『逆転ー!決まってしまった〜!勝者、ブラックオニキスーっ!!』
あの後、僕の抜けた穴をヤチヨが埋めることになり、試合はそのままブラックオニキスの勝利となった。
2戦目はかぐやの奇想天外な発想とヤチヨのカバー力が実を結び勝利を飾ったが、同時に詰めが甘いのもかぐや。3戦目は二人の力を合わせ初めて帝を落とし王手を掛けたが、あと一歩のところで地雷に引っかかり逆転されてしまう結果に。
「───ま、連携で大金星を上げたし及第点かな」
「何言ってんのよ、ヤチヨカップの結果発表にも遅れるし、今の今まで何してたの?」
「いや〜なんでか知らないけど、あの『KASSEN』の後ファンが一気に急増してねー。さっきまでファンサしてたってワケ」
「「………」」
え、何その目。
なんか凄い彩葉とかぐやがジトーってした目で見てくるんだけど。何、まさか反抗期?
「どうしたの?今回ばかりは僕何もしてないと思うんだけど…」
「「いや別に」」
「……っていうか、今までしてた自覚はあるのね」
「あっれ、悟くん何の事かわかんな〜い☆」
「おい」
「お、御三方勢揃いのようで」
珍しくかぐやまで揃って冷たい態度を取ってくるが、なんで?マジで分からん。
声を掛けられ、その方向に目を移してみれば、いつの間にか渋滞していた道がモーゼの奇跡かのごとく割れている。道の脇には、ヤチヨカップの1位・2位・
その奥から現れたのは今回の
「げ、やば、結婚!」
帝の顔を見た途端にかぐやが思い出したかのように慌て出す。
そういえば、そんなこと言ってたっけ。『KASSEN』が楽しみすぎてすっかり忘れてた。
「……これじゃ、勝ったとは言えないな」
「ん?お?」
「ま、元々無理やり結婚する気なんてねーし」
「ねーよな!!」
帝がそう言うと、かぐやもすかさずそれに便乗した。
彩葉が呆れたように二人を見比べる……
あ、兄妹ネタでからかうの忘れてた。
そうして二人は兄を引っ越しの保証人とするお願いを確約してもらい、これで一件落着……と、思ったのだが。
「それで、五条悟さん?アンタには俺からのお願いがあるんだけどさ」
「ん、僕?もしかしてさっきの『KASSEN』で僕の大活躍に見惚れちゃったとか───」
「そう、そのまさかだよ」
「「え!?」」
彩葉とかぐや、そしてギャラリーにどよめきが走る。
ヤチヨカップの2位はブラックオニキスだが、4位は僕、五条悟。それまで圏外だった僕も、さっきの『KASSEN』でかなりのファンを獲得した。というか、元の数から数十倍にまで伸びた。
前世が呪術師だったからか人気というものに興味はないが、大したお金しか稼げていなかったこともあり、悪い気はしない。チヤホヤされるの好きだし。
「乃依が拗ねて帰るほどの強さ、あの1試合で4位まで駆け上がる性格と容姿のギャップによる人気。聴けば専門分野は『SETSUNA』らしいじゃん?ファンから帝と悟の新二大巨頭を望む声も、この短時間でとは思えない勢いで上がってるし、乃依含め俺ら三人自身の意思としても歓迎できる。誘わない理由を見つける方が難しいでしょ」
「随分高く買って貰えてるみたいで光栄だよ」
「俺らみたいな業界は、こういう逸材は早く獲るが吉って相場が決まってんの」
「えぇ!?」
周りを見てみれば、それを聞いた第三者による期待とファンによる興奮が入り交じっており、場は完全に驚き第二波と言わんばかりに盛り上がっている状態だ。端っこの方に真実も隠れてるし。
不満の声を上げているやつなどいないかような歓迎ムードが広がっていく(かぐやを除き)
(正直、僕としても面白いって心情の方が勝ってる。昔からこういう新鮮味があるのは好きだしね)
何より、チーム内練習やユニットとしての企画という名目でこのレベルの相手といつでも戦える。
決して悪い話じゃないし、条件としてもちゃんとWin-Winだ。
「じゃあ────「…やだ」ん?」
提案を受け入れようとしたところで、隣から彩葉の消え入るほど小さな声が聞こえる。
フレンドボイスチャットの方で話しかけてきているようで、周りには聞こえていないとは思うが、その声は確かに僕の耳に入った。
「ご、ごめん。でもなんか、理由は分からないんだけど、嫌だなって……思って、それで──」
