まあ、超かぐや姫!なんでね!
蛇足〜にはまだ早い!!
そして彩葉誕生日おめでとうございます!
始まりの終わりと終わりの始まり
「「って、そんな風に終われるわけ、ないっしょ!!」」
思わずそう叫んでみると、かぐやも全く同じ想いだったのか、顔を見合わせて笑ってしまった。
別に嘘をついたわけじゃない。さっきの気持ちも全部本当だ。
かぐやを失いたくないのも、前を向いて進むのも本当。
でも、もう戻る日常なんてない。
かぐやと出会ったあの時から────
『あ、五条君、さっきの問題助かった!ありがとう』
『……あぁ、君も、あんま無理しないようにしなよ?』
『え、なんで分かって……』
『お生憎様、こういうのは経験してるんでね』
悟に救われた、あの時から────
悟もかぐやもいない日常なんて、日常じゃなくなってるんだ。
「ってゆーか、何なの悟!もういらないとかなんとか、勝手に決めつけちゃってさ!!かぐやちょーショックなんだけど!!」
「ほんとに!!煮え切らないに決まってるでしょ!!」
一度言い出したら、もう止まらなかった。
いつもは私がストッパーとなっていたからか、二人でひとしきり不満を出す。
そもそも特別な事情があるとか関係なく、私たちに自分はもう要らないとか決め打ちしているのが腹立たしい。
それと同時に、そこまでの存在になれなかった自分自身にも怒りが湧いてくる。
『ハッピーエンド要らない。普通のエンドで結構です』
普通のエンドでいい?そんなわけない。
『僕がいなくても、二人だったら問題ないって話』
悟がいなくても?そんなわけない。
『私、かぐやと一緒に、悟から守られたものを大切にして前に進むよ』
悟がいないのに?そんな、そんな─────
「─────そんなわけ、ないっっ!!」
思い立ったが吉日。
かぐやとこれからのことを話し合う。
「まず、私はこれから、お母さんと向き合うことにする」
先ずは、自分のことにきっちりと片をつける。
行動を起こすのは大事だけれど、焦りすぎても何も生まれない。
「いいの?だって…………いや、わかった!かぐやはどうすればいい?」
かぐやは二人で行った花火大会のことを思い出しているのか、一瞬引き止めようとしたものの、すぐに私を後押しすることにシフトした。
いつの間にかそんなことが出来るようになってて、思わず驚いてしまう。
「かぐやはヤチヨに連絡出来るか試してみて。私も試すけど、手は打っておいたほうがいい」
「わかった!!」
動画ファイル。あそこまでよく分からないことを言われてしまえば、さすがに私でも違和感を持つ。
それに、KASSENのラスト。
全ユーザーの情報を所持しているはずのヤチヨが、悟がログアウトしただけであんな反応を見せる訳がない。
ヤチヨなら、きっと何か知ってる。悟のことも、あの曲のことも。
ピッ…
「もしもし……」
まだ震える指を着信ボタンに伸ばし、その夜私は、人生における一つの山を乗り越えた。
これが本来なら一番の山場だったはずなのに、私もおかしくなっちゃったなぁ、だなんて、嬉しい誤算を噛み締めながら。
『ヤチヨは最近ドジョウ掬いを練習してるんだ〜!すっごく面白い踊りだから紹介するね〜?じゃ、いくよ───』
「彩葉、ヤチヨ配信してるっぽいけど、どうす────」
「あれは過去配信のアーカイブ。今までこんなことなかったから、やっぱり何か───」
「恐ろしいな、ヤチヨオタク」
「オタク言うな」
かぐやと懐かしいやり取りをしながらも確信する。
あれは再放送。ヤチヨの全てを追いかけてる私には分かる。同時に、こんなことが初めてだということも。
かぐやの卒業ライブ以来初めてのツクヨミ。
ライバーかぐや・いろPとしてはファンへの謝罪として、チケット代を無料にした復活ライブを行ったため、厳密に言えば初めてではないが、それでもかぐやと酒寄彩葉としては、ログインを控えていた部分もある。
必然的に何処か懐かしい気分で、ツクヨミ内を散策していた。
数日前までと何も変わらないはずなのに、何もかも変わってしまった自分自身が見つめ直すと、こんなにも違って見えるのだろうか。
「────ん?」
「彩葉、なんかあった?」
何だ今の、視界の端で何かが動いた。
白くて、小さくてまるで────
「FUSHI!?」
「FUSHI?」
視界から外れてしまったため判別に時間が掛かってしまったが、間違いない。
私たちから逃げるように何処かへと移動するFUSHIに置いていかれないように、咄嗟に飛び出した。
「かぐや、ヤチヨと一緒にいたFUSHIなら何か知ってるはず、追いかけるよ!」
「なるほど、彩葉天才!」
(ツクヨミユーザーなら分かる人がほとんどだと思うけど……)
そもそも、ヤチヨの付き人のような立ち位置のFUSHIが、こんな一般ユーザー
誘導されてる?
