月人戦の五条は最初から目隠し無しです。
服装は新宿での宿儺戦のものというイメージでお願いします。
ちなみに月人の名前は超かぐや姫公式ファンブックの情報です(武器の名前は分かりませんでした)
配置
彩葉→天守閣
帝・真実・芦花→ボトム
雷・乃依→トップ
悟→ミドル
『もっと、衝動的な音で、もっと、感情的な歌で』
別れを匂わせるような歌詞を纏い天守閣で歌うかぐやをバックに、五条は眼前の月人三体を見据える。
場所は少し前にヤチヨと戦ったミドルの中央。
3体────海洋生物のようなホテイ型・マスコットのような姿から龍神、または獅子の神とも思わしき形態に変容したズイジュウ型・大将格であり2体の後ろで無限ともいえる
スペースはボサツ型の能力による召喚を危惧したヤチヨにより、通常のKASSENステージよりも広く作られている。
(いくら瞬間移動が使えるからといって、このまま菩薩をフリーにしておけば、瞬間移動に使うためのスペースを
先ほど五条の無限を貫いたのは、あまりある量のリョウサン型の物量が同時に攻撃を打ち込んだことによる副作用のようなもの。
瞬間移動を使って撹乱し、蒼で一気に祓うのがベストだと五条は思考するが、そのことを見抜けぬほど月人のCPUは甘くない。
現にボサツ型は、自身の位置を2体よりも少し後ろに位置をずらし、リョウサン型の軍隊を生成することに心血を注いでいる。
瞬間移動が決して万能なものではなく、障害物を避けなければならないことを危険視する五条悟は、ボサツ型の撃破を最優先事項とした。
カラン…コロン……
「「「ЭбЬааЬЧШРП」」」
ボサツ型により召喚された、人間で呼称される軍隊を名乗れるほど大量のリョウサン型が、特有の音を奏でながら無下限呪術に迫る。
「さしずめ、そうはさせないってとこかな」
何百ものリョウサン型を、渋谷で魅せた蹂躙を彷彿とさせる速度と練度の体術で倒す。
(にしても速いな、前の世界なら
もちろん術式を除いた体術のみ場合だが、五条から見ても、ツクヨミでのユーザーたちの身体能力は異常だった。
どこまでいっても人間の限界を超えることは出来ず、等級でいえば3〜2級弱と言われている改造人間とは違い、空を飛ぶことにより増す速度、そしてそれらを使いこなす知性を兼ね備えている。
能力自体が特級とはかけ離れているため、少年院の呪霊が力はあるが知性に欠けるものなら、このリョウサン型は知性は別次元だが力がそこそこの者といえる。
「悪いけど、僕も有象無象とは違うんだよね」
しかし、五条悟にもこのツクヨミにおける利点は確かに存在する。
電子だからこそ成せる素の身体能力と、術師だからこそ成せる呪力強化の相乗効果によって、五条悟の近接能力もまた、前世を超える速度に到達していた。
グシャアッ!!
ドォォォンッ!!
「ッ!!やるね」
「ПРЬбЭ」
倒したリョウサン型の数が1000に達する。
出力最大ではなくとも蒼は蒼。遠距離に固まるリョウサン型たちを引き寄せて潰し、近距離のリョウサン型は体術と蒼を付与した一撃で屠る。
現代最強の呪術師は、この組み合わせで敵軍の半数を食い止める活躍を見せるが、それを黙って見ている月人ではない。
伝説の獣を模したズイジュウ型が、その巨体で錫杖を振り下ろして攻撃をした。
避けられないと瞬時に判断した五条悟は、すかさずマニュアル式の無限を再展開し、その錫杖を受け止める。
「δΜΞαθ」
バアァァァァアンッッ!!!!
「……」
さらに、そのズイジュウ型の一撃に、五条悟が無下限を使用すると推測していたホテイ型が、巨大な爆発音を発する威力の一撃を無下限に叩き込んだ。
しかし、五条悟は動じていなかった。
むしろ、何かに飽き飽きした一国の主かのような表情を浮かべ、一時的に離れたズイジュウ型……ではなく、眼前のホテイ型を視る。
「…………初見で視たときから思ってたけど、やっぱりか」
「ШЭΞδ?」
ホテイ型の一撃を無下限で受け止めた五条は呟く。
その声に月人なりの言語でホテイ型は問い返すが、五条悟は
「さっきから
バリバリバリバリィィッッ!!