「分かった、ほら、姿はファンに見られてるんだから、少しずつでも深呼吸して」
「…………うん、落ち着いた。ありがと」
あの彩葉がここまで動揺しているのも珍しい。
人も多いためとりあえず落ち着かせて、ゲームチャットに切り替える。
「まあいきなりの提案だし、一旦保留って形でどうかな?熱は熱いうちに打てって格言もあるけど、考える時間もほしいしね」
「分かった、
「………」
「つーわけで、俺らファンのとこ行くから。じゃあな!」
そう言って二人は踵を返して周りのギャラリーとともにログアウトしていった。
確かファン数は1900万だったか。
加入するにしろしないにしろ、交流を持てたというのはかなりの収穫だ。
続いて僕たちもログアウトしようとしたが────
「ふったりとも〜、よ〜きかな〜〜☆」
───声の主、ヤチヨの気配が近づいてきたのを感じ、その動作を止めた。
「やるじゃねーか、マグレに頼る天才だな!」
FUSHIがそう憎まれ口のようなことも言うも、機嫌の良いかぐやは笑顔のままFUSHIをふんづかまえてリフティングを始める。
……それに乗らないほど、僕も落ちぶれていない。
「Hey!かぐや!」
「…!はい、悟!」
「ぐえっこわいっ」
了解と言わんばかりの上質なリターンが僕に届く。初めてとは思えない精度だ。
「ナイスパス!返すよ〜」
「やめっ」
かぐやのパスを右足でトラップ。そのまま身体を反転させ、かぐやに送り返す。
「オーバーヘッド………キーック!」
「ナイシュー!」
かぐや渾身のオーバーヘッドキックにより人の居なくなった
いつの間に分身したキーパーミニヤチヨが飛び付くも虚しく、枠内へFUSHIが入るが────
ピー!
「う〜ん、かぐやはオフサイドかな〜」
「えー嘘だ〜!?かぐやの必殺シュートが〜!」
「審判!五条悟、VARを要求します!」
審判ミニヤチヨによってノーゴールにされてしまった。いや〜惜しかっ─────
「────ったじゃないでしょ。何してんの三人揃って……正座」
「「はい」」
ようやく正気を取り戻したらしい彩葉によるツッコミが入り、ミニヤチヨ(分身解除)含め三人で正座させられた。
初めて見たよ、彩葉が
「いや、何してんのマジで」
「ほんとだぞ!人間界ならいじめだいじめ」
「いや〜、何か知らないけど、海でサッカーしてる動作を見たらやらなきゃいけない気がして───」
「返事は?」
「ん、だかr「返事は?」すみませんでした」
「コホンッ……では改めて」
先程までとは違う確かな風格を感じさせる声で、ヤチヨが再び話を切り出した。
「ここからはクライマックスに向けてハードな展開が待っているかも。このお話を最後まで見届けてね?……運命の荒波に揉まれる覚悟はいいかー?」
「おー!」
「勿論」
ヤチヨの言葉を激励と捉えた僕たちは……ってより、優勝した二人は、コラボライブに向けてのワクワクと決意を胸に、ツクヨミの夜空に向かって無邪気に拳を突き上げた。
「じゃあ私たちはこれで……」
「あ、そうだった、二人とも」
「「?」」
そのままログアウトしようとする二人を呼び止め、最後に言葉を残しておくことにする。
「二人の二・三試合目、見てて及第点だのなんだの言ったけど、二人はよく頑張ってたよ。慰めじゃないよ?この僕が少し羨ましいと思うくらいには、輝いて見えた」
「……」
「それが結果として出たんだ、だからもっと胸張って自信持ちな。言ってたでしょ?『二人は最強』『当然』ってさ。問題児でもあるけど」
「かぐやはともかく私も!?」
「ハハッ、頑張ってね、超新星フリーダム。コラボライブ、楽しみにしてるから」
「「……うん(ええ)!!」」
そう言って、二人は今度こそログアウトしていった。
───さて。
「じゃあ行こうか、ヤチヨ。この僕の戦いを1試合だけにしたんだ。飛び入り参加とはいえ、僕を引き留めたってのは重いよ〜?」
「ヤッチョも、多分この日だったんだろうな〜って思って、睡眠時間管理して楽しみにしてたんだよ?クライマックスまで、
「ハハッ、その言葉の意味も含めて、退屈させないように頼むよ?電子の海の歌姫さん?」
「ふふっ、ヤッチョにお任せあれ!………いざ、行こうか」
こうして少しずつ、けれど確かに、終わりへの幕が開けていくのであった。