何となく女装を始めたら、だんだん拘り過ぎてしまった件   作:古都礼奈

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女装で出会う人々

悠人は少し緊張しながら、待ち合わせ場所に向かっていた。

 

今日は女装を通じて知り合った友人たちと外出する日。

 

街に出ること自体は何度か経験しているが、複数人で出かけるのは初めてだった。

 

「今日は普通のファッションにしておこう……」と、さりげない服装を選んだ。

 

シンプルなニットとスカート、ヒールの低い靴。

 

これなら、少し目立たずに街を歩けるだろう。

 

対して、一緒に行く友人の一人、達也は、思い切ってロリータファッションを選んでいた。

 

待ち合わせ場所で達也と合流すると、彼のロリータ姿が一際目を引いた。

 

真っ白なドレスにピンクのリボンがあしらわれ、髪には大きなヘッドドレスがついている。

 

まさに「ロリータの世界」の住人そのものだ。街を歩いていると、自然と周りの視線を集める。

 

「すごいね、ロリータファッションはやっぱり目立つなぁ……」と悠人が言うと、達也は満足そうに笑った。

 

「でしょ? でも、これが楽しいんだよ。人に見られるのって、案外悪くない。」

 

街を進むたびに、達也は通行人から注目を集めた。

 

何人かが笑顔で声をかけてきて、「写真を撮ってもいいですか?」と頼んでくる人もいた。

 

彼は快く応じ、そのたびにポーズを決めていた。

 

その隣で歩く悠人は、むしろ目立たないことに安心感を覚えた。

 

いつもなら自分が感じる緊張や不安が、今回は薄れている気がした。

 

「なるほど、こういうのも悪くないな……」と心の中で呟いた。

 

普段の女装で感じる「周りに溶け込めているのか」という不安感が、今日は特に気にならなかったのだ。

 

しかし、そんな悠人でも、たまに「女装していること」を見抜かれることがあった。

 

通りすがりの若い女性が好奇心を示し、「あれ、もしかして男の人ですか?」と聞いてきた。

 

ドキッとしながらも、悠人は笑顔で返事をした。

 

「ええ、そうなんです。でも、女装して街を歩くのも楽しいですよ。」

 

その反応に驚くことなく、彼女たちは楽しそうに笑い、「かっこいいですね! 自分を表現するのって素敵です!」と応援してくれた。

 

その瞬間、悠人は少し肩の力が抜けた。「ああ、世の中にはこうやって理解してくれる人もいるんだな」と感じた。

 

街を歩き続け、夕方になると、仲間たちと一緒に居酒屋に向かうことにした。

 

外見の印象とは裏腹に、悠人は酒の席が少し苦手だ。

 

特に酔っ払ってしまうと、普段抑えている「男らしい部分」が顔を出すかもしれないという不安がある。

 

今日はそうならないように注意しようと、心の中で誓った。

 

店に入ると、居酒屋のにぎやかな雰囲気が迎えてくれた。

 

カウンターに座り、みんなで乾杯をすると、自然と会話が弾んでいく。

 

女装に関する話だけでなく、普段の生活や趣味についても話題になり、気がつけば、悠人もリラックスしていた。

 

「でもさ、やっぱり街で女装してると、たまに怖い目に遭うこともあるんじゃない?」と、友人の一人が話を振った。

 

悠人は少し考え込んだ。

 

「確かに、何度か怖い思いをしたことはある。でも、今日はそういうことがなくて安心したよ。みんなすごく好意的だったし、声をかけてくる人も優しかった。」

 

「そうだね。今日はラッキーだったのかも。」と達也も頷いた。

 

「でも、居酒屋って危ないこともあるよね。酔っ払いに絡まれることもあるし。」

 

その言葉通り、しばらくして酔っ払いの男性が近づいてきた。

 

「おい、君たち……お姉ちゃんたち、可愛いじゃないか!一緒に飲もうよ!」と言いながら、しつこく絡んできた。

 

達也は笑顔でかわしながらも、はっきりと断った。

 

「ごめんなさい、私たち、今日は友達と楽しんでるんです。」

 

悠人は一瞬、どう返すべきか迷ったが、酔っ払いがしつこく絡んでくるのを避けるために、少し大胆に出ることにした。

 

心の中で覚悟を決め、わざと落ち着いた声で言った。

 

「実は俺、男なんだよね。」

 

その一言で、相手は少し驚いた表情を見せたが、すぐにニヤリと笑って言った。

 

「ああ、そうなのか。まあ、それでもいいさ。気にしないよ。今日は楽しく飲めればそれでいいから、一緒にどうだ?」

 

思わぬ返答に、悠人は少し戸惑ったが、そのまま無理に断ることもできず、しばらくその酔っ払いと会話を続けることにした。

 

予想していたような攻撃的な態度もなく、むしろ彼はとてもフレンドリーで、普通に会話を楽しむことができた。

 

「男だって言ったら、さすがに引くだろうと思ってたんだけど……」と、悠人が呟くように言うと、酔っ払いは笑いながら言った。

 

「そんなの、関係ないさ。お前が楽しいなら、それでいいだろ?こうして話せてるのも、なんか縁ってやつだよ。」

 

その言葉に、悠人は少し肩の力が抜けた。

 

お互いに気取らず、自然体で話せるこの瞬間が、不思議と心地よかった。

 

その後、酔っ払いと一緒に飲みながら、ただ純粋にお酒と会話を楽しむ時間が続いた。

 

普段の自分とは少し違った一面を見せながらも、それを受け入れてもらえることに、悠人は安心感を覚えていた。

 

「今日、こうして出かけてみてよかったな」と、悠人は心の中で静かに思った。

 

そして、ロリータファッションで堂々と街を歩く達也や、酔っ払いに対して正直に自分をさらけ出せた自分を少し誇らしく感じた。

 

居酒屋での時間も終盤に差し掛かり、皆が少し酔いが回ってきた頃、悠人は改めて今日一日を振り返っていた。

 

女装して街を歩くことの楽しさ、ロリータファッションの目立ち方、そして理解のある人々との交流。

 

普段は味わえない経験が詰まった一日だった。

 

「またこんな風に、みんなで集まって外出したいな……」そんな思いが自然と湧き上がってきた。

 

女装をすることで得られる新たなコミュニティ、そして自分を表現する楽しさ――それらが少しずつ、悠人の日常に溶け込み始めていた。

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