何となく女装を始めたら、だんだん拘り過ぎてしまった件 作:古都礼奈
ある日のメイド服体験が心に残り、悠人は再びその魅力に引き寄せられていた。
しかし、同じメイド服を着るだけでは、前回と同じ気持ちを得られないだろうと感じていた。
もう少し刺激的なもの、少し違った方向性での楽しみ方を試したいと考え始めた。
「もっと、コスプレらしいものに挑戦してみようかな…」
彼はオンラインショップでいくつかのコスプレ衣装を眺めていた。
いろいろな選択肢があったが、その中で彼の目を引いたのは、猫耳、鈴のついた首輪、そして尻尾がセットになったものだった。
これなら、前回のメイド服にちょっとしたアクセントを加えることができるし、何より可愛らしい。
思わず、勢いに任せて購入ボタンを押してしまった。
数日後、手元に届いた猫耳と首輪のセットを眺め、悠人はワクワクした気持ちを抑えられなかった。
サロンの仲間たちに見せたら、どんな反応をするだろうか。
彼はその想像にふけりながら、早速サロンに向かうことを決めた。
サロンに到着した悠人は、普段通り奈々さんや他の仲間たちに挨拶を交わしつつ、新たに手に入れた猫耳と首輪のセットを披露した。
「おお、これはまた面白いの持ってきたね!」奈々さんが目を輝かせながら言った。
「猫耳に首輪?しかも尻尾までついてるの?それはぜひ着てみないと!」
別の仲間も興味津々の様子だ。
「いや、ちょっと今回はお試しで…」
悠人は少し照れながらも、猫耳と首輪を取り出し、鏡の前でメイド服と合わせて装着し始めた。
いつものメイド服に、この猫耳と首輪のセットを加えるだけで、全く別の印象になった。
鏡に映る自分の姿を見て、なんだか新しい自分に出会ったような気分になった。
「おお、いいじゃん!似合ってる!」仲間たちが口々に褒めてくれるのを聞いて、悠人の気分はますます高揚していった。
「どう?写真撮ってみる?」奈々さんがカメラを手に取り、悠人に問いかける。
「うん、お願い。」悠人はポーズを取ることに慣れてきていた。
普通の立ち姿や、少し可愛らしく見せる「ぶりっ子」ポーズなど、自然と体が動く。
カメラのシャッター音が次々と響き、撮影が進んでいった。
「もっと猫っぽくなりきってみたら?」奈々さんが提案する。
「猫っぽく…?」悠人は少し考えたが、なるほど、確かに猫耳と首輪をつけている以上、猫っぽく見せるのがいいかもしれないと思った。
「そうそう、ちょっとしゃがんで、手を前に出してみて。そう、猫みたいに…」悠人は指示に従い、しゃがみ込み、手を前に出す。
そして顔を少し傾けて、まるで遊びをせがむ猫のような表情を作った。
「いいね!その調子!」周りの声に応じて、悠人はますます乗ってきた。
次々と猫っぽいポーズを取り、カメラの前で自由に表現を楽しんでいた。
「次はもうちょっと挑発的なポーズやってみたら?」別のサロン仲間が提案してくる。
「挑発的…?」悠人は一瞬戸惑ったが、少し考えた末、挑戦してみることにした。
彼はヒールを履いた足を少し露骨に見せながら、セクシーな視線をカメラに送ったり、尻尾を手に持ちながら、まるで本物の猫が遊んでいるかのように見せるポーズを取ったりした。
次第に、周囲からの声援やアドバイスが増え、悠人はどんどん大胆なポーズを試すようになった。
挑発的な表情を作りながら、首輪の鈴が軽やかに音を立てる。
気づけば、彼自身もその撮影に夢中になり、まるで別の自分に変わったかのような感覚に陥っていた。
その夜、撮影が終わった後は、サロンの仲間たちと一緒にお酒を飲みながら写真を見て盛り上がった。
「いや~、悠人くん、今日のは最高だったよ!」奈々さんが楽しげに言う。
「本当に、猫になりきってたよね。こんなポーズ、普通はできないよ!」
他の仲間たちも口々に称賛を送ってくれる。
悠人もその場の雰囲気に飲まれ、楽しい気分に浸っていた。
写真を一緒に見返しながら、仲間たちと笑い合い、どんどんお酒が進んでいった。
「いやー、これ、SNSに載せたらバズるんじゃない?」誰かが冗談めかして言うと、悠人も笑いながら返す。
「さすがにそれはやめてよ…恥ずかしいから。」だが、その言葉もどこか軽いノリで、深くは気にしていなかった。
夜が更けるまでみんなで盛り上がり、サロンを後にした時には、悠人はすっかり上機嫌だった。
しかし、次の日の朝、冷静になると、一気に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「アラフォーの男が、何やってるんだ…」頭を抱えながら、昨日の出来事を振り返ると、どこか浮かれていた自分が信じられなくなってきた。
猫耳に首輪、そして尻尾。
ハイヒールを履いて、挑発的なポーズまで取った自分の姿を思い出すと、急に冷や汗が出てきた。
「昨日はあんなに楽しかったのに…今思うと恥ずかしすぎる…」悠人は布団に顔をうずめ、しばらくその場から動けなかった。
夢中になっていた自分、そして仲間たちの前で調子に乗ってしまった自分が、どうにも恥ずかしくてたまらなかった。
「もう少し、落ち着くべきだったのかな…」後悔の念がふと湧いてくる。
けれど、同時に、あの瞬間の楽しさを否定することもできなかった。
楽しかった時間は確かに存在したし、あの瞬間、自分は確かに解放された気持ちでいた。
「でも、これも自分なんだよな…」悠人は少しずつ、自分の中での矛盾する感情と向き合い始めた。
結局、誰に迷惑をかけたわけでもない。
自分自身が楽しんだのだ。
それなら、それでいいのかもしれない。
そう思いながらも、悠人はまだ完全に気持ちの整理がつかないまま、今日も一日を過ごすことになるのだった。