───黒閃
五条悟の蒼を纏った拳に帯びる呪力が、青から黒へと、その光の色を変化させた。
その一撃で、五条悟の動きにエンジンがかかり、それと同時にホテイ型の巨体が衝撃により浮き上がる。
その隙を、
出力最大─術式順転 「蒼」!!
ドヴッ!ギチギチギチギチィ!!!!…ボンッ!!
底なしの蒼は風切り音がステージに響かせ、周りの建物や木を選り好みせず相手を飲み込む。
ホテイ型はそのまま空中に吊り上げられ、そのまま消え去り、残機三つの内の一つを消費した────────
────────が。
「────!?」
「θζξλΟΗΘ」
eスポーツを嗜むゲーマーたちが己を犠牲に陽動をするように、戦乱の世において武将たちが戦略を組み立てるように、ホテイ型のノックダウンは作戦の内に過ぎなかった。
五条悟の無下限を、大量のリョウサン型が貫いたあの瞬間、月人は呪術・術式のことは分からずとも、有効打になりうる条件を把握したのだ。
最大出力の蒼を放ち、動きに一瞬の隙を見せた五条悟。その後ろに、先ほど離れていたはずのズイジュウ型が迫る。
(チィッ!!
そのことを即座に把握した五条悟は、渋谷で領域展延を使用された時のように、術式を保とうとリソースの配分を変更する。
だが、阿吽の呼吸をはるかに越える連動を魅せる月人は、それすらも見通していた。
「「「「δЫФЖЁθ」」」」
「────ッ!?」
五条悟に、その姿と同様に獅子を彷彿とさせる様子で迫るズイジュウ型、それらと挟むように追加の月人が4体現れる。
ズイジュウ型とまた違う錫杖を持つ者・チャッパのような武器を持つ者・琵琶のような武器を持つ者・竹を模した武器を持つ者。
全員が、本来トップとボトムにいるはずの残りの月人。テンニョ型とコンゴウ型がそれぞれ二体ずつ、計4体の援軍だった。
(あっちは持たなかったってことか)
五条悟自身も多勢に無勢。かぐやの歌声は響くものの、自身が今現在どれだけの時間戦闘をしているのか把握するまでの余裕は無い。それがここに来て裏目に出た。
そしてフリーになったボサツ型によるリョウサン型の召喚と、チート級の長距離光弾。
全てが
ゴリゴリゴリゴリッ──パリィ゛ィ゛ィ゛ィィン゛!!
長年五条悟を守り続けた無下限は、ズイジュウ型・コンゴウ型二体・テンニョ型二体・そしてボサツ型の長距離光弾により、儚くも破られていく。
「─────、……」
そのまま五条悟の四肢は切り刻まれ、ピンクの花弁となり散り、意識がリスポーンのために薄れていき─────────
─────敗北。その二文字が、五条悟の脳裏に過ぎった。
全ツクヨミユーザーが、かぐやの卒業ライブに注目している。
私自身、それを行った身ではあるけれども、こうして客観的に観るのは初めての経験だった。
───月見ヤチヨ、私の名前。
………この名前が好きなのか嫌いなのかは、正直わからない。
当時の
辛かったであろう時期の彩葉を救う英雄の名前。
何万・何十万・何百万・何千万というファンに希望を振りまく
運命を受け入れ、かぐやを月に送り出す者の名前。
どれも本当のことで、否定は出来ない。それがヤチヨだから。
そう自分に、自身がヤチヨだと気づいたあの時から、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっと言い聞かせてきた。
なのに───────
『…もっと欲張れ。年齢や状況なんて言い訳だ。僕は肉体が老いぼれになろうと強く、獰猛に、欲深く、己の目的のために進み続けた
少し前、悟が言った言葉。
「もっと欲張れ、か……」
誰もいない私室でそう独りごちる。
悟はこの後、月人たちからの集中攻撃を受けて負ける。
残機は2つ残ってるけど、彩葉と悟の二人で人数差をひっくり返すことは出来ない。
それでそのまま悟は……
「運命は、変えられない……」
私は頑張った。悲しみにくれてながら8000年も待って、退屈で、悲しくって、泣きまくって、やつ当たったこともあったけど、それも少しの間だと信じて、ずっと頑張ってきたはず。
敵の強さを教えたり、コラボライブの時に月にも干渉を試みたり、悟の特訓相手になって尽力したり。それなのに、この胸にこびりついた罪悪感が、何故か離れてくれない。
…私は誰なの?