いや、ここで逃したら、二度と会えないかもしれない。
そう考えながら、想像よりも早く動くFUSHIを追いかける。
追いかけっこをすること数十秒。FUSHIはちょこまかと路地を駆け回り、袋小路にたどり着いてやっと止まった。
「……どこにいるか教えて」
「……」
そう言っても、FUSHIは何も答えない。
小さな口を噤んで、こっちを振り向きつつも、その口からは何も発せられなかった。
かぐやも、少し前までなら、無理矢理にでも口を割らせようとしていたはずなのに、黙って私とFUSHIの間に視線を彷徨わせている。
本当に変わった。それが良い方向であるのは確かなことだから、今は気にしないことにする。
「自分で探すよ」
「バカタレ、何処を探すって?」
それまで無言を貫いていたFUSHIが、その口を開いた。
「「教えてくれないなら、世界中!!」」
「その先に、何もなかったとしてもか?」
私とかぐやがそう答えると、FUSHIはさらに質問を重ねた。
試す、というより、恐れているような視線。
このまま止まっていても、平和に過ごせはするのだろう。
でも。
「何もないかどうかは、私たちが決める!」
「悟にも言ったけど、そんなの、その一瞬を悔いのないように輝かしちゃいばいいの!そんでもって、キラキラのハッピーエンドにする!」
もう諦めたりはしない。
決意を込めた目で、FUSHIを見つめる。
「……分かった、着いてこい!」
───そこからは大変だった。
現実に現れた……というより、スマコン越しに映されたFUSHIを追う。
どこに向かうのかと思えば、想像以上に長距離を移動することになった。服を着替え、駅に向かい、電車に乗り、降りたかと思えばさらに徒歩。
「ここから入れ」
ようやく着いたのは、人気のないマンションの一室だった。
「「……せーのっ」」
そう言って消えたFUSHI。
私とかぐやは目を合わせ頷くと、手を合わせてログインした。
初めてログインした時を思い出すような、暖かくて、悟がいなかったら守れなかったであろう大切な手。
それと同時に、いつもとは違う、まるで裏口からこっそりと忍び込むような感覚が湧き出てくる。
瞼を開けると、そこは見たことの無い部屋だった。
無数の灯篭が鈍く光り、僅かに聞こえる風音が、今いる場所が相当な高層階であることを知らせている。
特別で居心地が良さそうで、少し寂しくも感じる部屋。
第一印象はそんな感じ。
手にかぐやもいることを確認し、目線を前に向けた先にいるのは───
「かぐや?」
「ん?」
思わずそう呟くも、さっき確認した通り、かぐやは私の隣にいるはずだ。
じゃあ目の前にいるのは?
