ありがとう、みんな─────
時は少し遡り、悟が無制限の茈によってリスポーンした直後。
(本当に、これでいいの?)
超新星の歌姫が歌う天守閣の下にて、いろP…いや、私、酒寄彩葉は思い悩む。
芦花・真実、お兄ちゃんやブラックオニキスの人たちもやられて、残るは悟と私だけ。
かぐやはプレイヤーとして換算されてるけど、実質的に動けるのは二人だ。
「……」
───ずっと、悩んでた。
人に頼っても……お母さんみたいな強い人にならなくてもいいのかなって。
かぐやみたいに、好きな時にはっちゃけて、やりたいことをなんでもやって、素直に生きていいのかなって。
いつも飄々として馬鹿みたいな態度で、でもブレない芯があって強い悟。
(綺麗だな……)
少し離れた悟を見てみれば、手を合わせてまた何かしようとしているようだった。
そのまま轟音を鳴らし、目にも止まらぬ速度で月人に突っ込む様を見て、一人思う。
このまま悟なら勝ってしまうのではないか。そう思われても仕方のないほどに強く、圧倒的で、その美貌も相まった悟に、もはや美しいという感想すら出てきた。
(でも、それでいいの?)
仮に悟が勝ったとして、それで、そんな結末でいいのか。
誰の助けもないであろう悟は今も一人で、独りでずっと戦っている。
もっと頼りなと言っておきながら、今まで一度たりとも自分から頼ってきたことのない悟を、また独りにしていいのか?
『かぐやから、あなたから、そう教えてもらったから……だから、悟も私を信じて……私に、悟を信じさせて』
(───信じてるなんて言っておいて、これがある意味信頼への裏切りになることも分かってる。でも!)
「───それで満足出来るわけ、ないじゃん!」
今ここで悟を一人にしたら、たとえかぐやが帰らなくても、この先二人の隣で笑える自信がないから。
独りよがりな自己満足だったとしても、私はもう、ハッピーエンド以外、普通のエンドなんて望んでないから。
「だから、行ってくるね。かぐや」
自分の少し先で待ち歌う私だけのかぐや姫が、自由だな〜って、少し、でも心の底から嬉しそうに、微笑んだ気がした。
そして現在。
(私が普通に割り込んだところで、何にもならないし、むしろ今の悟の前じゃ邪魔になる……だから、こうするしかなかった)
「タイミング、完璧……」
あの大技をキープするのに必死な悟の前に目掛けて飛び上がる。
「彩葉…?」
「言ったでしょ、信じてって」
さっきまであんなことを考えておきながら都合の良いことを、なんて自嘲しながら、目の前に迫る異形を見据える。
(悟はあの大技をキープするので動けない。さっきの黒い球体も悟の技なら、私がここで留まるのがむしろ迷惑になる可能性すらある)
あちらが悟を狙うのであればブーメランで叩き落とす。
私を狙うならばかえってやりやすい。大丈夫、落ち着いて考えればやりようはいくらでも浮かんでくる。
バシュン!
菩薩のような月人が、レーザーを発射する。
狙いは─────私。
おおかた、ひとまずいきなり飛んできた
『k.o!』
それと同時に、悟の放った紫色の大技が、抜け出した菩薩以外のHPを削りきった。
これで相手は
しかし、敵が次リスポーンする頃には悟の技は消えてしまい、私は悟の次の一手にとっておそらく邪魔になる。
「だから、私に出来るのはこれだけ」
眼前に迫るチート級のレーザーを、ブーメランで叩き落とす。
攻撃の手が緩まり、お互い条件はイーブン……
だが、私の武器は
ヒュルルルッッ!!!バシュッッ!!
