ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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成功も失敗も座して見るべし!

 デブリ回収スペースで一人の少女が寝ていた。回収スペースのドアを開けると、その音で目覚めたようだ。

 

「うーん、良い朝ね!」

 

「もう23:00()だ馬鹿野郎」

 

 伸びをしてそう言い放つイルシア(デブリ)に罵声を浴びせた。

 

「酷い! ちょっとぐらい休んでたって良いじゃない」

 

「3日食っちゃねしてるだけだろうが」

 

「金星じゃ一ヵ月35連勤してましたー、この位寝ても許されまーす」

 

 そう、このデブリだらけの部屋でイルシア・モーニングスターはそれはもう怠惰な時間を過ごしていた。加えて連勤明けのハイテンションなのか口調が恐ろしく砕けてる。

 

「そんなお前に安眠妨害のお知らせだ、金星機(マクスウェル)直すからうるさくなるぞ」

 

「本当!? ありがとう! タダで治るラッキー…………本当!?」

 

「現金な奴だな」

 

「いや、そうじゃなくてここでやるの!? ドックじゃなくて!?」

 

 直す場所にはこだわりたいが、そうも言ってられないし。

 

「ドックでやるのが一番だが、今はまだ金星企業に目を付けられたくないし」

 

「そもそも出来るの!?」

 

「出来る」

 

「っ!? まあ、お手並み拝見ね」

 

「なんで上から…………」

 

 どうにも流星を人質に取られたからか、俺はイルシアには当たりが強いようだ。

 とりあえず仕事はしよう、まずは見て分かる情報から…………。

 

「基本構成は全身金星鉱物(イシュタロイト)から変わって無くて、アームだけは地球機(ゲイザー)からの流用っぽいな」

 

「ソーラーセイルタービンありきで作ってる事には変わりねえし、セイルがイカレてるか配線がイカレてるか…………」

 

「ただ見た感じ、動力部はそれほど壊れてなさそうなんだが…………それ以上はとりま中開けてみないと分からねえか」

 

 俺は独り言で脳内の情報を整理するタイプだ。あんまり気にしないがイルシアが気持ち悪い物を見る目でこちらを見てる。

 

 それを無視して俺は金星機(マクスウェル)に乗り込んだ。

 

「うわ、80年前の前期生産型って、アンティーク(古臭い物)乗ってんなぁ。機体もほぼほぼオールイエローだし。おーい、コレパーツ取りでいいか?」

 

「…………」

 

 イルシアは黙ったまま逆さづりになった俺を見ている。

 

「なんで分かるの?」

 

「分かるから」

 

 急に妙な事を言い出すイルシア。

 

「質問を変えるわ、この三日間であなたは何をしていたの?」

 

「うちの地球機(ゲイザー)の整備と水星機(ヘルメス)の修理」

 

「もう一つ、なんで乗っただけでそんな事分かるの?」

 

「あ」

 

 思い出した、これチートだ。

 実物を見ただけで構成を理解し、触れればほぼすべての情報が分かる構造理解のチート。

 

 イルシアは俺を化物だと認識している。

 構造理解のチートがあれば、初めて見た機体の弱点も見える、はじめて乗った機体の操作方法どころか特性まで分かる。

 

 それであれば、後は俺の技量だけ。

 そう言った意味で望んだチート能力であった。

 

 だが、それ以上に俺の体には耐G能力が足りない。少しスラスターを入れるだけでゲロを吐く。

 結果的に整備科(メカニック)に落ち着いたが。

 

 多分メカニックでこのチートはイカレている。どのようにすれば直るのかが分かるし、どのようにすれば性能向上が出来るかが分かる。

 

「本当は何をしていたの!? 答えて!!」

 

 感情的にそう叫ぶイルシア。

 金星機(マクスウェル)の情報をあれだけ持っていたのだから、金星企業につながりがあって、こんな事を呟いているのではないかと疑っているはずだ。

 

 少しでも整備に対する知識があれば、この異常性には気が付く。

 

 何故、俺がこのテラマキナ学園に埋もれていたのかといえば、地球機(ゲイザー)の徹底した共通規格の為に改造や手直しは無く、パッケージされた機体の選択肢として埋もれているに過ぎないからだ。

 

 疑念を晴らすには俺は更なる化物になるしかなかった。

 

「お前に変態技術(極東マジック)を見せてやる」

 

「へ?」

 

 俺は金星機(マクスウェル)を起動した。思考反射入力デバイスを顔につけ瞬時にOSの書き換えを行う。

 そしてゆっくりと起動したまま床に下ろして金星機(マクスウェル)を自立させる。

 

 思考反射入力デバイスを付けている間は視界が無くなるが、俺のチートは触れてさえいれば、機体の全てが見えているのと同じだ。

 

 工具を取り出し、即座に全身の修理に取り掛かる。

 

 心臓を動かしながら心臓手術をするような高等技術で動力部以外の修理を始める。

 

 次は足、腕、胴体、そして動力機関。

 過集中気味になって修理する事5時間。

 

「終了! あー終わったー」

 

「…………へ、変態」

 

「脱いでないぞ?」

 

「真壁といい貴方といい、極東は変態?」

 

「こっちじゃ誉め言葉だ。じゃなくて、信用できたか?」

 

 整備疲れ(メカニックハイ)で顔がニヤケながらイルシアにそう言った。気が抜けたのか笑ってくれたようだ。

 

 その目には涙がにじんでいる、アンティークをさらに長く乗り続ける程の愛機なんだ、直っている姿を見るのは感動するのも仕方ない。

 

「貴方に整備を説くのはおかしいけど、見ただけで分かるくらい完璧に直したのは分かるわ。…………ありがとう」

 

「どういたしまして、それに完璧じゃないしな」

 

「買った時以上によくなっているわよ?」

 

 いや、完璧じゃない。メカニックとしての完璧とは。

 

「直しただけじゃ完璧じゃない、その先へ行くのがメカニックの完璧なんだよ」

 

「これ以上!?」

 

「さあ、どうやって改造してやろうかねぇ!」

 

「ちょ、ちょっと待って! オヤカタとかあんなのはいやだ!」

 

「きーっひっひっひ、同じ方向性に行くのは愚の骨頂! 収斂進化にはまだ早い! 鉄と油の道はまだ始まったばかりなのだから!!」

 

 

「へ、変態ぃぃぃぃぃい!!」

 

 

 その叫び声は4徹目突入の合図だった。




テラマキナ学園学科別校則

整備科(メカニック)校則

整備科(メカニック)は直接戦闘に参加してはならない。成功も失敗も座して見るべし!

整備科(メカニック)は他の星進隊(プロトン)SEに妨害してはならない!。人として、それ以上にメカニックとして自殺するべき行為である!

③パイロットの意思を優先する事。整備性の為にパイロットの意見を封殺するなど愚の骨頂!パイロットの為に死ねぇい!!

④不純異性交遊の禁止。貴様らの彼女はSEである!エンジンの(いなな)き!鉄の油の香りが貴様らが付けられる女のマーキングである事を知れ!!パイロットなどに目をくれてやるな!!


生徒会からの通達
~校則が前時代的すぎるので文章を変える様に通達はしていますが、生徒手帳の記載は整備科(メカニック)からの反対により変えておりません。簡易にまとめた物はこちらのリンクから~


「流星、俺、来るところ間違えたかも」
「入学初日だぞ!?」

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