ヤチヨ?なら、私の知ってるヤチヨを演じればいい。
ねぇ
「……」
……当然、答えが返ってくるはずもない。
ヤチヨは、私なのだから。
配信のスクリーンを見れば、悟が月人に囲まれていた。
8000年前に見た光景となんら変わらない、運命。
これでいい、これで─────
『ハハッ……でも、誘ってくれたのは感謝してるよ……ありがとね』
『……二人は充分僕の力になってるし、むしろ僕の方が認識を改めることになったよ…だから、もっと頑張ってね〜……僕を満足させられるくらい』
『──だからもっと胸張って自信持ちな』
『…もっと欲張れ。年齢や状況なんて言い訳だ』
『──抱え込むのなんてやめな。人生、わがままになった方がいいんだよ……』
「────嫌、だなぁ……」
かぐやだった時の記憶と、ヤチヨとして生きてきた記憶の言葉が繰り返される。
いつも優しいけど時には厳しくて。実際に先生だったからか、こっちでも先生みたいだった悟。
いつも笑ってたけど、彩葉みたいにずーっと抱え込む悟。
彩葉と一緒に、私をいつだって大切にしてくれた悟。
「そうだ、決めたんだった。諦めないって。もう一度頑張ってみるって─────
────ハッピーエンドにするって」
私は月見ヤチヨ。だから、ヤチヨがどうするかは
急いで空中にウィンドウを開き、管理者権限の使用を試みる。
いくら私が電子生命体だからといって、同じ電子生命体の月人がいて、KASSENが開始してしまっている以上、悟に何か強力なバフ掛けをしたり、月人たちを妨害したりは出来ない。
だから、私に出来るのはこれだけ。
ピッ……
「ヤチヨ!!」
「……大丈夫、少し眠るだけ…FUSHI、みんなのこと、見ててあげて……」
私のしたことを把握した様子のFUSHIが、焦った声を上げたので、睡魔に襲われながら宥める。
自動進行システムを乱した私は、管理者という立場に関係なく侵入者だと判定される。半ば強制的に、数分程度の間、意識をシャットダウンさせられてしまうだろう。
「──お願い、悟………」
悟に祈りながら、私は眠りについた。
五条悟の四肢欠損部に、ノックダウンの印である花弁が散る。
かぐやの曲も2曲目に入り、ライブが最高潮を迎えている中、観客席の間にも、これまで余裕を崩さなかった五条の状態に、大きなどよめきが広がっていた。
「なんだあのNPC、五条でも勝てないのか?」
「帝様たちもやられちゃったし、反則じゃないこんなの」
そんなことはお構いなしの月人は、極めて冷静な様子で、自軍の目的を果たすために、いろPとリスポーンした五条悟の2名しか待たぬであろう天守閣へと歩を進め────────
「なあ、もう終わりかよォ?」
─────ることは出来ず、たった一人の声により、数千の軍隊が止められた。
彼を包むベールかのような土埃は巻き上げられ、再び姿を見せた五条悟の四肢に、先ほどまでの欠損は見当たらない。
「ほんっとに苦労したよ。元来呪力同士を掛け合わせて肉体を治癒する反転術式も、ここじゃ身体が電子で構成されてるせいで、正のエネルギーは作れても再生は出来なかった」
「……」
肉体の接続部が明確には繋がってないからかな?術式の都合上反転が出来ないと赫も使えないしさァ──五条はそう独り言…否。成長の余韻に酔いしれるためにペラペラと喋り続ける。
その解説はゲーム内チャットのため、声が配信や実況席に届くことはない。
しかしそのただならぬ雰囲気は、かぐやの歌声と並ぶほどの勢いで、ツクヨミ全体にまで轟いていた。
「だから肉体の再生を0→1に再構築する形で再現するために、さっきみたいな状態で呪力の核心を一つ一つ探るしかなかった。極限状態で時間を要する作業。
(最強として、誰かの力で立ち上がるのは悔しいけど、彼女の勇気が実を結んだなら……悪くないな)
