時系列:Modulo No.2:変わらないもの 前編の後(前編から読むことを推奨)
お待たせしました!!モデルになっている水族館に行ったことがあったのでその記憶を頼りに……(作品の都合上ジンベイザメコーナーがラストとなっています)
沖縄観光の一環として、沖縄一の水族館に到着した私たち。
「───それで、どこから周る?」
「う〜ん、普通に正規の巡回ルートで巡るのがいいと思うけど、あいにくヤッチョは下調べしてなくて〜……ごみん」
「やっぱイルカショー!!これから始まるらしいし!!」
「確かに、普通のルートは何時でも巡れるし、そっち見てからにしよっか」
「「は〜い」」
チケットを買うのをやめて屋外エリアの道を歩く。
ここの水族館はイルカショーをはじめとする屋外エリアの施設・イベントなら無料で楽しむことが出来るらしい。
貧乏時代があったからかそういうところも事前に調べてしまう。いや、お金があろうと節約はするけど。*1
「あ、やばっもう始まるって!!」
「ちょっ、走るの!?」
「げに恐ろしきスプリント能力〜☆」
始まるまでもう少し!という旨のアナウンスを聞いたかぐやが私の腕を掴み猛ダッシュする。
体勢を崩しそうになるも何とか踏みとどまってかぐやに着いていく。
高校の頃運動神経抜群だった完璧高校生酒寄彩葉は何処へやら。
かぐやに振り落とされないようにするのがやっとだ。
(でも……なんか楽しいかも)
かぐやに引っ張られて楽しい方に連れていかれるこの光景が、いつかのライブを思い出すみたいで。
結局、ギリギリ座席は確保出来ず後ろから立って観ることになってしまったけれど、二人が楽しそうだったしいいかな。
その後は順調に、通常ルートで水族館を満喫した。
チケットを買い天真爛漫なかぐやに振り回されながら、サンゴ礁に住む魚や深海魚・トンネル型の水槽を巡っていく。
どれも神秘的というかなんというか……私はこういうの向いてないし、感想は控えておこう。
でも、遠めのここじゃなくても水族館には家族を誘って行ってみたいかもしれない。
お母さんの小言だけ勘弁してもらいたいけど、あれからちゃんと帰省するようにはしているし、お兄ちゃんと協力すればいけるだろう。
「次がラストだよね?」
考えを巡らせるのをそこまでにして、隣のお姫様二人に問いかける。
「そうだね〜、FUSHIも連れてくれればおもしろ……ではなくて、みんなで楽しめたのに残念☆」
「ヤチヨ、本音漏れてるよ」
10年間も一緒に過ごしてきたのだ。口調を変えてもヤチヨはかぐや。そう認識するのにも慣れる。いや、今のはその前提がなくても分かるけど。
「ジンベエザメ!!見たことないから楽しみ〜!!」
「はいはい、人多いからはしゃぎすぎないでよー?」
「あいよ!!」
「寿司握ろうとしてる?怖いんだけど」
ヤチヨと小芝居をしている間にも、もう一人のお姫様はワクワクが止められない様子。
てかその握るジェスチャーやめろ。ここ水族館だぞ水族館。
「うわぁ〜!!すっげぇ!でっけぇ!!」
「これはさすがのヤチヨも驚愕なのです…」
「かぐやはしゃぎすぎ……」
せっかく迫力があって感動してたのに、かぐやの様子に引っ張られて吹き飛んでしまった。
「……まあいいや、私ちょっとお手洗い行ってくるから、二人とも出口の方で待ってて」
「「りょ〜!」」
いつも息ぴったりなのに、テンションが上がると口調すら合う。
二人といるのは楽しいけど、かぐやが実質二人になったことによる心労は2倍……そんなところも愛おしいと感じてしまうのだから、私はチョロ葉だなんて言われるのだろうか?……解せぬ。
「──それで、いつまでそこから見てるつもり?」
「あ」
「あ。じゃないでしょ」
二人が居なくなったのを見計らって、私たちの居た位置から十数メートル離れた位置にいる白髪長身男性に声をかける。
他の場所はあてがなかったものの、ここならワンチャンあると思ったのだ。
「とりあえずここは人が多いから、空いてるところ行くよ」
「え〜?」
「え〜じゃない。アンタ今ん所「あ」と「え」しか喋ってないけどいいの?」
「目立てないのは嫌!!僕が主役なのに!!いや、でもこれクロスオーバーだし同格に扱わないと……」
「目立つな」
水族館だぞここは。それと何の話?
