ロボゲーっぽいギャルゲーに転生したが整備科になってしまった   作:なんちゃってメカニック

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闇鍋

 

 前回、ノンルールパンクラチオン部に激を入れたスミス先輩が、マイクを持って指示を出す。

 

「ウォール! スリー! カタパルト! ツー!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

 その指示に、狂気を孕んだ短い了承の声が、揃って響く。筋肉共が壁になり、2人の間に割って入る。

 

 スクラムを組んだ筋肉ムキムキの漢5人が、SEの腕を食い止めた。そしてすかさず、漢5人が手を伸ばした不安定な状態を狙って、両足にそれぞれ5人ずつタックルを喰らわせ、そのバランスを崩す!

 

 しかし、倒れるまではいかず、AIの補正によって大きくバランスを取る。

 

「カタパァールト!!」

 

 その隙を見逃す訳ではなく、カタパルトと大声を出した方向を見ると、ステージの下で漢たちが6人で謎の組体操をしているのが2組。

 俺が、その光景を見て困惑していると、スミス先輩が俺に質問をする!

 

「ステージのクレーン下げられるか!?」

 

「っ!? い、行けます」

 

「下げとけ! そしたら逃げろ! 仲間はもう逃げてる!」

 

「そ、そんn」

 

 俺が言い終わる前に先輩は、ステージ下へダイブした! ライブの醍醐味ステージダイブはスミス先輩が一番乗りだ! 何て言っている場合じゃない!?

 

「EアングルディレイF! 3030(サーティンサーティン)!」

 

 そう言って、先輩は組体操の上に乗る。そうして先輩ともう1人、小柄な人間が射出されていった!

 

 謎の組体操は、筋肉のバネを使った、まさに人間カタパルト!!

 

 奇麗な放物線を描き、1人は土星機(シャニヌス)の背部に取りつき、スミス先輩がその肩を踏み台にして、頭部センサーまでたどり着く!

 

「チェストォォォォォォオ!!!」

 

 気合一撃! スミス先輩の拳が搭載されている光学センサー、そのガラス保護部分を破壊した!! …………いやいやおかしい!? ちょっとやそっとじゃ壊れないように出来てるんだけど!?

 

「ち、壊れたか」

 

 一撃を加えたのちに、即座に離れ手に持っていたものを放り捨てる。あ、緊急脱出用の工具だ。

 

「パンクラチオンは!?」

 

「逃げろって言ったろ!? それに、こんな時だ! 本当にルール無用だ!!」

 

 そう言って、スミス先輩走り、土星機(シャニヌス)に再度戦いを挑む。

 俺もこうしちゃいられない、俺は声を張り上げて情報を伝えた。

 

「その土星機は胸部スラスターにガタが来てます! ステージ上の物はなんでも使ってください!!」

 

「了解! カタパルト再装填!」

 

 強靭な肉の盾、そして、人の投石器、周囲の全てを使って、関節系に舞台装置を投げ込み、動作不定にまで持ち込む。

 

 メインカメラをやられた土星機(シャニヌス)はフラフラになりながらも、流星とコルデーを探しているのか、まだ生きているカメラと異物を噛み込んだ関節系、スラスター系を必死に動かしながらもがいている。

 

 俺は、有利になった状況で冷静になり、俺の持っている工具から、一番いいのを近くのノンルールパンクラチオン部の漢に投げ渡す。

 

「これを!」

 

「プラズマキャプチャー!? もっと早くだせ!!」

 

 怒られながらも、俺は別の工具をばらまいた。

 すると筋肉たちが、それらを手に取り動きの鈍くなった土星機(シャニヌス)へ向かう。

 

 そうして、解体が始まる。

 

「てめ、このやろ!」

「死ね! 死ね!」

「ライブ邪魔しやがって!」

「真流流ちゃん避難組は良いよな!! 羨ましいぜ! 死ね!」

「何年待ったと思ってるのさ! 死ね!」

 

 私怨が一杯だ…………。

 

 そうして、解体完了。

 怪我こそあれど、1人の死傷者を出さず土星機(シャニヌス)を解体し尽くしていった。

 

 俺はスミス先輩に駆け寄る。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「拳逝ったけど、まあ大丈夫さ。あ、途中の指示ナイスだったよ、君もノンルールに入らないかい?」

 