長い髪を床に広げ、振り返るその姿。
灯篭のせいか一瞬金髪にも見えた髪は、よく見ると白だ。
じゃあその正体は─────
「「ヤチヨ」」
─────だった。
「ヤチヨは、かぐやなの?」
「え?でもかぐやは……」
「……」
私の口から零れたありえないはずの推論をかぐやを否定しようとする。
当たり前だ。かぐやは隣にいるのだから。
でも、口に出した私自身も、それを否定してはいけない気がした。
ただの勘。
なのに、私も本人であるかぐやも、何故か否定しきれない。
「変なことを言ってるのは分かってる。でも……」
ヤチヨは驚くように目を丸くした後、薄く微笑んで小さく何かを呟いた。
そうして、ゆっくりと立ち上がり────
「これは、ヤチヨも知らないところから始まる、推論。要は
語り出した。ヤチヨの全てを。そして、悟の全てと、残酷で温かい真実を。
「今は昔。退屈に飽きたかぐや姫とそこに出くわした少女、彩葉は楽しく輝かしい日々を過ごしていました」
ヤチヨの口から語られる、ヤチヨ自身も経験していない推測も含まれる、けれど確かに核心を突いた真実。
まず最初、始まりは、確かに二人だけの物語だった。
「けれど、楽しい時間もいつかは終わってしまうもの。ツクヨミもない世界で現実に干渉した月の住人によって、かぐや姫は月に強制送還されてしまいました」
月見ヤチヨすら存在しない最初の世界。その結末は、何とも残酷なものだった。
「月に帰ってバリバリ社畜していたえらえらかぐや姫。そこに完成された歌が届きました。それはかぐや姫のために作られたかぐや姫だけの歌。名前は……『Reply』」
「……!?」
それは現状彩葉しか知らないはずの、今は亡き父との大切な思い出。
ワンコーラスのみの、人と人とを繋げる歌。
「それでもっかい地球に行こ〜ってお仕事爆速ですっかり片付けて引継ぎも完了。ただ、地球の時間では大遅刻。でも安心!月の超テクノロジーは時間も越えられます……時を超えて、地球に向かうかぐや姫。でもあと少しのところで、でっか〜い石に当たっちゃったの」
「「………」」
「やっとのことでたどり着いたのは、ざっと八千年も前の地球。船は壊れたものの、同行していた犬DOGE……現在にあたるFUSHIだけが体を得ました。かぐやはウミウシの体を通してだけ、世界と交流を持てたのです」
普通ならば有り得ないと切り捨てても何ら不思議ではないお話。しかし妙に信憑性を帯びるその言葉に、二人は耳を傾けてしまう。
「やがて時は経ち、人々は見えないものを形にし、多くの人と繋がる力を手に入れた。それは月の世界と少し似ていて、かぐやは初めて、魂だけの自分が世界と関われる可能性を知りました。そして、仮想世界ツクヨミの歌姫として、再び彩葉と出会うことが出来たのです」
二人は何も喋らない。否、喋れない。何故ならその話には、まだ一人、自分たちの傍に当たり前のようにいたはずの人が、現れていなかったから。
ヤチヨは緊張するような素振りを見せた後、続きを語り出す。
「……ここから、世界とかぐや姫・少女たちは、同じ輪廻を巡ることとなりました。同じ空の下で出逢い、ツクヨミで再会し、ツクヨミにて別れ、また出逢う。本来ならば、永遠に繰り返す輪廻の輪に、一人。あらゆる魂の通り道から迷い込んだ者が、この輪廻に入り込んだのです」
「「……悟」」
ここまでもったいぶられて、分からないはずもない答えが、二人の口から溢れ出た。
「その者は、かぐや姫たちが知る由もないような力。呪術を扱う呪術師、それが新たな身体を手にした転生者でした……かぐや・彩葉・ヤチヨ。世界という果てしない力によって繋がれた運命を、その外から介入した五条悟が破壊したのです」
「しかし、世界もただ運命が壊されるのを見ているわけではありません。六眼という元来悟が持っていたはずの特殊な体質を
「「……」」
今までのループではなかったことで、かぐやが存在する今が在るということを、二人は知る。
「でもこれまた安心!輪廻の外からの旅人である悟は、その呪縛から解き放たれ、今世はその六眼もありました。ギリギリの戦いであるものの、何とかかぐや姫を守り抜き、今こうして、少女とかぐや姫は再会することができたのでした……って、これじゃあ手放しにめでたしめでたし〜とはならないか〜やっぱ♪」