あらかじめ投げておいたもう1本の剣が、菩薩に突き刺さった。
同時に、一本の剣では防ぎきれなかったレーザーが私を貫く。
職業柄耐久能力が低めな私と、悟の技で削られていた菩薩は、相打ちという形でノックダウンした。
「悟!!」
「……!」
大技の出力を終えた悟の目が、花弁となって消えていく私の方に向く。
「悟が拒否しようがどうしようが、私が悟を独りにさせないから!!だから……絶対勝って、みんなでパンケーキ食べよ、悟」
結局自分もやられてるくせに、何言ってるんだか……そう思いながらも、私はリスポーンのために意識を落とした。
黒閃に加え二度目の覚醒─────
五条悟のボルテージが上がる。
残機を削りきられ後がなくなった月人に、本来感じないはずの緊張が走る。
先ず動いたのは、ズイジュウ型。
ドッ…ガッ!
その巨体を最大限活かし、五条悟に単体での近接戦闘を挑む。
(呪術
五条悟のボルテージは確かに上がっている。
しかし領域展開に、極限まで反転術式の出力を上げたアドリブ瞬間移動、更に二度の虚式"茈"。
その六眼により呪力消費自体は0に等しいが、領域展開は疎か、反転術式での治癒すらままならないほどに、五条悟の呪力出力は落ちていた。
(だから最低限領域のケアとして散り散りになりつつも、直ぐに同時攻撃を仕掛けられるように、"茈"の範囲内であろうと留まるスタンスの配置にしている)
ボグッ!!ドンッ!
「対面性能の高い
五条悟は先ほどの"茈"により、出力が落ちれば維持できないこと・一番の脅威であるボサツ型が抜け出そうと、酒寄彩葉の介入がなければ対応しきれぬほどに制御の難しい技であることを
故に積極的に動くのは、タンクとしても優秀なズイジュウ型と無限の突破口であるボサツ型のみ。
ブォンッ……ドコッ!!
ズイジュウ型の錫杖を用いたなぎ払いに対し、五条悟が躱して蹴りを入れる。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!
その隙を突き、ボサツ型の高出力レーザーが五条悟に牙を剥く───
ビタァッ!!
───が、それらは五条悟に届かず、その勢いを失い消滅する。
その間にも次から次へと召喚されるリョウサン型。
ジリ貧。その間にも月人の体制は整えられていった。
どうしようもない淡々とした
黒閃
バギィ!!!バリバリバリバリィッッ!!
─────勝利の女神……ではなく、呪術の女神が微笑むかのごとく、五条悟の拳、それに込められた呪力が黒く光った。
餌食となったズイジュウ型はその一撃によろけ、真の意味で、五条悟のボルテージが最高潮となる。
『愛故に恐れ、愛故に怒り、愛故に戦うのだ。俺達は呪術師である前に、人間なのだから』
いつかの未来で
少なからず人間ではなく化物として見られたこともある男が、化物として戦うのではなく、人間として在るために化物になる。
ザッ……
黒閃を発動した五条悟の背後に、リョウサン型の内一体が立つ。
「
「───ッ!?」
一介の家来によるまさかの領域展開。
それは本来呪力の持たぬ者には到底しえない偉業。
だがここは電子の世界。五条悟やひと握りの強者のみ出すような必中必殺の術式効果こそないが、電子の流れを変化させ打撃を必中させることのみに特化させた空間を、先刻の領域から学習し再現してみせた。
「確かに凄いけど、教えてやる。領域は脆い…………必中効果なんて出す前に潰してやるよ!!」
しかし、五条悟は先を走る者。二度の黒閃と覚醒により若干ハイになりつつある調子で、回復した出力を惜しみ無く出し─
───魅せた。
「────領域展開 無量空処」
「「「「ЬЖΘРЁθζ」」」」
月人の領域内にて、五条悟の領域展開を見た他のリョウサン型が、それらに続いて領域展開を試みる。
呪術的に観れば、知識無しの者たちが試みた、見よう見まねの
パリィィィンッ!!