五条悟は、そう喋りに区切りをつけると、自身が乗っていた岩山の上から飛び降りていく。世界が彼を祝福しているかのようにすら感じられる高揚感に包まれ、ふわりふわりと空中浮遊しながら。
「「「「「「「ЫΞζξΘΗФЖЭ」」」」」」」」
天守閣へと進もうとしていた月人たちは、五条悟のただならぬ雰囲気を感じ取り、残機が2となりリスポーンしたホテイ型を含む7体と、リョウサン型の全軍で潰そうと、五条悟の周りを取り囲み迫っていく。
実際のところ、この月人の行動は最適だった。
敵は酒寄彩葉と五条悟の二人のみ、さらにその内の一人は天守閣付近に孤立しており、全員でこの男の残機をゼロにしてしまえば、勝利は確実。
(そうか、そうだったのか)
しかし、最適ではあっても、最善ではなかった。
月人は呪術師ではない。
そのため、大半の術師が大技を使う前に発生する"呪力の起こり"を認識出来なかった。
『あなたは呪術を、生きるため・何かを守るために揮うのではなく、ただひたすら自分を満足させるために行使していた変態でしたから』
(そうだな七海、実際そうだったよ。俺はみんなを同じ人としてじゃなく生き物として線引きしてた。あの空港で言ったことに嘘はない。でもさ───)
『でも、みんな抑えてもいると思ったんだよね、自分の気持ち。もっと大事なもののために……悟も、いつもそうしてると思ってさ。かぐや、悟にももっと笑ってほしいんだ』
『悟も私と変わんないから!アンタがどんな生き方を選んだって、私がどれだけ弱くたって、少なくとも私は悟のことも諦めないって決めたの!かぐやから、あなたから、そう教えてもらったから……だから、悟も私を信じて。……私に、悟を信じさせて』
(──二人は気づいてたんだ。僕が二人を、どこか線引きしてたことに……負けたよほんと。まさか、この僕が知らず知らずのうちに諦めてたなんてね。勝つことじゃなくて、理解することを)
絶対的強者 それ故の孤独 あなたに愛を教えるのは
「悪いけど、
(きっと僕は理解されなかったんじゃない、理解されようとしなかったんだ。してほしかったはずなのに、それ自体に強いとか弱いとか、全く関係なかったなんて、嫌味で、皮肉な御伽話だよ)
「人生初、だ。
───────領域展開 無量空処」
かぐやの歌声と、五条悟の戦跡が刻まれる音が、仮想空間ツクヨミに奏でられてゆく…
初めてのフル戦闘回。なるべく読みやすく楽しんでいただけるよう今までで一番力を入れたのですがいかがでしょうか?
感想・評価していただけると嬉しいです!
以下、今回で開示できるある程度の解説となります。
なぜ帝たちは残機を全く削れず敗北してしまったのか→彩葉が天守閣に居て帝と協力出来ないことと、雷・乃依だけでは火力が足りないであろうことが主な要因です。悟は真ん中の三体を一瞬で倒す算段だったので、その間周りが持ち堪えられるであろう最善の配置にしましたが、かえって火力不足→各個撃破になってしまいましたね。
0の方で、夏油が高専生を殺さないだろうという確信があったとはいえ、特級に準2のパンダと2級の狗巻(当時)をぶつけるのはリスキーすぎますし、悟はそういうところで雑い面があるなという解釈です。
ちなみに帝たちは今回もチートを使っています。コンゴウ型とテンニョ型にのらりくらりとかわされたことで時間切れになりやられてしまいました。(悟がいたことで、彼らの目的が悟を撃破するための時間稼ぎがメインになったのが痛いですね)
今後の蛇足〜!の優先順位希望
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IF√的なもの
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後日談的なもの