すっかりいつもの調子に戻ったヤチヨとは裏腹に、かぐやと彩葉は、多すぎる情報を理解するために……否。理解したものを納得するために、一つ一つ咀嚼していく。
ヤチヨはそんな二人の様子を見て、苦笑いを浮かべると、誤魔化すかのように言葉を連ねた。
「ただの御伽噺!!そんな考え込まなくても───「いい訳、ないじゃん」……」
彩葉のその言葉に、ヤチヨは押し黙る。
それは、彼女自身の本当の気持ちと相違ないものだったから。
「彩葉の言う通りだよ!FUSHI……いや、犬DOGEも!出てきて!!」
「……なんだ?」
かぐやの掛け声により、姿を隠していたFUSHIが現れる。
普段ならツンとした態度を取っていたFUSHIのその言葉には、不思議と今までのような棘は感じられなかった。
「ヤチヨの隠してること!FUSHI、教えて!!」
「……!?かぐや、どうしたのかにゃ〜?この通り、隠してる物もことも……」
「あるに決まってる!!ヤチヨはかぐやなんでしょ?あれは絶対、最後の方テキトーだった!」
元は同じかぐや。言い方こそストレートだが、相手が少し歳月が違う鏡写しの自分と考えれば、行動の差異など見抜けぬはずもなかった。
言葉の苦さを知ったかぐやならば尚更だ。
「テキトーって言い方はアレだけど……FUSHI、ヤチヨの隠してること、見せて。私たち、ヤチヨの全部を見ないと、ハッピーエンドなんて言えない」
「彩葉まで!?f、FUSHI?」
彩葉はストレートすぎるかぐやをやんわり咎めながらも、同じ意見を押し通そうとした。
「………本当は、ヤチヨの意思に従うつもりだった…けど、ヤチヨ。悟と約束したんだろ?」
「……!」
『もっと欲張れ』
『わがままになっていいんだよ…-』
8000年かけて付いてしまった癖がここでも出ている、そう自覚しながらも誤魔化そうとしたヤチヨに、五条悟の声がリフレインする。
(悟、ありがとう)
「………うん、ごめん、二人とも」
FUSHIすらも二人の肩を持つことに不安を覚えたヤチヨだったが、五条悟が消失したからこそ強く遺る呪いが、ヤチヨに立ち止まることを許さなかった。
ヤチヨは一つ深呼吸をして、二人の方に向き直る。
「二人とも。これから見るのは、8000年分の記憶だよ。ヤッチョも二人を絶対に死なせないつもりで保護するけど、100%安全なんて言えないし、人の体で耐えられるか分からない。それで二人の内どちらでもいなくなったら、悟が居てもハッピーエンドとはいかないからね?」
「「そんなの、当然!!」」
二人の決意が、ヤチヨの最後の不安を消し去る。
そこに根拠などない。
何も考えずに失ったものも多い中で、不思議と湧いてくる自信が、ヤチヨを後押しした。
「───それじゃあ、いくぞお!!」
ズォォォォォンンッッ!!!!!!!!
そんなFUSHIの掛け声とともに流れ出る、膨大な情報量。
FUSHIが情報であり記憶でもあるそれを流し込み、ヤチヨが二人を壊さぬように、慎重にサポートをしていく。
負担を0にすることこそ不可能であるものの、もとより月の住人であるかぐやに余裕があったため、彩葉への負担を減らすことに成功した。
『悟!?悟、どうしたの?倒れてる…?しっかりして、悟……!!!』
そんなかぐやの声が、ツクヨミの天空で響く。
かぐやの真下で仲間たちに介抱される悟は、まさに満身創痍。
命の灯火が消える寸前だった。
月人からしてみれば理解不能な出来事に、結果を追求する彼らが警戒しないはずもなく、かぐやは遠ざけられてしまい、そのまま強制送還されていく。
『悟!待って、悟がどうなったかだけでも、さとるっ……悟ーー!!!』
────そこに映ったのは、ヤチヨの話と合致、それでいて全く非なる、残酷な別れであった。
正直更に書こうとも思ったんですけど、このままだと余裕で一万超えてしまいそうだったので一旦区切り。ギリギリまで感想返信しなかったのはあえてですね許してください。
ねくすとごじょさとひんと!
「因果」と「誓約」
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