月人による全ての領域の
押し負けではなく、崩壊。
「「「「……………」」」」
周囲にあれほどいた月人は何も発しない。否、何も発せない。
見れば、そこは無下限の内側である宇宙空間のような場ではなく、ただのKASSENステージ。
ただ一つ違う点があるとすれば、五条悟の背後に、
「……本来、結界→生得領域顕現→生得術式付与の順に形成しなければならない領域を、
宿儺の伏魔御廚子のように、結界の外殻を切り刻んだわけではなく、五条悟は無量空処の能力、知覚と伝達の強制によって領域展開効果時間を強制的に終了させることで、結界を破壊した。
ダッ!!!
亀のような速度でしか行動できない月人たちを一体一体速く、そして確実に狩る。
バシュッバシュッバシュッ!!
負担を減らすため領域を解除し、1体・2体、着実に狩っていき、残るは数体。
しかし、勝利を確信した刹那────
ギュヴヴヴンンン!!!!!
一番演算能力の高いボサツ型が、最後の力を振り絞り、レーザーを構える。
(────ッ!?コイツまだ動けたのか!?赫で向かい撃つか?いや、術式の治癒が出来ていない今、徒手空拳で叩き落とすしかない……!)
初めての挑戦である、外殻を閉じない領域展開による呪力出力の低下を考慮して反転術式を後回しにしたこと。
何より、時には人の原動力となり時には人を惑わす成長という名の高揚感が、油断を招いた。
初動が遅れたことによる不利要素。
覚悟を決めた五条悟、そこに─────────
ドォォォォォォォォォンンン!!!!!
─────天から舞い降りる、
天守閣にて踊り歌っていたはずのかぐやが、ここにきて加勢した。
「……かぐや」
五条悟の口角が上がる。
それは自身が助けられたことによるものではなく、彼女の運命すら打ち破らんとする、その覚悟からくるものだった。
「………ごめんね、やっぱり帰るの…諦めるの、かぐやには無理だったよ……」
「ЁРЖЬЫδФΘθ………」
ハンマーの衝撃に消耗したボサツ型が耐えれるはずもなく、消滅反応を起こしていく。
それは紛うことなき、プレイヤーの勝利だった。
プレイヤーVSNPC軍─────プレイヤーWIN
「痛〜、ツクヨミなのに……来る途中なんか頭がぼーっとしたんだけど……」
試合が終了したことでハンマーが消滅し、かぐやが空いたその手を頭に当てる。
向かう途中、範囲が拡張された領域内に天守閣から離れたかぐやも入っていたが、元は処理能力の高い月人。少しの無量空処を耐え抜き、五条悟のもとにたどり着いていた。
「かぐや!?なんで……」
そこに駆けつける、彩葉や芦花・真実、ブラックオニキスの面々。
「……最初は、残って彩葉たちと楽しく過ごしたかったけど、帰るのは絶対だし、これが運命なんだな〜、この気持ちが覚悟なんだなって思ってたんだ。でも─────」
一息置いて、かぐやは微笑みながら続ける。
「悟が頑張ってるのを助けに行く彩葉を見て、みんなが綺麗で、かぐやも、みんなみたいに輝きたい、みんなと一緒に笑ってたいって思っちゃった……」
「かぐや……」
その答えに、周囲の面々は安堵し、一部の者は涙ぐんだ。
「そういえば悟、悟のあれってなんな……の…?」
「…?かぐや?急に黙ってどうし……た…」
すっかりいつもの調子を取り戻したかぐやが、そう言った後に再び固まる。
彩葉はその動作を不思議に思い、かぐやの視線の先を見て…同じく固まった。
そこには────────
「……」
「悟……ごめん、やっぱり、そうだったんだね……」
──────横たわり動かない五条悟と、その隣ですすり泣く月見ヤチヨがいた
永訣:今生の別れ、または死別すること。
あ、次回で終わりらしいですよ?
今後の蛇足〜!の優先順位希望
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IF√的なもの
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後日談的なもの