何となく女装を始めたら、だんだん拘り過ぎてしまった件   作:古都礼奈

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女装を楽しむ彼女と僕

美咲がまた家に遊びに来ていた。

 

いつも通り、悠人の部屋に入るなり、アニメ鑑賞会が始まる。

 

部屋の明かりを落とし、薄暗い照明の中、二人でお気に入りのアニメを見ながら、次々と話が弾む。

 

今日は特に新作のアニメの話題で盛り上がり、二人の笑い声が部屋に響いていた。

 

「悠人、ここのシーンめっちゃ面白いよね!前回も見たけど、やっぱり何度見ても笑える!」美咲はテレビ画面を指さしながら、無邪気に笑う。

 

「そうだね、何度も見る価値がある作品だよね。」悠人も笑いを抑えきれない。

 

彼女の楽しそうな様子を見ると、自然とこちらも気分が軽くなる。

 

美咲が家に来ると、悠人は自然と女装をすることになっていた。

 

最初は少し戸惑ったが、今ではそれが当たり前のように感じられていた。

 

美咲が悠人の女装を見てからかうのが楽しくなり、悠人自身もそのやりとりを心地よく感じ始めていたからだ。

 

二人の関係は、不思議な形で居心地の良さを保っていた。

 

「悠人、今日も似合ってるね。やっぱり女装が板についてきたじゃん。」美咲は彼の膝に軽く手を置き、微笑む。

 

「まあね、慣れたっていうか、君がこうやっていつもからかうから、自然とそうなっちゃったのかもね。」悠人は照れ笑いを浮かべながら、肩をすくめる。

 

「でも、悪くないでしょ?こういう自分を見つけるのも楽しいじゃん?」美咲はいたずらっぽく、さらに悠人に近づく。

 

美咲の無邪気な笑顔とその軽いボディタッチに、悠人は少し胸が高鳴るのを感じた。

 

最近、彼女がこうやって密着することが増えたような気がする。

 

それも自然に、まるで長年の恋人同士のように。

 

だが、悠人にとって美咲はあくまで友人だ。少なくとも、表面的には。

 

「それにしても、本当に悠人の部屋って居心地がいいよね。いつも長居しちゃう。」美咲はふと声のトーンを落とし、リラックスした様子でソファに体を預ける。

 

「まあ、君がいつでも遊びに来れる場所だからね。」悠人は頬を掻きながら答えた。

 

アニメを見終えた頃、夕食の時間になった。

 

簡単な料理を二人で作りながら、いつものように軽い冗談を交わす。

 

美咲が泊まるときは、料理も洗い物も二人で一緒にやるのが恒例だ。

 

悠人が手際よく食材を切り、美咲がそれを鍋に入れていく。

 

「ねえ、悠人。今日は何か特別なデザートとかある?」美咲が期待の目で見上げる。

 

「特別ってほどじゃないけど、アイスクリームならあるよ。食べる?」悠人は冷蔵庫を指さしながら答える。

 

「やった!あとで食べるね!」美咲は笑顔で答え、料理を仕上げていく。

 

夕食を終え、満足感に包まれた二人はソファで一息つく。

 

アニメの話題から、最近の仕事の話にまで話は尽きない。

 

そんな中、泊まるつもりの美咲がそろそろシャワーを浴びようかというところで、突然思い出したように「あ、下着持ってくるの忘れた!」と声を上げた。

 

「え、下着忘れたの?またかよ…」悠人は苦笑いしながら、前回も同じことを言われたのを思い出していた。

 

「だって、悠人の家に泊まることが多くなって、すっかり油断しちゃってさ。」美咲は少し恥ずかしそうにしながらも、どこか楽しげだ。

 

「じゃあ、今回もまた貸すしかないか…」悠人は仕方なく、自分の引き出しから女性用の下着を取り出した。

 

なぜか家に揃っているそれらのアイテムに、再び彼は複雑な気持ちになりつつも、何も言わずに美咲に渡す。

 

「ありがとう、悠人!」美咲は嬉しそうに手を伸ばし、そのまま浴室に消えていった。

 

シャワーの音が聞こえ始め、悠人はリビングでぼんやりとテレビを見ながら、今日のことを思い返していた。

 

美咲との距離がどんどん縮まっているように感じるが、それが彼の中でどういう意味を持つのか、まだ整理がついていない。

 

ただ、彼女の存在が特別であることは間違いない。

 

美咲がシャワーを浴びるためにバスルームに入ると、すぐに「あ、悠人!」と声が響いた。

 

