何となく女装を始めたら、だんだん拘り過ぎてしまった件   作:古都礼奈

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誰かに見てもらうために

女装の世界に足を踏み入れてからしばらく経った悠人は、自分が女装している姿に対して慣れすぎてしまっていることに気づいた。

 

これまでサロンで着飾ったり、友人たちと写真を撮ったりしてきたが、そのうち、どこか満たされない気持ちが湧き上がってくるようになった。

 

「このままでいいのかな……?」

 

悠人は鏡の前で自分の姿を眺めながら、ふとそんな疑問を抱いた。

 

日常的に女装を楽しんでいるものの、その行為自体がただの「日常」と化し、新鮮さが失われている感覚に苛まれていた。

 

そんな中、彼の心の中にある一人の人物の存在が浮かんできた――セーラー服の人だ。

 

彼は、悠人が初めて女装に興味を抱くきっかけとなった人物だった。

 

その堂々とした姿、そして自信に満ちた表情が今でも鮮明に記憶に残っている。

 

そして、悠人は彼のように、自分も他人に見てもらいたいという欲望を抱き始めていた。

 

「でも、どうやって……?」

 

その夜、悠人はベッドに横たわりながら、天井を見つめて考え込んでいた。

 

サロン内での女装は安心できる場所ではあったが、それ以上の挑戦がない限り、今のままでは満足できないだろう。

 

それならば、外の世界に自分の姿を発信してみようと考え始めた。

 

「他の人がどう思うか気になるな……」

 

もちろん、見られることへの不安はあった。

 

自分が女装している姿をネット上に晒すことが、周囲にどのような影響を与えるかはわからない。

 

しかし、悠人の中には、セーラー服の人のように堂々とした姿を誰かに見てもらいたいという強い思いがあった。

 

翌日、悠人は仕事を終えると、さっそくパソコンの前に座った。

 

「ホームページは……ちょっと敷居が高いな……」

 

本格的なサイトを立ち上げるのは時間も労力もかかる。

 

だが、ブログならば比較的手軽に始められるだろうと考え、無料のブログサーバーを借りることにした。

 

特別な技術は必要なく、テンプレートを選んで、あとは簡単な設定をするだけだった。

 

「これならできるかも……」

 

ブログのデザインはシンプルなものを選んだ。

 

派手すぎず、しかし、清潔感のあるレイアウトを心がけた。

 

メインビジュアルには、サロンで撮影した自分の写真を載せることにしたが、選ぶのに少し時間がかかった。

 

「どの写真が一番良いだろう?」

 

何枚も撮りためていた写真を見返しながら、悠人は少し悩んだ。

 

最終的に選んだのは、女装サロンで友人たちと撮った集合写真ではなく、自分一人で撮った少し緊張気味の表情が映っている写真だった。

 

完璧ではないが、その少しの緊張感が、彼自身の内面を反映しているように思えたからだ。

 

ブログを立ち上げてしばらく経ったある日、悠人はふとパソコンの前に座って、自分のブログのアクセス数を確認してみた。

 

「……全然見られてないな」

 

ほんの数回しかアクセスがなかった。

 

最初は期待していなかったものの、どこか寂しさを感じた。

 

しかし、悠人はそのままブログを閉じることなく、記事を追加し続けた。

 

毎回、女装したときの感想や写真、そしてそのときの心境を綴っていった。

 

「まあ、こんなものだよな……」

 

最初のうちはモチベーションが下がることもあったが、次第にその作業が習慣化し、楽しみの一つとなっていった。

 

誰に見られているか分からないという状況も、逆に気楽に自分を表現できる場所として捉えるようになった。

 

ある夜、悠人はサロンで知り合った友人、カオルにその話を打ち明けた。

 

「最近、ブログを始めたんだけどさ……全然アクセスがなくてさ」

 

カオルは微笑んで、「それでも続けてるんでしょ?それってすごいことだよ」と励ましの言葉をかけてくれた。

 

「うん、でもさ……やっぱり誰かに見てもらいたいっていう気持ちはあるんだよね」

 

「分かるよ、その気持ち。でも、焦らなくてもいいんじゃない?続けていれば、自然と見てくれる人も出てくると思うよ。それに、自分のためにやってるんだから、楽しめるならそれでいいんじゃない?」

 

カオルの言葉に、悠人は少し気持ちが軽くなった。

 

確かに、誰かに見られることも大切だが、まずは自分自身が楽しむことが一番だと改めて感じた。

 

それから数週間が経ち、悠人はブログを少しずつ更新し続けていた。

 

新しい記事を投稿するときも、特にアクセス数を気にせず、自分のペースで書き続けた。

 

そして、ある日、ついに彼のブログに一つのコメントが付いた。

 

「とても素敵な写真ですね!もっと見たいです!」

 

そのコメントを見た瞬間、悠人の心は踊った。

 

たった一つのコメントだったが、これまでの努力が報われたような気持ちになった。

 

彼の中で少しずつ芽生えていた「誰かに見てもらいたい」という欲望が、現実となった瞬間だった。

 

「やっぱり続けて良かった……」

 

悠人はそのコメントに丁寧に返信し、さらに新しい写真や記事を投稿していくことにした。

 

少しずつ、アクセス数が増え、コメントも増えていくことを願って。

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