「───で、なんで頑なに会うの避けてたの?」
人混みを抜け、ベンチに座って問う。
「いや〜、実は沖縄うまいもん巡りをしててねー。かぐやも沢山食べるけど、ヤチヨは義体で大食いは出来ないし、彩葉もめちゃくちゃ食べる方じゃないでしょ?それじゃあみんな楽しめないと思ってさ」
いつもと同じ、飄々とした様子で語っていく悟。
「……本当のところは?」
「……前も思ったけど彩葉、見抜くの上手くなった?」
飄々とした様子から、少しだけ声のトーンが落ちる。
「10年経ってるし、あと記憶見てるし。初日から薄々気づいてた」
「うわ……あんまり察しがいいと怖がられるよ?」
悟が手を降参と言わんばかりに上げて、少しおどけた感じを出す。
「腕ぶった切られても恐怖しない特級呪術師様が何言ってるんだか」
「物理的な恐怖とは違うんだけど、まあいいか……一つ、夢で思い出したことがあってさ」
悟の声のトーンがまた一つ下がる。本当に真剣な時の声だ。
「何を?」
珍しい、と思った。夢の内容を真に受けたりすることはないと思ってたから。
厳密に言えば夢でたまに考え込むこともあるが、大人になってからの彼は睡眠時間が絶望的なものだったから、夢を見ること自体少なかった気がするのだ。
「……死んでる間のことかな」
「……」
触れるべきじゃなかっただろうか。
いや、ここで一歩を踏み出せなければ、私は彼の隣に並べない。
デリカシーがないと言われてもいい。もう、後悔はしたくないから。
「──聞かせて」
「先週?2週間前?具体的な日にちは忘れたけど、夢で出てきたことが、死んでる間にあったことと一致してた」
そこから一拍置いて、悟は話し始めた。
「や」
「……」
「おや、感想は無しかい?」
「うるせー、このくだり前もやっただろ?それに今回は負けてねぇし」
「それはどうだろうね」
「あ゛ぁ?」
気が付けば、隣には親友がいて、俺は在りし日の空港に座っていた。
「まあ、それは兎も角、今回は月からの使者か。悟もモノ好きだね。呪いの王の後は宇宙進出かい?」
「好きで戦ってたわけじゃねーし、その呪いの王に負けてんのに次にステップアップするとかダサすぎだろ。宿儺とはまた違う強さだったし、斬撃系統なら相性良いし宿儺はアイツらに負けねーよ」
戦いの反省会をするのもいつぶりだろう。十数年経ってるのに、まるで昨日のことのように記憶に刻み込まれている。前回の空港での記憶は途中で途切れているが。
「まあね。ただ、今の君を見たら七海や灰原も驚くんじゃないかい?まさかあの悟が人のため、なにかのため、大切なもののために戦うなんて」
「……実際どうだったかは分かんねぇけど、なんつーか、今までのやり方じゃ勝てない気がしたんだ」
「というと?」
傑が興味ありげに顔を低くして体重を移す。
「アイツらが電子の世界の住人だからとか、鍛えた肉体・身につけた技術・磨き上げたセンスや場当たりの発想力に瞬発力。そういうんじゃなくて、"呪術師"として戦うことが勝利条件だった」
「確かに、かぐやさんにヤチヨさん、酒寄さんの協力が無かった危なくはあっただろうけど、それだけじゃないだろう?」
「ああ」
傑の確かめるような質問に頷きながら、あの時のことを思い返す。
「確かにあの時、俺はまた最後の最後で油断した。でも、心の何処かで、誰かが助けに来てくれるんじゃないかって、高揚感の中の信頼が残ってたのかな」
「もちろん新宿でもみんなを信頼してなかったわけじゃない。あの時は作戦的に助けが来るはずもなかったし、俺の頭には一人で宿儺に勝ち切る以外の算段はなかった。でも、他人のために自分の命を賭した縛りを結ぶくらいには誰かのことを考えられてたからか、一人の力で殲滅しつつも、最後には彩葉やかぐやがいることを念頭においてたのかもしれない」
「……」
「メンタルの違いっつーか、ほら、リレーも数人分の距離を一人で走りきろうなんてやついないだろ?俺がゴール前までバトンを繋げば、そこで俺が油断しててもアンカーの誰かがゴールまでバトンを運んでくれる。そんなイメージ」
「なるほどねぇ、それで、今回は満足出来たのかい?勝ったとはいえ、君の好きな戦い方じゃないだろう?」
