉を皆が脳内で反芻させる。それが、関係を保つ細い繋がりが、鋼鉄の糸に変わる。
「…………これは、ずるい言い方だが、太一に任せるしかない。精々見捨てられないように、毎日頑張っていくだけだ」
「そうだな、それじゃ、私は少し訓練でもして帰るかな」
「あっ、ずるい! 私も!」
そんなやり取りを皮切りに、全員がそれぞれの場所へと向かう。
迷いながらも、歩みを止めないようにする。それが青春に許された、ただ一つの権利であり、無限大の希望であるのだから。
◇ ◇ ◇
「はぁ、太一は良いよなぁ」
「何が?」
依頼が終わって急いで寮に向かった俺なのだが、部屋に戻った開口一番。ホーモットにそんな事を言われた。訳の分からねえ事言ってねえで働け、と言いながらPCの前に座らす。
「そんだけ技術あるなら、どこだって行けんだろ?」
「なんだ? 2年から就職の心配か?」
文化祭準備中にナイーブになるなんて器用な奴だ。それにしても、さっさと作業を進めてくれないか? 手伝いに来てくれって言ったのお前だろ?
そう思いながらホーモットの課題に口を出していった。ふと、近くを見ると、ゴミ箱に目が付いた。
「これ終わったらさっさと、共有のゴミ箱にぶち込んで置けよ」
「もう、パンパンなんだ」
「どんな呪文があれば寮のゴミ箱がパンパンになるんだ? まあいいや、可及的速やかにな、ゴミも課題も」
「はいはい」
大魔法使いもびっくりの
「でも、成績も盛り返してるんだろ? それだけあったら迷わなくて済む」
「はぁ? 俺はいつでも迷ってるよ」
探し求めると書いて探求。ゴールの存在も正解も問題すらあやふやな、ロマンと現実の間でいつも迷走状態だ。
「そんな腕あってもか?」
「ああ、迷っていないように見えるなら、俺は、迷うことに迷わないだけだ」
「迷うことに迷わない?」
ホーモットは手を止めて、俺の顔を見た。
「
「でも俺、そんな物ないよ」
「性欲あるだろ」
ホーモットは、性欲と言うゆるぎない物を持っている。それが性欲だからと言って俺は侮っていないし、苦言も言うが、敬意すら感じている。
それに、流出したホーモットの研究を改変して流用しているし、便利だし。これが広まったら結構な数の離職者増えるから、技術モデルと称して文化祭でしか出さないけど。
「ははははは、そんなもんで良いのかよ?」
「そんなもんでいいさ、後、お前と同じにするなよ? 俺はロマンを追い求めているから」
「梯子外された!?」
そんな下らない事を言い合いながら、課題を一緒に進めていく。いやぁ、青春だなぁ。なんて思っていると、急に扉が開かれる。
「オイ! 太一! 何やらかしたんだ!?」
「デイブ? どうしたそんなピザ食われたみたいな顔して?」
「取られた!? じゃなくてうわッ!!」
めちゃくちゃ焦っているデイブが、俺の目の前で消えた。代わりに現れたのは、ターミネーターもびっくりなムキムキな漢たち。
「貴様の罪状を伝える」
「覚えが無いんですけど!?」
「これを聞いてもらおう」
そう言って、取り出したコンソールから、音質の悪い会話が聞こえてくる。
『変態にな…………ったけどザザッやっぱり太一じゃなきゃダメ』
『長く使ってもらって嬉しくないザザザザザザ』
『…………私、変態したい』
丁度良くノイズで駄目な部分を切り出している。
「死刑だ」
その言葉を言った後、ムキムキがさらに数を増やし、部屋の筋肉密度が上昇している。
「裁判をすっ飛ばすな!! やめろ! 俺を運ぶな! ブライソン! パイロットスーツの改造手伝ったろ! ドミー! 1年の時SE代わりに直したろ! ウェイドまで!? トミー助けて! 星壁真流流の写真集欲しがってたろ!? ボイスもつける! 俺は無実だぁぁぁぁ!!!」
彼女持ちを殺すのは
寮の前がキャンプファイヤーで、炎に巻かれてすごくきれい。みんな、元気でな………………。
やめて! メカニックの嫉妬の炎で太一を焼き払われたら、闇のゲームにつながれてなくても太一が普通に死んじゃう!
お願い、死なないで地井太一! あんたが今ここで倒れたら、イルシアや流星との約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば文化祭になるんだから!」
次回、「地井太一死す」