ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった 作:なんちゃってメカニック
文化祭1日目終了。精も根も尽き果てて、俺は液状化していた。
「たいっちお疲れっしょ」
「本当に頑張ったね~」
「オデ、ガンバッダ」
「よ~しよ~し」
液状化したままピールの膝に顔をうずめた。セクハラだろうがどうだろうが知ったこっちゃないのである。空気読んで頭なでなでまで付けてくれたピールに涙を禁じ得ない。
「いや、本当に。みんな頑張ってくれた」
「最後の方は気合だった、これまでの出来事が無かったら、根を上げていただろうな」
ミーシャの労いに、ベローナが汗を拭きながら応える。
パイロット組に関しては、タイマンじゃ勝てないと悟った学生たちが、1対3の変則戦で向かってきて、合計15人抜きを全員が達成するという驚異のスコアを叩き出している。
しかし、連戦と慣れない給仕作業も相まって、パイロット組も疲労が顔に出ている。
「だけどねぇ…………」
「ま、まだ何かあるのか?」
イルシアのセリフに不穏な空気を感じ取った流星が、不安そうに聞き返す。
「文化祭の1日目は、学外や他惑星の人間からすると様子見ですわ。2日目、1週間後となると…………学外の人間は増えていくと思いますわ」
「それは…………ははは、考えたくないな」
メリルの言葉に目を剥いた。もっと忙しくなりゅ?
「それに、盛況ぶりによっては出店場所の移動すらあり得る」
「それは問題ない。ロボ共の即応性は高いからな」
ホーモットが作った課題用研究を、俺が手を加えたそれは柔軟性を持ったシステム。流出してしまったのには同情するが、オープンソースなら自由に使わせてもらおう。
え? 俺ん所の
「うーん、このタイミングで悪いっスけど。ちょっと昔話してもいいっスか?」
「いいよ」
コルデーの言葉に疑問符を浮かべつつも、ネルが俺達を代表して話を進めた。
「私が土星に居た頃の話っスけど。私、土星で有名なアイドルだったんっスよ」
「へえ、でも分かるかも。歌うまいし、運動神経も悪くないし、可愛いし」
確かに、とは思ったが何かが引っかかる。俺は少しのモヤモヤを抱えながらも、コルデーの話を傾聴しておとなしく待っていた。
「へへへ、ありがとっス。向こうじゃ、激務の日々を過ごしてたっス。母親が暴走して、次々と仕事を入れて、それでもお父さんは何も言えなくて…………もう、私は何も考えられなくなってたっス」
「コルデーさん…………」
アリアが心配そうに声をかける。あ、このモヤモヤの正体に今気づいた。
「そこから知っての通り、それが嫌になって極東へ留学してきたんス。お父さんが、離婚覚悟で背中を押してくれなきゃ、多分たぶん私はここには居ないっスよ…………」
皆がコルデー慰めようと、コルデーの周りに寄ろうとしたとき、俺は内心ブチギレながら、外れてくれと質問を投げかけた。
「おい、それ、何歳の時からだ?」
「6歳の時っス」
「それから何時までだ」
「留学の時までっス」
「学校は?」
「行ける訳ないじゃないっスか」
全員が絶句した。当たり前だ、小学生の時代を丸々スキップしてる奴なんかそうそういない。
流星を見ると、怒気すら孕んでいる佇まいだ。
無言の圧力と同情を受けてでも、コルデーはミーシャに向けて言い返す。
「私、歌えるっス」
「…………許可、出来ない。よしんばそれが出来たとしても、確実性が無い、そして、文化祭が終わった時、君は」
思案の後、そう言い放つミーシャ。
「覚悟の上っス。でなきゃ、最初っから歌わない。凶星の歌姫ウェスタ・モーロックが、みんなの為に歌いたいんスよ」
「ウェスタ?」
俺がそう呟いて、インターネットで検索する。他のみんなもそうだった。
「あははは、そういう所が良いんっスよ! どこか浮世離れたそんなみんなが!」
「「「ええええええええ!?」」」
笑っている場合じゃない。全員がウェスタ・モーロックの名前を検索し、その内容を見ると、かつて全惑星を席巻した歌唱系アイドル。
しかし、その姿は現実離れしたバーチャルな姿であった。
「電撃引退前の声、まんまコルデーじゃん!!」
「実力は分かってもらったならいいっスよ!」
流星が驚きのあまり叫ぶ。
「…………しかしだな」
ミーシャがそう言うと、俺に視線を向けた。
ミーシャの目には$マークが見え隠れしており、やりたいのが見え見えである。1日でも、この忙しさを軽減出来れば、結構な御の字である。
「やるし、やれるぞ?」
「いいっスか!?」
「よし、5日目にゲリラライブ、12日目に本格ライブ…………もうこの際、学園の迷惑なんか知った事か。営業関係の事であれば、もうちょっと…………文化祭だけだ、文化祭の2日間だけめちゃめちゃ楽になると思ってくれ。詳細は追って話す! 後片付け頼んだ!!」
そう言ってミーシャは走ってどこかへ行った。ピールの膝から立ち上がって、俺はドックへ向かう。
今、一生懸命になれない奴が、いつ一生懸命になれるというのだろうか? 楽しむことに、目を背けて生きていて、どこが一生懸命なのだろうか?
目の前をずっと楽しむために、俺は仕事の手を止めなかった。