「……前回と同じだよ。戦い方に後悔はない。勝ったしな。でも、お前か誰かが居てくれたなら、あっちに未練が残ったかもしれない」
「……意外だね。未練、残したかったのかい?」
傑が不思議そうに聞く。
「……どうなんだろうな。遺言は遺したし、縛りで死ぬって身体が認識した瞬間にも、生への執着は感じなかった。でも、せめて未練だけでも残せないのかって。そこに少しだけ思うところはある」
「───それを未練って言うんだろ〜?」
「……!」
俯いていると耳に入った傑以外の声に驚き、顔を上げて振り向く。
「よ。久しぶりだなクズ」
「人聞き悪っ」
「硝子は君がいなくなってから来たからねぇ」
空港で学生時代の容姿に戻っても尚、タバコを吸い最悪なあだ名でこちらに声を掛ける硝子に悪態をつく。
「七海と灰原は?」
「彼らは先に南行き、確かマレーシアの方だったかな。そちらに飛び立ったよ」
どうやら可愛げの無い後輩たちは既に旅立ってしまったようだ。
「素っ気ねぇの」
「いいじゃないか。いつ一緒に来るか分からない上に口を開けば文句ばかりの先輩を待つだなんて、私が彼らなら耐えきれないよ」
傑が立て続けに既にいない後輩をフォローする。
フォローすると同時に親友の悪口が出てることが不服だが。
「それで、五条はいいの?このまま南行きの飛行機に乗って」
「は?そりゃそうに決まって……」
「私も同感だね。ここは未練タラタラな人間が来るところじゃない」
傑までそんなことを言うのかよ。
せっかくやり切ったというのに、突如突き放す二人に動揺する。
「それじゃ、虎杖に先を越されても文句言えないな」
「……なんで悠仁が出てくるんだよ」
再度悪態をつきつつも、一度頭だけを冷静にして、話を聞く体勢を整える。
「私もその時には死んでたけど、ここから見てた感じ、アイツは乗り越えたぞ。最強としてのしがらみと、過去に囚われて
悠仁が最強ということについては不思議と気にならなかった。
あのまま悠仁が未来まで経験を積み重なれば、そうなり得ることは感じていたから。あの後宿儺に勝ったということについてもだ。
「夏油が離反した後の時代を生きた五条なら分かるでしょー?孤高の侘しさだけじゃなくて、独り取り残されることの苦しみも」
「それを言われると痛いね」
「うるせ〜、離反した張本人」
離反について触れる言葉に苦笑した傑を小突きながら、硝子がこちらを見る。
「……虎杖たちも言ってたことだけど、過去も現在も未来も地続きなんだよ。そんな地続きの道を高校生の時点で途絶えさせる気か?五条」
「それに、悟。君自身も、彼女たちのことを気に入っていたじゃないか……いいかい悟、前世は兎も角、彼女たちのいるあの世界での五条悟に私たちは関係ない。私もそこに寂しさを覚えないわけじゃないが、過去を見てばかりいて
「……五条。南か北、どっちを選ぶ?」
示された選択肢に、"僕"は─────
バシっ……
「─────ってことがあってさ」
「……そっか。なら、尚更じゃない?」
話を終えると、少し微笑んだ彩葉がこちらを向いた。
「沖縄旅行の土産は無理でも、土産話くらい、用意してあげなきゃでしょ?」
「……ま、そういうもんか」
「結局何で悩んでたの?」
改まって彩葉が聞いてくる。正直話したくはないし……。
「……いや、悩みなんて無いし、沖縄懐かしいな〜!って感傷に浸ってだけ」
「……絶対誤魔化したでしょ?」
流石にバレたか。うーん、こうなった時は……
「でも、悩みが無くなったのは本当だよ。さ、かぐやたちも待ってるだろうし行くよ!」
「え!?」
必殺のゴリ押し!!!
「まあ、悩みが解けたならいいんだけど……って、ちょっと待て!!」
この僕が全てが変わるのを恐れて、変わらないものを探してただなんて、最強の名が廃るからね。
この夏は個人的に忙しくなるので更新頻度は落ちますが、それでも見てくれたら嬉しいです!!(今回も三時間で書き上げた突貫工事ですし……)
今回は彩葉の視点を多めにして作ってみました!!
今回の設定は正直めちゃくちゃ考えたわけじゃないので抜けや矛盾がある可能性もありますが許していただきたい……
感想いただけると嬉しいです!!
どちらの方が見たいですか?(結果はあくまでも参考程度の扱いになります)
-
あの頃をもう一度
-
学び舎の一等星