 笑顔でそう言うスミス先輩の背中は、身長以上にデカすぎた。

 最後の勧誘は、心が揺らぎそうになったが、こんな化物共にはならないと固く心に誓うのであった。

 

「あ、そうそう「太一さん! そちら()大丈夫ですか!?」仲間が通信入れて来たけど?」

 

 スマホのスピーカーからアリアの声が聞こえてくる。そちらは大丈夫ですか? と言う言葉の通りなら。

 

「無事だ、こっち()襲撃を受けた。そっちは?」

 

「それが…………」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 同時刻、オウムアムア出店場所周辺にて。

 アリアとイルシア、ベローナ、メリルが目の前の惨状に絶句していた。

 

「運が良かったな、お前ら」

 

「え、ええ」

 

 アリアたちに声をかけたのは。

 

「私の戦いに巻き込まれなくて、本当に良かった」

 

 オールデストロイヤー静、整備科(メカニック)2年学年主任、29歳独身女性、190cm、髪は茶、筋肉モリモリ、マッチョウーマンの超人だった。

 

 

 

 ノンルールパンクラチオン。SEを用いた戦争に生身が使われていた頃から派生した、素手のみの格闘競技である。起源が戦争である故に、その参加人数に制限は無い。

 

 学園に、その歴史は脈々と受け継がれており、学園周辺を武装勢力が突破するなどの、有事の際に出撃することが誉れとなっている。

 

 そしてオールデストロイヤー静。

 彼女は学生時代、ノンルールパンクラチオン学生全惑星大会に単騎で出場し、優勝を奪い取った。

 

 彼女の周りには、敵も味方も、その栄誉を称える声も、白紙に帰す無音。

 オールデストロイヤー静、生きる伝説その人である。

 

 

 

 

 静の周りには、7機の土星機(シャニヌス)。その残骸が転がっている。

 7機もの土星機(シャニヌス)の単独撃破に成功し、肩を回しながらこう言った。

 

「しかし、工具を使ってしまったな、若い頃は素手で行けたんだが…………マダマダワカイデスヨー。やっぱりそうおもうか」

 

 何故か、裏声で自身を鼓舞する静先生。

 アリアたちは「あ、この人整備科(メカニック)の人だ」と直感した。

 

「もしかしたら、これだけじゃないかもしれん、一応仲間に連絡を取った方が良いんじゃないか?」

 

「わ!? そうでした!」

 

 現状、ライブを回しているのは流星とコルデー、そして太一だけ、ライブをやっていれば、騒ぎになった時、無事を確認できる人は周りにいるはず。

 そう思い、アリアはミーシャとネルに通信を入れた。

 

「ミーシャさん! そちらは大丈夫ですか!?」

 

「ん…………大きな音がしたが、何かトラブルか?」

 

「無事を確認できただけで十分です! 追って説明します!」

 

 次にゼリアとピールに通信を入れる。

 

「ゼリアさんとピールさんが…………反応しない?」

 

 その言葉の通りだが、アリアは冷静に、次に通信を入れた。いないかもしれない人間より、いるかもしれない人間だ。

 

「太一さん! そちらは大丈夫ですか!?」

 

「無事だ、こっち()襲撃を受けた。そっちは?」

 

「それが…………ゼリアさんとピールさんに通信が入りません!」

 

「なんだと!? …………ん? …………あー、なんだか無事みたいだぞ?」

 

「へ?」

 

 通信越しに、太一の困惑した声が、何故だかゼリアとピールの無事を告げた。

 

 

 ◇◇◇

 

「太一! ゥ我がライバルよ! なんかライバルの所の1年を保護したぞ!」

 

 そんな連絡が入って来たのは、アリアとの通信の最中。

 芝居がかった口調で、俺を我がライバルと称するのは、俺の記憶上、ただ一人しかいない。

 

「ゥ我はどうすればいい! なんだか可愛い女の子で我話すのちょっと恥ずかしいぞ!!」

 

 モーターサイクル部の顔見知りが、どうやらゼリアとピールを助けてくれたらしい。

 

「黙れ! そしてありがとう!! 無言で学園に戻ってきてくれ!!」

 

 そう言って連絡を切った。

 …………一体、今日は何だって言うんだ。

 

 ライブは始まりに過ぎず、闇鍋みたいな一日が幕を開けようとしていた。

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