何事かと悠人が駆け寄ると、美咲がバスルームの扉を少しだけ開けて、顔を覗かせた。

 

「ごめん、クレンジング持ってくるの忘れちゃった。借りてもいい?」

 

「え、クレンジング?持ってるけど…って、なんで俺が持ってるのか不思議に思わない?」

 

「だって、悠人ん家には色々揃ってるじゃん。女装するならクレンジングだって必要でしょ?」美咲は悪びれもせずに笑う。

 

「まあ、そうだけど…。はい、どうぞ。」悠人はバスルームの中にクレンジングを渡し、呆れたように微笑んだ。

 

「ありがとう!助かるー!」美咲は満足そうに扉を閉め、シャワーを続けた。

 

悠人はソファに戻り、少し考え込んだ。

 

確かに、ここ最近、美咲が家に来るたびに、女装のアイテムや化粧品が自然と増えていった。

 

もともと趣味で集めていたものもあったが、美咲の影響で一段と充実していることに気づかされた。

 

シャワーの音が止んだ頃、またバスルームから声がかかった。「ねえ、悠人。またお願いがあるんだけど…」

 

「今度は何?」悠人は軽くため息をつきながら、バスルームに向かう。

 

「ネイルの除光液も忘れちゃったんだけど、貸してくれる?」

 

「またかよ…。まったく、もう少し計画的に準備してくれよ。」悠人は苦笑しながら除光液を手渡した。

 

「ありがとう!やっぱり悠人って頼りになるね。」美咲は嬉しそうに受け取り、再びバスルームの扉を閉めた。

 

「次は何だろうな…」悠人は冗談半分で呟きながら、再びソファに座り直した。しかし、その予感は的中することになる。

 

シャワーを終えた美咲が出てくると、今度はバスローブ姿で悠人に近づいてきた。「あのさ、悪いんだけど…化粧水も忘れちゃってさ、借りてもいいかな?」

 

「もう、次からちゃんと持ってきなよ。これで全部忘れたんじゃないよね?」悠人は笑いをこらえながら、化粧水を差し出した。

 

「うん、これで最後。ありがと!」美咲は満面の笑みを浮かべ、悠人の言葉に感謝しながら化粧水を手に取った。

 

数分後、シャワーを終えた美咲がバスタオルを巻いた姿でリビングに戻ってきた。

 

「パジャマも忘れちゃった…また借りてもいい?」美咲は照れくさそうに頭を掻きながら、悠人にお願いする。

 

「もう、ほんとに全部忘れてるじゃん…。まあ、いいけど。」悠人はため息をつきながら、クローゼットの奥から女性用のパジャマを取り出した。

 

やっぱりこれも、なぜか自分の部屋にある。

 

「ありがとー!悠人、本当に助かるわ。」美咲は笑顔でパジャマを受け取り、バスタオルを素早く交換して、すっかりくつろいだ様子だ。

 

「それにしても、悠人の部屋って何でも揃ってるよね。下着もパジャマも。まるで女性が住んでるみたい!」美咲は冗談半分に言いながら、ソファに腰を下ろす。

 

「いや、違うから。ただ、君が来るたびに忘れ物するから、それに備えてるだけだよ。」悠人は照れ隠しにそう答えるが、内心では確かに女性らしい物が増えていくことに少し不安を感じていた。

 

「ふふ、そうなんだ。じゃあ、これからも安心して泊まりに来れるね!」美咲は笑いながら、悠人の横にすっかり落ち着いて座る。

 

「ま、まあな…。でも、次回はちゃんと持ってきてよ?」悠人は少し笑いながら応じるが、彼女とのこの関係が続くことをどこか期待している自分に気づいていた。

 

その夜も、二人は他愛ない会話をしながら笑い合い、自然と夜が更けていった。

 

悠人はふと、自分の部屋がまるで美咲専用の化粧室のようになっていることに気づき、少し不思議な感覚に襲われた。

 

ここが自分の部屋であるにもかかわらず、女性の必需品が揃い、美咲が自然と使っている。だが、それが妙に心地よくもあった。

 

「これだけ揃ってると、私の部屋より便利かも。悠人の家って、もしかして女性向けにカスタマイズされてるんじゃない?」美咲がからかうように言うと、悠人は思わず笑ってしまった。

 

「そうかもね。でも、次回からはちゃんと自分の物を持ってきてくれよ。」

 

「うん、シャンプーとコンディショナーだけは、次回持ってくるね!さすがに髪のケアだけは、自分の物が合うからね。」美咲は笑いながらそう言った。

 

悠人は彼女の言葉に少しホッとしつつも、何となくこの状況が続いてもいいような気がしていた。

 

