何となく女装を始めたら、だんだん拘り過ぎてしまった件   作:古都礼奈

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日常と非日常を行き来する楽しみ

悠人は女装サロンでのメイド服体験を通じて、すっかり新しい趣味に目覚めてしまった。

 

仕事に追われて疲れていた日常のストレスが、一気に解消される感覚は格別だった。

 

サロンを出た後も、その感覚が忘れられない。

 

家に帰ってからも、自分の姿が写った写真を何度も見返してしまう。

 

「次は、どんな服を着ようかな……」

 

メイド服やセーラー服のコスプレは楽しかったが、ふと「普通の女性の服を着たらどうなるんだろう?」という思いが頭をよぎった。

 

女性の服を着るだけで、あの開放感や変身願望を満たせるのか?

 

それとも、もっと日常に近い感覚で楽しめるのか?考えれば考えるほど、試してみたくなる。

 

翌週末、悠人は自分の好みの服を探すために、ネットショップをチェックしていた。

 

しかし、いざ探し始めると、どうしても「かわいい系」の服に目が行ってしまう。

 

花柄のワンピースやフリルのついたブラウス、リボン付きのスカートなど、普段の自分では絶対に選ばない服が目に飛び込んでくる。

 

「普通の女性の服……って考えてたのに、やっぱりかわいいのが気になっちゃうな」

 

悠人は、軽く笑いながらも内心の葛藤に少し戸惑った。

 

普通のシンプルな女性の服を試してみたいと思いつつ、結局かわいらしいアイテムに惹かれてしまう自分がいた。

 

結局、シンプルなカーディガンと花柄のワンピースを選び、注文ボタンを押していた。

 

数日後、注文した服が届くと、悠人は再び女装サロンに行くことを決意した。

 

「持ち込みOK」というサロンのシステムを利用し、自分で選んだかわいい服を着てみることにしたのだ。

 

サロンに到着し、再び受付で出迎えてくれたスタッフに、持ち込んだ服を見せると、彼女は微笑んだ。

 

「素敵ですね!花柄のワンピース、すごくお似合いになると思います」

 

「ありがとうございます…ちょっと、恥ずかしいんですけど…」

 

悠人は少し照れ笑いを浮かべた。

 

可愛い系の服を選んでしまったことに対する恥ずかしさがありつつも、どこか誇らしい気持ちもあった。

 

自分で選んだ服を着ることで、もっと自分を楽しめるのではないかという期待感が胸に広がっていた。

 

更衣室でワンピースを手に取った瞬間、その軽やかな生地の感触が手に心地よく伝わった。

 

花柄のデザインは、柔らかく女性らしい雰囲気を醸し出しており、普段の自分からは想像できない姿になるのではないかという期待がますます膨らんでいく。

 

「さあ、着てみよう……」

 

ワンピースを着て鏡を見つめると、前回のメイド服やセーラー服とは異なる自然な可愛らしさが目に飛び込んできた。

 

今回の服装は、コスプレというよりも普段着に近い。

 

だからこそ、そのギャップが不思議な感覚を生み出していた。

 

「これは、これで…いいかも」

 

悠人は軽く微笑みながら、自分の新しい姿を確認した。

 

続いて、メイクをお願いするためにサロンのスタッフのもとへ向かった。

 

「今日は普段着っぽい感じですから、メイクもナチュラルにしましょうか?」

 

メイク担当のスタッフは、悠人の姿を見て提案した。

 

悠人もそのアイデアに賛同し、今回のテーマは「自然体の女性」を意識することにした。

 

肌を軽く整え、薄めのリップとチークを施されると、まるで自然な女性のような印象が出来上がった。

 

「これで…もっと日常に溶け込む感じかな」

 

鏡に映る自分を見て、悠人は満足感に浸った。

 

メイクも服装も派手すぎず、ナチュラルに仕上がっている。

 

その姿は、自分が普段歩いている街角に普通にいそうな女性に見えた。

 

「さあ、写真撮影の時間ですね!」

 

スタッフの元気な声に導かれ、悠人は再びスタジオへと足を運んだ。

 

今回の撮影では、小道具を使わずにシンプルなポーズを意識した。

 

手を軽くスカートの裾に添えたり、肩に軽くバッグを掛けるような動作を加えたりするだけで、まるで日常の一場面を切り取ったかのような写真が次々と撮影されていった。

 

「自然体でいい感じですよ」

 

スタッフの言葉に背中を押され、悠人はどんどんリラックスしていった。

 

前回のメイド服のときのような、非日常的な感覚ではなく、まるで「自分の日常の延長線上」にいるような安心感があった。

 

写真が出来上がるたびに、その中に映る自分が「普通の女性」に近づいていくのを感じる。

 

撮影が終わると、悠人はまた少し周囲のお客さんたちと話をする機会があった。

 

今回も多くの人が様々なスタイルで女装を楽しんでいたが、その中に一人、ナチュラルなファッションで楽しんでいる若い男性がいた。

 

彼はシンプルなワンピースとヒールを履いており、まるでどこかのカフェでランチを楽しんでいそうな雰囲気を醸し出していた。

 

「僕も普段は派手なコスプレが好きなんですけど、たまにはこういう普通の服も良いですよね」

 

彼は悠人にそう話しかけてきた。

 

悠人も同じようなことを感じていたため、自然と会話が盛り上がった。

 

「そうですよね。普通の女性っぽい服装をすると、なんか気持ちも違いますよね」

 

「そうそう、なんか、リアルな自分を見つけた気がします。日常的な感じが、逆に新鮮ですよね」

 

二人は共感し合いながら、それぞれの女装体験について語り合った。

 

普段の生活では決して話せないような内容を、ここでは気軽に話せることが何よりも嬉しかった。

 

サロンという場所が、彼らにとっての特別な居場所であることを再確認した瞬間だった。

 

帰り道、悠人はふと思った。普段は会社でスーツを着て、日々の業務に追われる自分が、こうして女性の服を着てメイクをし、写真を撮る。

 

そんな自分もまた、一つの現実であり、どちらの姿も「自分」なのだと。

 

「これも自分、あれも自分か」

 

女装という趣味が、悠人にとって単なる「遊び」ではなく、もう一人の自分を見つけ出すための大切な時間となっていた。

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