彼女が忘れ物をして、それを自分が補うという不思議なルーチンが、二人の距離感を微妙に近づけていることに気づいていたからだ。

 

「でも、他のものは全部貸してくれるから、ほとんど持ってこなくても平気だよね?」美咲はいたずらっぽく微笑んで、悠人の隣に腰を下ろした。

 

「まぁ…そうだけどさ。それでも、ちゃんと持ってきてくれた方が、俺も気を使わなくて済むし。」悠人は照れ隠しに、軽く肩をすくめる。

 

「いいじゃん、私と悠人はそういう間柄なんだから。」美咲は悠人の肩に頭を預けるように寄りかかり、さらに密着してきた。

 

悠人の心臓が早くなる。これまでも何度かこうした密着はあったが、今日は特に距離が近い気がする。

 

彼女の髪から漂うシャンプーの香り、肌の温もり、そして何よりも彼女の無邪気な笑顔が、彼の心を掻き乱す。

 

「…そういう間柄、って何だよ。」悠人は視線を逸らし、軽く笑いながらも、その言葉の意味に戸惑っていた。

 

美咲にとって、彼との関係はどんなものなのか。友人以上、でも恋人未満。それとも、ただの気の置けない仲間なのだろうか。

 

「ほら、気にしないで。私たち、いいコンビでしょ?」美咲はそう言いながら、悠人の頬に軽く触れる。

 

彼女の手が悠人の肌に触れるたびに、悠人の心拍数が上がるのを感じた。

 

「まぁ、確かに…俺たち、いいコンビだよな。」悠人はぎこちなく笑いながら応じるが、内心ではこの感情が何なのか、答えを出せずにいた。

 

二人はそのまましばらく無言で過ごしていたが、やがて美咲がふと立ち上がり、軽く伸びをした。「さて、そろそろ寝ようかな。今日も泊めてもらうから、ありがとね。」

 

「いいよ、気にしないで。いつでも歓迎だし。」悠人はそう言いながら、美咲に寝具を準備してあげた。

 

いつものように、彼女は悠人のベッドを使い、悠人はリビングで寝ることになっていた。

 

「おやすみ、悠人。今日は楽しかったよ。」美咲はベッドに潜り込み、毛布を抱きしめながら微笑んだ。

 

「おやすみ、美咲。」悠人もリビングのソファに腰を下ろし、目を閉じた。

 

だが、寝ようとしても頭の中では美咲とのやり取りがぐるぐると回り続けていた。

 

彼女が自分にどれだけ近づいてきても、彼自身は一線を越えることができない。

 

彼女が自分にとってどれだけ大切な存在であっても、彼はその感情を言葉にすることができなかった。

 

「いつまで、こうしていられるんだろう…」悠人はぼんやりと天井を見上げながら、そんなことを考えた。

 

美咲とのこの曖昧な関係は、楽しいが故に終わりが見えない。

 

そして、もしその終わりが来たとき、彼はどうするべきなのか。

 

美咲は悠人にとって特別な存在であることは間違いない。

 

だが、その特別さが、どのような形で彼の中に根付いているのかは、彼自身もまだ分かっていない。

 

そんな考えが渦巻く中、悠人は徐々に意識が遠のいていき、静かな夜が二人を包み込んだ。

 

翌朝、リビングで目を覚ますと、美咲がキッチンで朝食の準備をしていた。

 

「おはよう、悠人!ちょっと簡単に朝ご飯作ってるけど、食べる?」

 

「ああ、おはよう。ありがと。助かるよ。」悠人はまだぼんやりとした頭を掻きながら、キッチンに向かう。

 

美咲はいつものように明るく振る舞い、昨夜のことは何事もなかったかのように振る舞っている。

 

悠人もまた、その空気に安心感を覚えながら、彼女との何気ない日常を楽しんでいた。

 

「ねえ、悠人。次の週末もまた来てもいい?」美咲がふいに尋ねた。

 

「もちろん、いつでも来てよ。ここは君の家みたいなもんだから。」悠人は笑ってそう答えた。

 

美咲は嬉しそうに微笑んで、「じゃあ、決まりね。また一緒にアニメ見よう!」と、元気よく声を上げた。

 

こうして、二人の曖昧な関係は今日も続いていく。

 

お互いに心の中にある気持ちを隠しながらも、居心地の良い時間を共有している。

 

いつか、そんな関係に変化が訪れるかもしれないが、今はこのままでいい。

 

悠人はそう思いながら、美咲との朝のひとときを楽しんでいた。

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